展示室B会場  ポスター演題 8(50〜56) 10月31日(日)

 システム

 13:00〜14:00        座長:森山メモリアル病院 東海林拓哉

50)当院回復期リハビリテーション病棟の現状 −転帰に影響を与える因子−

 1札幌秀友会病院 リハビリテーション科
 石岡 裕子1、杉原 俊一1、春名 弘一1、飯間 祐子1、渡辺 倫子1、増田 知子1

【目的】当院が平成15年7月より回復期リハビリテーション(以下リハと略す)病棟60床を開設し1年が経過した。この間我々は在宅復帰を目標に日常生活動作の自立度向上を目指し、病棟での治療を実行してきた。また目標や方針の決定、その見直しをするために、定期的にカンファレンスを行っている。今回は当院の回復期リハ病棟の現状を把握することを目的に転帰に影響を与える因子について調査し報告する。

【対象と方法】当院リハ科データベースより平成15年7月〜16年6月までの1年間に回復期リハ病棟に入退院した188例のうち、リハ依頼のあった初回発症の一側半球損傷の脳血管障害患者76例を後方視的に調査した。性別の内訳は男性43例、女性33例、疾患別では脳梗塞55例、脳出血21例で平均年齢は68.6歳であった。調査項目は同居家族人数、転帰先、入院時の精神機能・高次脳機能障害の有無、ADLの評価については機能的自立度評価法(以下FIMと略す)の運動項目を用い評価した。

【結果と考察】平均在院日数は64.8±40.7日であった。転帰は在宅復帰が59例(77.6%)、療養目的での転院もしくは入所が12例(15.8%)、治療目的の一般病院転院が5例(6.6%)だった。転帰別の在院日数は在宅復帰群で61.2±36.9日、療養目的の転院群で84.4±58.7日だった。自宅復帰と非自宅復帰各々対象群の退院時FIMの平均の比較では各項目に有意差を認め、中でもその上位項目としては排尿管理、歩行、トイレ動作、更衣・下半身であった。回復期病棟のカンファレンスで在宅復帰にむけての条件として排泄関連動作にまつわるものが多い傾向を感じていたが、結果はそれを反映するものになった。排泄関連動作はその介護内容からも介護保険などの公的なサービス導入が難しいこともあり、今後はこの結果を踏まえ病棟でのADL訓練に反映させていく必要があると考える。


51)退院後早期における脳卒中患者の問題点と外来リハビリテーションの課題

1クラーク病院 リハビリテーション部
 森長 俊晃1、越後 靖子1、清水 麻奈美1、山野 香1、冨樫 英則1、水本 善四郎1

【はじめに】当院では脳卒中患者に対して外来リハビリテーション(以下外来リハ)を実施しているが、多くの患者から退院後の身体機能低下、環境への適応に対する不安などの訴えが聞かれる。そこで今回退院後の身体機能、精神機能の変化から退院後早期に患者が抱える問題点と外来リハの今後の課題を検討した。

【対象】当院を平成15年5月から平成16年6月までに退院し外来へ移行した脳卒中患者19名(男性16名、女性3名、平均年齢61±10.23歳)を対象とした。

【方法】1)身体機能はTimed up and go test(以下TUG)を退院時と退院1ヶ月後で比較した(wilcoxon signed-ranks test)。2)感情評価をProfile of Mood States(以下POMS:緊張‐不安、抑うつ‐落ち込み、怒り‐敵意、活気、疲労、混乱)、3)QOL評価はSF36(身体機能、日常生活機能、身体の痛み、全体的健康感、活力、社会生活機能、日常役割機能、心の健康)を初回外来時に実施し、それぞれ報告されている健常人のデータと比較した(t-検定)。

【結果】1)TUGは退院時29.01±12.17秒、1ヵ月後27.01±13.51秒と有意に改善を認めた(p<0.01)。2)POMSでは抑うつ‐落ち込みの項目で健常人よりも有意に高い傾向が認められた(p<0.01)。3)SF36では全体的健康感、活力以外の6項目で健常人よりも有意に低下が認められた(p<0.01)。

【考察】退院後早期の段階では身体機能の改善がみられる反面、精神面においては脳卒中患者の特性である抑うつの傾向が有意に高く、QOLにおいても健常人よりも低値を示していた。退院後早期の患者は新しい環境への適応にストレスを感じる事が多いと言われている。今回の結果から外来リハにおいても適切な指導方法と明確な治療方針を立て、身体機能の変化のみに囚われず心理的、社会的背景や行動特性の変化も考慮した対応が必要と考える。


52)在宅脳卒中患者に対する外来リハビリテーションについて
     〜退院後早期に問題を抱えた症例を通して

 1クラーク病院
 清水 麻奈美1、越後 靖子1、森長 俊晃1、山野 香1、冨樫 英則1、水本 善四郎1

【はじめに】当院では脳卒中患者に対して、回復期から在宅まで一貫したリハビリテーション(以下リハ)を展開している。特に屋内移動が自立している患者に対しては積極的に外来リハを行っている。今回は、退院後早期に身体機能面へアプローチして、精神面や介護面に対しても効果をあげた2症例について報告する。

【症例1】77歳女性、脳梗塞、右片麻痺、娘夫婦と3人暮らし。通院頻度は2週に1回。退院時の屋内移動はプラスチックAFOとT字杖で歩行自立、屋外は車椅子を使用していた。問題点としては入院中に外泊経験がなく、退院後無理をして動きすぎたために腰痛が悪化し、初回外来時、歩行不可能で介護量が増加していた事があげられた。外来リハで腰痛に対しアプローチを行った結果、約1ヶ月後に屋内・外の歩行が可能になった。初回より1ヵ月後でPOMS(感情プロフィール検査)は「抑うつ・落ち込み」などが軽減、Zalit介護負担尺度では38点が27点と軽減し、3ヶ月程で生活が落ち着いた。

【症例2】72歳女性、脳出血、右片麻痺。2世帯住宅で夫と2人暮らし。通院頻度は週に1回。退院時の屋内移動はT字杖歩行自立、屋外は要監視であった。問題点としては身体能力は高いが入院中に家事等を含む応用動作へと繋がっていないため、慣れないことへの不安が強く、家族が過保護になってしまっていた事があげられた。外来リハで応用動作も行い、患者の能力を家族に示していった。身体面ではTimed Up Go Testで初回、1ヵ月後、3ヵ月後でそれぞれ、23秒、19秒、18秒と歩行速度が速くなり、Zalit介護負担尺度も12点、9点、3点と軽減した。

【考察】退院後早期に身体機能面へのアプローチをすることで、患者が本来有している能力を引き出す事ができ、精神面や介護面にも良い影響を与えることができた。退院後早期の在宅生活に慣れない時期に、外来リハで患者や家族に関わることは有効かつ必要であると考える。


53)当院通所リハビリにおける個別リハビリの役割

1北海道勤労者医療協会 札幌北区病院 リハビリテーション科、2北海道勤労者医療協会 札幌丘珠病院、3北海道勤労者医療協会 中央病院
 吉川 真美1、岡本 五十雄2、佐藤 礼人3、飯尾 紗綾香1、通所リハビリ科 スタッフ一同1

【はじめに】当院通所リハビリは2002年11月に開設され、2003年5月より個別リハビリ(以下、個別リハ)を1日7人枠で開始した。今回、個別リハの効果・役割を個別リハ終了・継続者の傾向から検討した。

【対象・方法】対象は2003年5月から1年間の個別リハ利用者53名である。内訳は、男性26名、女性27名、平均年齢は78.0±9.8歳である。主疾患名は脳血管系疾患23名、整形疾患24名、呼吸器疾患2名、心疾患2名、ギランバレー症候群1名、脊髄小脳変性症1名である。介護度は、要介護1が23名、要介護2が17名、要介護3が8名、要介護4が5名である。方法は、1)効果判定として初回、開始から3ヶ月、6ヶ月後の10m全力歩行スピードを測定し比較した。統計学的分析にはt検定を用いた。危険率5%以下を有意差ありとした。2)終了理由と継続理由について調査した。

【結果】1)10m全力歩行スピードは、3ヶ月後(対象者数34名)、6ヶ月後(対象者数23名)共に向上傾向が認められた。2)1年間の終了者は22名で、理由は入院16名、目標達成5名、サービス変更1名である。継続者は31名で、維持15名、未達成8名、終了予定6名、サービス変更2名である。

【考察】本研究から、歩行スピードは個別リハ開始時から比較して3ヶ月、6ヶ月とも向上傾向が認められた。個別リハの効果は確認することはできたが、終了時期には大きくは影響していない。終了理由は入院が最も多く、目標達成する者は予定者も含めて9名と少なかった。セラピストの技術に加え、個々にあわせた計画を関連するサービス側で集団的にアプローチすることが重要である。継続理由としては維持目的が15名と多く、自主的に維持することが困難である例が多い。しかし、個別の対象者は回復見込みのある者とされており、現場の実態には則していない部分がある


54)身体障害者手帳取得者のQOL調査 −呼吸機能障害を対象として−

1手稲渓仁会病院 リハビリテーション部、2札幌医科大学 大学院 保健医療学研究科、3札幌医科大学 保健医療学部

 長谷 陽子1、戸津 喜典2、山中 悠紀2、宮坂 智哉2、石川 朗3、青山 誠1

【はじめに】身体障害者福祉法制定以降、医療技術の進歩や対象疾患の多様化により呼吸機能障害者の実態は大きく様変わりし、認定基準の変更が求められている。そこで今回、身体障害者手帳を取得している呼吸機能障害者のQOLの現状を把握することを目的とした。【対象・方法】当院呼吸器科通院中で状態の安定している身体障害者手帳取得者7名を対象(平均年齢72.7±5.4才男性3名女性4名)とした。対象疾患は、COPD・気管支喘息等の慢性呼吸不全を呈するものであった。身体障害者手帳等級の内訳は、1級4名、3級3名であった。在宅酸素使用者は、7名中4名であった。QOL評価にMOS Short Form36(;SF-36v2)を用い、身体機能(;PF)、日常役割機能(身体)(;RP)、身体の痛み(;BP)、全体的健康感(;GH)、活力(;VT)、社会生活機能(;SF)、日常役割機能(精神)(;RE)、心の健康(;MH)の8項目の下位尺度、及び身体的健康度(;PCS)、精神的健康度(;MCS)からなるサマリースコアを換算し、国民標準値(;国標)の50点と比較した。

【結果】性別・年代別平均値は、70代男性のRE以外全ての下位尺度で国標より低値であった。また、全ての年代・性別での平均値は国標よりPCSは低かった。等級別では、1級は3級に比べPF・RP・PCSで低く、3級は1級に比べGH・SFで低かった。

【結論】身体障害者手帳取得者のSF-36は国民標準値より全ての下位尺度で低い傾向を示し、身体的健康度は低下している傾向にあった。


55)リハビリテーション科と病棟との情報共有について 
    〜道南支部におけるアンケート調査から〜

1医療法人社団 函館脳神経外科病院
 大面 寮子1、石田 亮介1、中田 俊博1

【はじめに】リハビリテーションチーム内での情報共有は、問題点を明確化し統一された目標を効率よく達成するためには重要である。しかし、施設によってチーム内での情報共有手段は様々であり、統一された方法は確立されていないのが現状である。今回我々は、道南支部の施設を対象に、リハビリテーション科と病棟との情報共有について調査を行ったので報告する。

【方法】道南支部に属する46施設を対象としてアンケート調査を実施した。調査項目は、1.病棟との連絡方法、2.連絡カード等書式類の使用状況、3.カンファレンスの実施状況、4.リハビリスタッフの情報共有に関しての満足度(VAS)、である。アンケート回収率は39.1%であった。

【結果】1.病棟との連絡方法は、口頭が11施設、連絡カード等書式類によるものが11施設、カンファレンス11施設であり、電子カルテ、病棟申し送りが1件ずつであった。また単一の連絡方法ではなく併用している施設が13施設であった。2.連絡カードの使用状況は、内容が病態・訓練内容に関することが多く、頻度はほとんどの施設が必要に応じて使用していた。3.カンファレンスの実施状況は、参加者は主治医、看護師、ソーシャルワーカー、リハビリスタッフであり、時間は1症例2〜3分程度が多かった。4.リハビリスタッフの満足度は平均48.6点であった。

【考察】今回の結果より、施設によっての連絡方法に違いがみられたが、ほとんどの施設において、口頭・連絡カード・カンファレンスの併用が多かった。これは、どの連絡方法においても問題点があり、併用することで補っていると考えられる。しかし、満足度の結果より現状の連絡方法に対し、問題点が残されていることも伺える。


56)理学療法士の理念と達成感

1札幌学院大学 人文学部 人間科学科
 井上 秀美1

【目的】リハビリテーション(以下、リハ)は、医療、保健、福祉の連携が必要と言われ、理学療法士(以下、PT)は医療費抑制や福祉及び介護サービスの急激な変化の中で業務量に追われている。そして、業務多忙に耐える職業的よりどころは何かと考えた時に、福祉分野には、福祉サービスの基本理念(社会福祉法)、児童福祉の理念(児童福祉法)、基本的理念(老人福祉法)等と理念があり、保健分野も基本理念(地域保健法、老人保健法)がある。しかし、PT分野には理念がない。だが、PT職の起源であるリハには理念がある。リハ理念は、全人間的回復であり、思考的視点にICF(IDH)があり、手段としてチームアプローチとされる。ではPTは理念を意識して思考や手段を取り入れているか。理念は業務達成感に影響があるかと考え調査を行った。

【対象】平成15年度日本PT協会名簿から、系統的抽出法にて道内PT会員200名を抽出した。

【方法】郵送による無記名の質問紙法。質問紙は、理念の有無・業務展開へのICF(IDH)視点等々とバーンアウト尺度(以下、BS)から構成した。

【結果】回答者、114名(回収率57%)。分析は、BS不十分を除いた111名。男性82名、女性29名。平均年齢31.3才(23才から61才)。何がしかの理念有り回答84名・無し回答21名・その他6名。全体のBS平均値は、達成因子2.66、消耗因子2.18。理念有り群は、達成因子2.74、消耗因子2.16。理念無し群は、達成因子2.47、消耗因子2.27。思考視点にICFを取り入れは、理念有り群62%、無し群47%。職場にリハ専門医関与は、理念有り群37%、理念無し群29%。院外職種との連携有りは、理念有り群81%、理念無し群は52%。

【考察】回収率が低く道内PTへの反映はできないが、回答者群傾向として、理念の有無は業務の達成感と低い連関があると考える