本院では、薬剤師の病棟常駐を旧国立大学病院の中で最初に開始、現在までに全病棟へ専任の薬剤師を配置、病棟業務を行っています。
また、病棟専任以外の新人を含めた薬剤師も積極的に入院時における持参薬の確認や服薬指導に携わり、薬剤部全体として円滑な病棟業務を遂行しています。薬剤部の病棟業務におけるコンセプトとして、「薬剤に関するリスクマネージャーとして、病棟における薬物療法に関する責任を持つ」を掲げ、各病棟の特色に合わせ、安全な薬物療法を支えるために様々な取り組みを行っています。
2011年度からは、2010年の医政局長通知「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」に対する実践として、医師と薬剤師間で合意されたプロトコルに従い、持参薬の継続処方入力を代行、使用された病棟常備薬の入力代行等、医師の処方オーダ支援業務を開始しています。これにより医師の業務軽減に貢献するだけでなく、持参薬を継続処方する際における規格違い等の医療事故防止が期待されています。
またベッドサイドでの服薬指導や、有効性・副作用症状の有無、臨床検査値異常の確認、薬物の血中濃度から最適な薬物投与量の調整等、薬剤師としての視点から評価を行うことで、患者さんの病態に合わせて最適な処方提案を積極的に行っています。
他にも、医師や看護師など病棟スタッフと共に医療チームの一員として、より安全で効果的な医療を提供するために薬物治療のサポートを行っています。

(2022年5月31日)

 医薬品の発注・購入・在庫管理・払出を行っています。医薬品の発注・購入については、調剤室、注射剤室、製剤室、麻薬管理室などの各部署からの請求を受け、薬務室で取りまとめ医薬品ごとに契約を交わしている卸業者へ発注します。納品時には発注通りに医薬品が届いているか確認し、品目ごとに温度条件や使用期限、ロット番号を管理し、品質・安全性の確保に努めております。品質が保証された医薬品を納品し、請求のあった部署に払出を行います。また、医薬品の回収が必要となった場合、ロット管理された医薬品から対象となる医薬品を特定し、返品の対応や手続きも行います。
これらの業務には在庫管理システムを利用しています。在庫管理システムは、オーダ情報から消費情報を作成し、設定定数値を維持するよう、自動的に発注・在庫管理を行うこともできます。当院ではこの概念を、さらに病棟・各部署へも拡張し、「病院全体のリアルタイム薬品在庫状況」が把握できることが、最大の特徴です。在庫管理システムにより、医薬品の使用量や在庫状況、期限管理、購入数量・金額などのさまざまな統計データを活用することで、医薬品を適切に管理し、適正使用に貢献しています。

(2022年5月31日)

equipment_setsubi_07 医薬品情報の収集・評価・整理・加工及び提供が主な役割です。定期的な情報発信は院内ネットワークを活用して周知していますが、緊急安全性情報や安全性速報が発出された場合は病棟担当薬剤師と連携して速やかに周知を行っています。
医療従事者からの質疑への対応は年間600件前後であり、質疑の内容はデータベースとして活用しています。病棟担当薬剤師と情報共有ミーティングを定期的に行っており、新規採用薬のRMP、院内の副作用報告などの情報を共有しています。副作用報告書作成のサポートも随時行っています。
薬事委員会事務局としての役割も重要であり、新規採用薬品に関する資料の作成、採用後の使用実績調査、臨床的エビデンスと経済性を考慮した薬剤評価などを行っています。採用薬に追加や変更があった時、添付文書等の承認事項に変更があった時にはオーダリングシステムにおける医薬品マスタの作成及び更新を行います。特に相互作用・上限量警告システムにおいては、未然に禁忌投薬・過量投与を防ぐことで医療安全に貢献しています。薬局との連携も積極的に行っており、トレーシングレポートおよび変更調剤報告書による医師へのフィードバックを支援しています。
直接薬剤に触れる機会は少ないですが、院内の薬物療法の方針決定に深く関わることができます。薬剤師の職能を十分に発揮できるやりがいのある部門です。
(2022年5月31日)

調剤室では処方せんによる調剤を主な業務とし、患者さんが安全で効果的な薬物療法を受けられるよう様々な対策を行い、調剤業務を実践しています。調剤室で取り扱っている薬品数は、1000品目以上あります。

当院では処方オ-ダリングシステムとこれと接続した薬品管理システムにより業務がほぼ組み立てられています。これまでに、錠剤自動分包機、錠剤一包化鑑査支援システム、計数調剤管理システム、水剤・散剤監査システム、全自動散薬分包機、全自動秤量散薬分包機、自動調剤棚および調剤鑑査支援システム等、様々なシステムを導入し、安全かつ正確な調剤を心がけて行っています。処方せん発行時には、処方せん、薬袋、お薬のしおり、お薬手帳用シールに加え、薬歴や臨床検査等の患者情報が記載された「処方せんチェックシート」ならびにweb版処方チェックシステム(IRIS)のチェック結果が薬袋作成機より出力され、個々の患者情報に合わせた調剤・監査を行っています。

処方内容に関する医師への問い合わせ(疑義照会)は、デ-タベース化することで迅速な履歴の検索、参照が可能となり、薬剤の適正使用に役立てています。

また、医政局長通知「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」(医政発0430第1号)を踏まえ、2011年8月より薬剤師が処方せんの代行入力(処方内容の修正・変更・削除)を行っており、医師の業務負担の軽減に寄与しています。

外来処方せんは、現在の院外処方箋発行率は約95%です。また、2017年より院外処方せんへ検査値とその検査値情報を格納したQRコードを併記し、医薬品適正使用の推進および業務効率化を図っています。

(2022年8月19日)

<錠剤一包化鑑査支援システム> <調剤鑑査支援システム>        <全自動秤量散薬分包機>

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注射薬払出部門は、各部門への注射剤や消毒薬等の処置薬の払出しを主な業務としています。
病棟および外来点滴化学療法センターへの定期注射剤払出しは患者毎に個人別セット払出しを行っています。
また、手術部への注射剤払出しは、手術用麻酔薬等の患者個人別セット払出しや術式別使用薬剤セット払出しを行っており、各部門における注射剤準備の負担軽減に貢献しています。
現在、約800品目の注射剤を採用しており、入院注射せん枚数は1日平均250枚です。注射剤の払出しは注射薬自動払出装置により行っており、払出しを機械化することで、注射せんの処方監査に重点をおいた業務を行っています。
当院ではカリウム製剤等、投与方法を誤ると重大な事故が発生する可能性の高い薬剤をハイリスク薬として区別し、薬剤の払出前に薬剤師による投与量、速度、経路等のチェックを24時間体制で行っています。
また、注射薬オーダ上限量警告システムを導入し、医師の処方入力時に、予め薬剤毎に設定している上限量を超えた場合、警告が表示され入力決定が出来ない仕組みとなっています。上限量を超える入力が必要と医師が判断した場合には、必ず薬剤師との協議が必要となります。このように、薬物療法の安全性を高めるためのシステムを取り入れながら、業務を行っています。

(2022年5月31日)

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高カロリー輸液や抗がん剤の無菌調製を安全・確実に行っています。定時に入力された入院処方オーダのうち混合調製可能な200mL以上の輸液を含むものと、原則としてすべての抗がん剤が対象です。薬剤師と調剤助手が協力して調製業務を行っています。
室内には安全キャビネット2台とクリーンベンチ3台が配置されており、微生物の混入と有害物質による汚染を防いでいます。安全キャビネットにはバーコードリーダーと電子天秤を利用した調剤監査システムが備わっており、正確な調剤を担保しています。
調製前の処方監査も薬剤師の重要な業務で、投与量・安定性・配合の適否等について監査を行い、抗がん剤についてはさらに承認されたレジメンから逸脱がないかチェックしています。休日・夜間を含め24時間体制で抗がん剤調製に対応しています。

(2022年5月31日)

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院内特殊製剤は、患者の状態、疾患の種類や程度、治療効果あるいは規格・包装単位等の理由により医療用医薬品では十分に対応できない場合に製造します。医薬品としての承認範囲から外れた使い方をする製剤や試薬を原料とする製剤は、倫理性や使用の妥当性について事前に審査を受けることが必要であり、当院では約70種類が承認されています。
剤形は軟膏、点眼薬、坐薬、注射薬様々であり、各製剤の特性に応じて適切な器具や機械を用いて調製を行っています。調製は必ず複数の薬剤師で手順を確認しながら行い、調製の記録を作成して保管することで追跡を可能としています。
日常業務の中心は製剤の払出し・製造および在庫管理ですが、新製剤の処方設計や既存製剤の処方改良には最適な添加物や容器の選択が重要であり、薬剤師の高度な専門性が求められる業務です。

(2022年5月31日)

 麻薬管理部門では麻薬の管理・払出が主な業務です。現在、経口剤・外用剤・注射剤を合わせ、約40品目の麻薬製剤を採用しています。医療用麻薬は主に手術における鎮痛やがん性疼痛に対して使用されており、近年のがん患者の増加に伴い、医療用麻薬の必要性が更に高まっています。新規成分や乱用防止製剤の開発もあり、薬剤の選択肢が増えたことにより、様々な疼痛に対応できるようになりました。
一方、麻薬は厳重な管理が必要であるため、管理業務は品目の増加に伴い煩雑さを増しています。そこで、当院では処方オーダリングシステムと医薬品在庫管理システムを連動させた麻薬管理システムを2012年より導入しています。本システムでは、受払簿の作成だけではなく、年間届や廃棄届等の各種届出書類の作成が可能であり、麻薬管理業務の効率化を図っています。

(2022年5月31日)

 当院薬剤部では外来患者さんに対し、誤った使い方をすると十分な効果が得られない薬剤等、必要に応じて服薬指導を行っています。さらに糖尿病教室や自己注射手技と吸入手技の指導も行っています。また、吸入ステロイド薬を服用する際に吸入補助器具が必要となる患者さんに対しても、吸入補助器具の指導を行っています。

 

1)糖尿病教室では、医師・歯科医師・看護師・検査技師・栄養士とチームを組んで指導を行っています。
2)自己注射手技の指導は、ヒト成長ホルモンが新規に処方された患者さん全員に対し、また、インスリンを自己注射している患者さんのうち、医師の依頼または患者さんの希望に応じて行っています。
3)吸入手技の指導も行っています。薬剤師喘息外来では、呼吸器内科の医師に紹介された患者さんを対象に、発作のない生活を送れることを目的として、吸入手技のみでなく、病態、予防、治療、副作用防止などについて患者さん一人一人の病状、吸入薬の種類、理解度に応じたきめ細かい指導を行なっています。プライバシー保護のため、指導は専用の服薬相談室を使用しています。
4)入院前に院内の入退院センターを利用される患者さんに対しては、入退院センターの依頼に応じてその患者さんの抗血栓・抗血小板薬の処方の有無を調査し、抗血栓・抗血小板薬の処方があった場合、休薬期間についての情報提供を行っています。

(2022年5月31日)

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試験研究部門では、細胞や小動物を用いて薬剤の新規メカニズムを解明するための研究や、ヒトでの薬剤の体内動態を調べ、薬効と安全性を高める研究を行っています。研究の支援体制が整っていますので、希望者は学会発表、論文投稿の指導を受けることができ、専門薬剤師の資格や学位の取得を目指すことができます。
○現在の主なテーマ(倫理委員会承認済みの研究)(これまでの論文については業績のページをご覧ください。)
・肝移植における遺伝子多型型・発現量の情報に基づく免疫抑制療法
・パーキンソン病患者におけるL-dopa療法個別化の検討
・免疫チェックポイント阻害薬の薬物動態および免疫原性と薬効・副作用情報の体系的評価と適正使用法確立に関する 研究
・分子標的抗がん剤の有効性及び安全性の向上を目指した薬物動態/薬効評価と薬理ゲノム解析に関する研究
・乳がん患者におけるエベロリムスのPK/PD解析に基づく個別投与法の確立
・カルテを活用した切除不能な肝細胞癌患者に対するソラフェニブ投与による血清膵酵素値上昇の発現状況の評価と 薬物療法の適正化に関する研究
・トロンボモデュリンアルファ製剤の使用実績に関する調査
・病棟薬剤師と感染制御チームによる眼科術後感染予防に用いる抗菌薬使用の適正化
・掌蹠膿疱症における有効性バイオマーカーの探索
・掌蹠膿疱症に対する治療薬の使用実態調査
・抗レトロウイルス用薬治療患者におけるお薬手帳利用状況及び相互作用、副作用発現状況の実態調査

 

旭川医科大学病院薬剤部では、上記の研究や中枢神経系に関連する研究を行う研究生(随時)あるいは大学院生(医学系研究科博士課程、毎年1月ごろ募集)を若干名募集しています。申し込み方法等は、旭川医科大学大学院のホームページでご確認ください。

(2019年2月26日)

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外来患者さんに安全で安楽ながん化学療法を提供するための施設で、ベッド9床とリクライニングチェア11床が設置されています。 化学療法センター専任の薬剤師を配置し、専任の看護師とともに患者さんへ質の高いケアを提供しています。毎朝ミニカンファレンスでその日治療を受ける患者さんの情報共有をしています。

 

チームの中の薬剤師の役割は以下の3つが中心です。
1)抗がん剤が承認されたレジメンから逸脱していないか、投与量、投与経路、投与速度、投与スケジュールを確認します。さらに関連する処方オーダや当日の検査結果などを確認し、必要に応じて処方提案を行います。
2)抗がん剤を含む注射剤全般について、安全キャビネットやクリーンベンチを使用して正確かつ無菌的な調製を行います。
3)患者さんと面談し、使用中の薬剤・健康食品や生活習慣について聴き取りを行います。また、副作用の初期症状やその対処に使用する薬剤の使用方法についての説明、携帯型注入器の適正使用に関する情報提供等を行います。

(2022年5月31日)

 人体への有効性と安全性を検証する治験では、被験者の安全と人権、福祉の最優先に考えなければなりません。治験薬は治験において中心的な役割を果たすため、治験薬は治験の開始から終了まで、指名された薬剤師がGCP、実施計画書、治験薬管理手順書に従い、適切に管理しなければなりません。
治験開始前には、事前審査にて、治験薬の管理条件の確認、盲検性維持の運用の立案を依頼者、担当医師や治験コーディネーターと打ち合わせを行いスムーズに治験が開始できる準備を行います。IRB承認後に治験薬の受領、適切な保管条件(温度、診療用医薬品と区別した保管等)での管理を治験が終了するまで行います。そして、治験が開始されると、治験薬の在庫状況、被験者一人ひとりの使用状況(使用量、残薬量)を正確に記録や併用薬のチェック等が必要になります。
このように治験薬管理部門では、治験薬のみならず、治験全体を見渡し、被験者に安全に治験に参加していただき、1つでも多くの医薬品を世に送り出す一端を担っております。

(2022年5月31日)

1)中毒医療への積極的な関与
シグニファイを用いて中毒薬物のスクリーニングを実施しています。スクリーニングは当直を行う全ての薬剤師が24時間体制で行います。
2)感染制御
TDMオーダリングシステム、特定抗菌薬(抗MRSA薬・カルバペネム系抗菌薬等)使用届出システムを開発しており、感染制御部と協働して抗菌薬モニタリングを実施しています。
3)手術部の業務支援
現在は、平日朝一の予定手術の麻酔薬セットの調製業務を手術場にて行っています。手術部では麻薬をはじめとして法的規制が厳密な薬剤が数多く使用される。麻薬のみならず毒薬・向精神薬等の取り扱い基準が厳しさを増していく中、手術部で使用される薬品管理を薬剤師が行うことでより適正な薬剤の使用が可能となります。
4)薬薬連携の強化
2018年6月25日より「院外処方せんにおける疑義照会等簡略化プロトコル」の運用を開始しました。薬物治療管理の一環として、医学・薬学上重要度の低い疑義照会等を減らし、患者への薬学的ケアの充実および処方医師の負担軽減を図ることを目的としています。
5)医療者および学生の教育への関与
地域薬剤師会向けに病態解析や安全対策についての勉強会や調剤技術講習会を行っています。また、毎年10人前後の卒前実習・卒後研修として薬学生を受け入れ、教育を行っており、さらに、新卒医師の卒後臨床研修も行っています。

(2022年5月31日)