○旭川医科大学病原体等安全管理規程
平成27年1月14日
旭医大達第11号
第1章 総則
(目的)
第1条 この規程は,感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号。以下「感染症法」という。)及び家畜伝染病予防法(昭和26年法律第166号。以下「家伝法」という。)に基づき,旭川医科大学(以下「本学」という。)の教育及び研究用に供する病原体等の安全管理について定め,病原体等へのばく露その他の病原体等による事故を未然に防止することを目的とする。
2 この規程は,感染症法第56条の18に基づき二種病原体等許可所持者(学長)が作成して,厚生労働大臣に届け出る感染症発生予防規程及び家伝法第46条の12に基づき家畜伝染病病原体許可所持者(学長)が作成して,農林水産大臣に届け出る家畜伝染病発生予防規程として取扱うものとする。
(1) 病原体等 ウイルス,細菌,真菌,寄生虫,プリオン及びそれらの産生する毒素で,人,動物又は植物に危害を及ぼす要因となるもの
(2) バイオセーフティレベル(以下「BSL」という。) 病原体等の人又は動物への病原性及び伝播性の程度並びに疾患の予防法又は治療法を考慮し,人又は動物への危害を及ぼす危険性の程度に応じて定める病原体等の取扱いに関する安全対策の区分
(3) 動物実験バイオセーフティレベル(以下「ABSL」という。) 病原体等を用いた動物実験において,人又は実験動物への病原性及び伝播性の程度並びに疾患の予防法又は治療法を考慮し,人又は実験動物への危害を及ぼす危険性の程度に応じて定める病原体等の取扱いに関する安全対策の区分
(4) 特定病原体等 感染症法で規定する一種病原体等,二種病原体等,三種病原体等及び四種病原体等。ただし,本学では一種病原体等の所持及び取扱いは行わないものとする。
(5) 監視伝染病病原体 家伝法で規定する家畜伝染病病原体及び届出伝染病等病原体
(6) 安全管理 病原体等への曝露等を予防すること(バイオセーフティ)並びに病原体等の紛失,盗難,濫用,悪用等を防止すること(バイオセキュリティ)。
(7) 実験室等 病原体等を取扱い,又は滅菌等をする実験室,病原体等の保管のための設備及び動物に対して病原体等を使用した場合における当該動物の飼養管理のための設備
(8) 管理区域 実験室等,実験室等に近接して設けられる空調及び排水等に係る設備区域など病原体等の安全管理に必要な区域
2 この規程において,BSL及びABSLを「レベル」という。
3 この規程において「レベル1病原体等,レベル2病原体等,3病原体等及びレベル4病原体等」とは,それぞれのレベルに分類される病原体等をいう。ただし,本学ではレベル4に該当する病原体等は取り扱わないものとする。
4 この規程において「レベル1施設,レベル2施設,レベル3施設及びレベル4施設」とは,それぞれのレベルに分類される病原体等を用いて実験を行う室をいう。
第2章 安全管理体制
(学長の責務)
第3条 学長は,本学における病原体等の安全管理に関する事務を統括する。
(委員会)
第4条 本学に,病原体等の安全管理に関する事項について審議又は調査を行うため,旭川医科大学病原体等安全管理委員会(以下「委員会」という。)を置く。
2 委員会に関し必要な事項は,別に定める。
(管理責任者)
第5条 本学に病原体等安全管理責任者(以下「管理責任者」という。)を置き,委員会の委員長をもって充てる。
2 管理責任者は,次に掲げる業務を行う。
(1) 第7条に定める実験研究責任者間の調整を行うこと。
(2) 第21条に定める帳簿の内容を確認すること。
(3) 第7条に定める実験研究責任者に対して,実験の安全確保に関して適切な指導及び助言を行うこと。
(4) その他管理区域における病原体等の安全確保に関する必要な事項を実施すること。
3 管理責任者は,学長の指示に従うとともに,この規程に定める事項を遵守しなければならない。
(取扱主任者)
第6条 学長は,本学において二種病原体等を所持しようとする場合には病原体等取扱主任者(感染症法に定める「病原体等取扱主任者」をいう。)を,家畜伝染病病原体を所持しようとする場合には家畜伝染病病原体取扱主任者(家伝法に定める「病原体取扱主任者」をいう。)を置くものとする(病原体等取扱主任者及び家畜伝染病病原体取扱主任者を併せて「取扱主任者」という。以下同じ。)。
2 病原体等取扱主任者は,立入検査等への立会い,施設の維持管理等その職務を遂行し,二種病原体等を取り扱う管理区域に立ち入る者に対し,感染症法に基づく命令又はこの規程の実施を確保するための指示を行うものとする。
3 家畜伝染病病原体取扱主任者は,立入検査等への立会い,施設の維持管理等その職務を遂行し,家畜伝染病病原体を取り扱う管理区域に立ち入る者に対し,家伝法に基づく命令又はこの規程の実施を確保するための指示を行うものとする。
4 学長は,取扱主任者が何らかの理由によりその職務を遂行することができない場合は,取扱主任者の資格を有する本学職員のうちから取扱主任者の代理者を選任し,その期間中の職務を代行させるものとする。
(実験研究責任者)
第7条 本学に,病原体等実験研究責任者(以下「実験研究責任者」という。)を置き,同一課題名で病原体等を取り扱う実験等を行おうとする者の中から,管理責任者が指名する者をもって充てる。
2 実験研究責任者は,次に掲げる業務を処理する。
(1) 第21条に定める帳簿について,取扱者とともに,病原体等の入手,移動及び使用状況をその都度記帳すること。
(2) 取扱者に対して,実験の安全確保に関して適切な指導及び助言を行うこと。
(3) その他実験の安全確保に関する必要な事項を実施すること。
3 実験研究責任者は,管理責任者及び取扱主任者の指示に従うとともに,この規程に定める事項を遵守しなければならない。
(取扱者)
第8条 取扱者は,管理区域内で病原体等を取り扱う全ての者であって,次に掲げる要件を満たす者とする。
(1) 取り扱う病原体等に関し,その病原性,起こり得る汚染の範囲及び安全な取扱方法について熟知し,事故及び災害時における措置等について十分な知識を有していること。
(2) 第25条に定める教育訓練を受けていること。
(3) 第26条に定める健康診断を受診し,異常が認められないこと。
2 取扱者は,管理責任者,取扱主任者及び実験研究責任者の指示に従うとともに,この規程に定める事項を遵守しなければならない。
第3章 安全管理基準等
(病原体等のレベルの分類)
第9条 病原体等のレベルを分類する基準については,世界保健機関(WHO)刊行の『実験室バイオセーフティ指針』を参考に委員会が別に定める。
2 病原体等のレベルの分類は,関連法令等による分類を参考に委員会が別に定める。ただし,植物病原菌の安全管理については,植物防疫法(昭和25年法律第151号)の規定に則り取り扱うこととする。
(実験室等の安全設備及び運営に関する基準等)
第10条 病原体等を取り扱う実験室等は,委員会が別に定める基準に従って必要な設備を備え,運営しなければならない。
2 特定病原体等の実験室等については,感染症法に規定する基準に適合するように維持しなければならない。
3 監視伝染病病原体の実験室等については,家伝法に規定する基準に適合するように維持しなければならない。
(管理区域の設定)
第11条 学長は,病原体等の安全管理のため,管理区域を設定するものとする。
2 実験研究責任者は,第15条に定める病原体等の保管又は実験を新たに行おうとするときは,所定の様式により管理区域の設定を予め学長へ申請し,承認を受けなければならない。なお,当該管理区域を変更又は廃止しようとするときも,同様とする。
(管理区域の表示)
第12条 管理区域の出入口には,所定の様式による国際バイオハザード標識を表示しなければならない。
2 実験室等の出入口には,前項の国際バイオハザード標識に所定の様式に定める事項を記載し,表示しなければならない。
(立入制限)
第13条 授業又は設備保守等の目的で管理区域へ一時的に立ち入る者は,管理責任者,実験研究責任者又は取扱者が病原体等の安全管理又は当該者の安全確保のための指示に従わなければならない。ただし,レベル3の管理区域には,管理責任者,実験研究責任者又は取扱者の立会いの下でなければ,立ち入ることができない。
(管理区域における保守点検)
第14条 管理責任者は,感染症法及び家伝法に基づき,次表に従い管理区域における病原体等の管理状況の点検並びに施設及び設備の保守点検を実施しなければならない。
区分 | 取り扱う病原体等 | 管理状況の点検並びに施設及び設備の保守点検 |
特定病原体等 | 一種病原体等 | 1年に1回以上定期的に実施 |
二種病原体等 | ||
三種病原体等 | ||
四種病原体等 | 定期的に実施 | |
監視伝染病病原体 | 家畜伝染病等病原体 | 1年に1回以上定期的に実施 |
届出伝染病等病原体 |
(病原体等の取扱手続)
第15条 取扱者は,レベル2病原体等でかつ特定病原体等及び監視伝染病病原体に属さないものの保管又は実験を新たに行おうとするときは,所定の様式により,予め学長に届け出なければならない。
2 取扱者は,特定病原体等,監視伝染病病原体又は第9条に定めるレベル3の病原体等の保管又は実験を新たに行おうとするときは,所定の様式により,予め学長に申請し,承認を受けなければならない。
4 取扱者は,特定病原体等,監視伝染病病原体又はレベル2以上の病原体等を学内外へ譲渡しようとするときは,所定の様式により,予め学長に届け出なければならない。
5 取扱者は,第1項の届出事項に変更の必要が生じた場合は,新たに学長に届け出なければならない。
6 取扱者は,第2項の申請事項に変更の必要が生じた場合は,新たに学長に申請し,承認を受けなければならない。
7 学長は,特定病原体等及び監視伝染病病原体の取扱いにおいては,感染症法及び家伝法に基づく手続きを遅滞なく行わなければならない。
2 学長は,委員会の議を経て,当該申請の実施について承認を与えるか否かの決定を行うものとする。この場合において,学長は,当該申請の内容の一部を変更して承認することができる。
(病原体等の保管及び使用の基準)
第17条 取扱者は,病原体等を保管又は使用する場合には,関係法令等の規定に基づき委員会が別に定める基準に従うものとする。
2 取扱者は,特定病原体等の保管又は使用については,感染症法に規定する基準に従わなければならない。
3 取扱者は,監視伝染病病原体の保管又は使用については,家伝法に規定する基準に従わなければならない。
(病原体等の運搬の基準)
第18条 取扱者は,病原体等又は感染生物等を運搬する場合には,関係法令等の規定に基づいて委員会が別に定める基準に従うものとする。
2 特定病原体等又は感染生物等の運搬については,感染症法に規定する基準に従うものとし,二種病原体等又は三種病原体等を運搬しようとする場合には,所定の様式により,予め学長に届け出なければならない。
3 監視伝染病病原体又は感染生物等の運搬については,家伝法に規定する基準に従わなければならない。
(実験室等の表示等)
第19条 取扱者は,レベル2以上の病原体等を取り扱おうとする場合には,当該病原体等を取り扱う実験室の出入口に,所定の様式により標識を作成し表示しなければならない。
2 取扱者は,特定病原体等,監視伝染病病原体又はレベル3病原体等を取り扱おうとする場合には,取扱者の名簿を作成するものとし,名簿に記載された者以外の立入りを制限しなければならない。
(病原体等の処理)
第20条 取扱者は,病原体等(これらに汚染されたと思われるものを含む。)を取り扱った場合には,有効な滅菌消毒方法によって処理しなければならない。
2 特定病原体等又は監視伝染病病原体について,所持を要しなくなった場合等においては,学長への届出後,感染症法又は家伝法に基づく所定の届出を行い,速やかに滅菌又は譲渡の処理をしなければならない。
3 前2項の処理において生じた廃棄物については,旭川医科大学廃棄物処理規程(平成16年旭医大達第57号)に従い適切に廃棄しなければならない。
(記帳)
第21条 学長は,二種病原体等,三種病原体等,監視伝染病病原体及びレベル3病原体等については,感染症法及び家伝法に基づき委員会が別に定める帳簿を備え,取扱者に記帳させなければならない。
2 二種病原体等及び三種病原体等に係る帳簿は1年ごとに閉鎖し,それを5年間保存しなければならない。
3 家畜伝染病病原体に係る帳簿は1年ごとに閉鎖し,それを1年間保存しなければならない。
(事故)
第22条 次の各号に掲げる場合は,これを事故とみなすものとする。
(1) 外傷その他により,特定病原体等,監視伝染病病原体又はレベル3病原体等が取扱者の体内に入った可能性がある場合
(2) 管理区域内の安全設備の機能に重大な欠陥が発見された場合
(3) 特定病原体等,監視伝染病病原体又はレベル3病原体等により,管理区域内が広範に汚染された場合若しくは感染動物の逸脱など広範な汚染の可能性がある場合
(5) 第31条第3項に規定する報告があった場合
(6) 特定病原体等の盗取,所在不明等が発見された場合
3 前項の通報を受けた場合,管理責任者は,所要の応急処置を講じなければならない。
4 第2項の通報を受けた学長は,委員会と協議の上,実験研究責任者等に所要の処置を講じることを命ずるとともに,必要があると認めるときは,汚染区域を指定し当該区域の使用を一定期間禁止することができる。
5 学長は,前項の汚染区域の指定を行ったときは,事故及び当該指定の内容を取扱者に通知するとともに,委員会その他の適当と認める者に対し調査を行わせるものとする。
6 前項の調査を行う者は,汚染区域の安全性の回復を確認したときは,速やかに学長に報告しなければならない。
7 学長は,前項の報告を受けたときは,汚染区域を解除し,その旨を関係者へ通知しなければならない。
(緊急事態)
第23条 学長は,地震又は火災等の災害による重大な被害が発生し,病原体等の取扱いに当たっての安全管理に関し,この規程に定める措置のみでは十分ではないと判断する場合には,直ちに緊急対策本部を設置しなければならない。
2 委員会は,前項の緊急対策本部が設置されるまでの間,緊急事態に即応した所要の措置を講ずるとともに,緊急事態の内容及び講じた措置の内容等を速やかに学長に報告しなければならない。
3 取扱者は,地震又は火災等の災害に関連する観測情報等が発せられた場合及び重大な被害が発生した場合には,実験研究責任者又は委員会の指示に従い処置を講じなければならない。
(緊急対策本部の構成等)
第24条 前条第1項に規定する緊急対策本部は,国立大学法人旭川医科大学防災管理規程(平成16年旭医大達第131号)に定める防災対策委員会をもって充て,その構成員に病原体等安全管理委員会委員長及び委員若干人を加えるものとする。
2 緊急対策本部は,次に掲げる事項を指揮又は処理する。
(1) 病原体等の逸出の防止対策に関すること。
(2) 汚染防止並びに汚染された場所及び汚染されたものの処置に関すること。
(3) 被汚染者の処置に関すること。
(4) 汚染区域の指定に関すること。
(5) 汚染区域の安全性調査及び汚染区域の解除に関すること。
(6) 広報活動に関すること。
(7) その他緊急事態における病原体等の安全管理に関し必要なこと。
3 緊急対策本部は,病原体等に関する安全性が確認され緊急事態が解消したとき,本部長が解散する。
第4章 教育訓練及び健康管理
(教育訓練)
第25条 学長は,特定病原体等については,その取扱い施設に立ち入る取扱者を対象として,安全管理に必要な知識及び技術の向上を図るため,教育及び訓練を実施しなければならない。
(健康診断の実施)
第26条 学長は,レベル2以上の病原体等の取扱者に対して,年1回以上定期の健康診断を実施しなければならない。
2 学長は,レベル3の病原体等を取り扱う取扱者に対しては,前項に定める健康診断のほか,取り扱う病原体等に対する抗体価測定等の健康診断を実施しなければならない。
(臨時の健康診断)
第27条 学長は,必要と認める場合には,取扱者に対して臨時の健康診断を受診させることができる。
(健康診断の記録)
第28条 学長は,前2条の規定による健康診断の結果,健康管理上必要と認められる事項については,取扱者ごとに記録を作成しなければならない。
2 前項の記録は,取扱者の異動又は退職の後,原則として5年間これを保存しなければならない。
(健康診断後の措置)
第29条 学長は,健康診断の結果,取扱者にレベル2以上の病原体等による感染が疑われるときには,直ちに安全確保のために必要な措置を講ずるものとする。
(血清の保存)
第30条 学長は,取扱者の健康管理又は事故等への対策のため,レベル3病原体等の取扱者の血清を保存することができる。
(病気の届出等)
第31条 特定病原体等,監視伝染病病原体又はレベル3病原体等の取扱者は,当該病原体等による感染が疑われる場合は,直ちに実験研究責任者にその旨を届け出なければならない。
2 前項の届け出を受けた実験研究責任者は,委員長に通報するとともに,委員会と協力して直ちに病原体等による感染の有無について調査を行わなければならない。
第5章 その他
(情報管理)
第32条 取扱者等は,病原体等に関する情報については,適切に管理しなければならない。
(雑則)
第33条 本学における診療及び検査に係る病原体等の取扱いについては,関係法令及び本学の諸規程の定めによるものとし,必要に応じ病院長が措置を講ずる。
2 この規程に定めるもののほか,病原体等の安全管理に関し必要な事項は学長が別に定める。
附則
この規程は,平成27年1月14日から施行する。
附則(平成30年4月27日旭医大達第31号)
この規程は,平成30年4月27日から施行する。