日立ハイテクとがんゲノム医療に関する分子診断の共同研究講座開設のお知らせ
2024年7月1日
国立大学法人旭川医科大学
日立ハイテクとがんゲノム医療に関する分子診断の共同研究講座開設のお知らせ
国立大学法人旭川医科大学(以下、旭川医科大学)は、 株式会社日立ハイテク(以下、日立ハイテク)と共同研究講座*1「先進ゲノム地域医療講座」(以下、本講座)を開設しました。旭川医科大学は、日立ハイテクと2019年から「膵腫瘍の低侵襲診断」に関する共同研究を実施してきました。このたび、さらなる研究の加速により、がんゲノム医療*2の進展をめざし、本講座を開設しました。
本講座では血液や尿などから遺伝子などの分子情報を分析する液体生検(リキッドバイオプシー)の活用をはじめとして膵がんなどの早期診断が難しいがん種においても、低侵襲かつ早期にがんを検出する新しい分子診断の開発を推進します。また、がんの診断・治療・経過観察のプロセスであるPatient Journey*3において、日立ハイテクのDNAシーケンサーなどの分析装置やデジタル技術を生かし、検査の実施から検査データの分析補助など、検査・診断領域を中心に患者や医師をサポートする一連のがんゲノム医療のシステム構築をめざします。
*1共同研究講座:企業等が共同研究費を提供し、大学内に設置される研究組織。安定した研究基盤が構築されるため、共同研究より充実した研究の展開が期待されている。
*2がんゲノム医療:一人ひとりの遺伝子の変化や生まれ持った遺伝子の違い(遺伝子変異)を解析し、がんの性質を明らかにすることや、体質や病状に合わせた治療の選択などを行うこと。治療薬の選択と効果のモニタリング、予後予測などの局面で利用されている。
*3 症状や病気を自覚し、医療機関にかかって治療を受け、回復していく過程のこと。患者さんの行動、思考、感情などのプロセスを表したもので、「病気を抱えた人の旅」という意味で名付けられています。
本講座開設の背景
超高齢社会の到来、地方の過疎化の進行、医療費の増大などさまざまな社会課題がある中、ヘルスケア分野では「がんの克服」が重要課題の一つとされています。近年、遺伝子解析技術の発展により分子・遺伝子レベルでのがん診断・検査に関心が高まり、がん細胞に特有な遺伝子変異などについて感度および特異度*4の高い検出を実現することで、これまで早期発見が難しかった難治がん克服などがん診療の精密化に飛躍的進歩をもたらすことが期待されています。
本講座を開設することで、これまで膵癌の低侵襲診断法の開発を目的として進めてきた共同研究を加速し、旭川医科大学において内科学講座が臓器別に再編され、専門性を高めていこうというなかで、臓器横断的に次世代のがんゲノム医療に必要な新しい技術開発やしくみ作りを強化していきます。
*4感度および特異度:感度とは陽性の者を陽性と正しく判定する確率、特異度とは陰性の者を陰性と正しく判定する確率を示す。
本講座の概要
本講座では、日立ハイテクのDNAシーケンサーなど分析装置やデジタル技術の活用と旭川医科大学が臨床・研究などで培った知見を用いて、遺伝子解析技術とゲノム科学、生物情報科学を駆使し、がんの発生原因の解析をはじめとした研究を実施します。旭川医科大学を中心とした地域の医療機関とも連携しながら、がんの早期発見および適切な治療を適切なタイミングで提供する遺伝子検査など、分子診断の開発および一連の検査に必要なシステムの構築をめざします。
今後の展望
本講座での研究開発による分子診断などの先進ゲノム医療を社会実装することで、がん患者の診断・治療・治療後のQOL (Quality of Life) 向上の実現をめざしていきます。本講座の開設を通じて、先進的ながんゲノム診療の恩恵を北海道の地域医療へと還元し、患者一人ひとりに寄り添った一歩進んだ医療サービスの提供に向けた基盤を作ります。また、得られた知見や技術を世界の人々のQOL向上のために利用していきます。
旭川医科大学について
旭川医科大学は、大雪山を望む自然豊かな旭川市に1973年に設置された医学部として、昨年開学50周年を迎えました。優れた医療人を育成するという理念の下に、医学科、看護学科が密接に連携し、医科大学としての理想を追求しています。教育理念として「豊かな人間性と幅広い学問的視野を有し、生命の尊厳と高い倫理観を持ち、高度な知識・技術を身につけた医療人及び研究者の育成」を謳っています。
また、旭川医科大学病院は北海道の地理的中心にあることから道北・道東を主とした広範な地域から患者を受け入れ、医療の最後の砦として、かつ、特定機能病院として、高度医療を提供する役割を担っています。「患者中心の医療を実践し、地域医療に寄与するとともに、国際的に活躍できる医療人を育成する」という理念のもと、大学の使命に基づく附属病院としての機能を強化すべく、マルチタスク型医療人材の育成に取り組んでいます。
このように、旭川医科大学は、地域社会の医療および福祉に貢献するとともに、医学・医療の発展に実質的に寄与することをめざしています。
日立ハイテクについて
日立ハイテクは、医用分析装置、バイオ関連製品、放射線治療システム、半導体製造装置、分析機器、解析装置などの製造・販売に加え、モビリティ、コネクテッド、環境・エネルギーなどの産業分野における高付加価値ソリューションの提供を通して、幅広い事業領域においてグローバルな事業展開を行っています(2024年3月期日立ハイテクグループ連結売上収益は6,704億円)。強みである「見る・測る・分析する」というコア技術をベースに、事業を通してさまざまな社会課題解決および持続可能な社会の実現に貢献していきます。
ヘルスケア分野においては「Innovating Healthcare, Embracing the Future」をヘルスケア事業のパーパス*5として掲げ、「診断×治療×デジタル」により、体外診断の高品質・高機能化、放射線治療の低侵襲化など医療全体の最適化を支えるヘルスケア・イノベーションの創生に取り組んでいます。
詳しくは、日立ハイテクのウェブサイト(https://www.hitachi-hightech.com/jp/ja/)をご覧ください。
*5ヘルスケア事業のパーパスについての詳細は、こちらをご参照ください。