「令和6年度第1回 地域を紡ぐ看看連携セミナー」を実施しました

 令和6年8月30日(金)に今年度第1回「地域を紡ぐ看看連携セミナー」を開催いたしました。今年度から対象者の拡大を図り、地域の病院からも参加を募りました。会場参加、オンライン参加のハイブリット形式で実施し、大学病院から19名、地域からは22名の計41名にご参加いただきました。
 今回は「その患者さん、家に帰っても大丈夫?」をテーマとし、大学病院から在宅移行した創傷処置のある患者さんの事例検討と、その内容を加味したミニレクチャーを企画いたしました。まずは、旭川医大病院 皮膚・排泄ケア認定看護師特定行為研修修了者の餌取将臣看護師よりミニレクチャーをしていただきました。続いて、病棟と在宅の窓口の役割を果たす患者総合サポートセンター療養生活支援部門 内田瑠美看護師に事例を説明していただき、グループに分かれて事例検討後、全体で共有しました。最後に、この事例に深く関わっておられた、訪問看護ステーション咲桜 菅原千津子所長にご感想をいただきました。
 以下、内容をご紹介いたします。

ミニレクチャー「在宅での創傷管理~スキンケア用品~」
 在宅での創傷管理は、限られた物品と様々な職種の人が関わること、生活をしながら家族や本人がケアを行うため、病院でのケアとは異なります。その対象者と話し合いながら目標を定め、苦痛を取り除き生活の質の向上を図ることが大切であると講義をしてくださいました。具体的な内容として、創傷の分類と機序、創洗浄の重要性・方法、疼痛の対処、浸出液のコントロールと安価な物品の選択について、わかりやすくご説明いただきました。事例においても、支援者の不足や経済的な課題を背景に様々な生活の支障をきたし、病院と同じような創傷管理をすることができない状態でした。そのため、本人と話し合い、できる範囲で方法と目標を決め、少しでもQOLが向上するような関わりが必要であると改めて考えることができました。今回、教えていただいた基本的な知識を、在宅ケアに活用していただければ幸いです。

事例紹介「創傷処置と生活障害を抱えた患者さんの情報不足での在宅移行について」
 創傷治癒が不十分で入院継続が必要と判断される患者さんが、妻の病気や経済的な理由で「家に帰りたい」と強く希望されました。処置はもちろん一人での生活は難しく、妻は入院中でケアしてもらえる人がいません。このような中で、訪問看護師に引継ぎし家に帰ることになりました。家族機能が不十分でケアの継続が難しいと予測される患者さんに対して、病院と在宅でのどのような情報共有が必要だったかについて検討をしていただきたい。

グループワーク後の全体シェア
 共有すべき情報は、本人の傷に対する考え、病気の受け止め・理解の程度、奥さんへの思い、お金の心配、不安なことなど、本人がどのような気持ちでいるのかということでした。医療者と本人との対立に関しては、本人の意図を組んだかかわりで信頼関係を構築することや、何かあったら病院で対応が出来るといった安心感が必要であったと意見がありました。また、訪問看護師さんからは、もし精神的な疾患の問題であるならば、その治療の必要性や、処置が悪化した時にどのような対処があるのかを知りたいという意見もありました。そして、難しい患者さんでも、家に帰ると表情が変わる人も多く、在宅でカバーできることもあると、在宅看護の強みに関しても話がありました。最後に、本セミナーの司会で地域看護職部門佐藤部門長より、グループワークの意見を踏まえると、入院中は「退院したい」という本人の強い気持ちに医療者は左右されたが、その裏にある本当の気持ちに迫ることが必要な看護であったと振り返りました。

まとめ
 ミニレクチャー講師 認定看護師特定行為研修修了者の餌取将臣看護師より、難しい症例であったにもかかわらず、活発な意見交換でした、と事例検討会の様子について感想がありました。さらに、一連の経過を振り返った時に、病院で見ていた患者さんへの視点が変わり、今後のかかわりに活きていくのではないかと在宅の視点を踏まえる効果についてお話されました。
 訪問看護ステーション咲桜 菅原千津子所長より、病院からの情報提供は十分ありました。しかし、かかわりの難しい症例であり、妻への心配や妻がいないことの生活基盤の不安定さが、本人の性格特性と相まって、心細くても素直な感情を伝えられず葛藤があったのではないかと推察されていました。そしてご本人がどうして受け入られないのかを推し量り、本人が受け入れられることに折り合いをつけながら関係性を築くことが大事であったと感想を述べられていました。

セミナー直後アンケートの企画評価
 今回のセミナーでは、地域の病院の看護職も参加対象とし、12%の参加がありました。初回参加者は67%でセミナー全体の満足度としては、「満足」「おおむね満足」がほとんどでした。しかし、「事例の理解に時間がかかった」「事例が抽象的」「焦点化は不十分」など事例に関する意見がありました。また「もう少し深めたグループワークができると良い」「質問の回答をスムーズにしてほしい」など、運営に関する要望もありました。Zoomに関するトラブルもあったため、参加方法の適切な案内も次回はアナウンスして参ります。これらの意見を参考に、今後も大学病院と地域で活躍する看護職がつながり、看護を必要とする対象者に望む暮らしがもたらせられるように、共に学んでまいりたいと考えます。
 次回は災害に関するテーマです。多数のご参加をお待ちしております。

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