耳鼻咽喉科豆知識

内視鏡補助下甲状腺手術

内視鏡補助下甲状腺手術

 甲状腺疾患に対する手術は、首の中央に10〜15cm程度の皮膚切開をして行うのが一般的です。しかしながら甲状腺の病気は女性に多く、首の常に見える場所に残る手術の傷は美容上切実な問題となることがあります。そこで当科では、首に傷を残さない内視鏡補助下甲状腺手術(Video-assisted neck surgery, VANS法)を2009年より導入しています。これは、開襟のシャツで隠れる前胸部の外側に3cm程度の皺に沿った皮膚切開を行い、首には内視鏡を挿入する5mmのわずかな切開だけを作成します。この切開部位より皮膚を器械で持ち上げ、主に超音波凝固切開装置を用いてハイビジョンモニタ下で行っております。
現在の甲状腺内視鏡手術の適応は、
 1)長径50mm程度までの良性結節性甲状腺腫
 2)頸部リンパ節転移のない10mm以下の乳頭癌
 3)CTで容量50ml以下のバセドウ病
としております。2012年末までに約90例を経験しており、合併症の発生頻度は通常の外切開と同程度の頻度であるという安全性が確認されました。手術時間は片側の手術の場合で2時間から2時間半程度であり、これは通常の手術より30分程度長い時間です。また入院期間は通常の甲状腺手術は術後1週間程度の入院期間ですが、内視鏡手術の場合はほぼ全例で術後2日目に退院可能です。

VANS