展示室B 会場 ポスター演題 2(8〜14) 10月31日(日) |
心疾患 9:30〜10:30 座長:星が浦病院 佐藤 志穂 |
8)当院における心臓血管外科疾患リハビリテーションパスのバリア分析と対策
1医療法人孝仁会 星が浦病院
鯖戸 尚子1、佐藤 志穂1、相馬 美由紀1
【目的】当院では2003年12月に心臓血管外科を開設し、開胸・開腹術後症例がリハビリテーションの対象となった。当初より運動基準(リハビリテーションパス)を医師と共同で作成し、スタッフのアプローチに統一を図ってきた。しかし一方、バリアが発生する例もあり、その内容を後方視調査により分析・検討しパスの標準化を進めた。
【対象】2004年5月から2004年7月の間に、当院心臓血管外科にて開胸・開腹術(僧帽弁置換術・形成術、胸部・腹部大動脈置換術、冠動脈バイパス術)を施行した17例(平均年齢68.0歳、性別:男性)を担当した6名の理学療法士からのアンケートを対象とした。
【方法】術前指導を含む術後6日間のパス上でのバリアについて、発生時期・発生原因・年齢・術前後合併症・術式を調査し比較検討を行なった。
【結果】17例中9例にバリアが発生していた。発生時期は、ベッド上・周辺動作期1群と、病室内歩行期2群に分かれた。発生原因は、1群でドレナージや24時間持続点滴による行動制限、2群では長引く胸苦・創部痛による運動拒否が挙げられた。年齢はバリア発生群で平均73.0歳、非発生群で平均63.0歳であった。術前合併症には高血圧、術後合併症には心不全等の急性増悪が挙げられた。術式では、僧帽弁置換術3例にバリアがあった。
【結論】当該診療科が開設されて以来、いくつかの改変と運動処方の工夫を行なってきた。今回の調査では、一定期間を設定して症例側・担当者側の双方の視点で問題点を検出し、運動処方の適当性を確認し、要因からバリア発生例を1群(ドレナージ・点滴による安静)と2群(基礎体力低下・疼痛残存による停滞)に分けた。今後はパスに以下の内容を加えることとする。1)医師説明によりドレナージ留置に対する運動不安の軽減を図る。2)基礎体力低下に対しては、受け入れ可能な活動を複数指導する。3)疼痛持続例には適宜鎮痛を行なう。
9)心臓血管外科術後患者における歩行阻害因子の検討
1北海道社会保険病院 リハビリテーション部、2北海道社会保険病院 心臓血管外科、3北海道社会保険病院 6南病
諫山 佳代1、藤田 博之1、館 博明1、松浦 弘司2、瀧澤 明3
【はじめに】近年、心臓血管外科領域でも早期離床が進められ、早期退院が可能となってきている。一方では各種の要因によりADLの回復が遅れる症例も臨床上よく経験する。今回、リハビリテーション進行の遅れの要因について検討をした。
【対 象】対象は、2002年5月から2004年5月までに心臓血管外科手術後にリハビリテーション依頼のあった48例(男性35例、女性13例)平均年齢68.9±10.6であった。内訳は冠動脈バイパス術(CABG)26例、off pumpバイパス術(OPCAB)11例、弁置換または形成術6例、胸部大動脈人工血管置換術(GR)4例、その他1例であった。
【方 法】当院では術後5日目には棟内歩行となるプログラムを使用している。今回は手術後7日以内に病棟内歩行自立した場合を順調群、8日間以上要した場合を遅延群と定義した。診療録より年齢、性別、術後の左室駆出率、体外循環時間、大動脈遮断時間などを後方視的に調査し、順調群と遅延群とに分けて比較検討した。解析はt検定およびMann-WhitneyのU検定を用い、危険率5%を有意水準とした。
【結 果】順調群は48例中24例(50%)遅延群も24例(50%)であった。遅延理由は脳血管障害後遺症9例(38%)、心不全6例(25%)、不整脈3例(13%)、不良血圧反応2例(8%)、骨関節疾患2例(8%)、その他2例(8%)であった。そのなかで術後人工呼吸管理が5日以上続いたものは5例であった。脳血管障害は術前からのものが5例、術後に併発したものは4例であった。遅延群では年齢(p<0.01)、左室駆出率(p<0.05)、体外循環時間(p<0.01)、大動脈遮断時間(p<0.05)などで有意差が見られた。遅延群では手術侵襲、合併症がリハビリテーション進行へ影響していると考えられた。
10)当院における急性心筋梗塞のリハビリテーション
1医療法人カレスサッポロ 北光記念病院
近藤 和夫1、一戸 明日佳1、山溝 静子1、石井 郁子1、佐藤 勝彦1
【はじめに】当院では平成15年6月新規にリハビリテーション部門を設立し、同時に心疾患リハビリテーション施設基準を取得し1年が経過した。今回1年間の経過のなかで、退院後6ヵ月間定期的にフォローしえた患者についてまとめたので考察を含めて報告する。
【対象】対象は平成15年6月〜平成16年1月当院に救急搬送された急性心筋梗塞(AMI)患者で、急性期リハビリテーションを施行した55名のうち、その後二次予防を目的とした当院の外来リハビリテーションプログラムに沿って6ヶ月を経過した患者24名である。
【方法】脂質代謝異常や喫煙などの冠危険因子の評価や運動習慣、心血管イベントの有無などの日常生活の確認、さらに呼気ガス分析を用いた運動耐容能やQOLの評価を定期的に行い、6ヶ月間における経過を検討した。
【結果】総コレステロール値は、入院時と比較して202.8±39.0mg/dlから165.3±29.5 mg/dlに低下した。発症前喫煙者17名のうち13名が禁煙に成功した。心・血管イベントとしては3名にステント内再狭窄を認めた。運動耐容能の指標となるATは13.8±2.0ml/kg/minから15.2±3.7ml/kg/minに増加した。
【考察】合併症のないいわゆるローリスクのAMI患者にはデコンディショニングなどの問題はほとんどなく、病識に乏しいまま退院するケースもある。退院後、定期的に冠危険因子の確認や日常生活を把握することは二次予防の観点から非常に重要であり、当院でも未だシステム的に不完全ではあるが運動療法だけではないチーム医療としての包括的な心疾患リハビリテーションを今後も継続していく。
11)維持期リハビリテーションの低心機能参加者の運動能力について
1北海道循環器病院 理学療法科、2北海道循環器病院 心臓血管外科、3北海道大学体育指導センター
秋田 孝郎1、中嶋 麻希1、永谷 牧子1、村岡 卓哉1、大堀 克己2、川初 清典3
【はじめに】虚血性心疾患に対する運動療法効果としてはQOLおよび生命予後の改善が挙げられる。QOLの要素として最も重要なのは、日常生活の活動レベルである。今回、低心機能症例に対する運動療法効果として、日常生活の活動レベルを規定する運動耐容能に着目し、1年以上継続して心リハに参加した低心機能症例について運動耐容能とQOLを検討した。
【対象】心筋梗塞により当院に入院し、その後現在も当院にて心リハに継続参加している症例のうち左室造影にて左室駆出率(以下EF)が40%以下の症例6名。(年齢68.7±9.5歳、男性6名、EF:32.7±6.7%)を対象とした。
【方法】外来通院で運動療法を行った。運動プログラムは1クール2時間で実施。運動強度は運動負荷試験結果の嫌気性代謝閾値に設定した。頻度は週に2〜3回。運動療法実施期間は最短1年、最長10年、平均5.3年であった。参加者の心リハ開始後1年間のa)運動耐容能の変化b)CCS(Canadian Cardiovascular Society)の狭心症重症度分類の変化を検討した。
【結果】a)運動耐容能の変化については、最大酸素摂取量は開始時5.0±1.6METSが5.5±0.9METSへ、嫌気性代謝閾値は開始時2.5±0.6METSが3.6±0.6METSへと改善した。b)CCS分類は運動療法開始前後で1度→1度が1例、2度→1度が4例、2度→2度が1例であった。ほとんどの症例が開始時と比較し、改善傾向が見られた。
【考察】52歳の症例は現役社会人である。休日には温泉やパークゴルフを楽しんでいる。また、3例は今年実施された当院の心リハ野外レクリエーションプログラムに参加し、登山や野外散策に参加している。そのうち1例は前年度の心リハスキープログラムを1シーズン全て参加した。今後は適切な指標をもとに、低心機能者に対する運動療法の効果を検討したい。
12)体力年齢の優れた高齢急性心筋梗塞症の1例
1医療法人 北海道循環器病院
中嶋 麻希1、秋田 孝郎1、永谷 牧子1、村岡 卓哉1、大堀 克己1
【はじめに】近年、高齢者の急性心筋梗塞症(以下AMI)に対する心臓リハビリテーション(以下心リハ)は早期再灌流療法の進歩により、早期退院の傾向にある。この度、高齢AMIの急性期心リハに携わる機会を得たのでここに報告する。
【症例紹介】78歳男性、BMI:21.8(入院時)→20.6(退院時)、職業:元公務員、趣味:登山、冠危険因子:現在禁煙中(30年前までは40~50本/日)。
【経過】午前8時20分、登山中に胸痛出現し午前10時に救急車にて当院搬送。心電図上V1~V4にてST上昇。左前下行枝(#6-#7)閉塞により経皮的冠動脈形成術施行しSTENT留置、午前11時30分再灌流成功しCCU入室。Peak CK:3866IU/l、Peak CK-MB:437.7 IU/l、CTR:45%。第2病日:EF:36.4%、CTR:45%。第3病日:一般病棟へ。心電図モニター監視下で急性期心リハ開始。再灌流後の合併症なく循環動態安定しているため、3週間プログラムから2週間プログラムに変更、実施。ADLも問題なく経過。第9病日よりリハ室にて自転車エルゴメーター開始する。負荷は第9病日30w(3METS)×10min→第22病日65w(5METS)×10minへと漸増、第13病日よりエアロビクスダンス(10min)追加し、退院前日(第22病日)まで毎日実施。退院時:EF:59.7%、CTR:42%。退院時の心肺運動負荷試験ではPeak VO2:27ml/min/kg(7.7METs)、AT VO2:15ml/min/kg(4.3METs)を確認。退院後もβ遮断薬・抗血栓剤・抗高脂血症剤服用。
【考察】本症例は、78歳と高齢でPeak CK値も高値であり、通常ならば3週間プログラムの適応であった。しかし、再灌流後の心不全などの合併症が無く循環動態が安定していたこと、そして本症例の社会的背景より、心機能・体力年齢が高いことが予測された為2週間プログラムに変更し実施した。実施期間中は心電図モニター監視の下、安全に毎日継続して心リハを展開することが出来た。このことから、Peak CK値や年齢よりも体力年齢がプログラム適応の指標となることが示唆された。
13)重症心不全、冠動脈バイパス術後、植込み型除細動器を用いた症例の
リハビリテーション経験
1手稲渓仁会病院 リハビリテーション部
佐藤 義文1、長谷 陽子1、義村 保善1、東本 久美子1、山崎 彰久1
【症例紹介】40歳男性。断続的な胸痛/呼吸苦を主訴に他院より紹介入院。左室駆出率(以下EF)22%、3枝病変の診断で経皮冠動脈形成術後血圧低下、呼吸苦著明にて、緊急冠動脈バイパス術施行。術後5日、ICU退室、理学療法(以下PT)開始も術後8日、突然心停止しICU管理へ。術後10日、植込み型除細動器(以下ICD)留置。術後12日、無気肺出現しPT再開となるも夜間より重症不整脈再燃。左室瘤に起因する期外収縮(以下、VPC)の診断で術後15日、左室瘤切除術施行される。
【経過】術後17日、PT再開。肺野痰貯留も吸引刺激でVPC頻発、体位変換困難。吸入併用し、排痰手技実施。術後19日、大腿動脈バルーンパンピング抜去。胸壁刺激で単発VPC誘発、体位ドレナージ強化。術後24日、EF30.8%、人工呼吸離脱、腹圧介助/喀痰法指導し喀痰向上。粗大筋MMTは2〜3レベルに回復も両腓骨神経領域の筋低緊張で尖足傾向。術後31日、EF32.9%、一般病棟転出、循環動態注意しつつ可及的に坐位練習追加。術後35日、全介助立位開始も起立性低血圧著明、車椅子坐位時間の延長を図る。術後48日より起立性低血圧に対し、両下肢弾性包帯圧迫下にて立位練習再開。腓骨神経麻痺はMMTで右:0→2、左:0。経皮低周波刺激はICD干渉の恐れあり未実施。術後53日、病棟自主トレメニュー作成し看護師へ指導。術後60日、足踏み練習追加。術後70日、両側AFO作成、歩行負荷試験開始。術後74日、医師立会いのもと、PT室へ。リスク管理指標作成し、機能/能力向上目的に可及的にPT継続した。
【考察】本症例では呼吸/身体機能の著明な低下を認め可及的にPT実施したが、循環動態把握(血圧測定/心電図等)の重要性を再認識した。合併症に対して都度対応したものの、腓骨神経麻痺は予防出来た可能性もあり反省点と考える。全身機能/能力を適宜評価する視野と予後予測が必要であったと考える。本症例に際し、医師/コメディカルとのチームアプローチが必要不可欠であった。
14)ICD植込み患者に対する理学療法の経験
1医療法人社団カレスサッポロ 北光記念病院
一戸 明日佳1、近藤 和夫1
【はじめに】植込み型除細動器(ICD)とは心室頻拍、心室細動といった致死性不整脈の発作時に突然死を回避するものである。当院では年間53件(昨年実績)のICD植込み件数があり、今回ICDを植込んだ患者(以下、ICD患者)に対して理学療法(PT)を行った経験を症例を交えて報告する。
【PTの適応】平成15年6月より現在までICD患者の理学療法処方件数は11件である。PTの目的は主に廃用性の筋力低下や歩行困難であるが、脳卒中後遺症などの運動障害に対してや、監視下で運動療法を行うことで、日常生活に対する不安を取り除くことを目的とする場合も多い。
【PTを行う上での留意点】(1)物療などの医療機器に対する注意(2)植込み側の上肢可動域制限など(3)基礎疾患に対する管理(4)ICD作動時の対応
【症例紹介】ケース1:51歳男性、心サルコイドーシスによる完全房室ブロック、心室頻拍にてICD植込み。頻回なICD作動が原因で、活動性が低下したことによる廃用性の体力低下改善と身体活動に対する不安を取り除くことを目的として監視型運動療法を行った。ICD作動の不安から身体活動量を増加させることが困難であったが、徐々に屋外歩行など行い、植込みから約10ヵ月後自宅退院された。ケース2:58歳男性、肥大型閉塞性心筋症、心室頻拍によりICD植込み。既往歴としてポリオによる不全対麻痺があり移動は両松葉杖を使用している。不整脈による失神やICD作動時の衝撃による転倒、外傷を予防するために、立位から床に坐る動作および立ち上がり動作の獲得を行った。
【考察】ICD患者へのPTの介入は、基礎疾患や廃用性変化への対応のみならず、ICDの特性や患者背景を理解し、作動の不安に対する精神的サポート、作動時の対応の指導などを通し、ADLの拡大やQOLの向上を図る必要があると考える。