神経の機能改善

神経の機能を改善させる脳神経外科治療

三叉神経痛・片側顔面けいれんに対する微小血管減圧術

三叉神経痛とは

症状
片側顔面に一瞬の激痛が生じる病気です。三叉神経は第1枝(おでこの部分)、第2枝(目の下から頬にかけて)、第3枝(口の周り)に分かれています。第2枝や第3枝の痛みが多くみられます。持続時間は数秒から数十秒ですが、激痛のために食事や洗顔や歯磨きができなくなります。
原因
原因は腫瘍や炎症によるものもありますが、多くの場合は血管が三叉神経を圧迫しているために起こります。
診断
MRIで三叉神経が曲がっていることを確かめます。
治療
最初に内服薬を試してみます。内服による治療もかなり効果的です。内服だけで痛みのコントロールができない場合には微小血管減圧術という手術の治療方法があり、これにより9割の人が改善します。

片側顔面けいれんとは

症状
片側の目の周りや口の周りがぴくぴくしたりひきつれたりする病気です。ひどい場合には片方の目が開けられなく場合や、顔が曲がってしまう場合があります。持続時間はかなり長くほぼ一日中痙攣している人も見られます。まれに両側にみられる場合もありますが、片側顔面けいれんとは別な病気です。
原因
多くの場合、顔面神経に血管が圧迫しているために起こります。
診断
MRIにて圧迫血管を確かめます。
治療
最初に内服薬を試してみます。しかし内服治療の効果は限定的です。内服薬でも効果がない場合にはボツリヌス毒素局所注射療法や原因である圧迫血管をよける微小血管減圧術の手術治療があります。ボツリヌス毒素局所注射療法の効果は3か月から6か月で効果が切れたら再び注射をしなければなりません。手術治療では約8割の人に痙攣の改善が認められます。

微小血管減圧術とは

耳の後ろに直径3㎝程度の穴をあけ、くっついている神経と血管を直接はがして、テフロン綿で固定します。これにより神経の圧迫を解除します。原因が圧迫によるものならば、効果が高い治療です。診断が難しいため、当院では撮影した画像を3次元にする特殊な技術を駆使して立体的に調べます。これにより確実に判断できます。入院期間は約10日となります。

微小血管減圧術微小血管減圧術
MRIから三次元構築した画像

パーキンソン病や本態性振戦に対する脳深部刺激術

パーキンソン病とは

症状
安静時に起こる振戦が主症状で、ほかの症状として体が硬くなったり(固縮)、動きがスムースにできなくなったりする病気です。
原因
脳の中にある中脳黒質のドーパミンという物質が減少するために起こります。診断は症状や画像所見や薬の効果で判断します。
治療
内服コントロールが主体です。内服薬の量が増えてきたり、副作用が生じたり、内服薬の効果に日内変動が激しい場合など不具合がある場合に、脳深部刺激療法という手術による治療があります。手術により震えや固縮といった症状はかなり改善します。パーキンソン病は進行する病気であるため、よりよく過ごせる時間を増やすことが重要です。

本態性振戦とは

症状
体が震える病気です。特に手や頭や声が震え、他に症状がみられません。字を書いたり、箸を使ったり、コップを持った時に震えるのが本態性振戦です。ひどい場合には震えのため自分で食事をとることができなくなることがあります。40歳以上の6%にみられるといわれています。
原因
震えの原因はいろいろありますが、原因がはっきりしないのが本態性振戦です。
治療
命にかかわる病気ではないため、治療をする必要はありません。しかし震えがひどくて日常生活に影響を及ぼすようならば治療を行います。最初は内服を試してみますが、効果は限定的です。脳深部刺激療法という手術で震えを止める方法があります。完全に震えを止めることは難しいですが、これにより多くの人の震えが改善します。

脳深部刺激療法とは

パーキンソン病や本態性振戦の原因は大脳基底核という部位での異常な電気活動によるものです。そのため、大脳基底核に電極を埋め込み持続的に刺激することにより、異常な電気信号を遮断して症状を軽減さます。多くは左右両方に電極を埋め込みます。埋め込んだ電極は前胸部に留置した刺激装置に装着し電圧などをコントロールします。入院期間は約2週間となります。
脳深部刺激療法

痙縮に対するバクロフェン髄注療法

痙縮とは

症状/原因
運動神経の通り道である錐体路が病気やケガ(たとえば脳梗塞)などで障害を受けると、脊髄反射により筋肉が硬くなる現象。徐々に硬さが進行して動かなくなる場合がある。
治療
内服治療・・・筋弛緩薬を用います。
筋肉局所注射
ボツリヌス毒素注射で筋肉の緊張を取ります。効果は強いですが、効果持続時間は3~6か月程度であるため、繰り返して注射が必要になります。
バクロフェン髄注療法
手術で脊髄腔内にカテーテルを留置しておなかにポンプを埋め込み、持続的に薬を脊髄に注入します。効果は強いです。ポンプに薬を2~3か月おきに充填します。
これらの治療方法を組み合わせて行います。

バクロフェン髄注療法とは

背中から脊髄腔内に細いカテーテルという管を挿入して持続的にバクロフェンを注入します。バクロフェンはすぐに効果が切れてしまうため、持続して注入する必要があります。ポンプを体内に埋め込みバクロフェンを脊髄腔内に送り込みます。約10日間の入院となります。
バクロフェン髄注療法

水頭症治療について

水頭症とは

症状/原因
頭の中に流れている水(脳脊髄液)が、いろいろな原因により脳の中に溜まって脳室が拡大した状態です。歩行障害、尿失禁、記憶力低下といった症状が出現します。急激に水頭症になった場合には頭痛や嘔吐が見られ、重症な場合には意識障害をきたします。水頭症には交通性水頭症と非交通性水頭症の2つがあります。
治療
手術により、脳室に溜まった髄液をほかの場所に逃がしてあげます。一つはシャント術です。脳室腹腔シャント術、腰部くも膜下腔腹腔シャント術、脳室心房シャント術があります。シャント術は体内にカテーテルと髄液圧をコントロールする装置を埋め込みます。もう一つは第三脳室開窓術です。近年普及した手術方法で神経内視鏡を使用して髄液の流れを変更させる方法です。体内に装置やカテーテルを埋め込む必要はありません。すべての水頭症に行える治療ではなく、交通性水頭症には効果がありません。しかし、適応があえば体に負担の少ない画期的な方法です。当院では神経内視鏡認定医がおこなっております。約10日間の入院となります。

第3脳室開窓術

髄液の流れを神経内視鏡手術

髄液の流れを神経内視鏡手術で①から②に変更します

第3脳室開窓術前後

第3脳室開窓術前後

お悩みの方は 広島 覚 までご連絡ください
neurosurgery@asahikawa-med.ac.jp