旭川医科大学病院薬剤部では先輩薬剤師が仕事に対してどのような考えを持ち、どのような目標に向かって日々自己研鑽しているのかを業務や職場環境、教育・研究・キャリアパスについて6名の薬剤師にインタビューしました。
記事掲載:2022年11月18日

<キャリア>
2021年4月 旭川医科大学病院薬剤部入職
2021年10月 同薬剤部調剤室配属
Q1.現在の具体的な業務内容を教えてください。
現在配属されている調剤室では、内服薬・外用薬の処方監査から調剤、最終鑑査までの一連の流れが基本的な業務になります。加えて、各種薬剤の期限・在庫管理や処方動向を見ながら高価薬を発注する業務、各種機器のメンテナンスなどを行います。
最近では計数調剤管理システム、水剤・散剤監査システム、全自動秤量散薬分包機、自動調剤棚および調剤鑑査支援システムが新たに導入され、調剤・鑑査の安全な業務ができるようになりました。また、処方変更等で返品された一包化薬剤の作業効率化のため、錠剤自動仕分返納装置も導入されました。これら新たなシステム導入に関して、私は導入前の準備段階から携わることができています。若手薬剤師としては珍しいことかもしれませんが、調剤棚のレイアウト変更など調剤室の基盤となる重要な部分の構築や運用に関わることができて、非常に貴重な経験となっています。
また、調剤室の業務の他に、病棟業務の一環として週に1~2回病棟へ行き、患者さんへの初回面談や服薬指導も行っています。将来病棟常駐薬剤師となるためのトレーニングの意味もあり、少しずつ病棟業務の経験を積むことができています。
Q2.仕事でやりがいを感じるときはどのようなときですか?
調剤室は新しいシステムが導入されたことで、調剤過誤の減少や業務の効率化に繋がっています。しかし、導入後間もないということもあり、運用方法の検討や各種機器をアップグレードする作業、不具合時の対応、メンテナンス等の様々な業務を先輩薬剤師と十分に連携を取りながら行っています。細かなことで目立たない仕事ですが、通常業務を行ううえで必要不可欠な業務を、若手の私にも任せてもらえるようになってきたので、責任を感じると共にやりがいにもなっています。
Q3.今後チャレンジしていきたいことを教えてください。
当院は入職後、4か月の研修期間で各セントラル業務 (調剤、注射剤、混注・製剤、DI) の流れを一通り経験します。また本配属後も配属部署の入れ替わりが比較的短期間です。特定の部署の業務をある程度深く把握したタイミングで配属入れ替えになるので、新鮮な気持ちで業務にあたることができ、若手の私には日々勉強になっています。現在は調剤室配属ですが、同じセントラル業務内では注射剤室業務や混注センター業務が未経験のため、今後業務に関わる機会や配属変更があれば積極的にチャレンジしていきたいと思っています。
また、私は当院の病棟常駐薬剤師として患者さんに貢献する薬剤師に憧れて入職したため、担当病棟を持つことは目標の一つになります。セントラル業務をこなしつつ、患者さんの病態や治療方針を把握し服薬指導を行っていくことで、そのための経験を積んでいきたいと思います。併せて日病薬病院薬学認定薬剤師を目指し、
学会への参加や日々の勉強会に参加し研鑽を積んでいきたいと思います。

<キャリア>
2019年4月 旭川医科大学病院薬剤部入職
2019年9月 同薬剤部注射薬調剤室配属
2022年2月 同院消化器内科病棟薬剤師
<認定・資格>
日病薬病院薬学認定薬剤師
Q1.現在の具体的な業務内容を教えてください。
私は注射剤室配属の際、様々な輸液を勉強していくうちに末梢静脈栄養や中心静脈栄養に興味を持ち始め、そのサポートを多職種で行うNST (栄養サポートチーム)に参加して治療に介入したいと考えるようになりました。そこでNSTに関する勉強や知識を得るために薬剤部内で自ら希望を出し、入職して4年目に現在の消化器病棟を担当させて頂きました。主な業務は入院患者の持参薬チェック、初回面談及び入院中の患者の薬物治療のチェックと服薬指導です。当院の消化器内科病棟は毎日定期的に4~5名程度の入院患者がおります。また腹痛や消化管出血、食欲低下、病態の進行などで突然入院してくるいわゆる「即入(即時入院)」も多いため、急な対応で忙しく動き回っています。一般的な病棟薬剤師の業務のほか、消化器内科病棟では内視鏡検査を行う患者が多いことが特徴的です。消化器疾患に関連した薬剤のチェックとして、内視鏡検査時の苦痛軽減のための鎮静薬、内視鏡治療後の止血剤、発熱や感染予防のための抗菌薬について患者の全身状態や検査値を考慮しながら投与される薬剤が適切なのかどうかを評価しています。病棟薬剤師としてはまだまだ一歩を踏み出したところですが、興味ある分野の仕事に対して真剣に向き合えることで充実できていると感じています。
Q2.仕事でやりがいを感じるときはどのようなときですか?
患者の治療に薬剤師として意見を出すことができ、それがきっかけで良い方向に向かったときにやりがいを感じたことがあります。ただそのためには実際に患者さんの元へ行き、自分の目で患者の体調と全身状態を確認し、バイタルや服薬状況、血液検査の結果や治療状況を確認して、総合的な評価をしてから問題点を医師・看護師にフィードバックする必要があるため、毎回その通りにできるとは限りません。これらの評価には患者情報を集めることが重要なため、ついつい電子カルテに集中してしまいがちですが、私はベッドサイドに行くことが一番良い情報収集手段だと思います。今の私は先輩方のように上手に薬学的な評価・介入することは難しいですが、薬剤の専門家として医療に貢献できるようになっていきたいです。
Q3.今後チャレンジしていきたいことを教えてください。
薬剤師として患者の治療にどのように貢献するのかを考えたときに、私は薬剤の専門家の立場から介入できることが重要だと考えています。病態や薬の知識は医療の現場に立った際にすぐに求められる必要な知識ですが、自分が病棟を担当した際にはまだまだ不足していると痛感しました。そのため現在はNSTの勉強を平行しつつ、消化器疾患自体のことや疾患に関わる薬剤の基礎的な知識、同系統薬剤の特徴を整理するなどしています。また、大学病院における薬剤の専門家として治療に関わっていくためには、既存の薬のみならず新薬の情報も得ていく必要があります。今後は新人薬剤師のように学ぼうとする姿勢をいつまでも続けていきたいと思います。
<キャリア>
2015年4月 北海道大学病院入職 (2018年3月退職)
2018年4月 旭川医科大学病院薬剤部入職
2020年4月 同院眼科病棟薬剤師
2021年4月 同院脳神経外科病棟薬剤師
2021年4月 旭川医科大学大学院医学系研究科 博士課程医学専攻
<認定・資格>
日病薬病院薬学認定薬剤師, スポーツファーマシスト
Q1. 当院薬剤部に魅力を感じるところはどこですか?
当院薬剤部では、1年目のうちから基本となるセントラル部門(調剤室、注射剤調剤室、混注・製剤室)と病棟部門を新人研修という形で経験することができます。この研修は、各セントラル部門での役割や連携を意識し、セントラル業務の先にある、患者への最適な薬物療法のトレーニングになります。そのため、早期に多様な業務を経験したいという意欲あふれる新人薬剤師には魅力的だと思います。また、当院薬剤部では対物から対人業務へシフトする昨今の薬剤師のあり方を実現するために、調剤・監査システム、薬品管理の機械化や調剤補助員へのタスクシフトといった業務効率化ができており、薬剤師はより質の高い薬物療法に専念することができます。 本人の意欲が高ければ、配属先を問わず、どの部署であっても、興味のある疾病・病態の薬物治療に積極的に関わることで、各種認定取得のための症例を集積することも可能です。また、社会人大学院への進学も可能です。もちろん個人の努力は不可欠ですが、身近な先輩方や主任薬剤師、教員が協力・指導してくれる体制が整っておりますので、やる気のある方、まずは薬剤部の見学からいかがでしょうか?
Q2.仕事と大学院(研究)の両立はどのようにしていますか?
現在私は臨床薬理・分子生理学分野でパーキンソン病の研究を行っています。基本的には業務終了後や休日に実験を行っています。稀に有給をとって実験することもあります。大学院講義は18時以降の時間帯のため業務後に出席可能です。またインターネットを活用したE-ラーニングシステムも導入されているため履修しやすくなっています。社会人大学院生に限ったことではありませんが、通常業務を1分1秒でも早く終わるようにすることを心がけて「時間を捻出する」という癖を普段から身につけておくことが重要だと考えます。ただ、根詰め過ぎて体調を崩さないように、適度に休むことも大事です。
Q3.今後の目標を教えてください。
今後はまずは学位取得を目標としています。実務面では、現在脳神経外科病棟に配属となり、昨年度から脳腫瘍患者を多く受け入れ始めたことから、がん化学療法に触れる機会が急増しました。そのため、がん化学療法認定の取得を考えています。
<キャリア>
2020年3月 学位取得 (薬学博士)
2020年4月 旭川医科大学病院薬剤部入職
2020年10月 同薬剤部混注・製剤室配属
Q1. 博士取得後に旭川医大病院へ入職した理由を教えてください。
博士課程の期間に学んだことを生かせる環境で仕事をしたいと考えていたため、臨床研究のみでなく基礎研究も行える環境がある施設がよいと考えておりました。当院薬剤部は部長、副部長のみならず研究の指導を行っていただける上司が多数在籍していること、特に私の出身大学の大学院を卒業した先輩が在籍していることは就職先を選ぶうえで非常に大きい要因でした。また、可能であれば北海道内がよいと考えていたためこれら条件に合致する最も良い就職先として当院薬剤部に入職致しました。
Q2.仕事と研究の両立はどのようにしていますか?
当院薬剤部では研究にも力を入れているため、個人もしくはグループでの研究活動を推奨しています。必要な仕事を終わらせた上であれば研究活動を行うことは勧奨されているので、業務と平行して興味を持ったテーマの研究活動を行うことは可能だと思います。
また一見、仕事をしながら研究を行うことは難しそうに感じられますが、研究室にこもって論文や細胞とにらめっこしているよりも仕事の中や勉強のために受けたセミナーの中で研究の着想を得ることは多々あると感じております。業務もしくは研究のみ行うのではどちらかしか得られないですが、薬剤師の業務の中に研究テーマとなる重要な知見が見つかることもあります。未経験者の方、まずはお試しでという方でも、研究に少しでも興味がある方が増えてくれたら良いと思っております。
Q3.今後の目標を教えてください。
現在混注・製剤室に配属し、外来化学療法センターの業務にも携わっています。そのため抗がん剤治療に関わることが多く、がん領域に興味を持っています。薬剤師としての目標はがん関連資格を取得することを目標としています。研究面では当面は海外雑誌への論文投稿を目標とし、その後は定期的な論文投稿が行えるように継続的に努めていきたいと考えています。そして、将来的には薬剤部内で(無理のない範囲で)研究を始めたい、興味があるという方の助けになり、一緒に研究に携わっていけたらよいと考えております。
<キャリア>
2012年 旭川医科大学病院薬剤部入職
2019年4月 同薬剤部混注・製剤室主任薬剤師
<認定・資格>
日本病院薬剤師会がん 薬物療法認定薬剤師,病院薬学認定薬剤師,日本臨床腫瘍薬学会 外来がん治療認定薬剤師
Q1. 認定・資格取得のために行ったことを教えてください。
普段行っている業務をルーティーンとして漫然と行わず、患者1人1人に対して丁寧に行いました。目の前にいる担当患者さんの治療方法の位置づけや治療のゴールについて常に考え、その時点で最新のエビデンスを確認しながら治療に関わっていくようにしました。
また、レジメン(治療薬や支持療法薬を時系列的に記載した計画書)単位での治療のエビデンス、エビデンスの元になった対象患者の報告はもちろんのこと、各薬剤の添付文書の確認も行いながら業務にあたることで、認定取得のための介入症例を集積していきました。
Q2.認定・資格取得後の活動を教えてください。
院内での化学療法プロトコル委員会の委員・事務局を担当し、化学療法が安全かつ有効に行えるように業務を行っています。また外来での抗がん剤治療の質を向上させる目的で新たに算定可能となった、病診薬連携に関する連携充実加算についても積極的に取り組んでいます。そのほか当院薬剤部の試みとして、経口抗がん剤のみで治療が行われている患者さんに対する薬剤師外来の設置・運用に、外来がん治療認定薬剤師として関わっています。さらに当院薬剤部において「がん治療に関する研究班」を立ち上げ、エビデンス構築に向けた組織的ながん研究に取り組んでいます。
Q3.今後の目標を教えてください。
道北地域の基幹病院であり、大学病院として重要な使命とされる教育・研究を積極的に行っていきたいと考えています。今後の目標として、がん治療に関する研究は学会発表だけで終わらせず、困っている患者さんや医療スタッフの助けになるようなエビデンスの1つとなるよう、論文による発表を続けていきたいと思っています。
<キャリア>
2007年3月 旭川医科大学病院薬剤部入職
所属部署 (2021年時点) 注射薬調剤、麻薬管理、薬務室主任薬剤師
<認定・資格>
日本薬剤師研修センター認定 実務実習指導薬剤師
日本医療薬学会 医療薬学専門薬剤師
Q1. 産休・育休後はどのように仕事へ復帰されましたか?
子供の成長に応じて様々な制度を利用し、徐々に勤務時間を増やしていきました。現在はフルタイムで勤務しています。復帰後は子供の発熱などで急に帰宅しなければならない事も多く、仕事を続けられるか自信が無くなり、悩んだ事もありましたが、周りの皆さんにたくさん助けられ、仕事を続ける事ができています。皆さん気にかけて下さり、感謝の気持ちでいっぱいです。
Q2.仕事と家庭の両立はどのようにしていますか?
突然休みになる事も多いので、優先順位をはっきりさせて、仮に予定通りにならなかった場合、どのようにカバーしていくかを強く意識するようにしています。また、自分しかできない仕事は何かを良く考えて、限られた時間を有効に使えるように意識しています。ただ、まだまだ上手く出来ない事も多く試行錯誤の毎日です。子育ては長い道のりなので、焦らずに、出来ていない事に注目するより、出来ている事に目を向けるように心がけています。
Q3.今後の薬剤師のキャリアとしてどのように考えていますか?
試行錯誤中の自分にとって一番難しい質問で、悩んでいますというのが一番正直な答えです。子育て中の女性は比較的わかりやすいので注目されますが、多様化社会の今、家庭の事情だけでなく、個人的に優先したい事などで、働く人は多かれ少なかれ仕事と何かを両立していると思います。まだまだ皆さんに助けられている日々ですが、この経験を通して、多くの人がより良い働き方となるような取り組みに関わっていきたいと思っています。これからも時に悩みつつ、薬剤師人生を振り返った時に悔いの無いよう頑張っていきたいと思います。