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現場医師からの応援メッセージ

 

安孫子 亜津子先生(内科学講座病態代謝内科学分野糖尿病内科)

2012年3月

・結婚・出産はいつ頃でしたか?

卒後2年たってから(大学院3年生の春)結婚しました。大学院を卒業後、5〜6年目は名寄へ逆単身赴任(夫はこの間、大学院生活)し臨床経験を積むことができ、7年目で旭川に戻り、8年目の秋からは、夫と一緒にアメリカに留学しました。この留学中、卒後10年目の夏に長女を出産しました。11年目の春に帰国し、半年間は育児休業をとり、子どもが1歳2ヶ月になったところで医大に復帰しました。

・仕事を継続するにあたりどのようなサポートを受けましたか?

仕事復帰に当たっては、当時まだ医大に保育園がなかったため、市内出張病院の事業所内保育園を利用しました(24時間保育であったため)。送り迎えは基本的に自分でしていましたが、夫の方が早く仕事が終わった日は、代わりに迎えに行ってくれました。週に2回程度、カンファレンスで帰宅が遅い日は、保育園で夕食も食べさせてもらい、PM9時頃の迎えになることもしばしばでした。 最初の約2年間は風邪のオンパレードで、子どもも、自分も体力的にかなりきつかったです。坐薬や飲み薬を持たせて、無理やり保育園にお願いすることもありました。インフルエンザや水痘で登園ができない時には、実家の母を緊急で呼んだり、朝に急遽、医局の先生に代理をお願いすることもありました。
 子どもが5歳になってからは、1年間、幼稚園と保育園の二重保育にチャレンジしてみました。市の緊急サポネットにも登録しましたが、この頃になると大きな病気もしなくなり、本当に子どもが元気でいてくれることに感謝!でした。
 小学校低学年の時は、放課後は留守家庭児童会に通い、実家の母に迎えをお願いしていました。長期休暇中には、二輪草のキッズスクールに参加し、思い切り身体を動かしたり、たくさんの楽しく新しい経験をさせていただきました。

・子育てと仕事を両立する中で良かったこと・大変だったことを教えて下さい。

 子育てと仕事の両立は、実際、楽とは言えません。常に、どちらも中途半端なのではないかというジレンマとの戦いで、それが自分のストレスとなっています。特に時間の作り方、そして有効な使い方が難しいと実感しています。帰宅が遅いと、夕食、お風呂、子どもの就寝時間などがすべて遅くなってしまい、子どもとゆっくり戯れる時間がないことや、子どもの睡眠不足も引き起こしてしまいます。仕事が忙しく、自分も疲れているときには、余計効率が悪くなり悪循環となってしまいます。そんな時は、夫や両親などに支えられ、上司や同僚にも助けてもらって、なんとかここまで続けられたのだと思います。
 子どもの励ましの言葉に助けられたこともありました。 現在、私は内科で、おもに糖尿病の診療をしていますが、子育てを通してたくさんのことを経験でき、いろいろな人と出会うこともでき、それまで以上に患者さんの話が理解できるようになったと感じています。女性の糖尿病患者さんは、女性のライフスタイルにおけるイベントが血糖値や体調を大きく変化させることは多々あります。自分が母になってからは、医師として話を聞くことに加え、女性として共感しあうことができるようになったことは私の医師人生にとって、大きな自信になったと思っています。実はこれらの経験により、男性患者さんからも、家庭での悩みなどをうちあけていただける場面が多くなったのではないか、と感じています。糖尿病治療は、実際われわれ医師の力よりも、患者さん自身が心身ともに健康的な生活を維持していこうとする気持ちが重要な病気です。そんな糖尿病診療に関わる医師として、今後も自らの経験は大切にしていきたいと考えています。

・両者をバランス良く続けていく秘訣と後輩たちへのアドバイスをお願いします。

 子育てをしながら、医師としての仕事を続けていくことは、一人ではできないと思っています。いろいろな制限がある中での仕事を、上手くコーディネートしてくれる理解ある上司と、私の仕事をサポートしてくれる同僚、後輩たちに恵まれたことが、今の私を導いてくれたと思っています。
 自分さえ必死に努力すれば何とかなると思っていた若い頃もありました。でもそれだけではどうしようもできないこともあるのです。努力をすることは無理をすることではない。自分のできることを見極め、それを最大限に発揮できることが、自分のためだけではなく、自分を支えてくれている人たちへの恩返しだと思っています。
 女性医師が今後、さらに増え続けようとしています。一方で医師不足や過剰勤務などが問題となっている昨今ですが、われわれ女性は自分のワークライフバランスを考えながらも、前向きに努力をしていくことが、女性医師のためだけでなく、男性医師の負担軽減にも役立つ日がくると信じています。

・二輪草センター・二輪草プランに期待することは?

二輪草センターは、まさに私が子育てをしてきた中で、「こんなときにあったら良かった」と思う理想のセンターであり、年間を通して、たくさんの魅力的なプランが行われています。これから子育てをしながら仕事を両立させていく皆さん(ぜひ男性も!)が、気軽に寄れて、大きな勇気を与えてくれる、そんなセンターに発展してほしいと願っています。 私もまだ、お世話になると思いますが、よろしくお願いいたします。


現在糖尿病診療に一緒にあたっている医師の皆さんと実習中の学生の皆さん
写真上中央が 安孫子亜津子先生