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研究実績・成果

研究実績・成果

2020年10月29日
研究成果

研究成果の公表 病理学講座(腫瘍病理分野)西川教授

“Hepatocyte MKK7 Contributes to Restoration of the Liver Parenchyma Following Injury”
(肝細胞のストレスキナーゼMKK7は傷害後の肝組織修復に関与する)

本学の病理学講座(腫瘍病理分野)西川祐司教授らによる研究論文が米国肝臓学会(AASLD)の機関誌"HEPATOLOGY"に掲載されました。

“Hepatocyte MKK7 Contributes to Restoration of the Liver Parenchyma Following Injury”
(肝細胞のストレスキナーゼMKK7は傷害後の肝組織修復に関与する)

By Takako Ooshio, Masahiro Yamamoto, Kiyonaga Fujii, Bing Xin, Kenji Watanabe, Masanori Goto, Yoko Okada, Akira Suzuki, Josef M. Penninger, Hiroshi Nishina, and Yuji Nishikawa 

2020年9月23日、本学病理学講座(腫瘍病理分野、西川祐司教授)の論文が米国肝臓学会(AASLD)の機関誌 “HEPATOLOGY“ に掲載されました。

標記の研究は、ストレスで活性化されるキナーゼ(リン酸化酵素)の1つであるMKK7が肝組織の修復過程に重要であることを初めて示したもので、本学と東京医科歯科大学 仁科博史教授、神戸大学 鈴木聡教授、ブリティッシュコロンビア大学(カナダ)Prof. Josef M. Penningerとの共同研究として行われました。なお、本論文中に示されているすべての実験は、大塩貴子元助教(現在、北海道大学遺伝子病制御研究所助教)を中心として本学で実施されたものです。

MKK7は別のグループにより肝細胞増殖に深く関わると報告されていましたが、私達の研究は肝組織破壊によるストレスで誘導されるMKK7は、肝細胞の増殖調節にはほとんど影響しませんが、細胞外マトリックスとの相互作用による肝細胞の移動や運動の調節を介して、肝組織構造の修復に重要な役割を担っていることを明らかにしました。この研究成果は傷害後のストレス反応が組織修復にポジティブに関わることを示しており、今後の慢性肝傷害の治療開発にも重要なヒントを与えるものと思われます。
肝細胞のストレスキナーゼMKK7

以下のアドレスからこの論文の原稿(Accepted Article)がご覧いただけます。  https://aasldpubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/hep.31565

本件について皆様に広くお知らせしたく、公表いたします。

MAPキナーゼキナーゼ(MKK)7およびMKK4は、c-Jun NH2末端キナーゼ(JNKs)の上流で働き、肝臓の初期発生に必須であることが示されている。MKK7が肝細胞増殖の調節に関与する可能性が示唆されているが、肝臓におけるMKK7の機能的役割は明らかになっていない。我々は、MKK7LoxP/LoxPマウスをAlb-CreまたはMx1Creマウスと交配し、肝臓および肝細胞/造血細胞特異的MKK7ノックアウト(KO)マウスを作製し、表現型の変化を調べた。Alb-Cre/MKK7LoxP/LoxPマウスでは肝臓の発生に異常は認められなかった。MKK7 KOマウスの肝細胞は、部分肝切除または四塩化炭素(CCl4)投与によって誘導される肝傷害に反応し、対照マウスの肝細胞と同程度に増殖した。しかし、対照マウスと比較してMKK7 KOマウスではCCl4傷害後の組織修復が遅延した。さらに、CCl4を8週間反復投与すると、MKK7 KOマウス肝では対照肝に較べ、高度の肝星細胞の活性化を伴う強い線維化をきたした。以上の結果は、MKK7欠損が組織微小環境における肝細胞の再生応答に影響を及ぼす可能性があることを示唆している。単層培養したMKK7 KO肝細胞は対照肝細胞と同等の増殖活性を示した。しかし、MKK7 KOは肝細胞凝集塊のコラーゲンゲル内樹枝状形態形成を有意に抑制した。マイクロアレイ解析の結果、MKK7 KO肝細胞における形態形成の抑制はTagln、Glipr2、PlauのmRNA発現減少と関連しており、MKK7 KO肝細胞にこれらの遺伝子を強制発現させると形態形成が部分的に回復した。さらに、MKK7 KOマウスにおけるCCl4傷害後の組織修復はPlau(ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクティベーター遺伝子)の肝細胞特異的過剰発現により促進された。結論:MKK7は肝細胞の増殖自体には関与しないが、肝細胞と細胞外マトリックスとの相互作用の変化を介し、肝実質破壊後の修復過程において重要な役割を果たしている。 

お問合せ

研究に関するお問合せ

旭川医科大学 病理学講座(腫瘍病理分野)
教授 西川 祐司(にしかわ ゆうじ)

  • TEL:0166-68-2372 (講座受付)