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切らずに治す頭頸部治療
頭頸部に発生する癌は、喉頭癌、咽頭癌、鼻副鼻腔癌などが代表的です。
頭頸部は、発声、嚥下、呼吸機能などの生命維持、生活の質(QOL)に非常に重要な臓器、それを支配する神経、血管が存在します。また鼻副鼻腔癌などは美容面の影響も問題になります。従来は癌を取ることを優先しこれらの機能を犠牲にせざるえないことが殆どでした。しかし近年は、これらの重要な機能を出来る限り保存した上で癌治療を行うことが重要となっております。当科では2003年より放射線治療と超選択的動注化学療法を用いた頭頸部癌治療を行っております。これは、癌の栄養血管(末梢の動脈)にカテーテルを進めて、癌の非常に近くで高濃度の抗癌剤を投与する治療です。またそれと同時に、抗癌剤の中和剤を静脈より投与することで、他の臓器への副作用を軽減するようにします。従来の抗癌剤の治療は、静脈から全身に投与し、その一部が癌に到達していましたので、癌のみならず正常な腎臓、肝臓、骨髄等の臓器の副作用も多く出現します。
しかしこの超選択的動注化学療法では、そのような副作用の出現が少なく、かつ癌には高濃度の抗癌剤の投与が可能となります。よって従来の治療では治すことが出来なかった進行癌を切らずに治療が可能となりました。
当科では2012年までに約200症例をこの放射線併用超選択的動注化学療法で治療を行っており、良好な生存率、臓器温存率が達成出来ております。