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整形外科学講座

整形外科学講座

整形外科学講座

講座について

整形外科は、骨、関節、神経、筋肉など運動器に関する疾患を全て扱い、先天性奇形、スポーツ外傷や労働災害・交通外傷による骨折や捻挫、関節炎・リウマチ疾患、高齢者の骨粗鬆症など治療の対象は多岐にわたります。
私達の教室では、関節機能再建と脊髄・神経の圧迫による障害を柱として基礎的・臨床的研究を行っているほか、加齢に伴う運動器疾患の病態解明のために field work を通じて、 unique な研究を進めています。

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教授挨拶

このたび、平成24年5月1日付けをもちまして旭川医科大学整形外科学講座を担当させていただくことになりました。もとより身に余る重責ではございますが、初代竹光義治教授、先代松野丈夫教授のもと培われました伝統を受け継ぎ、整形外科学の更なる発展に向けて、研究、教育、臨床への貢献に努力いたす所存でございます。

診療の方向性としてはまず「各専門グループの充実」を挙げたいと思います。道北の現状では、整形外科の股関節、下肢、上肢、脊椎、腫瘍疾患の専門的治療を行える施設は旭川医科大学病院のみであり、自分の専門領域である股関節だけではなく、各専門グループの充実が地域医療にとり重要であると考えます。当教室には各専門グループ間でバランスの良い連携をとりながら、教室全体のレベルアップを図ってきた歴史があります。近年、各グループとも手術件数は増加しており、結果として当院整形外科全体の総請求額の増加につながっています。今後も自分の専門領域である股関節に偏らず、各専門グループの更なる充実を第一に優先して考えたいと思っております。

卒後臨床教育においては、研修期間を通して幅広い知識と実践技術を習得することが出来るよう、本学の整形外科研修プログラムの作成、充実に努めて参りました。

当科では現在、インプラント-骨間の術後早期の強固な固着と、生体為害性の低下の利点を持つ、新しいセメント非使用人工股関節の医師主導治験を行っております。この治験は北海道臨床開発機構(HTR)の「ゆるむ事のない人工関節開発へのブレークスルーの橋渡し研究」や、旭川医科大学の「独創性のある生命科学研究(プロジェクト研究)」などの支援の下に行っており、順調に進んでいます。患者様の身体機能の長期維持に貢献できるよう、更に耐久性が向上した新しいセメント非使用人工股関節の、早期製品化を目指したいと思います。

以上、これまでの皆様のご厚情とご支援に深く感謝するとともに、教室の良き伝統を守りながら教室員一同で力を合わせ、新たな教室を創っていきたく存じます。当教室が全国的にもレベルの高い研究と診療を目指し努力していること、中でも当教室で開発した人工股関節4U Systemは、日本人に適合した耐用年数の延長が期待できる人工股関節であること、下肢、上肢、脊椎、腫瘍の各専門グループにおいても手術件数が増加し、実績を挙げていることなどを、更にアピールしていきたいと考えております。
今後とも尚一層の御指導と御鞭撻を賜りますよう御願い申し上げます。 

スタッフ紹介

教授

伊藤 浩イトウ ヒロシ

研究

整形外科は、分子生物学、機械工学、運動生理学、運動物理学、栄養学、病理学など、幅広い基礎科学に基づく応用科学です。
なぜなら私達が扱う臨床分野が、救急外傷、スポーツ医学、変性疾患、炎症性疾患、小児先天性疾患、老人医療、福祉、リハビリ、義肢装具、緩和医療、骨・軟部腫瘍、宇宙医学(骨粗鬆症や筋萎縮)と様々だからです。これらの分野において、脊椎から四肢関節まで、そして脊髄から末梢神経まで、運動器に関する多くの基礎研究および臨床研究を行っています。

現在行われている主な基礎研究概要

  • 骨軟部腫瘍分野
    • 病理学研究
    • 骨軟部腫瘍の免疫学的研究
  • 神経生理学分野
    • 関節の痛みのメカニズムに関する研究
    • 脊髄、神経根の病態に関する研究
  • 人工関節分野
    • 股関節のバイオメカニクス・人工関節の開発
    • 人工関節周囲骨溶解の生物学的研究
  • 分子生物学分野(関節外科)
    • 関節軟骨再生の研究
    • 関節軟骨の移植免疫の研究
  • バイオメカニクス分野
    • 3次元動作解析法を用いた研究
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研修医教育

初期研修

  1. 医師としての資質は初期研修の2年で決まる
    ベットサイドに繰り返し足を運び、腰かけて患者さんと話をし、何が求められ、何ができるか、患者さんやその背景に応じて最良の医療考える心と診療技術を身につけます。
  2. 一般整形First
    道東・道北のいわゆる過疎地は、未だ整形外科医のない地域もあり、これらの地域をカバーする旭川医大の整形外科医は、専門性のみならず、一般整形外科医としても高い水準が求められます。幅広い知識と技術を習得できるよう、救急外傷・脊椎・上肢・下肢・股関節・腫瘍・小児整形・リウマチなど専門医の指導の下、研修を行います。

整形外科医を目指す医師へ

小さな医局ですが、だからこそチームワークが良く、大きな力を発揮できます。研修医の教育に関しても、同門の医師全員で、全面バックアップします。

研修1年目:大学病院で、脊椎・上肢・下肢・股関節・腫瘍・小児整形・リウマチ・救急外傷など専門医の指導の下、研修を行います。

研修2年目~:関連病院にて、外傷の治療を中心に手術手技を習得し、地域医療の第1線で診療にあたります。
7年目:整形外科認定医取得。更に、専門技術を身につけていきます。

特徴1:若いうちに世界のレベルを知る

研修医のうちに国際学会に出席、発表の機会が与えられ、医師として目指す頂点を知ることができます。

特徴2:早期から第一線で診療

道東・道北の広い地域をカバーするため、指導医のもと、早期より診断技術や手術手技などを習得し、第一線の診療に当たります。術後リハビリ、家庭や仕事、スポーツ活動へ復帰していくまで一貫してサポートしていく必要があり、幅広い視点で診療できるようになります。

特徴3:国内留学、海外留学を推奨

学びたいと思えば、学びに行くことができます。得た技量を下級医につなげていくことで、いつの時代でも、高い医療技術を保っています。

特徴4:スポーツ

整形外科医はスポーツ好きです。医局対抗戦で4連覇している野球をはじめ、各種スポーツに参加しています。障害者に優しい街づくりをすすめる旭川市にあることもあり、障害者スポーツ認定医が多いのも特徴です。その他、地域スポーツのメディカルチェックやチームドクターなどの活動、国際大会の帯同などの活動も行っています。

特徴5:研究

整形外科は、分子生物学、機械工学、運動生理学、運動物理学、栄養学、病理学など、幅広い基礎科学に基づく応用科学です。
なぜなら私達が扱う臨床分野が、救急外傷、スポーツ医学、変性疾患、炎症性疾患、小児先天性疾患、老人医療、福祉、リハビリ、義肢装具、緩和医療、骨・軟部腫瘍、宇宙医学(骨粗鬆症や筋萎縮)と様々だからです。これらの分野において、脊椎から四肢関節まで、そして脊髄から末梢神経まで、運動器に関する多くの基礎研究および臨床研究を行っています。

人工関節分野

整形外科股関節班研究

整形外科学教室股関節班では

  1. 股関節のバイオメカニクス・人工股関節の開発
  2. 人工関節周囲骨溶解の生化学的研究

をテーマに研究を行っています。

股関節のバイオメカニクス・人工股関節の開発

工学的アプローチを用い生体股関節・人工股関節の研究を行っています。具体的には生体股関節の安定性評価、軟部組織テンション測定デバイスの開発、クロスリンクポリエチレンの評価、人工股関節脱臼メカニズムの解明、インプラント形状のコンピュータ解析、骨頭真球度の測定、耐摩耗人工股関節の開発[1-7]などを行っています。
我々の研究を基に2002年より新しいハイブリッド型の人工股関節(4-U;ナカシマメディカル)が開発され現在まで700例以上で使用されています。
また、2007年から文部科学省の橋渡し研究支援推進プログラムに選ばれ「ゆるむ事のない人工関節開発へのブレークスルーの橋渡し研究」というシーズを推進しています。このプロジェクトでは人工股関節のゆるみを防止する新材料を開発中で数年のうちに新材料を取り入れた新しいセメントレス人工股関節インプラントを臨床導入すべく研究を進めています。
更に2008年から先端医療開発特区(スーパー特区)の「生体融合を可能とする人工関節の患者別受注生産モデルの構築」にも含まれています。
北海道大学情報科学研究科、兵庫県立大学工学部、酪農学園大学獣医学部、京都大学工学研究科、ナカシマメディカル、スタンフォード大学、フロリダ大学、BioMotion Foundationと共同研究を行っています。

  1. The proximal hip joint capsule and the zona orbicularis contribute to hip joint stability in distraction. Ito H et al., J Orthop Res. In Press
  2. Intraoperative joint force measuring device, system and method. Banks SA and Tanino H., US Patent US7458989B2
  3. In vivo femoral head damage and its effect on polyethylene wear. Ito H et al., J Arthroplasty. In Press
  4. Association between dislocation, impingement, and articular geometry in retrieved acetabular polyethylene cups. Tanino H, et al., J Orthop Res. 25, 1401-7, 2007
  5. Three-dimensional computer-aided design based design sensitivity analysis and shape optimization of the stem using adaptive p-method. Tanino H, Ito H, Higa M, et al., J Biomech. 39, 1948-53, 2006
  6. The sphericity of the bearing surface in total hip arthroplasty. Ito H, Minami A, Matsuno T et al., J Arthroplasty. 16, 1024-9, 2001
  7. Reduction of polyethylene wear by concave dimples on the frictional surface in artificial hip joints. Ito H et al., J Arthroplasty. 15, 332-8, 2000
2.人工関節周囲骨溶解の生化学的研究

高齢化社会の出現に伴い、股関節、膝関節など四肢関節への人工関節置換術手術数は年々増加しており、日本でも年間約4万件の手術が施行されています。人工関節は恒久的な耐性を獲得している訳ではなく、その耐性年数は10~20年程度と言われ、人工関節の再置換術が必要となります。欧米では人工関節再置換術による医療保険費のコストの増大や、患者のADLの低下が大きな問題として認識されており、そのための基礎研究が盛んに行われています。人工関節再置換術が必要とされる主な原因として、人工関節周囲の骨吸収が進むために生じる弛み(人工関節周囲骨融解)が挙げられます。人工関節は生体材料で関節を形成し関節運動を行っていますが、その摺動面からポリエチレン、セメントなどの数マイクロメートルの微小な摩耗粉が発生します。その摩耗粉をマクロファージが貪食し、細胞内シグナル伝達を経て種々の炎症性サイトカインが分泌されます。そのため人工関節周囲で炎症が進み、マクロファージから破骨細胞への分化が促進します。結果、人工関節周囲の骨吸収が進み、人工関節周囲骨融解が生じると言われていますが、その詳細なメカニズム及び治療法は現在も解明、確立していません。私たちは人工関節摩耗粉に由来する人工関節周囲骨融解について、マクロファージから破骨細胞への分化に着目した研究を行っています。破骨細胞分化にはRANK/RANLK経路及び転写因子NF-kBの活性化が重要であると言われ、これらのシグナルが人工関節周囲骨融解においても重要ですが、私たちは新しい知見としてMAP Kinase Familyの1つであるJNK及びNFATが人工関節周囲骨融解において重要な役割を果たしている事を報告し、アメリカ、ワシントン大学と共同で研究を続けています。

  1. Nfat2 is an essential mediator of orthopedic particle-induced osteoclastgenesis. Y.Yamanaka, Y. Abu-Amer et al., J Orthop Res, 26, 1577-1584, 2008
  2. The map kinase c-jun n-terminal kinase mediates pmma-induction of osteoclasts. Y.Yamanaka, JC Clohisy et al., J Orthop Res, 24, 1349-1357, 2006
  3. Inhibition of ikk activation through sequestering nemo, blockes pmma-induced osteoclastogenesis and calvarial inflammatory osteolysis. JC Clohisy, Y.Yamanaka et al., J Orthop Res, 24, 1358-1365, 2006
  4. Inhibition of inflammation bone erosion by constitutively active stat-6-through blockade of jnk and nh-kb activation. T. Hirayama, Y. Yamanaka, Y.Abu-Amer et al., Arthritis&Rhumatism, 52, 2719-272 2005