令和6年9月26日(木)オンライン開催
参加者:136名
〇自治体保健師キャリア支援セミナーの目的
本セミナーは、自治体で働く保健師のキャリアを支援する学習と地域を超えたネットワーク作りを目的として開催しました。
開会挨拶では旭川医科大学看護職キャリア支援センター長 升田由美子教授より、H31年3月センターの立ち上げから、大学と病院、さらには地域の保健医療福祉機関との組織横断的な連携・協力を深め、社会のニーズに合わせてキャリアに関する継続した支援を目指していることが伝えられました。
今回のセミナーは、看護職全体のキャリア支援の取り組みを自治体保健師へと広げる初の試みとなりました。
〇保健師活動の原点となる家庭訪問
本学では自治体の研修などへ派遣講座として講師を派遣する事業を行っております。保健師の研修では、家庭訪問をテーマとした依頼が最も多く、実習指導や新人教育においても必須のスキルであり、第1回のテーマといたしました。講演「保健師が行う家庭訪問―原点となる個別支援能力」については、本学看護学科公衆衛生看護学の塩川幸子准教授が担当しました。
主な内容は、保健師が行う家庭訪問とは、アセスメントの柱、保健師の看護過程、家庭訪問の振り返りのポイントです。
保健師が行う家庭訪問は3つの特性があります。①困っている人・助けを求めている人への訪問、②つながり・顔売り訪問、③深く学ぶ訪問です。そして、地域で暮らす生活者への家庭訪問におけるアセスメントの柱は、健康と生活、家族の視点を連動させ、時間軸で対象者の生活歴をふまえて現在の状態を判断し、未来を予測しながら支援することです。一人ひとりの生活は多様で個別性が高い中、支援者として寄り添う姿勢が大切です。
保健師は一人で家庭訪問することが多く、訪問場面での再アセスメントに悩むことも多いと思います。訪問後の職場での振り返りの際は、事例担当保健師が訪問場面を言語化しやすいよう、話しやすい雰囲気と質問を通してともにアセスメントを深めていく現任教育がとても重要になります。

〇グループワーク・全体会
本学看護学科公衆衛生看護学の藤井智子教授の進行のもと、質疑・意見交換を行いました。講演の感想や日頃の家庭訪問に対する思いを語らう時間としました。北海道内の市町村と保健所で働く多くの保健師が各地域からオンラインでつながりました。感想や質問を一部ご紹介いたします。
「家庭訪問に来てほしいと言う人には積極的に行けるが、自ら求めていない人に行けていないことが多い。どのような人に訪問すべきか所属としても考えていかなければと感じた」と対象や優先度を考える発言がありました。また、「新人に指導する際、支援とおせっかいの違いをうまく伝えられないと感じる」という悩みや「保健師自身の看護観や価値観が支援に反映されるという講義から、よかれと思って自分の考えで押し付けないよう自覚する声かけができたらよい」という気づきも語られました。自治体保健師は住民から信託を受けている公務員であり、契約関係がなくても支援が必要と考えられる人にアプローチする家庭訪問ができます。関係づくりが難しい人であっても粘り強く、相手に合わせて関わり、つながりが切れないようにする匙加減が高度で複雑な技術であることが共有されました。さらに、「地区を受け持ち家庭訪問を行う保健師ならではの役割を研修企画に活かしたい」、「学生や新人指導に生かしていきたい」と今後の活動に反映させる声もありました。ご参加ありがとうございました。


<今後に向けて:アンケートの企画評価>
今回のセミナーは、自治体保健師136名と多数のご参加がありました。アンケート回収率は48%で、セミナーの満足度は、「満足」「おおむね満足」と回答いただきました。
感想として、「自分の事例を思い起こしながら、聴くことが支援に繋がることを講義で学べた」、「具体的なアセスメントや振り返りの視点が学べた」、「個別支援を次に繋げていく視点も忘れてはいけないことを再認識できた」、「同僚や先輩と事例について考える際のポイントが整理できた」等の声がありました。家庭訪問の大切さを感じ、日々の業務に活かせるとの回答が多く寄せられました。
グループワークは、参加者が多数であったために運営上、時間を短縮し、全体会での意見交換を中心としたため「もう少し話したかった」との声も寄せられました。オンラインのメリットを活用し北海道各地の保健師がつながれる機会として、ニーズをふまえた運営方法を検討していきたいと思います。
今後希望するテーマは、保健師の看護過程、事例管理など個別支援に関するものが上位を占め、保健事業の企画評価やキャリアに関する内容も挙げられました。また、病院勤務の看護師は退院後の患者の様子を十分に理解しているとは言い難い部分があります。北海道内の市町村や保健所で働く多くの保健師の意見交換は、患者が地域でどのように生活しているかが伝わる内容でした。
これらのご意見を参考に、今後も地域に根差して活動していく上で大切にしたいマインドやスキルを自治体の枠を越えて学び合う場を創っていけたらと考えております。ご参加をお待ちしております。
