第14回イブニングセミナー
終了報告
日時:2025年5月23日
対象:全職員・学生


後藤 理恵子先生

セミナーの様子

クロスSWOT分析
令和7年5月23日、第14回イブニングセミナーを開催いたしました。今回は、東京医科大学 医学・看護学教育推進センターの後藤理恵子先生をお招きし、「医療職の働き方改革の現状と問題解決について考える」というテーマでご講演いただきました。
後藤先生は、医師の長時間労働が健康に与える深刻な影響について言及されました。大学病院に勤務する医師の47.1%が過労死ラインを超える労働時間で勤務しており、筋骨格系の痛み、消化器症状、精神的な不調と強く関連しているとのことです。これらは医師の職業満足度の低下や離職にもつながっており、24時間以上起きた状態での診療は「ビール大瓶2~3本を飲んだのと同等の注意力しかない」とも表現されました。
また、令和6年4月より施行された「医師の働き方改革」では、一般的な労働時間の上限を「年間960時間以下」とするA水準を目指し、救急医療機関や専門研修医の場合は「年間1860時間以下」とする基準が設けられました。これにより、医師の健康と医療の質の両立を図る動きが加速しています。
一方で、医療職の国際比較では、看護職員や薬剤師数は多いものの、日本の医師数はOECD諸国の中でも最低水準にとどまっています。都道府県別の看護職員の需給状況を見ると、2025年には約7割の自治体で供給が需要を上回ると予測されており、全体としては改善傾向にあるものの、北海道では依然として不足が続いています。
後藤先生はまた、チームの成長を理解する手法として「Tuckmanのチーム発達モデル(Tuckman’s Team Development Model)」を紹介されました。このモデルは、チームが形成から高パフォーマンスに至るまでのプロセスを「形成期」「混乱期」「統一期」「機能期」の4段階に分けて説明しており、各段階での課題と対応を理解することで、効果的なチームビルディングが可能になると述べられました。
講演後には、聴講者を2グループに分け、「働き方改革における本学の強み・弱み・機会・脅威」についてクロスSWOT分析のワークショップを実施しました。以下はその主な成果です。
強み(Strengths):
• 特定行為看護師など専門性の高い人材が多い
• 人事課労務管理係によるチェックとフィードバック体制
• 柔軟性があり、若い人材が多く、職場の雰囲気が良好
弱み(Weaknesses):
• 部署間での情報共有が不十分
• 研究・研修の文化が薄れつつある
• 情報収集が非効率的、IT化が進んでいない
機会(Opportunities):
• 院長による働き方改革への理解
• 他職種合同会議の開催予定と定期化の動き
脅威(Threats):
• 資金的制約
• 働き方改革に関するコンサルティング不足
• 報告の機会はあるが、十分な検討の場が不足している
少人数ながらも、他職種が集まり活発な意見交換がなされ、有意義な時間となりました。
最後に、ご多忙の中ご参加いただきました皆様に心より感謝申し上げます。今後も実りあるセミナーの開催を継続してまいりますので、ぜひご参加くださいますようお願い申し上げます。
二輪草センター副センター長 菅野 恭子