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ポメラニアン医科大学(ポーランド)医学部医学科6年 草刈 瞳

ポメラニアン医科大学(ポーランド)医学部医学科6年 草刈 瞳

ポメラニアン医科大学(ポーランド)医学部医学科6年 草刈 瞳

ポメラニアン医科大学(ポーランド)

医学部医学科6年 草刈 瞳

○はじめに
2025年8月7日から9月7日にかけて、ポーランド北西部のシュチェチンという都市にあるポメラニアン医科大学(Pomorski Uniwersytet Medyczny w Szczecinie 以下、「PUM」と記載します。)に同級生と2人で留学し、臨床実習を行いました。
大学入学時より留学への憧れがあったこと、そして海外の医療現場について興味があり、今回が卒業前の最後のチャンスだと思い応募しました。

○日程
期間は4週間で、土日を除く20日間、小児科、産婦人科、小児外科、移植外科で各5日間の実習に参加させていただきました。土日はシュチェチン市内や周辺都市の観光をすることができました。

8月7日〜8月8日  移動日(往路)
8月11日〜8月15日 小児科
8月18日〜8月22日 産婦人科
8月25日〜8月29日 小児外科
9月1日〜9月5日  移植外科
9月6日〜9月7日  移動日(復路)

○実習内容
実習では手術見学、外来見学、回診へ同行し身体診察をさせていただきました。回診では日本と同じように先生方が病室へ行き、患者さんからお話を聞いたり検査結果などをお伝えしたりしていました。病室にカーテンはなく、患者さん同士の交流が日本より多いと感じました。会話は全てポーランド語で行われるため理解することはできませんでしたが、時折先生が英語で説明してくださったため、その説明を聞きなんとか理解することができました。医療英単語の語彙が足りていなかったため、わからない単語はその都度調べ、実習に臨んでいました。
各診療科での実習の様子は、以下のとおりです。

・小児科
小児科では主に病棟での回診見学と、聴診などの簡単な診察をさせていただきました。患者さんは主に代謝・内分泌疾患や希少疾患の患者さんでした。実習中には拒食症、思春期早発症、フェニルケトン尿症、レット症候群、ムコ多糖症6型、X染色体連鎖性低リン性くる病、中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症(MCADD)、自閉症、てんかん、失語症など、様々な疾患の患者さんと接する機会がありました。回診後に先生から論文やスライドを用いてそれぞれの疾患に関する詳しい説明を受け、理解を深めることができました。
また、実習中には理学療法士さんのリハビリの様子や、看護師さんの採血の様子なども見学し、ポーランドでの医師以外の医療スタッフの仕事の様子を知ることができました。また、小児専用の救急外来があり、そこには緊急手術が行える部屋もあり、小児医療の設備がとても充実していると感じました。
小児科の入院の付き添いには父母どちらの姿も見られました。日本では母親が付き添いをしていることが多いため、印象的でした。
小児科教授のMaria Gizewska先生は私たちが実習に行った数週間後に仕事で日本に行くという予定があり、日本についてのお話をたくさんすることができました。教授は温かく私たちを迎え入れて下さり、楽しく実習をすることができました。

・産婦人科
産婦人科では手術見学をしました。ポーランドでは分娩恐怖症により帝王切開を選択する人が多く、帝王切開は10件ほど見学し、うち1回は助手として術野に入ることができました。手術中には処置を見ながら先生が英語で解説してくださったため理解しやすかったです。また、期間中一度だけ自然分娩を見学することもできました。自然分娩が行われる部屋はアロマが焚かれており、天井はプラネタリウムのように照らされており、リラックスできるような環境が整えられていると感じました。他には腹腔鏡下卵巣摘出術や開腹卵巣腫瘍摘出術、子宮鏡検査、膣縮小術などを見学しました。日本との違いとして、閉創時に丸みを帯びた円針ではなくまっすぐな直針を用い、縫い物をするときのように傷を閉じていたことが印象的でした。埋没縫合よりもはやく、跡が綺麗だと感じました。

・小児外科
小児外科では、手術見学と外来見学をしました。手術としては、停留精巣固定術、植皮術、TFCC損傷に対する手術、精巣捻転に対する精巣固定術、腹腔鏡下胆嚢摘出術、スピッツ母斑切除術などを見学しました。手術中には先生が英語でその都度解剖や手順を丁寧に説明してくださり、理解を深めながら見学することができました。
外来では、骨折患者さんへのギプス交換や装具作りの様子を見学しました。患者さん一人ひとりに合わせてオーダーメイドで装具を作成し、動かしやすいよう微調整を行うなど、常に患者さんのことを第一に考えた診療が印象的でした。また、PUMの学生も一緒に見学していました。PUMの学生と一緒に実習をするのはこの時が初めてだったので刺激を受けながら実習をすることができました。わからないことがあればすぐに先生へ質問する姿勢を見習いたいと感じました。

・移植外科
移植外科では手術見学をしました。腹腔鏡下胆嚢摘出術、ロボット支援腹腔鏡下直腸切除術、乳房部分切除術、Nissen手術などを見学しました。移植外科で大きな手術がない時は隣にある泌尿器科の手術見学もさせていただきました。泌尿器科では尿管ステント留置や結石粉砕術、尿道会陰ろう増設術などを見学しました。移植外科には、PUM外の医師が視察に訪れるほどの手術に長けた外科医の方がいらっしゃいました。その方の手術はスピーディで出血量も少なく、手術で何をしているのかが分かりやすく感動しました。英語で消化管や血管の名前を理解するのが難しく、医療英単語を学ぶことの大切さを感じた1週間でした。

◯生活
1ヶ月間大学の寮に滞在しました。キッチンとランドリーは寮全体で共用、トイレやお風呂は2人で共用ですが、個室が1人1部屋与えられ、部屋も綺麗で快適でした。寮の周りにはコンビニやスーパー、ショッピングモールもあり、不自由なく生活することができました。小児科、小児外科のある病院へはバスで、産婦人科、移植外科のある病院へは徒歩で通いました。
実習は基本的に14時〜15時ごろには終了するため、実習後にシュチェチン市内を観光することができました。市内はバスやトラムが張り巡らされており、簡単に移動することができました。近くのショッピングモールやIKEAで買い物をしたり、市街地に出て夕食を食べたりしました。
ポーランドでの料理はとても美味しく、留学中にたくさん楽しむことができました。ジュレック(酸味のあるスープ)やピエロギ(茹で餃子)、ポンチュキ(穴の空いていない揚げドーナツ)、ロガール(クロワッサン)を食べました。また、美味しいピザやジェラート、クレープ、チーズや生ハムなども食べることができました。

◯観光
土日はシュチェチン国立博物館やシュチェチン城、holiday park、シュチェチンフィルハーモニーなどに行きました。博物館ではシュチェチンの激動の歴史を学ぶことができました。シュチェチンフィルハーモニーは外観、内観ともに美しく、国際ルトスワスキ青少年オーケストラの演奏を聴くことができました。別の週末には少し足を延ばしてシュチェチンから車で3時間ほどの所にあるポズナンというポーランド最古の都市まで卒業生の先生に連れて行っていただき、一泊しました。ポズナンの旧市場広場にはカラフルな建物が立ち並んでおりとても綺麗でした。ポズナンの名物であるロガールという伝統的な甘いクロワッサンが美味しかったです。

○交流
Dean’s officeのMrs. Olena Voznyakには何度もご飯に連れて行っていただき、4週間を通じて大変お世話になりました。ポーランドに到着して初めての週末にはMrs. Olena、PUMの学生2人、卒業生との食事会を開いていただきました。また、2周目の水曜日にはPUMへ訪問し、大学内のMuseum of the History of Medicineを案内してもらいました。昔使われていた顕微鏡や手術道具、バッグバルグマスクなどを見ることができ、勉強になりました。他にも大学近くの大きな教会や車で一時間ほどのところにあるシュチェチン湾に連れて行っていただき、たくさん私たちのことを気にかけてくださいました。

○感想
学生のうちに海外での医療を学ぶことができ、非常に貴重な経験ができたと思っています。ポーランドの医療や文化に直接触れ、日本では得られない多くの学びと新しい価値観を得ることができました。この経験を今後臨床の場で活かしていきたいと思います。
また、実際に海外で臨床実習に参加し、自分の英語力の不足を感じ、留学以前より英語学習のモチベーションが高まりました。働く上で日本以外の患者さんと接する際、自分の言葉で患者さんとコミュニケーションをとることができるよう、英語の勉強を続けていきたいと思います。
少しでも興味のある方は、ぜひ勇気を出して挑戦してみてください。

○謝辞
今回の留学の機会を与えてくださった西川学長、東副学長、本間教授、神田講師、国際・社会連携室の皆様、そして現地でお世話になったPUMのprof. dr hab. n. med.  Maria Gizewska、prof. dr hab. n. med. Sebastian Kwiatkowski、dr n. med. Kaja Gizewska-kacprzak、dr hab. N. med. Maciej Kotowski、Mrs. Olena Voznyak、学生の皆様、誠にありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。この貴重な経験を今後に活かしていけるよう精進して参ります。