展示室A 会場  ポスター演題 7(43〜49) 10月31日(日)

 脊椎関係

 13:00〜14:00      座長:麻生整形外科病院 佐々木祐二

43)頚部疾患患者に対する頚部筋力測定法

1我汝会 えにわ病院 リハビリテーション科、2我汝会 えにわ病院 整形外科
 石田 和宏1、佐々木 敏晴1、村上  哲1、佐藤 栄修2

【目的】頚部疾患患者に対する頚部筋の筋力強化は、臨床にて頻繁に行われている。しかし、頚部疾患患者に実施可能な統一した頚部筋力の測定方法がないのが現状である。その原因として、1)測定機器、測定肢位、固定方法などの測定方法が十分に検討・統一されていない、2)年代別健常値が存在しない(特に高齢者)、3)十分な症例数での検討が行われていないことが考えられる。本報告の目的は、1.我々が考案した等尺性頚部筋力測定法に関する検者内・検査間信頼性の検討、2.年代別健常データの作成である。

【対象と方法】対象は、頚部疾患の既往が無い40〜70歳代の健常者101名とした。測定機器はPower Track 2 TM COMMANDERとした。測定肢位は、代償運動を出来る限り防ぐため、GT-350(OG技研社製)を用いた足底離床、股関節90°屈曲位椅子座位とし、大腿部・骨盤・胸郭をベルトにて固定した。センサーパッドの位置は、屈曲筋力測定では額、伸展筋力測定では外後頭隆起部とした。測定時の頚椎位置は、屈曲伸展中間位とした。測定は、数回の練習後、等尺性頚部屈曲筋力、伸展筋力測定を各々3回ずつ行い、その最大値を測定値とした。分析内容は、a)健常者による検者内・検者間信頼性の検討、b)年代別健常データの算出とした。

【結果と考察】本測定法は、検者内信頼性がICC:0.99、検者間信頼性が屈曲でICC:0.98、伸展でICC:0.97と何れも高値であり、臨床現場での使用において有効であると思われた。今後、さらにデータ数を増やしていきたいと考える。


44)頚部疾患患者における頚部筋力の検討

1我汝会 えにわ病院 リハビリテーション科、2我汝会 えにわ病院 整形外科
 石田 和宏1、佐々木 敏晴1、村上 哲1、佐藤 栄修2

【目的】頚部疾患患者に対する頚部筋の筋力強化は、臨床にて頻繁に行われている。しかし、頚部の屈曲・伸展筋力がどの程度低下しているのか、あるいはその筋力特性(伸展/屈曲比)などに関する報告は少ない。本報告の目的は、我々が考案した等尺性頚部筋力測定法にて外来頚椎疾患患者の頚部屈曲・伸展筋力を測定し、さらに先行研究にて作成した性別・年代別健常データと比較検討し、頚部疾患患者に対する筋力強化の一助を得ることである。

【対象と方法】対象は、H15年10月〜H16年6月に当院の外来を受診し、保存療法にて運動療法が開始となった40〜70歳代の頚椎疾患患者114例(以下、患者群:男性42例、女性72例)とした。測定方法は、我々が考案した等尺性頚部筋力測定法とした。測定は、数回の練習後、等尺性頚部屈曲筋力、伸展筋力測定を各々3回ずつ行い、その最大値を測定値とした。健常値は、我々が作成した101名の性別・年代別健常データを使用した。分析内容は、健常群・患者群間における屈曲・伸展筋力、伸展/屈曲比の比較検討とした。統計学的検討は、Mann-Whitney U検定を使用した。

【結果と考察】今回の結果より、頚部疾患患者では、頚部伸展筋力低下が著明であった(p<0.01)。伸展筋力の低下は、頚部伸展筋群が抗重力筋であるため、廃用性、疼痛・反射抑制の影響が大きく関与したものと示唆される。今後、我々が考案した測定法にて、症例数をさらに増やし、頚部疾患患者の筋力低下の特性およびその原因を追求したいと考える。


45)腰椎後方除圧手術後の残存症状に対する超音波療法の効果
   〜第2報:RCTによる分析〜

1我汝会 えにわ病院 リハビリテーション科、2我汝会 えにわ病院 整形外科
 石田 和宏1、村上  哲1、岩佐 志歩1、大地 亜紀子1、持田 諭宏1、佐藤 栄修2

【目的】今回我々は、腰椎後方除圧手術により大半の症状は回復したが、手術後に一部残存した症状に対する超音波療法(以下、UT)が有効かを無作為化比較試験にて検討した。

【対象と方法】対象は、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症の術後、疼痛やしびれなどの知覚障害性の残存症状があった21例とした。術式はLove変法、内側椎間関節切除術(以下、MF)であった。 対象者を無作為に治療群10例とプラセボ群11例とに分けた。治療群には、抜糸後より1日2回、入院期間を通してUTを行った。治療時の体位は側臥位とした。使用機器は、酒井医療株式会社製S-SONIC SUS-100とした。照射方法は、周波数0.8MHz、出力1.0W/cm2、20%間歇的照射、固定法(導子を障害部位に固定する方法)にて5分間とした。治療部位は、障害レベルの神経根周囲とした。また、プラセボ群は、超音波の照射のみ行わず、その他は治療群と全く同様に行った。治療実施前後に、残存症状の部位・程度をpain drawing・VAS(Visual Analog Scale)にて検査し、両群間での比較検討を行った。

【結果および考察】治療群・プラセボ群間において、性別、年齢、術式、障害レベル、治療開始日、治療日数、治療回数、術後入院期間、治療開始時の残存症状部位・程度において有意差は得られなかった。治療実施前後の改善率(100−退院時VAS/治療開始時VAS×100)は、治療群で有意に高い値が得られた。また、治療直後に効果が認められた症例は、治療群で9例に対し、プラセボ群では僅か3例であった。今回の結果より、非侵襲的で簡易な超音波療法は、腰椎後方除圧手術後の残存症状に対し有効な治療法であると考えられる。


46)脊髄損傷者における歩行について
     −歩行の実用性と酸素効率の関係および退院後の経時的変化−

 1労働者健康福祉機構 美唄労災病院 勤労者腰痛/脊損センター 
 佐藤 貴一1

【目的】本研究の目的は、脊髄損傷者における歩行の実用性と酸素効率の関係および退院後の経時的変化を評価することである。

【対象】歩行可能な四肢および対麻痺者32例を対象とした。脊髄損傷の程度は全例Frankel CまたはDであった。更に15例を退院1年後に再評価した。

【方法】平時歩行の速度と酸素摂取量を測定し酸素効率を算出した。歩行の実用性について、非実用歩行群、屋内歩行群、屋外歩行群の3群に分類し比較した。Aschworth Scale により下肢痙縮の強さを定量した。再評価時には日常生活における歩行頻度について問診により調査した。再評価例に対し退院後のリハビリテーション介入を実施しなかった。

【結果】非実用歩行群の酸素効率は平均0.72[ml/Kg/m]、屋内歩行群は0.37[ml/Kg/m]、屋外歩行群は0.23[ml/Kg/m]であり、各群間に有意差があった。再評価例中7例は酸素効率が改善(-0.13[ml/Kg/m])し、8例は悪化(+0.12[ml/Kg/m])した。酸素効率が改善した例では下肢痙縮は比較的弱く(平均Aschworth Scale 1.1)、外出などで退院後の歩行頻度が多い傾向がある一方、酸素効率が悪化した例では下肢痙縮は比較的強く(平均Aschworth Scale 1.8)、退院後の歩行頻度が少ない傾向があった。

【考察】酸素効率は歩行の実用性を反映した。歩行可能な脊髄損傷者において、リハビリテーション介入のない場合、退院後1年間の歩行パフォーマンスの変化は、下肢痙縮の程度と退院後の歩行頻度に影響される可能性がある。


47)ウィルチェアーラグビーチーム結成への取り組み

1特殊法人 労働者健康福祉機構 美唄労災病院、2岩見沢市立総合病院
 遠山 あづさ1、佐藤 貴一1、大村 木綿2

【はじめに】ウィルチェアーラグビーとは、頚髄損傷者(四肢麻痺者)のために1977年カナダで考案されたスポーツである。バスケットボールコート上で公式バレーボールを使用し、1チーム4名で競技する。あらゆる方向へのボールパスや車いすによるタックルが許され、相手ゴールを狙う過激なコンタクトスポーツである。誕生から約20年の間に世界的に展開され、2000年シドニーパラリンピックで正式競技に加わった。日本では1996年アトランタパラリンピック後に普及活動が始まり、現在8チームが日本ウィルチェアーラグビー連盟に登録している。昨年より我々は道内初のチーム結成とその活動に携わってきた。今回、頚髄損傷者のスポーツ参加に対する我々の取り組みを紹介する。

【これまでの取り組み】ウィルチェアーラグビーがどんなスポーツなのか、また残存機能ベルがどの程度で可能なのかは一般に知られていない。そこで、当院を退院した頚髄損傷者らとその知人により選手募集がなされた。現在、北見、旭川、滝川、美唄、夕張、札幌在住の8名が集まり活動している。更に、入院中の若年頚髄損傷者らに対しても、入院中からスポーツ紹介を積極的に行っている。入院者の場合、車いす操作が自立してから実際のプレイを経験させ、チーム練習に参加させている。

【今後の展開・目標】頚髄損傷者で、スポーツ活動を望む者に対してウィルチェアーラグビーを紹介することは、「外」に出るきっかけを与え、社会参加の一助となる。我々のねらいは道内における頚髄損傷者のスポーツ参加を促進することである。また、様々な取り組みを通して、理学療法が頚髄損傷者のスポーツ参加に対してどのように役立つかを明らかにすることが今後の重要な課題である。


48)不全頚髄損傷に複合靭帯損傷を合併した1症例

 1市立函館病院リハビリセンター
 森山 武1、川村 昌嗣1、碓井 孝治1、齋藤 香織1、山下 康次1

【はじめに】交通外傷による脊髄損傷では多発外傷を呈することが多く、不全頚髄損傷の回復過程では症例により様々な経過を辿る。今回、頚髄損傷に複合靭帯損傷を合併した症例を担当する機会を得たので報告する。

【症例】18歳、女性

【疾患名】第6頚椎破裂骨折、頚髄損傷(C6)、右上腕骨頸部骨折、右肘頭骨折、左膝関節複合靭帯損傷(前十字靭帯、後十字靭帯、内側側副靭帯損傷)

【病歴および経過】2000年6月10日後部座席乗車中、4m程の沢に転落受傷。近医搬送後、当院へ紹介入院。入床時、筋力はMMTにて上腕二頭筋右3左4、手関節背屈2、以下筋収縮なし。感覚はTh2まで正常、Th3〜8まで触・痛覚鈍麻。Th8以下脱失。肛門周囲S4-5領域触覚あり。ASIA motor 11点、sensory light touch 48点、pin prick 48点。6月12日頚椎前方固定術施行。理学療法処方となる。6月26日右上腕骨頸部骨折、肘頭骨折に対して観血的骨接合術施行。6月27日右大腿四頭筋収縮認められる。その後筋力および感覚の回復を認め、8月22日より膝関節硬性装具装着下介助での立位練習開始。歩行練習は平行棒内より開始し、段階的に交互式歩行器、ロフストランド杖歩行練習に移行した。2001年8月3日転院。転院時、片側ロフストランド杖歩行自立。ASIA motor 53点、sensory light touch 100点、pin prick 100点。2002年2月4日、左膝関節複合靭帯損傷に対する手術目的にて再入院。2002年2月8日後十字靭帯再建術施行。術後2週間伸展位固定。ROMexは術後3週目より開始。荷重は3週目より部分荷重開始し2週で全荷重とした。5月21日より膝関節装具除去。術前歩行能力まで回復し2002年7月5日自宅退院。退院時左膝関節屈曲135°、左大腿四頭筋4。【まとめ】本症例は急性期には両下肢完全麻痺を呈し経過とともに筋力、感覚の回復を認め、1年半後に靭帯再建術施行となった。術後においても歩行機能の維持が可能であった。


49)美唄労災病院の脊髄損傷リハビリテーションの50年

1美唄労災病院 腰痛/脊損センター リハビリテーション科
 牧野 均1、川瀬 真史1、林 徹哉1、金子 實2

【目的】美唄労災病院は,周辺産炭地における勤労者医療の中核病院として1955年に開設された.脊髄損傷(以下脊損)医療は主軸のひとつであり,現在は勤労者腰痛脊損センターに受け継がれている.2004年3月現在,当院にて治療した脊損患者は1462例に達したが,2001年以降,当院における急性期脊損例は増加の一途を辿っている.本研究の目的は脊損医療の歴史的変遷を調査し,当院における脊損医療の特性と将来像を検討することである.

【方法】1955年から2004年3月まで当院における脊損患者1462例を対象とした.歴史的な相違を検証するため,1955年開設時から周辺炭鉱が閉山となる1970年までの15年間(炭鉱時代群)と,当院が新体制となった2001年度から2003年度までの3年間(センター群)を比較検討した.

【結果】炭鉱時代群(1955年から15年間):脊損総退院数は,184例であった.内訳は,労災保険が167例(90.8%),労災保険外が17例であった.また,胸・腰髄損傷は137例(74.5%)で,頚髄損傷は47例であった.センター群(2001年より3年間):脊損総退院数は,128例であった.内訳は,労災保険が32例(25%),労災保険外が96例であった.また,胸・腰髄損傷は45例(35.2%)で,頚髄損傷は83例であった.

【考察】炭鉱閉山に伴う炭鉱事故減少で脊損にける労災保険率が低下したものの,交通事故を中心に頸髄損傷が増加した.旧体制下では年間約30例の退院治療を遂行してきたが,2001年以降,当院がセンター化に伴い急増し,昨年度は急性期脊損例が年間70例に達した.総合せきそんセンターに次ぐ急性期脊損患者数であり,国内における脊損医療の中核をなす.しかし,症例数に対して病床数が少ないこと,施設の老朽化が著しくことなど検討課題も多い.