膠芽腫(Glioblastoma: GBM

星細胞系腫瘍の中で最も悪性度の高い腫瘍です(WHO grade Ⅳ)。
手術で可能な限り摘出を行うことが基本ですが手術後も放射線療法、化学療法などの補助療法が必要となります。患者さんの生活状態を重視し、神経症状、全身状態をできるだけ悪化させないような治療を追求することが望まれます。ナビゲーションシステム、モニタリングシステムの発達、アミノレブリン酸塩基酸(5-ALA)を用いた術中蛍光反応により、機能温存をしながら最大限の腫瘍切除が積極的を追求しています。

膠芽腫(Glioblastoma: GBM)に対する標準治療

膠芽腫(Glioblastoma: GBM)は手術による摘出だけでは病変を制御できません。日本を含めた先進国でのGBMの標準治療は手術による可及的病変摘出(できる限り多くの病巣を切除すること)とそれに引き続く化学放射線治療です。化学療法(抗がん剤)はテモゾロミド(TMZ)という経口内服薬を使います。また放射線治療は病巣を中心に60Gyという放射線量を処方することが一般的です。治療期間は1ヶ月半程度になり、入院あるいは通院治療です。化学放射線治療終了後は4週間に1回5日間のTMZ内服治療を継続します。TMZの外来での内服治療は12ヶ月間継続することが目標です。旭川医科大学脳神経外科ではGBMを患われる患者さん一人ひとりの治療を最適化するために大阪医療センターと腫瘍の遺伝子解析に関する共同研究を行なっています。

標準治療に追加される治療について

TMZを中心とした化学放射線治療がGBMに対する標準治療ですが、以下の治療法が追加される可能性があります。
・ベバシズマブ(アバスチン): 経静脈的に投与される分子標的薬でありGBMに対する保険診療として承認されています。しかしながらこの薬剤による生存期間の延長効果は否定されていますので、主にTMZを中心とした化学放射線治療を補助する薬剤となります。
・NovoTTF:放射線治療や抗がん剤治療とは異なる新たな治療法として登場した「電場療法」と呼ばれる治療法で、頭皮に電極を装着して腫瘍細胞分裂を阻害する治療法です。この治療はベバシズマブと異なり生存期間の延長効果が証明されています。保険診療として承認されていますが、初発GBMであることなどいくつかの医学的な条件を満たしている必要があります。詳細は以下のリンクを参考にしてくだい。https://www.optune.jp/hcp/

臨床試験について

旭川医科大学病院脳神経外科はJCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)脳腫瘍グループの登録施設です。JCOGは、国立がん研究センター研究開発費研究班を中心とする共同研究グループで、国立がん研究センター中央病院臨床研究支援部門が研究を直接支援する研究班の集合体です。がんに対する標準治療の確立と進歩を目的として様々な研究活動(多施設共同臨床試験)を行っています。
http://www.jcog.jp

GBMに対する臨床試験1
可及的摘出術が行われた初発膠芽腫に対するカルムスチン脳内留置用剤を用いた標準治療確立に関する研究(JCOG1703)

この臨床試験では脳内留置型抗がん剤であるカルムスチンウエハーのGBM治療での効果検証を行なっており、旭川医科大学脳神経外科はこの臨床試験の画像中央判定事務局に指定されています。
http://www.jcog.jp/document/1703.pdf

GBMに対する臨床試験2
高齢者初発膠芽腫に対するTMZ併用寡分割放射線治療の最適化に関する研究(JCOG1910)

この臨床試験では年々増加する高齢者GBM患者さんに対する最適な放射線治療法の開発を行なっています。
http://www.jcog.jp/document/1910.pdf