耳鼻咽喉科豆知識

睡眠時無呼吸症候群 睡眠中の呼吸の以上について

頭頸部癌の種類

4. 中咽頭癌、下咽頭癌

 食べ物や空気の通り道を咽頭といいます。扁桃(へんとうせん)などのある咽頭のつきあたりにできる癌を中咽頭癌といいます。咽頭の下の部分の食べ物と空気の分かれ道の付近にできる癌を下咽頭癌といいます。アルコールをよく飲む人に多いと言われています。

症状

食事の通りが悪い、
飲み込みが悪い、
飲み込む時に痛みやしみる感じがある、
血痰が出る、
息が苦しい、
首がはれてきた、
など

検査

視診:喉頭鏡という鏡を用いて診察しますが、詳細な診察には内視鏡検査が必須です。
触診、超音波検査:頸部に転移したリンパ節がないか触診します。
単純X線(レントゲン)検査:上記のような症状を訴えて来院された患者さんに対して、まず行う画像検査です。
CT検査、MRI検査:深部での腫瘍の広がり、頸部や他臓器への転移の有無を調べます。
核医学検査(シンチグラム):他の臓器への転移(遠隔転移)がないかを調べます。
生検:主に内視鏡下に癌の一部を直接採取し、癌の組織型(性質)を調べます。全身麻酔下に行うこともあります

治療

 中咽頭癌では放射線療法と抗癌剤による化学療法、下咽頭癌ではさらに手術療法を組み合わせた治療法が主体になります。下咽頭癌でも早期では放射線と化学療法のみの治療となることもありますが、進行例が多いためたいていは手術療法が行われます。また呼吸困難を認める場合には、全ての治療に先立って気管切開術を行うことがあります。手術治療は咽頭・喉頭を頸部のリンパ節とともに全て摘出し、新しい食事の通り道としてお腹から腸管を移植します。この際に顕微鏡下の微小血管吻合というテクニックが必要になります。またこの手術によって発声をつかさどる喉頭は無くなり、呼吸をする穴が頸部に開いている状態になります。また最近進行癌症例を中心にして、超選択的化学動注療法が行われるようになってきています。

5. 喉頭癌

 喉頭(声を出す部分)にできる癌です。喫煙者は、非喫煙者に比べ明らかに喉頭癌が発生する確率が高いと言われています。

症状

声がかれて良くならない、
血痰が出る、
息が苦しい、
首がはれてきた、
など

検査

視診:喉頭鏡という鏡を用いて診察しますが、詳細な診察には内視鏡検査が必須です。
触診、超音波検査:頸部に転移したリンパ節がないか触診します。
単純X線検査:適宜行います。
CT検査:癌の広がり、頸部や他臓器への転移の有無を調べます。
核医学検査(シンチグラム):他の臓器への転移(遠隔転移)がないかを調べます。
生検:主に内視鏡下に癌の一部を直接採取し、癌の組織型(性質)を調べます。全身麻酔下に行うこともあります。

治療

 喉頭癌は発生する部位によっては早期から症状が出ます。早期癌の場合にはレーザーによる切除手術のみでよい場合もありますが、たいていは放射線治療も必要になります。進行癌の場合には喉頭摘出術が行われます。が多いためたいていは手術療法が行われます。この手術によって発声をつかさどる喉頭は無くなり、呼吸をする穴が頸部に開いている状態になります。また呼吸困難を認める場合には、全ての治療に先立って気管切開術を行うことがあります。

6. 甲状腺癌

 甲状腺は図4のように前頸部で気管の前面に位置し、甲状腺ホルモンを作っている臓器です。甲状腺腫瘍は一般的に男性より女性に多いと言われていますが、男性の甲状腺腫瘍には癌が多いとされています。自覚症状に乏しく、検診などでたまたま発見されることも少なくありません。

【図4】
図4

症状

首(のどぼとけの下)がはれてきた、、
声がかれてきた(嗄声)、
など

検査

視診、触診:癌の大きさや硬さ、周囲への広がりなどを診察します。癌によって、反回神経という発声に関わる神経が障害されることがあるため、喉頭鏡という鏡によって必ず喉頭の診察も行います。
超音波(エコー)検査、CT検査:癌の深部での広がり、頸部や他臓器への転移の有無を調べます。
生検:エコー下に注射器の針を直接はれている部分に刺して、中の細胞を吸引して採取します(針生検)。これにより癌の組織型(性質)を調べることができます。

治療

 甲状腺に発生する癌(甲状腺癌)に対する治療は、外科的手術が第一選択です(甲状腺外科手術)。甲状腺癌は他の部位の癌と比較して悪性度が比較的低いため、手術のみでの根治が望めます。ごくまれに進行癌や肺などへの転移例に対して放射線治療を行うことがあります。

7. 唾液腺癌

 耳下腺や顎下腺、舌下腺などの唾液腺(唾液を作る臓器)にできる癌です。耳下腺の内部には顔面神経という顔を動かす神経が走っており、癌が顔面神経に浸潤すると麻痺が起こります。

症状

首(耳やあごの下)がはれる、または痛みがある、
片方の顔が動かない(顔面神経麻痺)、
など

検査

視診、触診:癌の大きさや硬さ、周囲への広がりなどを診察します。
超音波(エコー)検査、CT検査、MRI検査:癌の深部での広がり、頸部や他臓器への転移の有無を調べます。
核医学検査(シンチグラム):他の臓器への転移(遠隔転移)がないかを調べます。
生検:エコー下に注射器の針を直接はれている部分に刺して、中の細胞を吸引して採取します(針生検)。これにより癌の組織型(性質)を調べることができます。

治療

 唾液腺腫瘍の治療は、手術治療が第一となります。腫瘍の組織型によっては、術後に放射線治療や、抗癌剤による化学療法を追加することもあります。