当センターは、外科学第一講座(現:外科学講座(循環・呼吸・腫瘍病態外科学分野))が母体であり、現在は、呼吸器センターにおける呼吸器外科との兼任業務を行っております。
外来 月曜日、水曜日、金曜日 8:30〜14:00 火曜日(再来のみ) 8:30〜10:30
画像検査
組織検査
治療成績
手術症例数 乳房温存率 症期別生存曲線
乳がんとは
治療前の検査について
【画像診断】 マンモグラフィー、超音波検査:しこりの場所や大きさ、ひろがり MRI検査:腫瘍の広がり程度、腋窩リンパ節転移の有無 CT検査:リンパ節、他の臓器への転移の有無 骨シンチ検査:骨への転移の有無(必要例に行います) PET検査:全身のがんの有無(必要例に行います) 【病理診断】 細胞診:がん細胞の有無 針組織診:がんの確定診断、組織型、生物学的特性(細胞診で確定できない例、術前治療を検討する例に行います) マンモトーム生検(吸引式組織生検システム)(下図):微細石灰化病変で発見された非触知病変に対し、マンモグラフィーを撮影しながら組織を採取します。
【画像診断】
【病理診断】
この内容に基づき、治療計画を立てます。治療目標は以下のとおりです。
乳腺(乳房)をどう切除するか
※乳房再建術について 乳房切除術(全摘術)を行った場合、乳房再建術が可能です。再建術には、自家組織を用いる再建方法(保険診療)とシリコンインプラントを用いた再建方法(豊胸術の応用;保険外診療)の2種類があります。以前に比べて、再建術を受ける人の割合も多くなってきております。希望される方は、ご相談ください。
リンパ節をどう切除するか
がんはリンパ節に転移する可能性があり、その程度、範囲を正確に把握するために、リンパ節の切除が必要となります。すなわち、リンパ節郭清術が標準手術として行われてきました。 しかし、リンパ節郭清術は、神経、血管を露出させ、それ以外のリンパ節を含めた脂肪組織を切除する為、術後にリンパの流れがとどこおり、むくみや運動障害を生じる可能性が問題となってきました。(リンパ浮腫は、リンパ節郭清を行った5%弱の方に発生します。) そこで、術前の診断で、リンパ節転移がないと考えられる人に対する縮小手術が研究されてきました。すなわちセンチネルリンパ節生検という概念です。 センチネルリンパ節とは、リンパ管に入ったがん細胞が最初にたどり着く腋窩リンパ節のことで、がんの転移を見張っているとの意味で見張りリンパ節とも呼ばれます。このリンパ節に転移を認めなければ、それ以上のリンパ節郭清を省略し、合併症を少なくする事を目的としております。同定率は97%、偽陰性率は3%以下です。
乳房温存手術を行った症例に対しては、残った乳腺に存在しているかもしれないがん細胞を根絶やしにする目的で放射線照射を行います。また、乳房切除術を行った例でも、リンパ節転移が4個以上の症例、広範囲にがんが存在していた場合には放射線照射を必要とします。術後に抗がん剤治療が必要な方の放射線照射は、抗がん剤が終了した後になります。
放射線治療は、通常直線加速器という機器で行われています。以前はコバルト照射装置が使われており、放射線治療の代名詞のように言われていましたが、現在は使用されていません。また放射線の種類はX(エックス)線です。着替えや部位を合わせるために時間は多少かかりますが、治療(照射)時間2〜3分程度です。この間は動かないようにしてください。また治療中に痛みや熱さを感じることはありません。 一回の治療は10分程度で終わります。 標準的には、25回(月〜金までの5回/週、5週間)ですが、さらに5〜8回の集中照射を追加する場合があります。通常治療は外来通院で行われます。
集中照射の適応
また、骨転移や脳転移に対しても放射線治療を行うことがあります。 最終的な治療計画は放射線腫瘍医が担当し、治療範囲や回数、副作用などを詳しく説明いたします。
1) 薬物療法の種類
ホルモン療法 適応 女性ホルモンに依存性のある例(ホルモンレセプター陽性例) 機序 女性ホルモンを燃料として増殖していくので、女性ホルモン(燃料)を抑制することでがん細胞を弱らせる(≒兵糧攻め) 種類 坑エステロゲン剤、LH-RHアゴニスト、アロマターゼ阻害剤、その他、黄体ホルモン製剤など 方法 内服(LH-RHアゴニストは1or3ヵ月毎の皮下注射) 副作用 更年期症状、体重増強、肝機能障害の他、子宮内膜癌のリスク(坑エステロゲン剤)、骨粗しょう症の増強、関節痛(アロマターゼ阻害剤)など
抗がん剤治療 適応 全ての適応症例 機序 細胞の増殖にかかわる遺伝子を構成するタンパクの働きを抑えることによりがん細胞を死滅(直接攻撃) 種類 病状や使用時期により異なるが、一般的にアンスラサイクリン系(FEC療法など)、タキサン系(パクリタキセル、ドセタキセル、TC療法等)が主に補助療法として用いられる。更に酒石酸ビノレルビンやゲムシュタビン、など他臓器の腺がんに用いられた薬も認可され、使用している。内服薬(TS-1、カペシタビン)も適応に応じて用いる。 方法 点滴投与(3週間毎または1週間毎等)が基本 副作用 がん細胞を死滅させる薬剤なので、正常細胞にも同様に作用。特に、骨髄抑制(白血球減少)、脱毛、消化器症状、肝機能障害など。点滴の抗がん剤投与期間は、感染の危険性があるため就業はできない。
分子標的治療 適応 がん細胞の増殖、転移に関与するHER2タンパクが強陽性の症例。HER2タンパクは、発現度を0〜3+までに診断、3+例(2+例は特殊検査FISH法陽性例)で、ホルモン非依存例またはホルモン依存例でも高リスク群(リンパ節転移あり)、悪性度(GradeV)、 増殖指標(MIB-1indexが高い例)を適応とする。抗がん剤との同時投与または順次投与(抗がん剤の後)が原則。 機序 HER2タンパクを標的(Target)とする 種類 Trastuzumab(ハーセプチン)、Lapatinib(タイケルブ) 方法 1または3週間毎に点滴投与(ハーセプチン)。内服薬(タイケルブ):経口抗がん剤(カペシタビン)と併用 副作用 発熱、下痢、心機能障害など
2) 薬物療法の決め方
腫瘍の解剖学的特性(しこりの大きさ、リンパ節転移の有無の他、浸潤度、細胞の悪性度、増殖指標など)と生物学的特性(ホルモン依存性の有無、HER2タンパクの発現の有無)を組み合わせて評価し、薬物治療の計画を立てます。 最近は、生物学的特性を更にタイプ分けし(サブタイプ)詳しい治療方針を決めます。もちろんがんの進行度も参考にし、総合的に決定します。
サブタイプ分類 Luminalタイプ HR(ホルモンレセプター)が陽性のタイプ Luminal A HER2タンパク陰性、増殖指標が低い(14%未満) Luminal B HER2タンパク陽性、または陰性でも増殖指標が高い(14%以上) HER2 タイプ HR陰性、HER2タンパク強陽性 Triple Negativeタイプ HR陰性、HER2タンパク陰性
サブタイプを考慮した治療方針 Luminal A タイプ ホルモン療法が基本 Luminal B タイプ ホルモン療法を行う 更に以下の治療を行うHER2陽性例は抗がん剤→分子標的治療をその前に行うHER2陰性例(高増殖指標例)は抗がん剤をその前に行う HER2 タイプ 抗がん剤→分子標的治療 Triple Negative タイプ 抗がん剤のみ
3) 術前薬物治療
術前薬物療法の利点 局所進行乳がんに対する全身治療(薬物療法)の優先 腫瘍を小さくすることで乳房温存手術の可能性を高める 薬剤の効果が判定しやすい(腫瘍の状況で効果の予測ができる) 従来はしこりの大きさや、リンパ節転移の有無だけで適応を決定していましたが、組織型や、ホルモン感受性の有無、HER2タンパク発現状況などの生物学的特性による抗がん剤治療の効果に差があること事がわかり、適応基準が変化しています。 2007年〜2010年までの乳がん症例667例のうち、9.9%に術前抗がん剤治療を行いました。完全奏功例(完全にがんが消失した例)は17.1%、特に分子標的治療を併用した例では40.0%と良好な成績でした。乳房温存手術が可能であったのは79.6%でした。 術前薬物療法のうち、ホルモン療法に関しては、十分な臨床試験の結果が出ていないため積極的に施行はしていませんでしたが、高齢の方や、閉経後の希望された方に行っております。また、近い将来に臨床試験を開始する予定です。
乳がんは、局所再発の他、骨、肺、肝、脳などに転移する可能性があります。 治療は、全身療法(薬物療法)を基本的に行います。近年、薬物療法の進歩によって、再発後の生存期間も飛躍的に延長しております。 使用する薬物の種類は、腫瘍の生物学的特性だけではなく、生命に差し迫った転移(特に肺、肝)であるのか否かを正確に判断する事も重要です。局所再発例に対しては、手術、放射線治療を検討する事があります。
基本的には、ホルモン依存例にはホルモン療法を中心に行いますが、効果が乏しかったり、生命に差し迫った転移状況であれば、抗がん剤治療を検討します。 ホルモン療法が不可能な症例では、今まで使用していないものを中心に抗がん剤治療を行います。また、分子標的治療可能例にはそれを積極的に用います。 また、薬物は耐性(効かなくなる)ができることがあります。その時は、次の治療を良く検討して行うことになります。更に、転移している場合は、その生物学的特性が変化している事もあり、生検等を積極的に行うこともあります。
乳がん治療は、年々進歩しております。我々は、ホームページ、市民講座等で、最新の治療を発信していきたいと思います。ご不明な点ございましたらご連絡ください。
平成30年7月現在
乳腺疾患センター 0166-69-3815
| サイトのプライバシーポリシー | サイトポリシー |
〒078-8510 旭川市緑が丘東2条1丁目1番1号 TEL:0166-65-2111(代表)