耳鼻咽喉科豆知識

扁桃病巣感染症

扁桃病巣感染症はどうして起るのでしょうか?

扁桃病巣感染症の発症のメカニズムに関しては、いまだ不明な部分もありますが、現在では細菌などに対する扁桃での免疫の異常が原因であるとされています。つまり細菌抗原に対する抗体が扁桃でつくられ、免疫複合体を形成し、これが各臓器に達して二次感染を引き起こすと考えられています。実際にIgA腎症の腎臓、掌蹠膿疱症の皮膚には免疫複合体の沈着が認められ、その血液中には免疫複合体の上昇が認められます。

【図5】
図5 掌蹠膿疱症の発症様式

細菌抗原としては、掌蹠膿疱症では「αレンサ球菌」と言う細菌が注目されています。掌蹠膿疱症扁桃ではこのαレンサ球菌群が他の扁桃疾患より多く認められます。このαレンサ球菌の中に存在する蛋白の一部は人間の皮膚にも存在することが証明されており、その蛋白に対する抗体はこの細菌に作用する一方で、自分の皮膚にも攻撃を起こす可能性があります。これらの抗体は、本来は人間の免疫システムにより排除されるのが普通ですが、度重なる扁桃への細菌抗原の曝露、個々人の遺伝的な免疫反応(過敏性など)等により排除されない可能性があります。

おわりに

扁桃病巣感染症の多くは難治性で、長期に渡り多くの薬剤を服用する場合もあります。これらの患者さんにとって短期間で負担の少ない扁桃の手術で症状の改善をみることは多大な福音となります。当科ではこの病気に対しての最先端の研究と積極的な治療を行っています。ここに書かれている病気でお悩みの方は一度当科外来に受診することをお勧めします。