令和8年2月20日(金)オンライン開催
〇はじめに
本セミナーは、自治体で働く保健師の地域の枠を超えた学びのネットワーク作りを目的としています。開会挨拶では旭川医科大学看護職キャリア支援センター地域看護職連携部門 佐藤こずえ部門長より、第77回北海道公衆衛生学会シンポジウム「北海道における健康危機管理の挑戦」でご発表されたオホーツク圏域における災害対策訓練の実際について、特に保健師に焦点を当てた研修の実践報告を通して、災害に備える方策を共有し、波及させる機会としたいことが伝えられました。
〇実践報告「自治体による災害対策訓練の実際:災害時保健活動における演習を中心に」
講師 北海道北見保健所 健康推進課長 北山 明子氏
災害対策訓練の経緯として、令和6年度の日赤合同訓練を契機に、令和7年度にオホーツク総合振興局3保健所(網走・北見・紋別)が合同で、災害時保健活動の演習を通した研修を企画実施した取り組みについてご報告いただきました。実践報告の概要についてご紹介いたします。
令和6年度の訓練には、保健所・市町村約90名が参加し、災害対策に取り組む機運が高まったとのことです。一方、災害時保健活動の流れと保健師の役割理解が漠然とし、避難所アセスメントと健康課題の関連づけが弱いといった評価から、令和7年度は保健師を対象に絞り「オホーツク圏域災害時保健活動研修会」を企画し約80名の参加となりました。
研修内容は、講義で災害時の保健活動の基本を学び、演習を実施しています。演習では、大規模地震の被害を想定し、災害発生時の組織図も設定したうえで、避難所(保健師等活動チーム)の数や規模の設定、健康相談表や避難所日報を活用して、事例から健康と環境の課題を整理するなどの工夫がなされました。本部の演習では、被災市町の保健福祉班と、保健所が担う地域調整本部の役割を体験しました。演習のイベントカードでは、検討の制限時間を設けることで緊迫感を体感しながら、実践場面をイメージして判断力を磨き、避難所と本部の連携調整等についても意見交換が行われました。研修の工夫点として、事前の調整や演習事例の工夫などが紹介され、成果として、基本知識習得と災害場面のイメージ化、活動スキル向上、有事の組織体制や部署連携を検討する機会となったことが報告されました。
今後の方向性として、災害時のシミュレーション経験の積み上げ、防災部署との課題共有、広域連携等の重要性などが示されました。
〇質疑応答・全体会
本学看護学科公衆衛生看護学の藤井智子教授の進行のもと、講師の北山課長への質疑と意見交換が行われました。北海道内の保健所と市町村で働く多くの保健師が各地域からオンラインでつながり、熱く議論されました。保健所から「災害の初動訓練をしているがなかなか難しく、工夫したことを教えてほしい」、「演習の事例をどんな風に作成したのか知りたい」と研修企画に関する質問がありました。災害の多い市町村から「役場全体で災害訓練は毎年実施しているが、保健師の役割が明確でない面がある。演習がとても新鮮で、実際のシミュレーションの大切さを感じた」という感想もありました。
講師の北山課長から「事例は3保健所で分担して作成した。年齢や健康状態、薬、生活障害などの概略を健康相談表に載せて、それをもとにアセスメントしていけるようにした。外国人など配慮が必要な人、色々な事例を作ることで想像できればいいと思う」など経験をもとにコメントいただきました。
藤井教授からは「訓練で時間内に話をまとめることの意図は、災害の緊迫感をイメージするためであり、演習の中で考えるためのヒントを示しておくなど企画力のすごさを感じた。地域をよく知る保健師として、日頃の連携も大事に、いつ起こるかわからない災害に具体的に備えていく重要性を感じた」とコメントがあり、北海道各地でこのような災害対策研修の波及が期待されます。
<まとめ:旭川医科大学看護職キャリア支援センター 地域看護職連携部門長 佐藤こずえ>
本セミナーは100名近い申込をいただき、災害はいつ起きるかわからない、皆さんが常に気がかりで多くの方が参加してくださったと思う。地域をよくわかっていて、住民一人一人を知っている保健師は、地域住民にとって大切な存在で、役割はすごく重大と感じたお話でした。私は看護師として病院で患者さんの一部に関わる立場だが、保健師はその人が何を大事にしているか、長期化するかもしれない災害の中で何を支援すると、その人が頑張ってその期間を乗り越えられるのか、きめ細やかな介入ができる方の集まりだと思う。ぜひ本日の実践報告を参考に、地域住民がどんな時でも元気に過ごせるように支援していただけると嬉しいと思いました。本日はご参加ありがとうございました。
<今後に向けて:アンケートより> ・・・・・・・・・・・・・・・・・
本セミナーは当日72名のご参加があり、オンデマンドも多数の方にご視聴いただいております。
当日アンケートの回収率は51.4%でした。開始時間や所要時間はほぼ全員がよいと回答され、業務時間内に受講できてよいとのご意見もいただきました。参加動機は「合っていた」「おおむね合っていた」を併せ97.3%、セミナーが「満足」75.7%、「おおむね満足」24.3%と大変好評でした。セミナーが今後の業務に「活用できる」48.6%、「おおむね活用できる」51.4%であり、活用可能な内容であったと思われます。
自由記載では、「他管内の状況を知る機会があまりなく貴重な機会だった」、「研修内容を知りたかったが、事前準備の説明もあり、全体が大変よくわかった」、「実践に近い形での演習または訓練の必要性を感じた」、「とてもわかりやすく、モチベーションが上がった」、「少しでも係内でできることから始めたい」などの声があり、災害対策のイメージ化や研修企画への活用、自組織の業務への反映を前向きに検討する機会となったことがうかがえました。
今後希望するテーマは「実践報告」が最も多く、実際の取り組みから学びたいニーズの高さが感じられました。次いで、家庭訪問や事例管理などの個別支援の講義への要望が寄せられ、地区活動の実践を聴きたいという声もいただきました。これらのご意見を参考に、今後も大切にしたいマインドやスキルを自治体の枠を越えて学び合う場を次年度も継続していきたいと考えております。
開催の様子(R8.2.20旭川医科大学)
