展示室A 会場 ポスター演題 4 (22〜28) 10月31日(日) |
整 形 10:30〜11:30 座長:町立長沼病院 木田 貴英 |
22) 棘下筋のストレッチング方法についての検討
〜新鮮遺体肩を用いた定量的分析〜
1札幌医科大学大学院 保健医療学研究科、2札幌医科大学 保健医療学部、3札幌医科大学 解剖第二講座
村木 孝行1、青木 光広2、内山 英一3、宮坂 智哉1、鈴木 大輔3、宮本 重範2
【目的】棘下筋の拘縮は肩関節障害の原因となるため、ストレッチングにより柔軟性を改善し、障害の予防・治療を行う必要がある。諸家により棘下筋のストレッチング方法が紹介されているが、これらのストレッチング肢位はさまざまで統一されていない。本研究の目的は棘下筋を有効に伸張できる肩関節肢位を、新鮮遺体肩を用いて定量的に検討することである。
【対象】実験標本には肩関節に損傷や変形のない新鮮遺体10肩(平均死亡年齢80.3歳)を用いた。
方法】実験は肩甲骨標本をジグに固定し、肩関節を他動的に動かして行った。測定は生体における肩甲骨面挙上(以下挙上)0°、30°、90°位での内旋、水平内転、結帯動作肢位(伸展・内旋)を想定した5肢位で行った。これらの肢位における各筋の伸張率は、線維方向に沿い筋の中央部に設置したLEVEX社製パルスコーダーを用いて筋線維の伸張量を直接測定した。測定値は挙上0°回旋中間位からの伸張率で表し、各筋の伸張率は10標本の平均値と標準偏差で表した。
【結果】棘下筋中部線維の平均伸び率は1)伸展・内旋(16.8±12.0%)、2)挙上0°位内旋(14.3±9.2%)、3)挙上30°位内旋(9.9±8.8%)、4)挙上90°位内旋(0.6±12.5%)、5)水平内転(-4.5±12.8%)の順で大きかった。棘下筋下部線維では1)挙上30°位内旋(18.5±11.7%)、2)伸展・内旋(18.5±8.7%)、3)挙上90°位内旋(16.5±14.6%)、4)挙上0°位内旋(14.5±10.8%)、5)水平内転(0.5±13.7%)の順で大きかった。
【結論】棘下筋中部線維は挙上0−30度の範囲の内旋で大きく伸張し、棘下筋下部線維はあらゆる挙上角度の内旋で伸張した。中部線維と下部線維を同時に伸張する場合は、伸張率の高い結帯動作肢位を用いるのが望ましい。
23) 肩甲上腕関節のモビライゼーションが棘上筋腱に与える影響
〜新鮮遺体肩を用いた検討〜
1札幌医科大学大学院 保健医療学研究科、2札幌医科大学 保健医療学部、3札幌医科大学 解剖第二講座
村木 孝行1、青木 光広2、内山 英一3、宮坂 智哉1、鈴木 大輔3、宮本 重範2
【目的】臨床において肩甲上腕関節の可動域制限に対し関節モビライゼーションが用いられることが多い。しかし関節モビライゼーションが肩関節で障害の起きやすい棘上筋腱をどの程度伸張するのか調べた報告はない。本研究の目的は新鮮遺体肩を用い、肩甲上腕関節モビライゼーション時の棘上筋腱の伸び率を測定し、棘上筋腱における関節モビライゼーションの効果を検証することである。
【対象】実験標本には肩関節に損傷や変形のない新鮮遺体8肩(平均死亡年齢78.9歳)を用いた。
【方法】実験は胸郭から離断した上肢標本の肩甲骨をジグに固定した状態で行った。測定では牽引、前方・後方・下方滑りの4手技をKaltenbornの定義したgrade3で行い、これらとの比較として下垂位内旋、伸展内転を行った。この時の棘上筋腱の伸びは腱の停止部より1cm近位で腱の中央部に設置したLEVEX社製パルスコーダーを用いて棘上筋腱の伸びを直接測定し、測定値は開始肢位(挙上0°、回旋中間位)からの伸び率(正の値は伸張、負の値は短縮を表す)で表した。また、各手技における棘上筋腱の伸び率は8標本の平均値と最大/最小値で表し、Bonferroniの多重比較検定を用いて各手技間の比較を行った。
【結果】各手技における平均伸び率を順に表すと伸展・内転(1.1%:-4.9〜7.6)、下方滑り(0.8%:-5.4〜4.5)、牽引(0.1%:-7.4〜4.1)、後方滑り(-0.7%:-6.1〜2.3)、前方滑り(-1.5%:-10.0〜3.8)、内旋(-4.0%:-7.8〜0.3)であった。モビライゼーションの4手技は伸展・内転と有意差がなかった。また下方滑りと牽引は内旋より伸び率が有意に大きかった。
【結論】上肢下垂位における肩甲上腕関節のモビライゼーション、特に下方滑りと牽引は回旋中間位より棘上筋腱に伸張を与える可能性がある。
24)Colles骨折の短期予後調査
1市立函館病院 医局 リハビリセンター、2市立函館病院 医局 整形外科
碓井 孝治1、川村 昌嗣1、森山 武1、齋藤 香織1、山下 康次1、中島 菊雄2
【目的】Colles骨折は当院外来理学療法の主要疾患の一つであり、効果判定を行なうにあたっては、可動域、握力のみならず日常生活動作(以下、ADL)の評価も重要である。今回我々は、ADLを含めたColles骨折の短期予後について若干の知見を得たので報告する。
【対象】2002年1月から2003年12月までに当院にて理学療法を施行した患者18例中、約2か月間のフォローが可能であった10例を対象とした。男性2例、女性8例、年齢は59.8±13.2歳であった。利き手は全例右で、受傷側は左右とも各5例(全例片側)であった。骨折型は、Frykman分類で1型1手、2型1手、3型4手、4型3手、8型1手であり、治療法は保存療法7例、経皮的pinning3例であった。
【方法】評価項目は初回と最終時の(1)前腕回内外、(2)手関節掌背屈、(3)手関節橈尺屈の各合計可動域、(4)手指尖が手掌につくまで屈曲可能か否か、(5)握力の健側比、(6)ADLであった。なお、ADL評価は予め設定した20項目について、各項目点(0点:不可〜3点:良好)と総得点(0点〜60点)を算出した。さらに、年齢を65歳以上と未満の2群、受傷側を利き手と非利き手の2群に分類し比較分析した。
【結果】全体の平均は初回→最終の順に(1)133.0±19.6°→160.5±19.8°、(2)61.5±7.5°→101.5±12.0°、(3)30.0±11.8°→54.5±12.1°、(5)16.4±16.4%→53.3±20.5%、(6)総得点31.8±12.2点→51.4±12.8点であった。(4)可、不可の順に3例、7例→7例、3例であった。年齢の影響は初回のADL項目の起き上がり、立ち上がり、洗濯の項目で有意差があった。受傷側の影響は初回ADLの7項目及び総得点で、非利き手群で高値であった。
【結論】可動域や握力の変化は従来の報告と同様であり、特に握力の回復が遅かった。初回に高齢群では手をついての起き上がり、立ち上がりに不便を感じ、非利き手群では利き手を用いた動作制限がないためADLは良好であったが、最終時には有意差がなかった。
25) 急性腰痛患者における腰背部筋断面積の検討
〜下肢症状の有無による違い〜
1我汝会 えにわ病院 リハビリテーション科、2我汝会 えにわ病院 整形外科
石田 和宏1、佐藤 栄修2
【目的】腰背部筋群の神経支配は、多裂筋が腰神経背側枝の内側枝、腰最長筋が背側枝の中間枝、腰腸肋筋が背側枝の外側枝である。つまり、腰部疾患による腰神経障害が腰背部筋群に運動性麻痺をもたらす可能性がある。Hidesらは、急性腰痛患者において多裂筋が著明に萎縮していたと報告しているが、腰神経の障害と腰背筋の筋萎縮の関連性について検討した報告は少ない。今回、我々は当院の急性腰痛患者を対象に、外来カルテ及びMRI横断像を用いて、下肢症状と腰背部筋断面積の関連性をretrospectiveに調査したので報告する。
【対象と方法】対象は、2001年8月〜2002年7月までの1年間に、腰痛、下肢痛を主訴として発症後1ヶ月以内に当院整形外科外来を受診した患者1033例中、当院にてMRI診断を実施した80例(男性28例、女性52例)とした。方法は、第3〜4腰椎、第4〜5腰椎椎間板レベルの横断像を用い、画像解析ソフトImage J 1.29xを使用し、多裂筋、脊柱起立筋(最長筋、腸肋筋)の筋断面積を計測した。また、外来カルテより、発症から受診までの期間、下肢症状の有無など調査した。調査結果より、男女別にA)下肢症状有り、B)下肢症状無しの2群に分類し、両群間の筋断面積に関してMann-Whitney U-testを使用し比較検討した。
【結果と考察】男性の4/5レベルで、多裂筋ではA群で有意に低下し、脊柱起立筋ではA群で有意に大きかった(p<0.05)。女性では、両群間で有意差は認められなかった。解剖上、多裂筋の各線維は単根性に、脊柱起立筋はL1〜L4までの線維が多根性に支配されている。今回の結果より、多裂筋の低下は、男性においてL4神経根の障害が存在していた症例が4割強と多かったことが原因であると考える。また、脊柱起立筋は疼痛による過緊張、又は代償的な過活動により大きかったと示唆される。
26)当院における人工膝関節全置換術後の膝屈曲可動域の経時的推移
ー術後早期の重要性ー
1函館中央病院 リハビリテーション科
井野 拓実1、吉田 俊教1、高橋 茂樹1、竹内 光1、松田 泰樹1、田嶋 美紀1
key words 人工膝関節全置換術・可動域の経時的推移・プラトー
【はじめに】人工膝関節置換術(以下TKA)の目的は除痛と支持性の獲得である。しかし日本の生活様式を鑑みると膝屈曲可動域(以下ROM)の獲得はそれらと並んでニーズが高い。当院では120°を目標に術後リハビリを施行している。今回、当院にてTKAを施行した症例のROMの経過が、術後早期から4週目までどのような推移をたどるか検討したので報告する。
【対象】当院にて2003年度、変形性膝関節症によりPS型TKA (NexGen LPS FLEX−Mobile bearing)を施行し無作為に抽出された42例42膝(女性38名、男性4名、年齢72.6±6.3)を対象とした。なお、可動域訓練は術後3〜4日ドレーン抜去後より、原則1日2時間のCPMのみである。
【方法】本研究は、過去のカルテにおける可動域の計測結果を調査した後方視的コホート研究である。ROMは術後3〜4日目から退院までの毎日、CPM後に自動可動域を通常の角度計にて計測した。「退院時のROM」と「計測開始日のROM」の差を「改善角度の総和」とみなし、退院まで各週、総和の何%の改善率であったかを示した。
【結果】各週のROMの平均は、計測開始日81.3±16.1°、2週目102.2±14.3°、3週目112.2±14.0°、4週目116.5±9.8°、改善角度の総和の平均は57.7°であった。各週における改善率は術後1週目40%、2週目35%、3週目17%、4週目7%であった。
【考察】TKA術後のROMは術後早期により大きく改善しており、3〜4週で概ねプラトーに達する。これは、術創部が術後約2週間で癒着し組織的に安定すると言う通念に準ずる結果と考えられる。上記は、術後可及的早期に膝の可動域を改善することの重要性を示すものであり、さらに、早期にある程度の獲得可動域を予測する指標としても活用できるのではないかと考えられる。
27)人工膝関節全置換術後肺塞栓症を合併した一症例
1勤医協中央病院 リハビリテーション科、2勤医協中央病院 整形外科
湯野 健一1、辻 王成1
【はじめに】深部静脈血栓症(以下DVT)および肺塞栓症(以下PTE)は、放置すれば致死的結果を招く重篤な術後合併症の1つである。DVTやPTE予防に理学療法は効果的といわれているが、合併した症例の報告は少ない。今回人工膝関節全置換術(以下TKA)後PTEを合併した症例を担当する機会を得たので報告する。
【症例紹介】76歳、女性。148cm65kg、BMI25.2。S62年から両膝OAの診断で外来フォローされていた。今回TKA目的に03.8.26入院となる。入院前ADLは独歩自立、夫との2人暮らし。
【経過とPT所見】03.8.27術前PT実施。膝ROM(右/左):0−120/0−100°足関節の自動運動指導。03.8.28左TKAセメント固定術施行。術中左膝可動域:0−125°03.8.29術後理学療法開始。ドレーン抜去。全荷重許可。03.9.1リハ室での理学療法となり、平行棒内歩行練習開始。左膝ROM:0−80° 右肺動脈下部に5mm程度の血栓あり、肺CTによりPTEの診断。自覚症なし へパリン線溶療法開始→のちにワーファリンの内服による抗凝固療法へ。03.9.2検査のためPT1日休み。03.9.13階段昇降練習開始。片手すりで荷重痛なく可。左膝ROM:0−110°03.9.18急性腰痛発症。起き上がりがやっとで歩行練習は休止。03.10.3腰痛は徐々に回復、屋内歩行自立し自宅退院。左膝ROM:0−115°
【結果および考察】PTE合併後も中断することなく理学療法を継続することができた。その根拠としては下肢静脈エコー、MRVの結果からDVTは否定的で、PTE再発の可能性は少ないと考えられたことが挙げられる。またPT中止によりDVT再発の恐れ、廃用性変化およびROM改善不良の可能性があることから、安静にしている方がリスクと考えた。本症例は術後5週での退院を果たすことができ、PTE合併および急性腰痛も大きなバリアンスとなることはなかった。今後は本症例を参考に、術前より足関節自動運動を徹底し、主治医と連絡を密にとって理学療法を展開していきたい。
1札幌円山整形外科病院 リハビリテーション科
仲澤 一也1、花田 健彦1、谷口 敏子1、山川 智範1、太田 麗花1、山崎 肇1
【目的】ラグビーフットボール(以下ラグビー)は球技でありながら、他の選手とのコンタクトプレーを伴うスポーツ種目である。一方、スポーツ傷害を予防するためには、そのスポーツにおいて傷害発生の傾向や特性を知ることが重要となる。しかし、国内におけるラグビーの傷害調査報告は少ない。今回、高校生を対象とした傷害発生に対するアンケート調査を行い、予防に対する若干の知見を得たので報告する。
【対象および方法】対象は札幌市内のラグビー部に所属している高校生であり、平成16年6月から7月に郵送によるアンケート調査を行い、十分な回答の得られた63名のデータを分析した。調査項目は一般項目(学年・年齢・身長・体重・経験年数・ポジション)、過去1年間でのケガの有無、部位、受傷機転などである。
【結果】傷害の発生率は63名中36名で57.1%であり、36名で52件の傷害が発生していた(1人平均1.4±0.8件)。部位別傷害発生率は足首30.8%、手指17.3%、臀/大腿部17.3%、肩11.5%、膝9.6%、下腿部5.8%、頚部1.9%、肘1.9%であった。また、受傷時のプレー別の発生率はコンタクトプレーが67.3%(タックル48.1%、モール/ラック3.8%、スクラム1.9%、ラインアウト1.9%、その他11.5%)、非コンタクトプレーが32.7%(ランニング13.5%、パス1.9%、その他17.3%)であった。練習中の受傷が57.7%であり試合中が42.3%であった。
【考察】今回の調査から、コンタクトプレー時、特にタックル時の受傷率が高く、部位は足関節の受傷率が高いという結果が得られた。同一部位に対する再受傷も散見された事から、事前の予防のみならず再発防止も重要であると考える。今後は調査対象を地域、年齢ともに拡大し、ラグビー競技における傷害発生傾向とその対策をより具体的に考える必要がある。
展示室B会場 ポスター演題 5(57〜63) 10月31日(日) |
症例・物理療法 10:30〜11:30 座長:北都保健福祉専門学校 小林 浩 |
57)重症胸部外傷患者に対する呼吸理学療法の経験
1札幌医科大学附属病院 リハビリテーション部、2札幌医科大学附属病院 高度救命救急センター
谷口 志穂1、管野 敦哉1、石川 朗1、横串 算敏1、森 和久2、松尾 邦功2
【はじめに】当院は高度救命救急センターに指定されており、理学療法分野においても救急救命治療を要する患者に携わることが多い。今回重症胸部外傷を受傷した2症例に呼吸理学療法を行なった経験を報告する。
【症例1】50歳女性、覚醒剤中毒。H16年3月27日地下鉄に飛び込み、多発肋骨骨折・肺挫傷を含む多発外傷を受傷した。搬入直後より荷重側肺障害を合併し腹臥位positioningを実施した。第12病日より酸素化改善・排痰促通を目的にpositioningとbagging・吸入と併せて呼気介助を実施した。第18病日より端座位練習を開始したが、人工呼吸器管理長期化が予測されたため第28病日に転院した。
【症例2】35歳男性、統合失調症。H16年6月1日車に飛び込み多発肋骨骨折・血気胸・骨盤骨折を含む多発外傷を受傷した。第2病日より荷重側肺障害に対し半日間の腹臥位管理を行なった。第22病日感染性膿瘍から敗血症となり、重度の荷重側肺障害のため挿管、人工呼吸器管理となった。第33病日に抜管したが、第39病日換気不全のためNIV開始し、第42病日再挿管し4日間の腹臥位管理とbagging・吸入と併せて呼気介助を実施した。排痰促通、酸素化改善傾向にて第46病日に抜管し、NIVを再開、第54病日room airとなる。以降、離床へ向け運動療法主体に実施中である。
【考察】2症例ともhyperinflationとpositioningの併用による排痰促通などの呼吸理学療法が有効であり、肺障害の軽減化につながったと考える。また症例2のNIVの使用に関しては、精神的に不安定であったが導入も比較的良好であり、気管切開を回避できたことは感染の予防に寄与したといえる。
【結語】重度な胸部外傷に対してのhyperinflation、 positioningと呼気介助の併用による排痰促通と、救急医療現場でのNIVの有用性が示唆された。今後はこれらの治療手段の適応と効果について更なる検討を深めたい。
58)救急医療現場における陽・陰圧体外式人工呼吸器RTXの使用経験
1札幌医科大学附属病院 リハビリテーション部、2札幌医科大学附属病院高度救命救急センター、3札幌医科大学保健医療学部理学療法学科
管野 敦哉1、横串 算敏1、谷口 志穂1、澤田 篤史1、成松 英智2、石川 朗3
【はじめに】RTXは非侵襲的であり、呼気の介助が可能であることが特徴の人工呼吸器である。この呼吸器は急性期から慢性期、在宅での呼吸管理に使用することが可能とされている。当院では高度救命救急センターの他、神経筋疾患の排痰介助などに使用されている。今回、当院高度救命センターに搬入された3名の患者に対し、使用する機会を得たので報告する。
【症例1】30歳、女性。外傷性くも膜下出血、肺挫傷。平成16年4月13日、バイク転倒にて受傷。CTで両背側下葉に無気肺が認められ、気管内挿管された。第3病日、無気肺が改善し抜管するも上気道の閉塞によりSpO2の低下が見られ、RTXを使用する。
【症例2】50歳,男性。気道熱傷、一酸化炭素中毒。平成16年4月20日、火災現場で発見され、当院搬入される。直ちに高圧酸素療法施行し、気管内挿管される。第4病日、抜管されるも酸素化不良、排痰困難のためRTXを使用する。
【症例3】22歳、女性。溺水、肺炎。統合失調症にて他院に入院中。平成16年6月1日、外泊中に川に飛び込み受傷。E病院から当院救命センターに搬入される。酸素投与で経過観察されていたが、CT上両背側に無気肺、肺炎が認められ、RTXを使用する。
【転機】症例1は30分間の装着後、PaO2が68.7mmHgから98.0mmHgに改善し、その後も再挿管されることなく第9病日に転院した。症例2は30分間を2回装着した後、すす混じりの痰が多量に排出され、PaO2が76.7mmHgから158.2mmHgに改善し、第9病日に独歩で退院した。症例3は約1時間の装着後、PaO2が88.5mmHgから133.5mmHgに改善し、人工呼吸管理も行なわれず第9病日に転院した。
【考察】今回の3症例は疾患も病態も異なっていたが、救急医療現場で問題となることが多い抜管後の気道閉塞や低酸素血症、排痰困難などに対し良好な結果が得られたと考える。しかし、この呼吸器の適応や使用基準などは明確化されていないため、今後症例数を増やし、検討していく必要がある。
59)多剤耐性肺結核患者における26年間の運動機能と画像所見の経過について
1北海道立苫小牧病院 リハビリテーション室、2北海道立苫小牧病院 呼吸器内科、3札幌医科大学大学院 保健医療学研究科、4札幌医科大学 保健医療学部 理学療法学科
河島 常裕1、常松 和則2、山中 悠紀3、石川 朗4
【はじめに】陳旧性肺結核は酸素化不全に加え高炭酸ガス血症を伴うことが多く、呼吸理学療法の対象疾患としては、COPDに次いで多い症例である。しかし、その病態や運動機能についての報告はきわめて少ない。 今回、陳旧性肺結核における理学療法について検討し、指針を得る目的にて、多剤耐性肺結核患者の26年間における運動機能や画像所見などについて後方視的に調査したので報告する。
【対象】77歳、女性。多剤耐性肺結核にて昭和53年、51歳にて当院入院。投薬治療を継続的に実施。平成16年4月、永眠。経過 昭和46年、発症。S市内の結核療養所にて入院治療も緩解せず、昭和53年、当院に転院となった。転院時動作時の息切れは見られたが、活動的に行動しADLは自立。胸部X線所見として気管変位はみられたが、胸郭変形は認められなかった。各種薬剤による治療が実施されたが、反応が見られず、継続入院となる。平成元年から看護師による歩行を主とした運動療法が開始されるが、徐々に意欲低下と排痰困難が生じ、転倒も見られ始めた。胸部X線所見は、気管変位の進行、胸郭変形と石灰化が見られ始めた。平成12年から理学療法士による呼吸理学療法が開始されたが、体力低下が徐々に進行し、日中も臥床傾向となり、ADLは食事を除き介助を必要とした。胸部X線所見は、著明な気管変位と胸郭変形がみられた。平成16年3月頃より次第に全身状態が悪化し、4月に永眠された。
【考察】本症例は、長期にわたり入院加療されていたが、加齢とともに運動機能は徐々に低下し、2年ほど前から急激なADL低下がみられた。また、胸郭の変形も終末期が近づくにつれ急速に進行した。したがって、陳旧性肺結核患者に対する理学療法は、運動機能が維持されていた時期から積極的に運動療法などを施行することが必要であり、加えて、胸郭変形に対するアプローチも、早期より検討することが重要と思われた。
60)加速度計を用いた消費エネルギー量の計測
〜車椅子利用者に対する測定の妥当性〜
1北海道社会保険介護老人保健施設サンビュー中の島
伊藤 晃範1、稲村 久美子1、佐々木 悟1、越後 弘子1、高井 重紀1
【はじめに】身体活動量の計測機器として、近年比較的安価で簡便に使用可能な加速度計が開発されているが、車椅子利用者に対する使用可否については検証されていない。本研究では、加速度センサーを搭載したViM(腕時計型、マイクロストーン社製)およびライフコーダー(腰部装着型、スズケン社製)による消費エネルギー量の計測が、歩行活動のみではなく、車椅子を主体とした活動に対しても可能かどうかを検証した。
【対象・方法】対象は健常成人14名(男性5名・女性9名、平均年齢31.6±9.0歳、平均体重61.6±14.4kg)。方法は、加速度計(ViM・ライフコーダー)および呼気ガス分析装置(OXYLOG2)を同時に装着した状態で、3分間の安静後、9分間の車椅子駆動および歩行を各1回ずつ実施。9分間の運動負荷プロトコールは、20m間隔で設置した目標物の周りを8の字に車椅子駆動および歩行をし、速度は2.4km/h、3.2km/h、3.6km/hの各3分ずつとする多段階負荷とした。速度を一定に保つため、10m毎に設定したマーカーを一定時間ごとに通過するようにし、車椅子駆動に関しては、メトロノームを使用し、駆動回数を60回/分と規定した。統計学的分析は、呼気ガス分析装置および加速度計(ViM・ライフコーダー)から計測された9分間の車椅子駆動と歩行による消費エネルギー量および歩数を、ピアソンの積率相関係数、Student’s-T-test、等分散検定F-testを用い比較検討した。
【結果・考察】ViMは、歩行に関しても車椅子駆動に関しても消費エネルギー量の計測に妥当性がみられたが、歩行時の歩数に関しては信頼性が低い結果であった。ライフコーダーに関しては、歩行時における消費エネルギー量や歩数の計測に妥当性がみられたが、車椅子駆動による消費エネルギー量の計測は困難であった。車椅子を主体に生活している高齢者や障害者に対して身体活動量を計測する時、ViMは有用であると考えられる。
61)ハムストリングスの伸張性に対する深部温熱効果について
1札幌医科大学 大学院 保健医療学研究科、2札幌医科大学 保健医療学部 、3札幌清田整形外科病院、4愛全病院
高崎 博司1、武田 秀勝2、青木 光広2、高木 貴史3、近藤 和恵4、宮本 重範2
【目的】深部温熱がハムストリングスのストレッチ効果増大にどの程度寄与するのかをマイクロ波を用い検討する。さらに、ストレッチ効果の持続時間について検討する。
【方法】被験者はハムストリングス・膝に障害既往が無く、健康な20代前半の男性5名とした。同被験者に対しストレッチのみを行う場合と、マイクロ波をストレッチに併用する場合の2群間比較をおこなった。実験は各被験者の各群2回、1週間以上間隔をあけて実験を行った。測定肢位は背臥位で右の膝窩角をゴニオメーターを用い測定した。安静時膝窩角を測定後、「心地よく」感じる程度の持続的ストレッチを大腿二頭筋、半腱・半膜様筋に対し30秒、各1回行った。ストレッチはIDストレッチングの方法に従うものとした。ストレッチ直後、膝窩角を測定し、以後5分、10、20、30、40分後に再測定した。ストレッチ後の膝窩角が初期値の±1°に回復したところで測定終了とした。マイクロ波を併用する場合は、安静時の膝窩角を測定後、腹臥位でミナト医科学株式会社製のマイクロタイザーMT-250Nを使い70Wで20分照射した。照射距離は10〜15cmで、坐骨結節から膝関節中央付近まで照射される距離とした。
【結果】全被験者において、膝窩角は40分以内にほぼ初期の値に回復した。ストレッチのみの場合安静時膝窩角平均は138.2°、ストレッチ直後の膝窩角平均は142.9°で、その差は4.7°であった。マイクロ波照射後ストレッチを行った場合の安静時膝窩角平均は132.8°、ストレッチ直後の膝窩角平均は142.5°で、その差は9.7°であった。統計処理は対応のあるt検定を用い、有意水準を5%以下にした。
【考察】マイクロ波の併用によりハムストリングスの伸張性が約2倍になることが分かった。更に、ハムストリングスの伸張性は深部温熱の有無に関わらず、安静にしていると40分で元に戻ることが分かった。ハムストリングスの伸張性を高めるには深部温熱が効果的であると思われる。
62)小豆を材料とした簡易式ホットパックの経時的温度変化
1北海道千歳リハビリテーション学院
白銀 暁1、村上 亨1、隈元 庸夫1
【はじめに】我が国の臨床場面において,ホットパックは特に使用頻度が高い温熱療法である.しかしながら,現在臨床で用いられているホットパックは装置が大型であり,在宅など施設外では使用しにくいものが多い.電子レンジで加熱するものも存在するが,これらは比較的高価である.このため,安価で身近な素材である小豆等を材料としたホットパックが近年注目を集めている.本実験では,小豆を材料としたホットパックを使用するための指標を得ることを目的とし,小豆重量と電子レンジ加熱時間を変化させて経時的な温度変化を計測した.
【方法】市販の小豆(北海道産)を綿袋に入れ,3種類(重量250g,500g,1,000g)の簡易式ホットパックを制作し,家庭用電子レンジ(出力500W)で加熱した.加熱時間は1分,2分,3分,5分とした.サーミスタ(Mother Tool社製DMA001C,確度±1.0℃)を使用し,ホットパック内部温度を加熱1分後から30分後まで1分毎に記録した.
【結果】すべての小豆重量において,加熱時間に比例して内部温度が上昇した.最高温度は133℃であった.最高温度から20分経過時までの温度低下率は,小豆重量250gで平均32%,500gで25%,1,000gで10%であった.
【おわりに】結果から,小豆は数分の加熱で容易に危険な温度まで上昇するが,小豆重量の増加に伴って内部温度変化が緩やかになることがわかった.熱水加熱ホットパックのような,長時間の熱放出を得るためには1,000g以上の小豆を使用することが望ましく,500Wでは1〜1.5分間程度の加熱が適当と考えられた.また,本実験で制作した簡易式ホットパックの材料費は,小豆1,000gのものでも2,000円以下であった.これは他の市販品に比べて安価であり,また小豆は身近な自然素材でもあるため,在宅場面でも導入しやすいと思われた.
展示室C 会場 ポスター演題 6(36〜42) 10月31日(日) |
転倒予防 |
36)転倒予防教室におけるPTの役割と今後の課題
−道内80市町村へのアンケート調査より−
1北海道千歳リハビリテーション学院 理学療法学科、2平和リハビリテーション病院 リハビリテーション科
村上 亨1、伊藤 俊一1、柏木 学2
【はじめに】近年、転倒予防を目的とした介護予防事業が全国で展開されており、道内でも取り組まれている。最近では理学療法士(以下、PT)が各市町村からの委託を受けて介入するケースも見受けられる一方で、健康運動指導士をはじめ他職種が参加するケースも増えてきている。そこで、今回我々は道内で転倒予防事業を行っている132市町村へのアンケート調査行い、PTの役割と今後の課題について検討したので報告する。
【対象と方法】平成16年2月、前年度において転倒予防事業を実施した道内の市町村保健センター132施設の担当職員に対して、郵送方式によるアンケート調査を実施した。アンケート内容は、1.スタッフの構成について、2.教室での役割分担(身体機能検査、プログラム作成、運動指導)、3.PTの必要性とPTに対する要望等とした。
【結果と考察】回収率は、60.6%(80/132地域)であった。1. スタッフ構成は、保健師とPTが最も多く、次いで保健師のみ、保健師とPTと健康運動指導士、保健師と作業療法士の順であった。2. 役割分担は、身体機能検査は保健師のみが最も多く、次いでPTのみ、保健師とPT、保健師と健康運動指導士の順であった。プログラム作成はPTが最も多く、次いで健康運動指導士、保健師の順であった。運動指導は健康運動指導士が最も多く、次いで保健師、PTの順であった。3. PTの必要性については、66%で必要との結果であった。作業療法士は49%であった。現状では委託による参入がほとんどで、効果を充実させるためにもPTの常勤化が必要との意見も挙げられていた。また、PTに期待する役割として、身体機能評価、プログラム作成の要望が多かった。
今回の結果から、転倒予防教室でのPTの役割は身体機能面の評価やプログラム作成という点で、ニーズが高いことが明らかとなった。今後はPTの専門性を予防分野でも生かすためには、介護予防事業への参加の模索とデータの集積が必要と考える。
37)転倒予防教室終了後のアンケート調査
1富良野協会病院 リハビリテーション科、2北海道千歳リハビリテーション学院
中山 良人1、前田 健太郎1、村上 亨2、伊藤 俊一2
【はじめに】近年の高齢化社会に伴い多くの市町村で「転倒予防教室(以下、教室)」が実施されている。しかし、教室終了後の運動継続や転倒状況についての調査は十分になされていない。今回、我々は平成15年度教室終了後3ヶ月経過時点の状況を調査し、今後の教室運営のあり方について検討したので報告する。
【対象と方法】平成15年度の教室終了者18名(平均年齢74.5±7.5)に対して郵送方式によるアンケート調査を実施した。内容は、教室終了後の転倒状況および運動状況とした。
【結果】回収率は、95%(18/19名)であった。教室終了後の転倒経験者は、5名(28%)であった。教室終了後に運動を継続していた者は9名(50%)であり、継続できない理由として運動効果は理解しているが一人では怠けてしまうという意見が多かった。転倒状況は、敷居でのつまずき、暗い場所で階段を踏み外しての転倒などであった。また、教室終了後OB会が自主的に発足しており、月1回交流していた。しかし、参加者は6〜7名程度であり、OB会への参加意思はあるが外出を控えている者が多く、転倒経験者のこの会へは参加は皆無であった。
【考察】以上の結果、転倒者は想像以上であり、転倒原因として身体的要因だけでなく環境的要因も影響していると考えられた。一般的教室では、身体的機能面へのアプローチが主体となるが、環境への配慮もより強調して教育していく必要があると思われた。また、運動継続者は半数にとどまり、転倒危険要因の高い高齢者では一人で運動を継続する事が難しく、たとえ運動に対する関心が高く効果を実感していても、運動継続の難しさが改めて示唆された。
今後、OB会への介入が重要であり、保健師と連携を図り、より多くの人が参加できる環境づくりが大切と考える。また、さらに身体機能面の経時変化も含め検討を重ねていきたい。
38)猿払村転倒予防教室におけるホームプログラム内容の検討
〜貯筋通帳を活用して〜
1医療法人禎心会 老人保健施設 ら・ぷらーさ リハビリテーション科
長山 睦1
【はじめに】猿払村では介護予防事業として転倒予防教室が平成11年4月より開催されている。今回猿払村で行なっている転倒予防教室の紹介とホームプログラムの一貫として導入した「貯筋通帳」についてアンケート調査を行ったので報告する。
【教室および貯筋通帳の紹介】教室の頻度は月2回(年24回)であり当事業所の理学療法士が月1回(年12回)を担当している。教室の参加人数は33名(男性14名、女性19名)、平均年齢は74.9歳±4.4歳である。利用人数は平均17.6人、平均参加回数は年5.9回であった。教室の内容は、機能訓練・レクリエーション・個別相談である。「貯筋通帳」は運動の継続を目的とし実施回数を記載する手帳であり、ホームプログラムとして平成15年度より導入した。内容は腹筋・腕立て伏せ・スクワット・歩行の4種目であり、歩行は万歩計を用いて行った。
【対象・方法】対象は教室参加者でアンケート調査が可能であった20名であり、方法は教室に関するアンケート用紙を作成し調査した。アンケートの内容は教室の開催内容、貯筋通帳についてであり貯筋通帳については実施状況と継続困難だった種目・今後の継続についてである。
【結果】貯筋通帳の実施状況は内容全て継続可能12%、一部だけ継続可能64%であった。そのうち歩行のみを継続していた人は大多数であった。継続困難だった種目は継続自体が困難40%、種目の継続困難は腹筋30%、腕立て伏せ30%であった。また継続の有無は続けてほしい80%、どちらともいえない20%であった。
【まとめ】教室で貯筋通帳の導入を行いアンケート調査を行った。その結果歩行は継続が可能であり生活に密着した運動の導入・指導が重要であると考えられた。またその他の種目については継続が困難であったため今後の課題として指導内容の検討が必要であると考えられた。
39)「高齢者筋力トレーニング事業」に関わる取り組み 〜第2報〜
1介護老人保健施設グラーネ北ノ沢、2北海道循環器病院、3北海道体育指導センター
阿部 史1、根木 亨1、村岡 卓哉2、大堀 克己2、手戸 一郎1、川初 清典3
【はじめに】「パワーリハビリテーション(以下パワーリハ)」等のアプローチが介護サービスの一環として広まり,今回我々は新たな手法を試み,その継続効果について検討したので報告する.【対象】通所リハ参加者32名(男性21名,女性11名,平均年齢76.0±7.3歳).介護度別に要支援:2名,要介護1:21名,要介護2:7名,要介護3:2名,各疾患障害別では脳血管疾患:20名,内部障害疾患:8名,整形外科疾患:4名である.
【訓練方法】トレーニングには最低1kgから最高15kgまでの範囲に設定できるドイツ・コオペラ社製「ボディースパイダー」を使用,Leg press,Knee extension/flexion,Torso extension/flexion,Rowing,Chest press,Hip abduction/adductionの計9種目を実施した.回数は1種目10回を1セットとし, 1〜3セットの範囲で自覚的運動強度が「楽だ」から「ややきつい」の範囲で個々に合わせ実施した.頻度は,通所利用状況により異なるが2.2±0.6回/週である.
【効果判定】基礎体力評価として握力,開眼片足立ち,ファンクショナルリーチ,座位体前屈,落下棒テスト,Timed up & go,6分間歩行テスト(6MD),QOL評価としてEuroQOLをトレーニング導入前と導入後1,3,6カ月目に実施,結果の前後差をT-testを用い比較し,危険率5%未満(両側)を有意とした.
【結果】導入前と比し,開眼片足立ち,ファンクショナルリーチ,落下棒テスト,Timed up & go,6MDにおいて1〜3ヶ月で有意な差を示し,これら以外の項目においても改善傾向が見られ,その効果は維持された.
【考察】効果判定において基礎体力はパワーリハ同様の効果が出ており、継続により機能維持が可能であると考える.しかしEuroQOLに変化はなく今後の取り組みについて課題を残す結果となった.
40) 男女高齢者に対し転倒予防のためのスパイラルテーピング処置とその影響
1医療法人 英生会 野幌病院 リハビリテーション科、2札幌医科大学 医学部 第1生理学講座・大学院医学研究細胞機能情報学
大畠 純一1、大畠 誠1、三浦 悟1、野呂 三之1、野呂 英行1、當瀬 規嗣2
【緒言】高齢者(65歳)症例に男性5症例、女性12症例に転倒予防のスパイラルテープを使用した。高齢者の転倒予防に対するテーピングの報告は少ない。貼付前と貼付後の影響を重心動揺計で開眼時、閉眼時に分け、静的立位バランスを30秒間基本肢位にて総軌跡長を測定し評価をしたので報告する。
【対象と方法】男性高齢者5症例と女性高齢者12症例の計17症例である。高齢者男性5症例平均年齢76.6歳、身長160.4cm、平均体重66.6kg、女性高齢者12症例の平均年齢73.41歳、平均身長150.91cm、平均体重55.76kg、男女とも全て腰痛疾患であった。テープはスパラルテープのローリングテープ3mm幅のものを使用した。巻く方法は大畠法で右手指第1指と左手指第5指を選定し、爪先端部から爪根部まで真横に螺旋状に巻いた。その後に重心動揺計(アニマ株式会社GRAVICORDER GS-31)を使用した。立位バランスは基本肢位で30秒間、静的立位をとらせ、十分休んでから測定をした。
【結果と考察】男性高齢転倒者と男性高齢非転倒者のテーピングを貼付前と貼付後の開眼時、閉眼時を重心動揺計で測定、高齢転倒者では改善された。高齢非転倒者は改善されなかった。女性高齢転倒者と非転倒者では両者とも改善された。スパイラルテーピングは皮膚の上に貼付することは皮膚感覚(注射痛・切り傷)・深部感覚(筋・腱・関節)が関与しているが、姿勢保持効果はどうであろうか。今回効果はでているが症例数は少ない。今後症例数を増やして研究課題として行きたい。
41)端坐位での側方傾斜刺激に対する坐位保持の検討
1我汝会 えにわ病院、2北海道大学医学部保健学科
水村 瞬1、高橋 光彦2
【目的】坐位での側方傾斜角度変化に伴う、体幹筋の活動変化、頸部及び体幹傾斜角度,体幹が水平位を保持できなくなる角度について測定し、傾斜角度に対する姿勢反応動態を明らかにすること。
【対象】被験者は健康な男子大学生9名,平均年齢22.1±1.9歳,平均身長173.1±2.4cm,平均体重59.8±4.7kgである.
【方法】被験者に傾斜上で、上肢は胸の前に組ませ,下肢は股関節内外転中間位,骨盤は中間位になるように端座位なり、傾斜角度は0°から5°間隔で7つの肢位(30°まで)で実施し,ランダムにそれぞれの角度で10秒間坐位保持を行った. 体幹と頸部の角度を測定するためにランドマークを左右の肩峰,外眼角点より1cm外側に貼付し,デジタルカメラを用いて坐位保持姿勢を静止画で撮影した.それらの静止画をパーソナルコンピュータに取り込み,画像ソフトにてランドマークの座標を読み取り,ランドマーク二点から三角関数を用いて頸部,体幹の傾斜角度を解析した.なお頸部,体幹傾斜角度は床面を基準とした.筋電計を用い,側方傾斜刺激による左右各々の脊柱起立筋の筋電活動を測定した.表面電極の電極間距離は3cmとして,電極の貼付位置はL4〜5とTh11〜12とした.座面傾斜角度が0°の時のIEMGを100%として,それぞれのIEMGを%で表記した
【結果】座面傾斜角度が増加するにつれて,傾斜角度と逆の腰部の%IEMGが増加し,左右ともに極めて強い相関があった。頸部,体幹傾斜角度は座面傾斜角度が20°付近から角度が増加する傾向があり,立ち直りがみられなくなかった.頸部,体幹傾斜角度で右傾斜,左傾斜では比較では有意差はみられなかったが,右傾斜で頸部傾斜角度,左傾斜で体幹傾斜角度が増加する傾向が見られた.
42)脳卒中片麻痺患者における音刺激後の片脚立位動作反応時間と歩行能力の関連性
1千歳豊友会病院 リハビリテーション科、2北海道千歳リハビリテーション学院 理学療法学科
福井 瑞恵1、久保田 健太1、伊藤 俊一2、隈元 庸夫2
【はじめに】脳卒中片麻痺患者,(以下CVA患者)の歩行能力に与える因子として,下肢筋力,バランス能力など姿勢安定性要因との関連性は数多く報告されている.しかし,動作速度と歩行能力に関する検討は散見される程度である.そこで今回演者らは,立位で非麻痺側下肢を挙上する動作を音刺激から動作終了までにかかった時間(以下,動作反応時間)を計測し,歩行能力の関係を明らかにして,動作速度と歩行能力の関連性を検討した.
【対象と方法】対象は,片脚挙上動作が一瞬でも可能なCVA患者40名(平均年齢66.3±11.9歳)とした.計測は,ユニメック社製の反応速度計を使用し,歩隔は肩幅とし,(1)非麻痺側下肢自覚的最大荷重立位(2)麻痺側下肢自覚的最大荷重立位の2条件のスタート肢位から,音刺激後に可及的に非麻痺側下肢を挙上する片脚挙上動作を,各々5回実施させた. 歩行能力は,10m歩行時間,努力性10m歩行時間,timed up and go test,FIMの歩行項目(以下,歩行FIM)を求めた.初期測定日より24時間以後に動作反応時間の再測定を行い,動作反応速度の再現性を検討した.また,(1)及び(2)各々の動作反応時間と歩行能力との相関および歩行FIM別の動作反応時間の比較検討を行なった. 統計学的解析には級内相関係数,Speamanの順位相関係数,多重比較検定を用い,有意水準は5%とした.
【結果と考察】動作反応時間の計測は,条件(1)で高い再現性を認めた.また条件(1)の動作反応時間と各歩行能力間に相関を認めた(p<0.01).歩行FIM別動作反応時間の比較では,条件(1)において歩行FIM 5-7間,6-7間に有意な差が認められた. 以上の結果,CVA患者の歩行能力には動作反応時間との関連性が示唆され,さらに左右の重心移動動作を含んだ動作反応時間が,より歩行能力と関連性があると考えられた.