トップページ 耳鼻咽喉科豆知識 / 人工内耳
人工内耳は高度難聴者が「聞こえ」を回復するための最新の治療法です。補聴器をつけても、言葉としてほとんど聞きとれない方、重度の難聴者が対象となります。かつては中途失聴者の方を対象に行なっていましたが、最近では生まれつき聴力がない先天性難聴の子供にも行なわれるようになりました。
高度の難聴に病んでいる方々が、今までに世界の各国で9万人、日本では約3,000人、人工内耳の治療を受けて聞こえを回復し、現在では高度難聴者に対する治療法として、安全でかつ極めて効果的な治療法として確立されています。旭川医科大学耳鼻咽喉科でも2000年4月から人工内耳治療を始めております。
聞こえの仕組み
人工内耳についてお話しする前に、ヒトはどのようにして音や言葉を聞くか、「聞こえの仕組み」についてご説明いたします。
耳は外耳、中耳、および内耳の3つに大きく分けられます。外耳には耳たぶ(耳介)と耳の穴(外耳道)があります。中耳の中には鼓膜と3つの小さい骨があります。鼓膜についている骨を「つち骨」と呼び、次が「きぬた骨」、そして内耳についている骨が「あぶみ骨」です。
周囲から集まった音は耳介から耳の穴(外耳道)を通って、中耳の入り口にある鼓膜を振動させます。鼓膜がゆれ動くと3つの骨がふるえて、音が内耳に伝わります。内耳はカタツムリの形をしていて「蝸牛」ともいいます。蝸牛の管は前庭階、蝸牛管、鼓室階の3階構造になっています。蝸牛管の中にはリンパ液という水がいっぱい入っていて、蝸牛の入り口まで伝わった音のゆれはリンパ液に波を起こします。それにより聴覚細胞が刺激され、この細胞の中で電気が生じ、聴神経に電気的信号が伝わります。その情報が聞こえの神経(聴神経)を通って脳に伝わり、音を感じることになります。
難聴の原因にはいろいろありますが、補聴器をしても言葉が聞こえない方のほとんどは、この蝸牛にある聴覚細胞に障害があります。しかし、その先にある聴神経や脳には問題ありません。人工内耳は蝸牛に細い電極を挿入し、直接聴覚神経を刺激することによって音や言葉として感知させる治療法です。