「令和5年度第3回 地域を紡ぐ看看連携セミナー」を実施しました

 令和5年12月21日(木)に今年度最終回となる、第3回「地域を紡ぐ看看連携セミナー」を開催いたしました。会場参加、オンライン参加のハイブリット形式で実施し、大学病院から13名、地域からは17名の計30名にご参加いただきました。
 今回の企画は、「病院から在宅の最期までがん患者とその家族がよりよく生き抜く支援」をテーマとし、地域から事例提供と、その内容に応じたミニレクチャーをしていただくこととしました。まずは、「(一社)北海道総合在宅ケア事業団 紋別地域訪問看護ステーション」所長 訪問看護認定看護師高橋亜希子様よりミニレクチャーを、続いて「ふらの訪問看護ステーション青いとり」所長蝶野奉恵様から事例提供をしていただき、グループワーク後、全体で共有しました。
 以下、内容をご紹介いたします。

ミニレクチャー「訪問看護における終末期看護の実際~意思決定を支え支援する~」
 紋別地域は、高齢化に加えがんで亡くなる方が多いにもかかわらず、医療偏在の影響を受け、終末期において地域住民の望む生活や最期を過ごすことが難しいといった現状があります。その中で訪問看護師が終末期ケアで重要に考えていることは、意思決定支援です。死を受容するためには希望が原動力となり、自分で決めたことが生きる糧になります。二つの事例を紹介します。愛犬とできるだけ過ごしたい、人に迷惑をかけたくないという希望の中、最終的に病院という意思決定をして息を引き取った高齢者。遺言書を家で書きたいという希望のもと、家で看取ることができた高齢者。息を引き取る場所の違いはありますが、どちらもその人や家族の揺れる気持ちの中、自分たちで決めていくことでその人らしい最期を迎えられた事例でした。そのためには、病院から在宅の一方向ではなく、在宅から病院へ双方向で思いをつなげることがとても大事です。

事例紹介「終末期患者が残された時間をその人らしく過ごすための在宅と病院の連携」
 病院で積極的な治療ができなくなった終末期の患者さんの在宅移行後に、病状の受け止め方や創処置の仕方に関する情報が十分ではない状況がありました。残された時間をその人らしく過ごすためには、病院と在宅でのどのような情報共有が必要だったかについて検討をしていただきたい。

グループワーク後の全体シェア
 どのグループでも、必要な情報は医師からどのように聞いて、それをどう受け止めたのかということでした。創処置に関しても情報が十分であれば患者さんの苦痛を緩和できた可能性があることが予測されました。しかし、病院では受け止めを十分に確認できない、または確認してもつなぎきれないこともあります。そのため、訪問看護師の方でも何度も隙間を埋めるように、連絡やアプローチができるとよい。退院時の情報共有は大事であるが、時間や感染症等の問題があればオンラインを活用できたらよいといった意見がありました。様々な意見がある中で、訪問看護師さんの方から「訪問看護師から医療者間、本人とつないでいきたいので、これからも病院にお付き合いしてほしい」と、よりよい連携を望む言葉をいただきました。

まとめ
「ふらの訪問看護ステーション青いとり」所長 蝶野奉恵様より、“終末期ケアにおいて、希望が原動力になること、訪問看護師からもっと病院と関わること、患者さんの悲しみの声には「どうしてそう思うのか?」ともっと深く聞くといった助言をいただいたので、今後に活かしたい”と感想をいただきました。
「紋別地域訪問看護ステーション」所長 高橋亜希子様より、訪問看護師側からのアプローチの重要性や、事例提供者への慰労と肯定的なフィードバックがありました。そして、終末期看護は、上手くいかないこともあり難しく、迷い悩むことも多いけれども、患者の思いや願いをかなえるためにこれからも連携していきたいと講評をいただきました。

セミナー直後アンケートの企画評価
 セミナー全体の満足度としては、「満足」「おおむね満足」がほとんどでした。大学病院側のコメントとしては「訪問看護師さんの実際の声を聞き、大事にしていることが分かったので、合同カンファレンスの時に活かしたい」「病気の受け止めをしっかり把握しつなぐことは大切なこと」との声をいただきました。訪問看護側からは「大学病院の看護師さんたちの考えを知ることができた」「大学病院さんと話し合う貴重な機会」とのコメントをいただき今後の連携に良い影響があることが考えられました。さらに、“本セミナーの内容が今後活用できますか?”の問いに関しても、ほとんどの参加者が「活用できる」と回答していただき、企画側としては非常に嬉しく思っております。 
 今年度最後の看看連携セミナーでしたが、次年度も皆様の参加を心からお待ちしております。

受講後アンケートの結果

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