耳鼻咽喉科豆知識

人工内耳

滲出性中耳炎にはどんな治療法があるのでしょうか?

鼓膜をよく観察し、聴力検査や鼓膜の動きを調べる検査などを行い、滲出性中耳炎なのかどうか診断します。滲出性中耳炎の診断がついた場合、次のような治療法がありますので、状態に応じて最も適切な治療法を選択していくことになります。

1. 鼓膜切開

難聴の原因にはいろいろありますが,補聴器をしても言葉が聞こえない人のほとんどは,この蝸牛にある聴覚細胞に障害があって聞こえません.しかし,その先にある聴神経や脳には問題ありません.人工内耳は蝸牛に細い電極を挿入し,直接聴覚神経を刺激することによって音や言葉として感知させる治療法です.

鼓膜を切って小さなあなを開けます。鼓膜自体に麻酔をかけてから行いますので、ほとんど痛みはありません。ただし、鼓膜を切る時と開けたあなから鼓膜の奥にたまった滲出液を吸い出すときにとても大きな音がするので、これをいやがるお子さんもいます。鼓膜切開をして滲出液を抜くとその瞬間から聞こえが回復するので、「周りがうるさい」と訴える子もいます。

鼓膜切開の目的は滲出液の除去だけではありません。滲出液を抜くと、それまで滲出液で満たされていた中耳腔に空気が入ります。中耳腔の粘膜を空気にさらしてやることは、この粘膜を正常な状態に戻し、滲出液の再貯留を防ぐことになります。この様に中耳腔の中に空気を入れてやることが、鼓膜切開のもう一つの重要な目的なのです。

ところが、鼓膜切開で開けたあなは多くの場合、1〜2週間ほどで閉じてしまいます。中耳腔の粘膜が十分に正常化していないと、滲出液が再び貯まってくることになります。

2. チューブ留置療法

鼓膜切開を何度も繰り返す場合には、鼓膜切開で開けたあなが閉じないように、そこに小さなチューブを挿入します。そうすることで、中耳の中が常に空気にさらされている状態を維持することができます。その間に中耳の粘膜が正常に戻るのを期待するわけです。

チューブの留置も鼓膜切開と同様、鼓膜自体に麻酔をかけで外来で行います。チューブ留置後の外来通院は特別のことがない限り、月1回ほどです。チューブは数ヶ月ほどで抜け落ちてしまうことが多く、その後一年ほど再発の有無を外来でチェックする必要があります。

3. くすりによる治療

滲出性中耳炎の程度が軽い場合、あるいは鼓膜切開後に再発を防止する目的で数種類の内服薬を用いる場合があります。いずれの場合も、最低でも2カ月、通常3カ月ほど継続し、効果を判断する必要があります。

4. その他の治療法

鼻の奥に中耳とつながる耳管という管の入り口があり、この周りをきれいに保つことが中耳炎のコントロールには非常に重要です。つまり、鼻の奥に鼻水が貯まっていたり、のどに炎症があると滲出性中耳炎が悪くなったり長引いたりします。鼻水がたくさん出るアレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎(蓄膿症)はそれぞれに対する治療が必要です。また、一般のカゼも同様の理由で耳に対して悪い影響を及ぼします。ハナがきたなくなったら要注意です。耳鼻科で、鼻の中を吸ってきれいにし、吸入をかけたり、アレルギー性鼻炎に対するお薬をもらったりする必要があります。

家庭で気を付けることはありますか?

1.鼻水を上手にかむ練習をしましょう。鼻水が多いときに強くかみすぎるのはよくありません。ゆっくりと、片方ずつ、かみ切るようにします。子どもは自分から進んで鼻をかむことはありません。かむように優しく促して下さい。

2.うがいの習慣をつけましょう。上気道炎(カゼ)、のどの炎症を予防しましょう。

3.はなすすりは、滲出性中耳炎に悪影響があることが分かっています。お子さんがはなすすりをしていたら、根気強く注意して止めさせるようにしましょう。

4.家庭内の喫煙は鼻やのどの粘膜をいため、滲出性中耳炎に悪影響をおよぼします。家族でよく話し合い、家庭内分煙・禁煙などを進めてみてはいかがでしょうか。

滲出性中耳炎外来は毎週木曜日の午後です。まず、火、木、金曜日の一般外来を受診して頂く必要があります。滲出性中耳炎の診断がつけば、この午後の外来に通っていただくことができます。

ここに書かれている以外にも、様々の疑問をお持ちのことと思います。どうぞ遠慮なく担当医師にご相談下さい。