耳鼻咽喉科豆知識

鼓室形成術

鼓室形成術

鼓室形成術の対象となる病気も多岐にわたることから、ひとえに鼓室形成術といっても、その病態によって多くの手術方法があります。手術の方法は、問題のある音の伝わりをどのように、どのような材料を用いて再建するかで分類されています。

一般に音の伝わりは、自分自身の耳小骨や、耳介周囲の骨や軟骨を採取し、その形を整えて使用します。人工の耳小骨や鍵状のワイヤーがついた特殊な人工耳小骨を用いることもあります。鼓膜の穴は、自分自身の筋肉の膜や、結合組織を利用して再建します。またどこの皮膚を切って耳の中に到達するかによってなされる分類もあり、耳の中からアプローチする方法は耳内法(耳の中にだけ傷が入る場合と耳の前の方に小さな傷が入る場合があります)、耳の後ろからアプローチする方法を耳後法といいます。

少し専門的になりますが、耳の後ろの骨の中は蜂の巣のように小さな部屋に別れていて、そこに病変があることも多いのですが、その骨の部屋をきれいに清掃する際に、外耳道の後ろ側の骨を削る方法と保存する方法があり、これによっても分類がなされています。

当科では全身麻酔で手術がなされ、眠っている間に終了します。顕微鏡を用いた細かい手術で、手術時間はその病態、手術の方法によって異なりますが、2〜3時間です。真珠腫性中耳炎のひどい場合には、1度目の手術では音の伝わりの再建は行わず、真珠腫の摘出に専念、半年から1年後に2回目の手術を行い、真珠腫の残存をチェックし、音の伝わりを再建することもあります。

鼓室形成術に起こりうる合併症として、めまい、耳鳴り、聞こえの低下、顔面神経マヒ、味覚異常、感染などがあります。もちろん病態によって異なりますが、頻度は高くなく、多くの方は、手術後1日で、問題なく歩いて普通の生活ができます。術後は病態によりますが、1〜2週間で退院となり、以後定期的に耳の中の診察、聞こえの検査がなされます。

鼓室形成術とは厳密には異なりますが、単に鼓膜に穴が開いただけなら、外来通院での処置や、局所麻酔の日帰り手術によって鼓膜をはる鼓膜形成術という方法があります。