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AMUSEについて

Mission

旭川医科大学外科学講座に関わる若手外科医の育成・支援を目的とした法人団体で道北・道東を中心に北海道の外科医不足の解消を目指し、活動しています。学生の学会参加や専門医育成を支援し、優れた外科医の育成を目指す事を目的としています。

AMUSE第二代代表理事に就任して


旭川医科大学外科学講座
血管・呼吸・腫瘍病態外科学分野 教授
旭川医科大学病院 血管外科 科長
旭川医科大学病院 病院長
AMUSE代表理事 東信良

この度、令和2年4月の総会において代表理事を拝命しました東 信良です。

今年はCovid-19が猛威を振るう中、診療も学会活動も日常生活も一変し、その影響は無論AMUSEにも及んでおり、総会も書面開催で行われる中で、代表理事の交代がありました。大変な時代、予測不能の時代に代表理事を務めることになりましたが、この誌面をお借りして、所信を述べさせて頂きます。

AMUSEが発足して5年が経過し、その初代代表理事を務められた古川博之先生は見事にAMUSEをリードし、組織の安定基盤の確立、めざましい若手の増加、グランドラウンドなどを介した旧第1外科と第2外科の交流促進など、素晴らしい功績を挙げられました。ともに汗をかき、暗中模索の中で、ずっと隣で拝見してきたその古川先生の姿勢・お考えに心から敬意を表したいと思います。

【基本的研修体制】AMUSEのポリシーの根幹は、若手外科医の育成であり、そのためには

1)大学の外科の各分野において、診療内容が充実している必要があること、

2)大学の外科の各分野において、最先端の診療を実践していること、

3)大学の外科の各分野において、魅力ある研究を実践していること、

4)関連施設において充実した魅力ある診療を体験できること、

5)以上を通じて、各人が理想とする医師像を身に着ける環境を提供すること

といった基盤がまず重要であると考えます。

その上で、透明性があり、ハラスメント無く安心して学べる指導体制が、大学だけでなく、関連研修施設にもなければなりません。これまで、それぞれの分野、施設の努力、高いモチベーションにより、若手は概ね良い研修をさせていただき、どこに行っても楽しそうにしているのを見て、そのたびに嬉しい気持ちになっておりますが、そろそろ我々が提供している若手外科医教育が評価を受ける時期に来ているのではないかとも思っています。例えば、外科専門医を取得した外科医がそれまでの研修を振り返って、点数をつけるような形はどうでしょうか?おそらくどの分野も、どの施設も、自分達の教育方針はまずまずと思っているのではないかと思いますが、やはり教育を受ける側にも評価してもらうことで、改善するべきところがあれば改善して、よりよい専攻環境を整えてゆくことが、AMUSEがさらに発展する重要な起点になるのではと考えます。具体的な方法論については、理事会あるいは幹事会で作り上げていただき、また、皆様にご案内させていただきます。

【学会活動支援】若手外科医育成に欠かせないのは学会活動であり、昨年まで学会参加のために多額の出資をしてきておりましたが、今年は学会自体が中止になったり、形を変えて行われるため、学会発表したり、学会で質問したりする機会がほとんどなくなったことの影響が懸念されます。Web開催が増え、学会に行かなくても学会発表が聞ける、専門医に必要な講習も受けられるというむしろ利点があるものの、やはり、学会で発表して事前に予想しない質問にタジタジになったり、ドキドキしながら質問してみたりして、発表した高名な演者に直接話かけてみたりする一歩踏み出す能力を養う機会が無くなっていることが懸念されます。学会は、色々な考え方があることを教えてくれます。自分の考えを否定される経験をすることは、健全な研究者になるためにも、診療上の重要な判断・見極めをすることのできる臨床医になるためにも大変重要なことであると考えます。AMUSEでは、web学会参加を応援しますので、できるだけ時間を見つけて、配信される学会発表を片っ端から聞いてもらいたいと思います。こんなことができるチャンスはなかなかないかも知れません。どんな風に発表すると分かり易いのか、スライドはどんなスライドが見やすいのかという点も含めてみてほしいと思います。そして、ライブ配信は質問する絶好の機会です。顔が見えないので、むしろ質問しやすいかも知れません。是非、一歩踏み出す行動をとる練習をしてみてほしいと思います。

【AMUSEとしての協働】異なる診療分野がどのような診療をして、何が得意なのか、どんな手術を実際にするのかは、むしろ若手外科医がローテーションすれば身をもって経験できますが、我々世代はAMUSEができるまでは、隣の外科の手術をほとんど見る機会はありませんでした。しかし、例えば、肝動脈の再建を依頼されて消化器外科と一緒に手術をしたり、巨大腫瘍を消化器外科と血管外科で一緒に摘出したりすると、外科医として通じ合うもの、そして尊敬できるものを発見でき、非常に相互理解が深まります。その際たるものは、昨年秋から開始された腎臓移植であり、腎臓移植を旭川医科大学病院で成し遂げ、順調に10例を経験したことはまさにAMUSEが無ければ成しえなかった大きな成果であると言えます。こうした共同での手術経験は、サージカルグランドラウンドで是非共有して、振り返って、改善すべきところや、学会論文発表の戦略を相談する機会にすること、そして、そのサージカルグランドラウンドには関連施設の先生方にも可能な範囲でご参集いただくことが、前述のリアルな学会が無い事を埋めるに十分な機会となると考えるところであります。

【研究活動の見える化】研究面においても、異なる分野がどのような研究をしているのかも是非、若手にも中堅にも知ってもらうべきと考えます。昨年初めてAMUSE研究討議会を開催しましたが、質問が相次ぎ、十分な討議する時間がありませんでした(それだけ面白い内容であったということです)。すでに大学院等で研究に従事している方は勿論、研究していない若手にも是非参加してもらい、研究での魅力に接していただくことが重要と考えます。研究者としてのデータの見方は、これまた自分で執刀した手術の客観的評価見や術後合併症対応などにおける適切な判断につながる外科医にとって重要な考え方です。

以上、長々と書きましたが、二代目のAMUSE代表理事として、古川先生が立ち上げ立派に確立された体制を継続しつつ、1)各分野や関連施設の外科研修の魅力度を点数化する、2)サージカルグランドラウンドには是非院内症例を大いに利用して、学会形式にする、3)AMUSE研究討議会には時間を大いに割り当て、1)によりAMUSE研修の魅力に磨きをかけ、2)3)で外科各分野の交流、情報交換をさらに円滑にして研究心を育むことを目指したいと思います。

AMUSEのさらなる発展と魅力発信のため、どうか皆様のご理解、ご支援をよろしくお願い申し上げます。

(令和2年9月末日執筆)

 

AMUSEが成し遂げるべき3つの理念


旭川医科大学外科学講座
心臓大血管外科学分野 教授
旭川医科大学病院 心臓外科 科長
AMUSE理事 紙谷寛之

AMUSE発足からこれで4年がたちました。旧第一外科と旧第二外科が統合されることを契機に、医局業務の効率化および学生・研修医にたいする教育活動の充実を目指して設立されたのがAMUSEであり、全国的にも珍しい形態の一般社団法人であります。我々はそのAMUSEにより何を成し遂げるべきか、私はここに3つの理念を掲げたいと思います。

第一は北海道における地域医療の充実です。北海道においては地方からの人口流出は顕著であり、道北・道東においては地域医療どころか地域そのものが消滅の危機を迎えつつあります。医療は重要な社会のインフラです。今、地域医療をしっかり下支えしないと、我々の愛する北海道そのものが崩壊しかねません。

第二は新人勧誘です。昨今、過重労働の問題が真剣に議論されています。働き方改革を行いつつ現在の仕事量をこなそうとすれば、人員の大幅増は絶対に必要であり、またそのような体制を構築しない限りは、結婚・出産を希望する女性医師の参入も望めません。AMUSE体制で、外科の魅力を存分に伝えることで、外科参入者を増やす努力が今こそ必要です。

第三は教育です。働き方改革の流れの中、どう効率よく若手外科医を教育していき、従来の外科医と同等の、願わくばそれ以上の実力をつけさせるか。ここでもAMUSE体制の真価が問われます。皆で一丸となり、若手外科医教育に関するAMUSEモデルを全国的に向け発信できるよう、努力を重ねる必要があります。

AMUSEは従来の大学病院とその関連病院というヒエラルキーではない、相互補完的で水平方向的な組織であり、その可能性は無限大です。皆で大きく育てていき、地域医療を充実させつつも、世界レベルの人材を育成できる機関となればと願っております。

AMUSEの意義とその先のスペシャリティーの重要性


旭川医科大学外科学講座
消化管外科学分野 教授
旭川医科大学病院 消化管外科 科長
AMUSE理事 角 泰雄

神戸大学より旭川医科大学外科学講座に新たに開講された消化管外科学分野の教授として着任してまいりました。
外科学講座として大講座制を採用している大学は神戸大学を含めいくつかありますが、このAMUSEという法人化された旭川医科大学外科学講座が主催する教育支援機構は、全国でも非常に珍しい組織ではないかと思います。北海道の道東・道北の医療を担う責務のある旭川医科大学外科学講座として各分野の垣根を超えて若手外科医の育成を目的として設立されたものと理解しております。

昨今の医療技術・医療機器の進歩には目を見張るものがあり、昔であれば10年以上かかって進歩していたものがわずか数年で開発され、日常診療にフィードバックされる時代となってきています。地域医療という面から考えれば、いわゆる一般外科医(私の世代からすれば一般外科医というものの定義がよくわかりませんが)の必要性も理解できますが、現在のような情報社会にあっては、田舎だから都会と違うレベルの医療でも仕方ないという理屈は通用しないと思います。
北海道の道東・道北という非常に広大な範囲をカバーするには、まさに情報の共有が最重要課題です。今は、都会だからとか田舎だからとかいうものは、治療の選択の際に考慮すべき因子ではないと思います。その患者さんにベストな医療は何かということを第一に考え、そのために必要な選択肢を考えることが重要です。

旭川医大は遠隔医療に関しては、かなり前から積極的に取り組んできている大学であると認識しています。それを生かさない手はありません。しかし、そのためは専門領域を持ったスペシャリストの集団が必要です。スペシャリストではなく、オールマイティの集団ではべストな選択肢を選ぶことは難しいでしょう。それはなぜか?
オールマイティーと言う人は一見なんでもできると錯覚しがちですが、スペシャリストには絶対に勝てません。『なんでもできる』は、実はなにひとつ完璧にできないのに『“慣れている”からできる』と錯覚しているだけです。したがって、選択肢の中に本当にベストの医療が入らない可能性があります。だから医療の現場ではスペシャリストの集団が必要なのです。

もちろんスペシャリストだけでも十分ではありません。司令塔が必要です。スペシャリスト達をまとめる幅広い知識を持った司令塔が、大学病院では教授であり各疾患のチーフであり、市中病院では部長であると考えます。施設のトップにいる方々には技術的なスペシャリティーを持つだけでなく、幅広い知識を持つ知識の面でのオールマイティさが必要と考えます。そして、常に情報を各施設と共有し最新の治療法・最適な治療法はなにかということを皆で共有していくことが重要です。そうすることで、たとえ遠くにある地域であっても最高のクオリティを持った医療を実践していけるのはないかと考えます。

したがって若い外科医には、まず登竜門としての外科専門医の資格をとることは必須ですが、実はその先にあるサブスペシャリティを取得することの重要性を認識してもらう必要があります。そしてスペシャリストとしての研鑽を積みながらオールマイティな知識を蓄えていく。これが理想的な医師の進むべき道だと信じています。医師は医師を辞めるまで勉強し続けることが必要です。これはこういう理由からです。

これまでにAMUSEでは、入局説明会・ハンズオンセミナー・研究発表会等々、様々な取り組みがなされてきております。このAMUSEを通過することでスペシャリティーを持った外科医が多く誕生することを期待しています。

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