ルーヴァン・カトリック大学(ベルギー)医学部医学科6年 吉武 尋史
ルーヴァン・カトリック大学(ベルギー)医学部医学科6年 吉武 尋史
ルーヴァン・カトリック大学(ベルギー)医学部医学科6年 吉武 尋史
ルーヴァン・カトリック大学(ベルギー)
医学部医学科6年 吉武 尋史
私は社会人経験を重ねたのち、国際医療人枠で旭川医科大学に編入学しました。国際経験を評価されて入学できたと感じていたので、留学で大学に還元したいと考え、本学からこれまで誰も留学したことがない国への留学を目標にしました。
英語は前職で十分に使ったので、1. フランス語圏の国、2. 先進国で日本と同レベルの臨床実習、3. 関心領域である脳神経外科という3つの条件を満たす留学先を検討しました。そして、過去の訪問で親しみを感じたブリュッセルにあり、また、かねてより関心を持っていたルーヴァン・カトリック大学病院(Cliniques universitaires Saint-Luc)を第一希望として準備を進めました。
2023年11月に本学事務から同病院に連絡いただくとともに、自分自身も2024年1月に脳神経外科の教授とメールのやりとりをして、2024年3月に一度現地を訪問しました。訪問した際は、医局や手術を見学させていただき、事務職員と手続き等についても打合せました。留学の要求水準となっていたフランス語の試験に2024年11月に合格し(同年6月の試験は不合格でした)、2025年8月18日~9月19日の5週間、同病院で臨床実習を行いました(同病院への留学は、私がアジア人で初でした)。
〇留学の内容
「日本と同レベルの臨床実習を、他の先進国で行う」ことを目標に設定したので、日本と異なる特別なことはありませんでした。朝から脳神経外科のカンファレンス、病棟管理の会議、手術見学、外来見学、翌日の手術の予習、という一日の流れの繰り返しでした。
同病院は病床が1,000床、手術室が27室あるベルギーでも最大級の病院で、施設は非常に充実していました。患者さんも多く、脳神経外科では毎日複数件の手術が行われていました。
医学生である自分の知識・経験では、脳神経外科の術式や治療方法に日本との違いを見出すことはできませんでした。医師になってもう一度見に行きたいと思っています。外来は、その国の文化やコミュニケーションの進め方の違いなどが見えたと感じました。また、ヨーロッパの政治・経済の中心にあるベルギー、そしてEU本部があるブリュッセルならではの多様性(社会も医師も患者も)は、日本と大きく異なる点でした。
〇日常生活
同病院から徒歩と地下鉄で20分ほどの民家で部屋を間借りして生活しました。冷蔵庫や台所は共用だったので、スーパーで買い物をして、自炊していました。家主が心温かく親切な方で、本当に助かりました。平日は朝から夕方まで実習で、帰宅して夕食を作って食べ、日本の医師国家試験の勉強や翌日の手術に関する疾患の予習などを済ませると、あっという間に一日が終わりました。
〇感想
無意識のうちにどこかで気を張っていたのかもしれませんが、とても疲れました。言葉がうまく通じないことも原因にあったと思います。外来見学の時間にできるだけ質問しました。最初は「フランス語もうまくできない、何を考えているかわからない日本人」とみられていたかもしれませんが、質問をする日々を重ねるうちに、徐々に、先生たちの私に対する態度がポジティブになってきたのを感じました。5週間では完全にチームに溶け込むことはできませんでしたが、徐々に見えてきたこの変化は、とても嬉しいことでした。
日本での生活に慣れていれば、おそらくほとんど全ての国での生活に不便を感じます。不便と感じることにも、できるだけ早く適応することが大切だと思います。また、臨床実習を充実したものにするためには、しっかりした生活基盤が必須です。大学の寮であっても民家の間借りであっても、早めに渡航して臨床実習開始前に生活基盤を整備して慣れておくことをお勧めします。上記の通り、私は留学の前年に実際に同病院を訪問して医局や事務の人とも話し、家主にも会って部屋の手配をお願いしていたのですが、これがその後のスムーズな留学の準備につながったと思います。
留学の要求水準となっていたフランス語の試験は合格したものの、やはりネイティブの会話は試験とは全く異なり、苦労しました。要求水準をクリアした後は、出発まで可能な限り会話のトレーニングをしておくことが重要と考えます。
私自身は、同病院の脳神経外科教授にメールを送ったところから、手続き等をほぼ全て自分で行って留学を実現させられたこと、現地でも毎日自炊して普段の日々を送り、無事にやり切ったことが、大きな成果と感じています。留学する際には、目的の設定と、自分の感性を高めて臨むことが大切だと思います。そうすると、病院の中だけでなく、その国の社会や人々の考え方も感じ取れるような実りの多い留学になると思います。