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海外医療支援活動(口唇口蓋裂診療)(ベトナム)医学部医学科5年 石田 伊吹

海外医療支援活動(口唇口蓋裂診療)(ベトナム)医学部医学科5年 石田 伊吹

海外医療支援活動(口唇口蓋裂診療)(ベトナム)医学部医学科5年 石田 伊吹

海外医療支援活動(口唇口蓋裂診療)(ベトナム)

医学部医学科5年 石田 伊吹

〇はじめに
2026年3 月21 日から3月29日にかけて、日本口唇口蓋裂協会がベトナム社会主義共和国ヴィンロン省のグエンディンチュー病院にて実施した無償手術活動に診療隊の一員として参加しました。小児医療の領域に興味があり海外の医療体制を間近で見学できること、そして何度かバックパッカーとして訪れたことのある大好きなベトナムに、医療支援の形で貢献できる貴重な機会であると考え本活動への参加を希望しました。
今年度は、本学から歯科口腔外科医 2 名、麻酔科医 1 名、看護師 1 名、学生 2 名が診療隊に参加しました。

〇日本口唇口蓋裂協会について
日本口唇口蓋裂協会(JCPF)は、1992年1月1日に発足した口唇口蓋裂などの口腔領域の先天性疾患を持つ子供に対して援助活動を行っている国内最大級の非営利ボランティア協会です。
また、海外においても東アジアを中心とした地域において援助活動を行なっており、2003年4月末日、国連経済社会理事会の協議資格(ロスター)を得ております。

〇日程
・3/21:移動(成田→ホーチミン)
・3/22:手術室の立ち上げ・初診・検診
・3/23~24:手術見学
・3/25:小学校における歯科検診プログラムの視察、チャビン大学病院の見学
・3/26:手術、グエンディンチュー病院施設の見学
・3/27:手術、現地スタッフとの謝恩会
・3/28:診察、ホーチミン観光
・3/29:移動(ホーチミン→成田)

〇費用
参加費は 35 万円であり、旭川医科大学基金より 10 万円のご支援をいただきました。参加費には航空券代および宿泊費、朝昼晩の食事代等が含まれていました。参加費に加えて集合場所の成田空港までの交通費や保険料、お土産代などが別で必要となりました。

〇活動内容
・手術見学
手術日は午前7時から午後6時頃まで活動し、1日につきおよそ7例の症例に関わる機会がありました。3室の手術室を使用して同時進行で手術が行われており、各手術室を移動しながら複数の症例を見学することで、疾患ごとの特徴や術式の違いについて理解を深めることができました。さらに、一部の手術に参加し、術野を間近で観察させていただく貴重な経験も得られました。術前・術後には小児科医による診察にも同席し、患者の全身状態や回復状況を確認しながら、それぞれの患者に応じたきめ細やかな対応について学ぶことができました。特に印象に残っているのは、術後管理に用いる抗生剤の選択について、日本側とベトナム側の医師の間で意見が分かれていた場面です。ベトナム側の医師によれば、現地では子供が蜂に刺される機会が多く、その影響でアナフィラキシーを起こしやすい患者が少なくないとのことでした。そのため、日本では第一選択薬として用いられない薬剤を使用したいという意見があり、通訳を介しながら双方で慎重に議論が行われていました。こうしたやり取りを通じて、医療は地域の生活環境や患者背景によって最適解が異なり、日本での常識がそのまま通用するとは限らないことを学びました。

施設見学では、手術室、術後管理室、小児科病棟、産婦人科病棟などを見学し、日本との医療設備や体制の違いについて理解を深めました。また、グエンディンチュー病院の医師や看護師から診察の様子を教えていただきました。この病院では年間の分娩件数が6, 000件を超えており、日本との圧倒的な症例数の差を実感しました。少子化が進む日本、特に普段接している北海道の医療現場とは大きく異なり、絶えず多くの妊産婦や新生児に対応している活気ある環境は非常に新鮮に感じられました。また、現地では主な移動手段としてバイクが広く利用されていることから、交通事故といった高エネルギー外傷による救急搬送が多いことも、集中治療室や救急外来の見学を通して改めて認識しました。また、交通事情や生活環境の違いが、医療現場で扱う症例にも大きく影響していることを学びました。さらに、現地学生との交流の機会もあり、実習内容や学校生活について話すこともできました。コミュニケーションは主に英語を用い、できる限り翻訳アプリに頼らず自分の言葉で意思疎通を図るよう心掛けました。互いに第二言語を使用する状況の中で、自分の考えを正確に伝えること、また相手の話す内容を的確に聞き取ることの難しさを強く実感しました。今回の経験を通して、海外の医療現場で働くためには、言語の壁を越えて円滑かつ正確に意思疎通を行う力を身につける必要があると感じました。

・観光
手術が早く終了した日には、近隣の街を訪れ、現地の文化や暮らしに触れる機会を得ました。衣・食・住を自ら体験し、その土地の文化の中に身を置くことも、今回の活動における重要な目的の一つであると考え、積極的に異文化へ触れることを意識して行動しました。目の前を悠々と流れるメコン川では、地域の方々に交じって釣りを体験し、また露店で販売されていた完熟のドリアンを味わうなど、現地ならではの生活文化を肌で感じる貴重な時間となりました。さらに、そのような場を通じて、本活動に参加していた他大学の先生方や学生の皆様とも交流を深め、親睦を深めることができたことも、大変意義深い経験となりました。

〇感想
今回の留学は、学生時代に海外医療の現場へ直接触れることができた、かけがえのない経験となりました。6年生進級前の春休みを利用して参加しましたが、それまで1年以上にわたり道内各地の病院実習を通して地域医療の現場を学んできた自分にとって、異国の医療を体感することは、新たな視点と価値観を得る大きな転機となりました。今後の学生生活、そして将来の進路を考える上でも、自身の可能性を広げる貴重な機会だったと感じています。本学診療隊の術野に入らせていただいた際には、使い捨てではない布製ガウンを用いた清潔操作を体験し、これまで見学する機会の少なかった歯科口腔領域の手術も間近で見ることができ、大きな刺激を受けました。さらに、本学の麻酔科医である植村先生からは、麻酔導入の流れや薬剤の血中動態、モニター管理の要点まで、実践を交えながら丁寧にご指導いただき、理解をより深めることができました。限られた設備や旧式の麻酔機器、言語の壁といった困難がある中でも、柔軟に対応しながら高い水準の医療を提供されている姿には、深い敬意を抱きました。また、小学校での歯科検診に参加した際には、ベトナムの経済発展に伴い欧米型の食文化が広がった影響もあり、未治療の虫歯を抱える子供たちが急増している現状を目の当たりにしました。こうした変化は、将来的に肥満や糖尿病をはじめとする生活習慣病の増加にもつながると考えられ、今後はそれに対応した医療支援の必要性も高まっていくと感じました。経済発展の段階に応じて求められる医療の形は変化していくからこそ、その時代ごとの課題に寄り添った支援が重要なのだと実感しました。今回の経験を通して、医療とは単に病を治す技術ではなく、人々の暮らしや社会の変化とともに進化し続ける営みであることを学びました。将来、国内外を問わず困っている患者さんに手を差し伸べられる医師となれるよう、これからも学び続け、努力を重ねていきたいと思います。

〇謝辞
この度は、旭川医科大学基金より多大なるご支援を賜りましたこと、心より御礼申し上げます。皆様からのご支援のおかげで、現地での学びに専念し、数多くの貴重な経験を得ることができました。この留学を通じて得た知識や視点を、今後の学習や実習等に生かせるよう一層努力してまいります。また、この海外医療支援活動を次の世代へと継承していけるよう、将来は私自身も支える立場として関わっていきたいと感じました。
本留学に際しご支援くださいました西川学長をはじめ、本学の先生方、国際企画係の皆様、ならびに現地でご一緒させていただいた多くの方々に、心より感謝申し上げます。
誠にありがとうございました。Xin cảm ơn.