看護職キャリア支援 職場適応担当 平塚 志保
学生と看護職セミナー(二輪草セミナー)では、キャリアや生きがい、自分らしく活き活き働くためのキャリアデザインを考えることを目的とし、旭川で活躍されている方をお招きしての講演を企画しています。今年度は、ガーデニングの聖地として有名な上野ファームの上野砂由紀(さゆき)先生を講師としてお迎えし、12月6日「花ひらく可能性」というテーマでお話をいただきました。
上野ファームは、360度を水田に囲まれた射的山の麓にある4千坪の大きなガーデンです。かつては代々続く米農家でした。お米の個人販売を始めたことが転機となり、お米を買ってくださる方へのおもてなしの気持ちから、上野先生のお母さまが田んぼのあぜ道に色鮮やかなルピナスを植え、これがガーデンづくりの一歩となりました。
上野先生は、海外で何かをしたいというお気持ちからアパレル会社を辞めて、ガーデニングの本場であるイギリスに留学されます。宿根草を使ってデザインするイギリスの庭の美しさに魅せられ、帰国後、ご家族とともに庭造りを始められました。大きな円を4つのブロックに分けたサークルボーダー、左右対称に同じ花が植えられるミラーボーダーなどイングリッシュガーデンの知識を活かした庭を作っていきました。他方、道外からいらしたお客様から北国の花の美しさについて教えてもらったことが契機となり、北海道の風土や気候で育つ山野草を取り入れ、北国の植物を季節によって楽しめる現在の「北海道ガーデン」となっていきます。また、花の美しさは、人との縁を結びます。上野先生は、倉本総さん脚本のテレビドラマ「風のガーデン」(2008年)の舞台となったガーデンのデザインと制作に携わることとなります。ドラマの中で人生や人の生と死は、咲いては枯れるを繰り返す花や庭と結び付けて描かれました。
講演では、美しい花が奏でる四季の写真を紹介いただきました。厳しい冬を超え雪の中から芽吹いてくるスノードロップ、春には水仙、エゾエンゴサク、カタクリ、クリスマスローズ、チューリップが咲き、白樺との共演も見られます。初夏になるとバーバスカムなど一気に色とりどりの花が芽吹くとともにバラの花が華やかさを添えます。秋になると紅葉を背景にアスターなどシックな雰囲気を楽しむことができます。さらに、上野ファームには様々なスポットがあります。射的山の頂上には、ポスターにも使用されている虹色の椅子があり、田園風景を眺められるようになっています。また納屋をリノベーションしたNAYA caféでくつろぐこともできます。
上野先生は、花や庭は人をつなぎ、人を笑顔にし、人を元気にする力があること、加えて、種が落ちて咲くまで8年かかるオオウバユリから、人生にはすぐに咲かないものと咲くものがあるので、たくさんの種をまくことが可能性を広げることを伝えてくださいました。
講演後のアンケートでは、「お花も上野先生の生き方もとても素敵と感じた」「とてもリラックスできて贅沢な時間を過ごせた」「花が人との繋がりになること、癒しになることが分かった」「種をまいてすぐ芽が出るもの、長い年月をかけて芽を出すものがあるというお話を人生に照らし合わせて考え、諦めそうになる自分の経験や仕事に希望を持てる気がした」などの記載がありました。
雪解けから芽吹く山野草の静かな佇まい、可憐さとともにあるいのちの強さ、短い開花の潔さとそれゆえに感じられる季節の移ろい、同じ時季に同じ場所で出会える期待と喜びなど、山野草や宿根草の魅力を十分に感じることができました。同時に、人生、生き方などを考える機会になりました。どうしても閉塞感を感じてしまう今、心温まる時間でした。上野先生、素敵なお話をありがとうございました。