従来胸の真ん中を約30センチにわたり大きく切開し行っていましたが、当科では2014年4月より胸腔鏡を用いて右乳房下に約6センチの切開で僧帽弁の形成術を行っています。傷が小さく手術も従来法に比べて短時間で終わるため、手術後の回復も速く、術後約1週間で退院可能です。高度な技術が要求されるため、まだ日本ではあまり普及していませんが、2014年3月に当科に赴任した紙谷はドイツで約10年間この技術に取り組んでおり、ドイツでもトップクラスの成績を収めてきました。
大動脈弁狭窄症は最も頻度の多い弁膜疾患であり、重症となれば弁を取り換える弁置換術が必要になります。当科では約6-8センチの傷でこの手術を行っています。胸の真ん中にある胸骨という骨を部分的に開きますが、傷が小さいため術後の痛みも少なく、より早い社会復帰が可能です。
胸部大動脈瘤は破裂すれば命取りとなりますので、大きい動脈瘤には従来人工血管置換術が行われてきました。従来法の手術も最近はだいぶ成績が向上してきたとはいえ、体を大きく切り開き、人工心肺を使って行われ、出血・脳梗塞や死亡の危険もいまだ大きいのが現状です。近年カテーテルを用いたステントグラフト(金属製の骨組みで裏打ちされた人工血管)により胸部大動脈瘤を治療する技術が急速に進歩しており、我々は道北地区のトップランナーとして数多くのステントグラフト治療を手がけています。この手術は約1時間で終了し、輸血もほとんど必要ありません。約1週間で退院、社会復帰が可能です。
左乳房下を約6センチ切開し、一番質の良いバイパス材料である左内胸動脈を心臓の一番大切な血管である左前下行枝につなぎます。通常左前下行枝のみに問題がある場合に行われますが、循環器内科で行われる血管内治療と組み合わせることにより、たくさんの血管に問題がある場合にも施行可能です。やはり、早期退院、早期社会復帰が可能です。
心臓の周りを取り巻く冠状動脈が狭くなったり完全に詰まったりした場合に、冠状動脈のバイパス術が必要となることがあります。これは、狭くなったところより遠いところに新しい血液の流れ道を作る手術ですが、足の静脈をバイパス材料として使用すると、10年後に約半分が再び詰まってしまいます。我々はより長持ちする動脈をたくさん使ったバイパス術で、より優れた手術後の生活の質を目指します。
冠動脈3枝バイパス術後
class=”ml-10″特にマルファン症候群において、大動脈の付け根(基部)が膨れ上がり、それによって大動脈弁の逆流が生じる病気があります。従来では大動脈基部と大動脈弁を一緒に取り換えるベントール手術が標準治療でしたが、当科では大動脈弁を直したうえで大動脈基部を人工血管で取り換えるデービット手術を行っています。高度な技術が要求されるため、まだあまり普及していませんが、当科の紙谷はドイツで約100例この手術を行っており、帰国後もすでに6例全例成功させています。
ステントグラフト内挿術は画期的な低侵襲治療ですが、大動脈の形によってはやはり従来通りの手術が必要となることもあります。当科では手術時間の短縮を図ることにより体に優しい大動脈弓部置換術を心がけており、従来手術適応とされなかった80歳以上の患者様も治療可能となっております。
心臓腫瘍、特に頻度の多い左房粘液腫は、脳塞栓症の原因にもなり、また大きくなると僧帽弁を塞ぎ、突然死の原因にもなりますので基本的には手術の対象となります。我々の施設では心臓腫瘍に対しても胸腔鏡を使った低侵襲手術が可能です。やはり、早期社会復帰が可能です。
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