手術部は病院中央診療棟3階の11部屋と8階の2部屋で定期手術と臨時手術に対応している。約11000人の年間入院患者に対し、平成26年度は7120件の手術がおこなわれている状況から考えると、入院患者の50数%〜60%が手術治療を受けていることがわかる。このうち30%が救急などからの緊急手術である。本手術部は、@地域の患者さんに外科的治療を提供する重要な場であり、A迅速かつ安全を考慮し、B時代のニーズにあった最新の手技を提供しなければならない。またC医学生・看護学生・コメディカルの重要な質の高い教育の場を提供している。
手術部には、外科系医師、麻酔科医師、手術部ナースステーション看護師、臨床工学技士、薬剤師、放射線技師、看護助手、清掃業務・物品管理業務・洗浄滅菌業務の外注職員など多くの職種が働いており、チーム医療の基本をここに見ることができる。各職種ともかなり質の高いレベルで仕事をしている。
2003年6月に手術部の再開発がおこなわれた。新しく導入した患者情報管理システムや内視鏡外科統合システムは、@患者生体情報のIT化と、A手術画像の共有化の2本柱のシステムで構成された。手術用滅菌済み器材の保管・搬送システムは、手術オーダーにあわせ、各手術室に手術用滅菌済み器材を搬入する自動搬送ロボットシステムであり、大きな看護支援となっている。手術部SPDと物品管理システム導入は、@看護業務支援、A在庫管理の精度向上、B術式ごとの収支情報をデータベースの蓄積の3つの目的をもって構築した。術中迅速病理診断システムは本邦初の試みであり、病理診断と手術の進行がスムーズになり、外科治療の質が大きく向上した。
これら運用面を重視した手術部設計は高い評価を得ている。各システムの評価も高く、これまで国内外から多くの方が見学に来ている。多職種のチームワークの良さが秀でていることも本手術部の自慢である。2014年と2015年に患者情報管理システムシステムはさらなる上のバージョンに更新された。このシステムをなくして、年間7000件台の手術は継続できなかったと考えられる。(600床クラスの国立大学病院では12年間トップを維持している。
2010年9月より多軸血管撮影装置を導入したハイブリッド手術室が稼働した。多軸血管撮影装置とは、血管内を経由して治療するインターベンション手術と従来の外科手術との相互補完と融合を目的として、8軸の回転機構により、柔軟なCアームの移動可能なX線血管撮影装置である。近年、普及が目覚しい血管外科領域のステントグラフト留置術において、従来の移動型X線Cアーム装置よりも視野が広く末梢血管の描出も良好な血管撮影装置を配したハイブリッド手術室を志向する傾向が高まっており、多くの大学病院でも導入されてきている。最近ではTAVI(経カテーテル大動脈弁治療)の施設認定も受け、次世代の手術室となってきている。手術中にナビゲーションシステムを使用する脳神経外科、耳鼻咽喉科などが術中の3次元データ取得を目的に、CTのような立体画像を撮影することもできるハイブリッド手術室の使用が注目されている。このハイブリッド手術室設備を活用することで、今後とも地域へ高度医療を提供するとともに、世界的に新たな潮流であるハイブリッド設備の対象領域や治療法の拡充にも力を注いでいく。
 ハイブリッド手術室 概観
また、2011年1月よりデイサージャリー手術室の運用を開始した。デイサージャリー手術室2部屋の整備は、特に手術患者の多い眼科を対象とし、1000〜1500件の手術に対応可能と考えられている。日本人の平均寿命の延長や糖尿病の患者の増加で、白内障患者が年々増加し、今回のデイサージャリー手術室の開設により、手術待ち期間の短縮が図られている。デイサージャリー手術室は眼科病棟のある8階に設置し、患者の移動の動線を短くし、術後などの目の不自由な患者さんの安全に配慮している。 最新式の設備を装備することによって、最良な日帰り手術を提供することが可能となり、全国の専門家が注目している。

デイサージャリー手術室 概観
2014年より手術支援ロボット(ダヴィンチ)が導入された。対象疾患は前立腺全摘手術がメインであるが、臨床研究として倫理委員会を通った消化器外科領域の利用もある。次世代の手術医療を髣髴させる機器である。

手術支援ロボット(da Vinci Si)
|