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耳鼻咽喉科・頭頸部外科 研究概要

当教室では耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域を幅広く網羅する研究を行っている。また全ての教室員は1つ以上の研究テーマを持ち、研究と臨床を互いにフィードバックさせ、双方のレベルの向上を図っている。毎年、英文学術誌に多くの論文が掲載され、それらの研究成果に対し、国内はもとより国外からも高い評価を受けている。(下線は平成20年4月現在、本学に在籍している教室員である。)

I. 腫瘍・血液病態学

1.頭頸部悪性腫瘍の分子腫瘍学的、ウイルス学的解析
坂東伸幸片山昭公高原 幹石井秀幸岸部 幹、長峯正泰、森合重誉、長門利純)

頭頸部悪性腫瘍について分子腫瘍学的、腫瘍免疫学的およびウイルス学的な多面的解析を行い、将来の分子標的治療、遺伝子診断・治療を含めたテーラーメイド診療の開発を目指している。

(1)舌癌、咽頭癌、喉頭癌、上顎癌などを含む頭頸部扁平上皮癌において発癌や進展、転移のメカニズムは十分解明されていない。当教室では免疫組織学的、分子生物学的手法を駆使してp53癌抑制遺伝子の変異、VEGFなどの血管新生因子やmatrix metalloproteinase (MMP)の過剰発現などを解析し、研究成果を報告してきた。また近年、一酸化窒素合成酵素(iNOS)の発癌への関与、CCR4などのケモカインレセプターやSUMO-1などの分子に着目し、発癌の機序や転移のメカニズムの解明を進めている。さらに、cDNAアレイを用いた癌遺伝子異常発現のスクリーニングも行っている。研究成果の積み重ねが癌それぞれの性質に基づいたテーラーメイド診療の開発につながると考えている。

(2)鼻性NK/T細胞リンパ腫は顔面正中部に沿って進行する破壊性壊死性肉芽腫性病変を主体とするリンパ腫であり、病態が明らかではなく、極めて予後不良な悪性腫瘍である。原渕教授が1990年にNK/T細胞リンパ腫の腫瘍細胞内にEBウイルスDNAと関連蛋白を世界に先駆けて発見して以来、当教室では本疾患の発症や進行のメカニズムの解析を精力的におこなってきた。これまでにスイスチューリッヒ大学小児病院感染部門(David Nadal教授)に1名、スウェーデンカロリンスカ研究所Microbiology & Tumor biology center(Eva Klein教授)に2名、研究留学している。その他にも国内外の数多くの施設と共同研究を行っている。近年、鼻性NK/T細胞リンパ腫細胞株におけるIL-2Rα、IL-9、IL-10などの分子に着目し、EBウイルスとの関連を含めた研究成果を国内外に公表した。また臨床面では新たな治療法として鼻性NK/T細胞リンパ腫I・II期症例に対し、放射線併用MPVIC-P浅側頭動脈動注化学療法を積極的に行い、高い奏功率が得られている。

(3)腫瘍免疫学の分野では癌細胞のHLA class I分子の発現異常について解析し、癌細胞が免疫監視機構から逃避するメカニズムの解明と癌特異的免疫療法の開発を目指している。

癌関連の研究は米国バッファロー市にあるローズウェルパーク癌研究所Soldano Ferrone教授(現ピッツバーグ大学癌研究所)との共同研究を行っており、この10年間に3名が研究留学している。

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II. 免疫・感染症病態学

1. 扁桃の粘膜免疫機構の解析と扁桃病巣疾患の病態解明
坂東伸幸高原 幹岸部 幹、後藤 孝、上田征吾吉崎智貴、野澤はやぶさ)

扁桃は上気道粘膜免疫機構において重要な役割を演じている免疫臓器であると同時に、細菌やウイルスの標的となる感染臓器であり、相反する二面性の機能を有する非常に興味深い臓器といえる。当教室は日常診療でよく見られる急性咽頭・扁桃炎において国内で多施設共同研究を行い、本邦における診療指針の作成に関わっている。扁桃炎によって症状や所見が悪化し、扁桃摘出術が著効する疾患を扁桃病巣疾患と呼ぶが、その2次疾患には掌蹠膿疱症、胸肋鎖骨過形成症、IgA腎症、尋常性乾癬、アレルギー性紫斑病、不明熱、反応性関節炎などが挙げられる。掌蹠膿疱症、尋常性乾癬、アレルギー性紫斑病については本学皮膚科と共同研究を行い、これまで皮膚リンパ球抗原(CLA抗原)を介した扁桃Tリンパ球の皮膚へのホーミングや共刺激分子(CTLA-4、Smad7)の活性化、CCR6などのケモカインレセプターに関する研究成果を報告してきた。IgA腎症においては扁桃におけるIgAの過剰産生、T細胞受容体レパートリーの発現やB細胞刺激因子(BAFF)の役割について解析を進めている。

臨床面では本学腎臓内科との共同臨床研究でIgA腎症に対する扁桃摘出術とステロイドパルス療法併用の有効性について検討している。欧米では扁桃病巣疾患に対する扁桃摘出術が十分認識されておらず、その病態を解明し、十分な基礎的エビデンスを得ることによって、扁桃病巣疾患に対する治療としての扁桃摘出術を国内のみならず、国外にも発信することができると考えている。平成22年には第7回国際扁桃学会を旭川市で開催予定である。

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2. 小児急性中耳炎に対する細菌疫学的解析とワクチン療法の開発
林 達哉、安部裕介、野村由香)

小児急性中耳炎は耳鼻咽喉科領域で最も多い疾患のひとつであるが、近年の多剤耐性菌の流行で治療に抵抗する難治性中耳炎や反復性中耳炎症例が増加し、細菌疫学的見地から解析することが重要である。また、根治的治療としてはワクチン療法の開発が期待される。

当教室では、1)中耳炎起炎菌の耐性化について中耳炎患児のみならず健康児を対象に北海道全体にわたり疫学的調査を行い、本疾患の予防や診断基準の確立、スクリーニング法の実用化を目的として研究中である。2)中耳炎起因菌のひとつであるインフルエンザ菌に対するワクチンの開発を目的として、インフルエンザ菌P6蛋白に着目し、その抗原エピトープから構成されるワクチン療法を開発中である。本研究は原渕教授がかつて留学していた米国バッファロー市のニューヨーク州立大学小児病院Howard Faden教授やローズウェルパーク癌研究所Yasmin Thanavala教授らのグループと共同研究中であり、今まで1名が研究留学している。

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3. シラカンバ花粉症の病態解明とペプチドワクチン療法の開発
 (安部裕介、野村由香、長門利純)

シラカンバ花粉症は欧米では最も多い花粉症であり、本邦では北海道に多い。花粉症患者を含めたアレルギー患者数は増加の一途をたどっているが、いまだに根本的な治療法が見出されていないのが現状である。当教室では開設以来、本学第二病理学教室と共同でシラカンバ花粉症の新たな治療法の開発と病態の解明をテーマとして研究を行ってきた。

第一にシラカンバ花粉症における抗原提示細胞についてcDNAアレイを用いて解析し、サイトカイン・ケモカイン産生ならびに共刺激分子発現を健常者と比較検討した。またシラカンバ花粉症に対するペプチドワクチン療法の開発に向けて、シラカンバの抗原エピトープの解析を行っている。最近数多くのHLA-DR分子に適合し、Th1反応を誘導するエピトープを発見し、その解析を行っている。さらにシラカンバ花粉症患者に高率に合併する口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome:OAS)について臨床的、基礎的検討も精力的に行っている。当科は平成20年より日本アレルギー学会認定施設となり、アレルギーの分野においても研究を推し進めていく予定である。

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III.感覚器・運動器病態学

1. 喉頭機能障害に対する機能的電気刺激療法の開発
片田彰博、荒川卓哉、國部 勇、太田 亮、野村研一郎

中枢および末梢神経障害などによって引き起こされた種々の喉頭機能障害に対して、運動補助機能的電気刺激を用いて改善することを目指し主に実験動物を用いた基礎的研究を行っている。この研究を発展させることにより、反回神経麻痺などによる呼吸、気道反射、嚥下、発声が障害された患者の喉頭機能の改善に応用することが期待できる。本研究は、米国ナッシュビル市にあるバンダービルト大学耳鼻咽喉科学教室David L. Zealear教授との共同研究であり、今までに3名が研究留学し、生体埋め込み型刺激装置の開発を進めている。

2. 上気道呼吸生理機能の研究
片田彰博、荒川卓哉、國部 勇、太田 亮、野村研一郎

電気生理学的アプローチを用いて、鼻腔、喉頭由来の気道反射の中枢神経機構を解析している。鼻腔刺激で誘発される吸気抑制現象、内喉頭筋活動増強現象、嚥下に関与する神経機構を解明するための研究を行っている。また特殊な状況下として、動物モデルを用いてREM睡眠の喉頭機能への影響について研究している。さらに発声機能と聴覚機能の相互関係を解析し発声時の呼吸ニューロン活動や聴覚との関係も明らかにした。いずれも本学第2生理学教室との共同研究である。

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