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15周年を迎えて

教授
原渕保明

 1998年11月に就任してから15年周年を迎えた。この15年で医局員が25名新たに入局し、22名が開業などで教室を卒業した。現在、教室員として関連病院も含めて42名が所属している。大学医学部の臨床教室の使命は教育、研究、診療、そして社会貢献と考えている。私の教育理念は「臨床および研究に熱い 情熱と闘志を兼ね備えた人間味溢れる臨床医師の育成」である。教室員には会う毎に,高い志を持って常に前向きに情熱をもって進むことを勧めてきた。そして、この15年間で25名が耳鼻咽喉科専門医を取得し、22名が医学博士の学位を取得した。国際感覚を持ち、人間的にバージョンアップすることも重要であり、これまで計12名が、延べ27年間海外に留学した。

 研究に関しては、業績集で詳細に掲載したので、ここでは簡単に述べる。当教室の研究テーマは、大きく4つのテーマから構成される。ひとつは、1)上気道粘膜免疫学であり、扁桃病巣疾患の病態解明やシラカバ花粉症や小児中耳炎に対するワクチン開発について取り組んできた。また、2)頭頸部癌における分子腫瘍学的・腫瘍免疫学的解析、3)鼻性NK/T細胞リンパ腫における分子腫瘍学的・EBウイルス学的解析も大きなテーマである。そして、当教室の伝統を引き継いだ4)上気道、喉頭の神経生理学的研究である。

 この15年間で学会発表として、全国学会が1470題、国際学会が191題、国内外のシンポジウム発表が87題である。論文発表としては、著書74編、総説205編、和文原著263編、そして英文原著が139編(総インパクトファクターIF:421点)で、うち筆頭原著が86編(IF:227点)、共著が53編(IF:194点)であった。研究代表者として取得した科学研究費は計26題(1億3526万円)であった。学会開催は全国学会を4学会、国際学会は国際扁桃免疫シンポジウムを2010年に開催した。これらの研究業績は新臨床研修制度の発足以来、新入医局員も減少し、マンパワー不足に悩みながら教室員全員が初心を忘れることなく、日夜、臨床応用に向けた研究を行ってきた成果である。当教室の規模からいえば、誇れる業績と思っている。いずれも、質の高い研究成果であるが、臨床応用にまでは至っていないのが現実である。次の5年間に向けてさらなる発展を切に願っている。

 診療に関しては耳鼻咽喉科・頭頸部外科全般に、「最低でも全国レベル」の医療技術の維持、向上と「先端医療技術」の導入を理念としてきた。まず、就任前には行っていなかった遊離皮弁技術導入のために、就任した翌年、1999年4月から1年間、今田正信講師を東京の癌研究会附属病院頭頸科に1年間派遣し、2000年からは当科でも施行することとなった。また、就任前にはあまりに行っていなかった耳科手術、側頭骨外科も就任後は精力的に行った。人工内耳手術は2000年に5例を行ってから現在まで47例行った。アブミ骨手術や顔面神経減荷術、さらに錐体尖真珠腫やグロームス腫瘍など高難度の手術も行うようになり、耳科手術全体で年間100例程度行うようになった。頭頸部癌に対しては手術不能症例や機能温存を目的とした放射線併用超選択的動注化学療法を2003年から導入し、現在まで237例行っている。当科では、従来では舌・喉頭全摘していた舌癌、舌根癌、喉頭癌や下咽頭癌の症例に対しても積極的に放射線併用超選択的動注化学療法を行っており、その結果、喉頭機能や舌機能を温存しながら治療成績の向上がみられたことは大きな成果といえよう。鼻性NK/T細胞リンパ腫の病態解明と治療は私のライフワークのひとつである。従来、本リンパ腫の予後は極めて不良で大部分の患者が1年以内に死亡し、効果的治療法は未開発のままであった。当科では2003年に本リンパ腫に対して放射線同時併用浅側頭動脈動注化学療法を開発し、行っている。使用する化学療法レジメンもMPVIC-P療法と称し、当科で開発した。現在まで13名に対し、本治療を行い、いずれもCRで100%の無病生存率を得ている。最近では、北海道のみならず本州からも患者が紹介されるようになった。音声外科の分野では、2006年、片田彰博講師が米国バンダービルト大学で留学中に研修した喉頭(枠組み)形成術が導入され、音声改善術の成績が飛躍的に向上した。紹介患者数も増加し、現在では当科のひとつの得意分野となっている。

 低侵襲手術、内視鏡手術に関しても精力的に導入した。2007年からは耳下腺浅葉手術、側頸嚢胞手術に対して、顔面の皺とり手術で用いる切開線(フェイスリフト切開)を採用し、美容的にも患者に好評を得ている。2009年からは、片山昭公講師が日本医大外科、清水一雄教授のもとで研修した内視鏡補助下甲状腺手術(video assisted neck surgery: VANS)を導入した。本手術は鎖骨下に3cm程度の皮膚切開を入れ、頸部皮膚から内視鏡を入れて行う甲状腺半切(全摘)除術で、頸部に皮膚切開を入れないため、美容的にも優れ、入院も3日間で済む。関東以北、当科しか行っていない手術であり、症例数も延べ100例と全国2位である。昨年からは本方法を顎下腺摘出術に応用している。2010年には、当時全国でも数施設しか行っていなかった唾液腺内視鏡手術(sialo-endoscopic surgery: SES)を高原講師が中心になって導入した。従来、頸部外切開アプローチで顎下腺摘出術を行っていた腺内唾石や移行部唾石はSESによって頸部に傷をつけることなく摘出するようになった。最近では北海道全域から患者が紹介されるようなり、症例数も増加している。このような手術の導入によって、年間の手術件数は1998年度には200例を下回っていたが、その後は順調に増加し続け、2007年度以降では年間500例以上を維持している。今後も、ダビンチを用いたロボット手術など、先端技術の導入を常に視野に入れて、大学病院としての機能を維持、向上を目指していくつもりである。

 地域医療に関しては、就任当初14施設であった関連病院は、2010年には25施設と増加した。しかし、医局員の減少もあり、非協力的な関連病院への派遣中止や新たな関連病院づくりの結果、現在23病院(常勤13施設、非常勤10施設)になっている。常勤施設は、いずれも複数の医師が勤務し、大学からも応援で非常勤医師を出張することで、できるかぎり負担を少なくすることにしている。また、北海道の耳鼻科診療技術の向上を目的にいくつかの研究会を継続、新設した。海野前教授の時代に企画された旭川集談会は、私が就任後も継続して毎年12月に開催し、今年で28回になる。私が就任後に年数回開催している北北海道耳鼻咽喉科懇話会は62回を迎え、旭川めまい塾が10回、同門会学術講演会が15回行った。いずれも全国、時には海外から耳鼻咽喉科教授をお招きしている。地域社会の貢献として、根室市の学校検診を2000年から、道北(宗谷地方、留萌北部)の学校検診を2009年から行っている。

 以上のように、この15年間、教室員と共に全力で歩んできた。これらのことは、教室員が一丸となって取り組んできた結果であり、誇りである。しかしながら、ここで満足することなく、今後のさらなる発展に向けて教室員ひとりひとりが高い志と情熱をもって一歩一歩前進することを願います。同門会の諸先生には一層の御協力と御指導を賜りますよう心からお願い申し上げます。