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WHO・ILO・グローバルファンド(スイス) 医学部医学科6年 小野 大成

WHO・ILO・グローバルファンド(スイス) 医学部医学科6年 小野 大成

WHO・ILO・グローバルファンド(スイス) 医学部医学科6年 小野 大成

WHO・ILO・グローバルファンド(スイス)

医学部医学科6年 小野 大成

1.WHO等に留学する経緯、現地での講義・視察
将来、臨床検査・感染制御を専攻したいと私は強く希望しています。留学先の検討にあたり、他にも多くの魅力的な提案をいただきましたが、私の興味に最も一致するWHO・ILOなどジュネーブ市の国際機関で最先端の知識と技術を学ぶことが、将来のキャリアに大いに役立つと考えました。本留学の意義、特色あるキャリア教育、個人の興味を総合的に考慮し、WHO・ILOなどの国際機関に留学しました。
世界保健機関(WHO)では、はじめに清水先生にお会いして、感染制御実務を拝見し、WHOで毎日行われている、全世界を対象とした感染症サーベイランスについて学習しました。地域医療と国際機関が相互に還元できる取り組みとして、興味深く参考になりました。
また、私は社会保障と公衆衛生、医薬品分野に特に強い関心を持っています。今回の留学では、中谷先生はじめ多様なバックグラウンドを持つ先生方から講義を受け、キャリアの視野が広がるとともに、医学生として社会問題に国際的に向き合う視点を培うことができました。
われわれが直面する国際課題の一つがユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)です。UHCはWHOの提供するアドボカシー理念であり、「全ての人々が基礎的な保健医療サービスを、必要なときに、負担可能な費用で享受できる状態」を指します。日本にはたとえば巨大な公的保険が整備されていますが、現代においても医療システムに問題がないわけではありません。
UHCは統一したアドボカシーとして改革の方向性を示すものであり、各機関の講義・視察を通じて、UHCの理念の実現に向けた取り組みを学びました。国際労働機関(ILO)では、公的健康保険の導入支援や保健医療サービスへのアクセス確保、持続可能な社会の創出に向けた取り組みを学びました。社会の一員として、UHCの達成にたゆまぬ努力が重要であり、保健医療サービスのスペシャリストとしての医師の役割も再認識しました。
最後に、産業保健と労働安全衛生法に詳しい学生として、WHOやILOでの講義・視察を通じて、これらの知識をさらに深めることができました。労働環境の改善、労働者の健康維持、持続的な成長に貢献する実務知識を得る機会を得られたことは大変貴重でした。

2.参考情報
<研修の日程>
2024年6月18日(火)の夜に日本を発ち、現地19日夕方 着、26日(水)午前
現地発・27日夜 帰国のフライトで訪問しました。
20日(木)・21日(金)はWHOにて国際保健全般についての講義、22日(土)は国際赤十字・赤新月博物館にてエマージェンシー対策の学習、24日(月)はILOにて労働衛生についての講義、25日(火)はグローバルファンドにて感染症実務についての講義となりました。
各機関ではここでしか得られない、数多くの貴重な体験がありました。

<費用>
滞在費、交通費等を含め、総費用は一人当たり46万円弱でした。
このうち、宿泊費、航空運賃、研修費の約36万円について国際医療人選抜の枠組みとして支援を受け、自己負担は約10万円でした。費用面でのサポートに感謝します。

<渡航ルート>
東京からジュネーブへの往復にトルコ航空を利用しました。価格、ダイヤ、サービスのバランスが良かったためです。東京=ジュネーブには直行便がありません。

<言語学習>
事前に英語でフランス語を勉強し、現地でのコミュニケーションに役立ちました。高校時代に仏語を自習していた経験から、勉強が捗りました。
第三言語をかじる利点は、もちろん各国の文化背景を学び現地が豊かになるでしょうが、それ以上にともすれば「グローバルな視点をもつ」われわれに多極的な発想を授けてくれることでしょう。
国際機関が集積するスイスで学ぶ価値がひとつここにあります。(列強諸国と一定の距離感を保ちつつ)各国政府・諸機関と協力し、地球規模で社会正義のために行動できます。日本国民として、医師として、地域社会に貢献し、世界にプレゼンスを発揮するうえで、多角的に思考する重要性を改めて認識しました。

<スイスの食事>
スイスでの食事はどれも美味しく、ご存じの通り、特にチーズが印象的でした。中谷先生、神田先生と夕食を共にいただきました。地元の食材を使った料理や洋菓子、ワインなど食文化はどれも素晴らしく、日常が豊かに感じられました。

3.謝辞
このたびの留学に際し、ご支援いただきました皆さまに心より感謝申し上げます。
まず、世界保健機関(WHO)にて多様な講義と実習をご提供くださいました、中谷祐貴子事務局長補に深く感謝いたします。中谷先生には研修全体を通じてご指導いただき、感染制御や国際保健の現場での貴重な経験を積むことができました。旭川医科大学の大先輩でいらっしゃる中谷先生のご支援がなければ、この貴重な機会を得ることはできませんでした。
また、WHOの清水先生、喜多先生、高梨先生、岡本先生、藤野先生、長谷川先生には、感染制御、疾病分類、医薬品安全性、UHCの理念、ヘルスプロモーション、食品安全など、多岐にわたる分野でご指導をいただきました。本学ご出身の木阪先生には、自らキャリアを切り拓かれてきたご経験から、私たち後輩へ豊かなアドバイスをご教授いただきました。WHOにてお会いした千葉大学予防医学センターの戸髙教授には、これからの留学のありかたについて熱くご指導賜りました。皆様のご指導により、国際保健の各領域における知識と視野を広げることができました。
国際労働機関(ILO)の天野先生、及部先生には、国連機関におけるILOの特徴や、ジェンダー平等とディーセント・ワークの重要性、雇用法制の社会実装実務に関するご指導をいただきました。皆様のご指導により、社会保障や公衆衛生に対する理解を深めることができました。
また、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(The Global Fund)の木場先生には、国際協調と機動的運営の重要性についてご指導を賜りました。心より感謝致します。
社会医学講座の神田浩路先生には、この留学の準備段階から現地での指導まで、多大なるご支援とご指導をいただきました。神田先生 のご尽力により、現地での研修を充実させることができました。国際協力に深いご見識からくださったご解説には、多くの刺激と示唆をいただきました。
また、教育センターの佐藤伸之教授には、枠組みとしてのご支援と、留学の全体にわたるご指導を賜りました。佐藤教授のご支援なくして、この貴重な経験を得ることはできませんでした。佐藤教授のご指導により留学の意義を実感できました。
事務の方々にも、この留学の準備に際して、ひとかたならぬお世話になりました。心より感謝いたします。
最後に、この留学をともにした重堂百恵さんにも感謝の意を表します。学修を共にし、精神的にも支えられました。
多くの方々のご支援がなければ、この貴重な経験を積むことはできませんでした。本当にありがとうございました。