HPVワクチン

子宮頸がんの90%以上にヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が関与していることが知られています。HPVワクチンによって子宮頸がんを起こすリスクが特に高いHPV16型、18型の感染を予防することができ、子宮頸がんの原因の50~70%を防ぐことができます。

2022年4月よりHPVワクチンの積極的勧奨が再開され、これまで接種の機会を逃していた方を対象とした、公費補助のキャッチアップ接種が始まりました。 当科ではこれまでも外来にて定期接種、任意接種を継続しておりましたが、2022年5月より新たにHPVワクチン接種外来を開設し、定期接種、任意接種、キャッチアップ接種に対応しております。

     

子宮頸がんとHPV(ヒトパピローマウイルス)

子宮頸がんは子宮の頸部に発生する悪性腫瘍です。早期にはほとんど症状がないことが多く、進行するにつれ生理以外の出血や、性行為による出血、腹痛や血尿などの症状が出現することがあります。前がん病変や、早期がんのうちに発見されれば比較的治癒しやすいものとされていますが、早期であっても子宮摘出の必要となることが多いです。進行すると治癒は難しくなります。

子宮頸がんは国内で年間11,000人程度が新たに診断され、2,900人程度が子宮頸がんによって死亡していると報告されています。比較的若い年齢層に多いがんで、年代別にみた子宮頸がんを発症する割合は、20代から上昇し、40代でピークを迎え、その後徐々に下降していきます。(国立がん研究センター がん情報サービス 人口10万対年齢階級別罹患率2018/死亡率2019より)

子宮頸がんの患者さんの90%以上にHPV(ヒトパピローマウイルス)感染が認められます。HPVは皮膚や粘膜に感染するウイルスであり、200種類以上の型があります。粘膜に感染するHPVのうち少なくとも15種類が、悪性腫瘍高リスクHPVと呼ばれており、子宮頸がんをはじめ、中咽頭癌、肛門癌、腟癌、外陰癌、陰茎癌の原因にもなっていると考えられます。HPVは一般に性行為によって感染することが知られています。HPVに感染しても、90%は2年以内に自然にウイルスが排除されると報告されています。しかし、自然に排除されず長期間持続感染した場合にがんが発生すると考えられています。

HPVワクチンの種類

日本国内で承認されているワクチンは以下の3つです。

  • 2価ワクチン(サーバリックス)・・・HPV16 / 18型を予防
  • 4価ワクチン(ガーダシル)・・・・・HPV16 / 18型 + 6 / 11型を予防
  • 9価ワクチン(シルガード9)・・・・HPV16 / 18 / 31 / 33 / 45 / 52 / 58型 + 6 / 11型を予防

☆すべて公費負担で自己負担はありません。

接種スケジュール

2価ワクチン
初回接種の1カ月後に2回目、初回接種の6か月後に3回目接種

4価および9価ワクチン
初回接種の2カ月後に2回目、初回接種の6か月後に3回目接種

ただし9価ワクチンは、1回目を15歳の誕生日前にまで受けた場合は2回で接種が終了できます。

接種方法

定期接種

  • 対象:小学6年生~高校1年生の女性
  • 期間:上記年齢の期間であればいつでも
  • ワクチン:2価、4価、9価
  • 料金:無料(公費負担)

キャッチアップ接種

  • 対象:1997年4月2日~2007年4月1日生まれの女性で、過去にHPVワクチンの3回接種を終了していない方
  • 期間:2022年4月1日~2025年3月31日
  • ワクチン:2価、4価、9価(過去に接種している場合は原則前回と同じワクチンですが、変更も可能です。医師に相談してください)
  • 料金:無料(公費負担)

任意接種

  • 対象:男女ともに年齢制限なし
  • 期間:設定なし
  • ワクチン:2価、4価、9価 (男性は4価、9価)
  • 料金:3回接種合わせて5万円~9万円程度(ワクチンによって異なる)

HPVワクチンの副反応

HPVワクチンには以下の副反応が報告されています。

  • 10%以上:注射部位の疼痛、発赤、掻痒感、腫脹
  • 1~10%:発熱、発心、頭痛、倦怠感、悪心
  • 1%未満:しびれ、脱力、めまい、四肢痛、骨格筋の硬直、腹痛、悪心、下痢
  • 頻度不明:失神、関節痛・筋肉痛、リンパ節炎、蜂窩織炎、アナフィラキシー、ギラン・バレー症候群、急性散在性脳脊髄炎

ワクチン接種後に、広い範囲に広がる痛みや、手足の動かしにくさ、不随意運動等を中心とする多様な症状が起きたことが副反応疑いとして報告され、一時的にワクチン接種の勧奨が控えられていました。この多様な症状はワクチンによる神経学的疾患や中毒、免疫反応では説明できず、機能性身体症状であると考えられています。HPVワクチン接種歴のない方で、同様の症状を有する患者さんが存在することも明らかになっており、これらの症状とHPVワクチン接種に因果関係があることは証明されていません。ワクチン接種後にこのような症状が出現した場合、旭川医大産婦人科では、まず産婦人科で症状の聞き取り、診察を行い、必要に応じて整形外科、神経内科、麻酔科などと連携して、他の疾患の除外や症状緩和の治療を行っていきます。HPVワクチン接種後に生じた症状の診療にかかわる協力機関である、札幌医科大学のリハビリテーション科や、北海道大学の婦人科に紹介する場合もあります。

HPVワクチン外来(完全予約制)

場所:旭川医科大学病院産婦人科 33番外来

日時:第1、第3火曜日 15:00~16:15(15分毎)

予約方法

  • 電話 :  0166-69-3873
  • 予約受付時間 : 月火木金の14:00-16:30

予約時に必要な情報

  • 氏名
  • 生年月日
  • 旭川医大受診歴の有無(ある場合は診察券に記載のID番号)
  • HPVワクチンの接種歴の有無(ある場合は接種回数とワクチンの種類)
  • 予約希望の日程と時間

受診日の注意事項

  • 自宅で検温し、高熱がある場合にはご連絡ください
  • 接種券と記入済みの問診票を持ってきてください
  • 肩が出しやすい服装で来院してください

※婦人科思春期外来 毎週金曜 15:30-16:00 でもHPVワクチン接種が可能です。

HPVワクチン接種のながれ

  1. 予約
    上記予約専用電話に受付時間内に電話してください。
  2. 当日受付
    当院への受診歴がない場合には、初診受付にて診察券を発行する必要があります。15分程度早めの来院をお願いします。診察券をお持ちの方は総合受付または自動受付機で受付をしてから33番の産婦人科外来にいらしてください。
  3. 接種前説明
    待合にて接種後の注意事項についてのビデオを見ていただきます。
  4. 診察・接種
    医師による診察で、体調に問題ないことを確認し、ワクチン接種を行います。
  5. 経過観察
    待合にて30分間の経過観察を行います。経過観察時間が終わったら終了です。

Q&A HPVワクチンの効果と副反応について

Q1 以前1回だけ接種を受けたのですが、何年も経ってから2回目、3回目の接種を受けても効果はあるのでしょうか

A1 HPVワクチンの接種スケジュールについては、8年以上の接種間隔が空いた場合のエビデンスは国内外で認められていません。現状入手可能なエビデンスによれば、1~5年の接種間隔が空いた場合の海外の研究にて、通常の接種スケジュールと比較して同程度の効果と安全性が認められています。

Q2 HPVワクチン接種を受ければ子宮頸がん検診は受けなくても良いですか

A2 現在のワクチンでは、子宮頸がんハイリスクHPVの一部を予防することができません。また、まれではありますが、HPVに関連がない子宮頸がんも存在します。よってHPVワクチン接種を受けた場合でも子宮頸がん検診は必要です。HPVワクチンと子宮頸がん検診をうまく組み合わせることで、子宮頸がんにかかるリスクを減らし、かかった場合でも早期発見、早期治療を可能にすることができます。

Q3 性交渉歴があるのですが、ワクチンの効果はあるでしょうか

A3 HPVワクチンにはHPV感染後にウイルスを除去する力はありません。初回性交渉前に接種を行った場合と比較して、性交渉後に行った場合に効果が落ちると報告されています。すでに子宮頸部の細胞診異常がある場合に、それを治療する効果はありません。しかしHPV感染は90%が自然に治癒すると報告されており、自然治癒後の再感染を予防する可能性があります。また、HPVに感染している場合でも、ハイリスクHPVすべての型に感染している場合は少なく、今感染していない型の感染予防効果はあると考えられます。性交渉歴を問わない17歳~30歳への4価ワクチン投与が子宮頸がんリスクを53%減少させたという報告もあります。現在HPVに感染しているかどうか知りたい場合、旭川市では2年に1回頸がん検診に公費補助が出ており、その際にプラス500円でハイリスクHPVに感染しているかどうか調べることができます。

Q4 重症な副反応がおこることが心配です。ワクチンを打った方が良いでしょうか。

A4 すべての医療行為にはメリットとデメリットがあります。HPVワクチン接種時や接種後に約5~8割の方で注射部位の痛みや腫脹が起こると言われています。また稀ではありますが、ギラン・バレー症候群のような重篤な副反応がおこることもあります。女性が生涯で子宮頸がんおよびその前がん病変に罹患する確率は1.3%と言われており、HPVワクチンで重篤な副反応を起こす確率は0.05%程度と報告されています。全体としてはメリットの方が大きいと考え、接種を推奨しています。ただ子宮頸がんのリスクは個人でも異なり、またワクチン接種の効果(メリット)も年齢や性交渉歴によって異なります。接種を受ける際には自分にとってのメリットとデメリットを比較して、納得した上で接種を受けることをお勧めします。

Q&A 当院でのHPVワクチン接種ついて

Q1 旭川医科大学病院の受診歴がなくても大学病院で接種できますか

A1 旭川市、美瑛町、愛別町、鷹栖町、東神楽町、比布町に住民票がある方であれば、受診歴がない場合でも、初診料がかからずに接種を受けることができます。

Q2 予診票が届いていないのですが、接種できますか

A2 旭川市、美瑛町に住民票がある方は予診票が届いていない場合でも接種を受けられます。産婦人科外来にて予診票を受け取って記入してください。その他の自治体にお住いの方については現在調整中です。

Q3 数年前に1回のみ接種していますが、3回接種できますか

A3 以前定期接種として1回または2回接種をうけている方で、キャッチアップ接種の対象となる方は、全部で3回になるように公費で追加接種を受けることが可能です。接種を受けたかどうかわからない、何回受けたか覚えていない場合には、接種を受けた自治体に確認してください。

Q4 9価ワクチンを接種することはできますか

A4 定期接種、キャッチアップ接種、任意接種いずれも9価ワクチンを選択することができます。

Q&A その他

Q1 新型コロナウイルスワクチンと同時期に打っても大丈夫ですか

A1 新型コロナウイルスワクチンは、まだ新しいワクチンですので、他のワクチンとの接種との関係については厳密なルールやデータはありません。短期間のうちに2種類のワクチン接種受けると、副反応が出現した際にどちらのワクチンによる症状かが判断できなくなるため、どちらのワクチンが先であっても2週間は間隔をあけて接種するようお願いしています。

関連サイト

より詳しく知りたい方は、以下のページもご参照ください。