低悪性度神経膠腫(グリオーマ・Low Grade Glioma)

脳は主として神経細胞(ニューロン)と神経膠細胞(グリア)及び血管で構成されていますが、神経膠腫はその中で神経膠細胞から発生する腫瘍です。神経膠腫は全脳腫瘍の約1/3、小児脳腫瘍では約2/3を占めます。
神経膠腫は脳内を浸潤性に発育する腫瘍ですので、WHO grade Ⅰの腫瘍を除いて手術治療だけでは治療は終了しませんが、
手術による可及的摘出が治療の最も基本となります

びまん性星細胞腫(Diffuse astrocytoma
乏突起細胞腫(O
ligodendroglioma

いずれも浸潤性に脳実質を侵す腫瘍(WHO grade 2もしくは3)です。ゆっくりと脳実質内を浸潤性に発育するので、その発生部位と増大速度により症状は異なります。頭蓋内圧亢進症状として頭痛、嘔吐などがあり約30%-40%の患者さんで頭痛を訴えます。また、てんかん発作は初発症状の約15%、全経過中では約30%にみられます。
治療の基本は手術による切除です。放射線療法、化学療法については未だ意見の分かれるところですが、当院では術後の経過観察中に悪性度が高まったと判断した場合に行うようにしています。当院では若年の方は覚醒下手術を基本に手術を組み立ています。

覚醒下手術

開頭が終了した時点で全身麻酔を中断し、患者さんの神経症状を直に観察しながら神経症状が出現しない範囲内で可能な限りの腫瘍組織を摘出する方法です。
この方法を用いることで、全身麻酔手術では安全な摘出が難しいとされていた運動機能に直結する部位の腫瘍も摘出できることを報告しています。

Izutsu N, Kinoshita M et al Preservation of Motor Function After Resection of Lower-Grade Glioma at the Precentral Gyrus and Prediction by Presurgical Functional Magnetic Resonance Imaging and Magnetoencephalography. World Neurosurg. 2017;107:1045.e5-1045.e8.