法医学一口メモQ 市販薬は安全で、バケツ一杯飲まないと死なないというのは本当ですか? Q 兄弟姉妹のDNAを用いた身元特定とは何ですか?
数箱を一度に摂取すると、死に至る市販薬は沢山あります。用法・用量を守り、正しく使う事が大切です。
例えはどんな薬ですか?
風邪薬、咳止め、酔い止め、睡眠改善薬など、多種多様です。
周囲にこれらの空箱が沢山あった場合、注意が必要ですね。
その通りです。ですが、別の場所で飲んで移動する、飲んでから空箱を全て処分することは十分に可能です。服用して直ぐに倒れるわけではありませんので、空箱が周囲に全く見つからない場合もあります。
どうしたら良いのでしょう?
血液や尿を検査(薬物分析・本鑑定)するのが一番確実です。
イムノアッセイキットでの検査は大切です。しかし、イムノアッセイキットでは検出されない薬物が世の中に沢山流通しています。基本的に市販薬はイムノアッセイキットで検出できません。処方薬も近年多く処方されている睡眠薬や他の抗精神病薬は、イムノアッセイキットで検出することができません。精密分析機器を用いた薬毒物分析(本鑑定)が必要です。
検視事例を全例本鑑定するのですか?
検視事案を全例本鑑定している県警もあるそうです。薬物による連続殺人事件が、近隣であったからとのことです。現実問題、全例本鑑定が無理ならば、血液を保存しておき、将来事件性が発覚した場合、検証してはどうでしょう。
実際、そんな事ってあるのでしょうか?
血液を保存しておいたお陰で、当初病死とされていたものが、後に中毒死だったと判明したこともあるようです。
中毒死は、血液検査をしない限り、外見は急性心臓死にみえるでしょう。
怖いですね。
中毒死が病死になってしまいますね。
肉眼解剖後の諸検査が大変重要です。環境捜査や諸検査の結果を含め、様々な情報から死因を総合的に判断するのが、法医解剖(司法解剖、調査法解剖、承諾解剖、行政解剖)です。
肉眼解剖が終わった後の検査が大切なのですか?
肉眼解剖だけでは、中毒死、特に急性中毒死は分かりません。血液や尿、必要な場合は各組織を用いて、薬毒物分析を行う必要があります。病理組織学検査、生化学検査等も大変重要です。
薬毒物分析をしないと中毒死は分からないのですね?
その通りです。急性中毒死を診断する場合、精密分析機器を用いた薬毒物分析が死因究明の決め手となります。
あります。検視・検案で内因死とされたものが、中毒死だったというものものがいくつかありました。 例えば、
急性肺炎→市販薬(酔い止め)による急性薬物中毒死 急性心臓死→市販薬(睡眠改善薬)による急性薬物中毒死等があります 市販薬でも、死ぬんですね・・・。
改めて言うまでもありませんが、薬自体は人の健康を回復するために欠かせないものです。人が使い方を誤った場合に、不都合な状況が起こるのです。それは、果物ナイフや包丁(有尖片刃器)、紐やネクタイ(索状物)を本来の使用目的と異なった用い方をすると、人の生命を脅かす事があるのと同様です。
市販薬以外でも、身近なものによる中毒死ってありますか・・・。
例えば、
急性心臓死→ガス中毒死(事故) 原因不明の内因死→イヌサフラン誤食によるコルヒチン中毒(事故) 等があります ガス中毒の原因って何だったのですか?
一酸化炭素中毒、青酸ガス中毒、硫化水素中毒・・・等があります。
【まとめ】 薬は、市販薬でも処方薬でも、用法・用量(使い方と使う量)を正しく守って使うことが大切です。用量が多すぎると、市販薬でも処方薬でも、健康被害が出ます。極端な過量摂取では、死に至ることがあります。 水、酒、塩、醤油は、誰の台所にもある生活必需品ですが、限度を超えて摂取すると、死に至る事があります。 全て適量を使用することが、とても大切です。
ご遺体の身元特定において、推定死者の親や子のDNAが得られない場合に、検体提供者として兄弟姉妹のDNAを使用する鑑定(同胞鑑定)のことです。
ご遺体の性別、兄弟姉妹の人数は関係ありますか?
ご遺体の性別は問わず、兄弟姉妹の1名から調べることができます。
親や子と比べて兄弟姉妹鑑定の正確性はどうですか?
通常行われている16座位DNA型や、追加の検査により同程度の正確性で判定できます。
追加の検査にはY染色体DNA型、ミトコンドリアDNA型検査などがあります。また、兄弟姉妹の人数が増えると、より正確な判定ができます。 どのような判定結果になりますか?
確率計算を行うことで、ご遺体と検体提供者は「兄弟姉妹である」、「兄弟姉妹とはいえない」などの判定結果が得られます。
異父または異母兄弟姉妹である場合は検査できますか?
検査可能ですが、兄弟姉妹よりも判定が難しく、判定不能となる場合があります。
【まとめ】 親や子のDNAが得られない場合でもご遺体の身元特定は可能であり、特に兄弟姉妹のDNAを用いる同胞鑑定は選択肢が増えるので有効です。 |