特別講演 IV「動物の動きの面白さとバランス能力          

  こすげ  まさお
 小菅 正夫

 略 歴

 昭和23年  札幌で生まれる
 昭和48年  北海道大学柔道部獣医学科卒業
 昭和48年  旭山動物園就職
 平成 7年  旭山動物園 園長就任

 今までの動物園は、どちらかというと動物そのものの姿・形を見せることが主な目的であったように思います。見る側も普段見ることのできない、珍しい動物を眼にすることそのこと自体が目的でありました。当園では、むしろ動物が本来持っている動きそのものをいかに観客の皆さんに面白く見せるかということをテーマにしてきました。お陰様で近年入場者数も増加して、我々の目指す方向は間違いではなかったと感じています。このような背景で、近年いかに動物の動きを面白く見せているのか、そのための経営戦略は、というような話題で講演を頼まれることが多くなりました。今回はむしろ、動物の動きの面白さ・巧みさ・不可思議さそのものを実際に画像を用いて紹介したいと思っています。動物は地上・樹上や水中でどうやってバランスを保って動いているのだろう?なぜそのように動けるのだろう?などを皆さんとともに考え、想像を膨らませていきたいと思っています。
 動物はある環境の下に生命を維持し、進化の中でそれぞれの形態を獲得していったと考えられています。当然その動物固有の行動・動きを持っており、それは環境と形態および進化と関係してくることは想像にかたくありません。しかし、実はそれらの因果関係は必ずしも明らかになっていない場合が多いのです。たとえば、フラミンゴはなぜ一本足で立っていられるのか・どうやって重心の高い姿勢を維持していられるのか?キリンの首はなぜ長いのか?象の鼻はなぜ長いのか?オランウータンはなぜあんなにバランスよく綱渡りできるのか?など、興味のある疑問が次々に沸いてきますが、必ずしもその理由や制御システムなどが解明されているわけではないのです。我々人間は理由がわからずとも、動物の姿勢や動きを面白く観察し、なぜそんなことができるのか?なぜそうするのだろう?などと想像をたくましくし、楽しむことができます。動物園の存在意義もまさにそこにあるのでしょう。この市民講座で、皆様に少しでも動物の動きの面白さを感じていただければ幸いに思います。