展示室C 会場 ポスター演題 6(36〜42) 10月31日(日) |
転倒予防 |
36)転倒予防教室におけるPTの役割と今後の課題
−道内80市町村へのアンケート調査より−
1北海道千歳リハビリテーション学院 理学療法学科、2平和リハビリテーション病院 リハビリテーション科
村上 亨1、伊藤 俊一1、柏木 学2
【はじめに】近年、転倒予防を目的とした介護予防事業が全国で展開されており、道内でも取り組まれている。最近では理学療法士(以下、PT)が各市町村からの委託を受けて介入するケースも見受けられる一方で、健康運動指導士をはじめ他職種が参加するケースも増えてきている。そこで、今回我々は道内で転倒予防事業を行っている132市町村へのアンケート調査行い、PTの役割と今後の課題について検討したので報告する。
【対象と方法】平成16年2月、前年度において転倒予防事業を実施した道内の市町村保健センター132施設の担当職員に対して、郵送方式によるアンケート調査を実施した。アンケート内容は、1.スタッフの構成について、2.教室での役割分担(身体機能検査、プログラム作成、運動指導)、3.PTの必要性とPTに対する要望等とした。
【結果と考察】回収率は、60.6%(80/132地域)であった。1. スタッフ構成は、保健師とPTが最も多く、次いで保健師のみ、保健師とPTと健康運動指導士、保健師と作業療法士の順であった。2. 役割分担は、身体機能検査は保健師のみが最も多く、次いでPTのみ、保健師とPT、保健師と健康運動指導士の順であった。プログラム作成はPTが最も多く、次いで健康運動指導士、保健師の順であった。運動指導は健康運動指導士が最も多く、次いで保健師、PTの順であった。3. PTの必要性については、66%で必要との結果であった。作業療法士は49%であった。現状では委託による参入がほとんどで、効果を充実させるためにもPTの常勤化が必要との意見も挙げられていた。また、PTに期待する役割として、身体機能評価、プログラム作成の要望が多かった。
今回の結果から、転倒予防教室でのPTの役割は身体機能面の評価やプログラム作成という点で、ニーズが高いことが明らかとなった。今後はPTの専門性を予防分野でも生かすためには、介護予防事業への参加の模索とデータの集積が必要と考える。
37)転倒予防教室終了後のアンケート調査
1富良野協会病院 リハビリテーション科、2北海道千歳リハビリテーション学院
中山 良人1、前田 健太郎1、村上 亨2、伊藤 俊一2
【はじめに】近年の高齢化社会に伴い多くの市町村で「転倒予防教室(以下、教室)」が実施されている。しかし、教室終了後の運動継続や転倒状況についての調査は十分になされていない。今回、我々は平成15年度教室終了後3ヶ月経過時点の状況を調査し、今後の教室運営のあり方について検討したので報告する。
【対象と方法】平成15年度の教室終了者18名(平均年齢74.5±7.5)に対して郵送方式によるアンケート調査を実施した。内容は、教室終了後の転倒状況および運動状況とした。
【結果】回収率は、95%(18/19名)であった。教室終了後の転倒経験者は、5名(28%)であった。教室終了後に運動を継続していた者は9名(50%)であり、継続できない理由として運動効果は理解しているが一人では怠けてしまうという意見が多かった。転倒状況は、敷居でのつまずき、暗い場所で階段を踏み外しての転倒などであった。また、教室終了後OB会が自主的に発足しており、月1回交流していた。しかし、参加者は6〜7名程度であり、OB会への参加意思はあるが外出を控えている者が多く、転倒経験者のこの会へは参加は皆無であった。
【考察】以上の結果、転倒者は想像以上であり、転倒原因として身体的要因だけでなく環境的要因も影響していると考えられた。一般的教室では、身体的機能面へのアプローチが主体となるが、環境への配慮もより強調して教育していく必要があると思われた。また、運動継続者は半数にとどまり、転倒危険要因の高い高齢者では一人で運動を継続する事が難しく、たとえ運動に対する関心が高く効果を実感していても、運動継続の難しさが改めて示唆された。
今後、OB会への介入が重要であり、保健師と連携を図り、より多くの人が参加できる環境づくりが大切と考える。また、さらに身体機能面の経時変化も含め検討を重ねていきたい。
38)猿払村転倒予防教室におけるホームプログラム内容の検討
〜貯筋通帳を活用して〜
1医療法人禎心会 老人保健施設 ら・ぷらーさ リハビリテーション科
長山 睦1
【はじめに】猿払村では介護予防事業として転倒予防教室が平成11年4月より開催されている。今回猿払村で行なっている転倒予防教室の紹介とホームプログラムの一貫として導入した「貯筋通帳」についてアンケート調査を行ったので報告する。
【教室および貯筋通帳の紹介】教室の頻度は月2回(年24回)であり当事業所の理学療法士が月1回(年12回)を担当している。教室の参加人数は33名(男性14名、女性19名)、平均年齢は74.9歳±4.4歳である。利用人数は平均17.6人、平均参加回数は年5.9回であった。教室の内容は、機能訓練・レクリエーション・個別相談である。「貯筋通帳」は運動の継続を目的とし実施回数を記載する手帳であり、ホームプログラムとして平成15年度より導入した。内容は腹筋・腕立て伏せ・スクワット・歩行の4種目であり、歩行は万歩計を用いて行った。
【対象・方法】対象は教室参加者でアンケート調査が可能であった20名であり、方法は教室に関するアンケート用紙を作成し調査した。アンケートの内容は教室の開催内容、貯筋通帳についてであり貯筋通帳については実施状況と継続困難だった種目・今後の継続についてである。
【結果】貯筋通帳の実施状況は内容全て継続可能12%、一部だけ継続可能64%であった。そのうち歩行のみを継続していた人は大多数であった。継続困難だった種目は継続自体が困難40%、種目の継続困難は腹筋30%、腕立て伏せ30%であった。また継続の有無は続けてほしい80%、どちらともいえない20%であった。
【まとめ】教室で貯筋通帳の導入を行いアンケート調査を行った。その結果歩行は継続が可能であり生活に密着した運動の導入・指導が重要であると考えられた。またその他の種目については継続が困難であったため今後の課題として指導内容の検討が必要であると考えられた。
39)「高齢者筋力トレーニング事業」に関わる取り組み 〜第2報〜
1介護老人保健施設グラーネ北ノ沢、2北海道循環器病院、3北海道体育指導センター
阿部 史1、根木 亨1、村岡 卓哉2、大堀 克己2、手戸 一郎1、川初 清典3
【はじめに】「パワーリハビリテーション(以下パワーリハ)」等のアプローチが介護サービスの一環として広まり,今回我々は新たな手法を試み,その継続効果について検討したので報告する.【対象】通所リハ参加者32名(男性21名,女性11名,平均年齢76.0±7.3歳).介護度別に要支援:2名,要介護1:21名,要介護2:7名,要介護3:2名,各疾患障害別では脳血管疾患:20名,内部障害疾患:8名,整形外科疾患:4名である.
【訓練方法】トレーニングには最低1kgから最高15kgまでの範囲に設定できるドイツ・コオペラ社製「ボディースパイダー」を使用,Leg press,Knee extension/flexion,Torso extension/flexion,Rowing,Chest press,Hip abduction/adductionの計9種目を実施した.回数は1種目10回を1セットとし, 1〜3セットの範囲で自覚的運動強度が「楽だ」から「ややきつい」の範囲で個々に合わせ実施した.頻度は,通所利用状況により異なるが2.2±0.6回/週である.
【効果判定】基礎体力評価として握力,開眼片足立ち,ファンクショナルリーチ,座位体前屈,落下棒テスト,Timed up & go,6分間歩行テスト(6MD),QOL評価としてEuroQOLをトレーニング導入前と導入後1,3,6カ月目に実施,結果の前後差をT-testを用い比較し,危険率5%未満(両側)を有意とした.
【結果】導入前と比し,開眼片足立ち,ファンクショナルリーチ,落下棒テスト,Timed up & go,6MDにおいて1〜3ヶ月で有意な差を示し,これら以外の項目においても改善傾向が見られ,その効果は維持された.
【考察】効果判定において基礎体力はパワーリハ同様の効果が出ており、継続により機能維持が可能であると考える.しかしEuroQOLに変化はなく今後の取り組みについて課題を残す結果となった.
40) 男女高齢者に対し転倒予防のためのスパイラルテーピング処置とその影響
1医療法人 英生会 野幌病院 リハビリテーション科、2札幌医科大学 医学部 第1生理学講座・大学院医学研究細胞機能情報学
大畠 純一1、大畠 誠1、三浦 悟1、野呂 三之1、野呂 英行1、當瀬 規嗣2
【緒言】高齢者(65歳)症例に男性5症例、女性12症例に転倒予防のスパイラルテープを使用した。高齢者の転倒予防に対するテーピングの報告は少ない。貼付前と貼付後の影響を重心動揺計で開眼時、閉眼時に分け、静的立位バランスを30秒間基本肢位にて総軌跡長を測定し評価をしたので報告する。
【対象と方法】男性高齢者5症例と女性高齢者12症例の計17症例である。高齢者男性5症例平均年齢76.6歳、身長160.4cm、平均体重66.6kg、女性高齢者12症例の平均年齢73.41歳、平均身長150.91cm、平均体重55.76kg、男女とも全て腰痛疾患であった。テープはスパラルテープのローリングテープ3mm幅のものを使用した。巻く方法は大畠法で右手指第1指と左手指第5指を選定し、爪先端部から爪根部まで真横に螺旋状に巻いた。その後に重心動揺計(アニマ株式会社GRAVICORDER GS-31)を使用した。立位バランスは基本肢位で30秒間、静的立位をとらせ、十分休んでから測定をした。
【結果と考察】男性高齢転倒者と男性高齢非転倒者のテーピングを貼付前と貼付後の開眼時、閉眼時を重心動揺計で測定、高齢転倒者では改善された。高齢非転倒者は改善されなかった。女性高齢転倒者と非転倒者では両者とも改善された。スパイラルテーピングは皮膚の上に貼付することは皮膚感覚(注射痛・切り傷)・深部感覚(筋・腱・関節)が関与しているが、姿勢保持効果はどうであろうか。今回効果はでているが症例数は少ない。今後症例数を増やして研究課題として行きたい。
41)端坐位での側方傾斜刺激に対する坐位保持の検討
1我汝会 えにわ病院、2北海道大学医学部保健学科
水村 瞬1、高橋 光彦2
【目的】坐位での側方傾斜角度変化に伴う、体幹筋の活動変化、頸部及び体幹傾斜角度,体幹が水平位を保持できなくなる角度について測定し、傾斜角度に対する姿勢反応動態を明らかにすること。
【対象】被験者は健康な男子大学生9名,平均年齢22.1±1.9歳,平均身長173.1±2.4cm,平均体重59.8±4.7kgである.
【方法】被験者に傾斜上で、上肢は胸の前に組ませ,下肢は股関節内外転中間位,骨盤は中間位になるように端座位なり、傾斜角度は0°から5°間隔で7つの肢位(30°まで)で実施し,ランダムにそれぞれの角度で10秒間坐位保持を行った. 体幹と頸部の角度を測定するためにランドマークを左右の肩峰,外眼角点より1cm外側に貼付し,デジタルカメラを用いて坐位保持姿勢を静止画で撮影した.それらの静止画をパーソナルコンピュータに取り込み,画像ソフトにてランドマークの座標を読み取り,ランドマーク二点から三角関数を用いて頸部,体幹の傾斜角度を解析した.なお頸部,体幹傾斜角度は床面を基準とした.筋電計を用い,側方傾斜刺激による左右各々の脊柱起立筋の筋電活動を測定した.表面電極の電極間距離は3cmとして,電極の貼付位置はL4〜5とTh11〜12とした.座面傾斜角度が0°の時のIEMGを100%として,それぞれのIEMGを%で表記した
【結果】座面傾斜角度が増加するにつれて,傾斜角度と逆の腰部の%IEMGが増加し,左右ともに極めて強い相関があった。頸部,体幹傾斜角度は座面傾斜角度が20°付近から角度が増加する傾向があり,立ち直りがみられなくなかった.頸部,体幹傾斜角度で右傾斜,左傾斜では比較では有意差はみられなかったが,右傾斜で頸部傾斜角度,左傾斜で体幹傾斜角度が増加する傾向が見られた.
42)脳卒中片麻痺患者における音刺激後の片脚立位動作反応時間と歩行能力の関連性
1千歳豊友会病院 リハビリテーション科、2北海道千歳リハビリテーション学院 理学療法学科
福井 瑞恵1、久保田 健太1、伊藤 俊一2、隈元 庸夫2
【はじめに】脳卒中片麻痺患者,(以下CVA患者)の歩行能力に与える因子として,下肢筋力,バランス能力など姿勢安定性要因との関連性は数多く報告されている.しかし,動作速度と歩行能力に関する検討は散見される程度である.そこで今回演者らは,立位で非麻痺側下肢を挙上する動作を音刺激から動作終了までにかかった時間(以下,動作反応時間)を計測し,歩行能力の関係を明らかにして,動作速度と歩行能力の関連性を検討した.
【対象と方法】対象は,片脚挙上動作が一瞬でも可能なCVA患者40名(平均年齢66.3±11.9歳)とした.
計測は,ユニメック社製の反応速度計を使用し,歩隔は肩幅とし,(1)非麻痺側下肢自覚的最大荷重立位(2)麻痺側下肢自覚的最大荷重立位の2条件のスタート肢位から,音刺激後に可及的に非麻痺側下肢を挙上する片脚挙上動作を,各々5回実施させた.
歩行能力は,10m歩行時間,努力性10m歩行時間,timed up and go test,FIMの歩行項目(以下,歩行FIM)を求めた.初期測定日より24時間以後に動作反応時間の再測定を行い,動作反応速度の再現性を検討した.また,(1)及び(2)各々の動作反応時間と歩行能力との相関および歩行FIM別の動作反応時間の比較検討を行なった.
統計学的解析には級内相関係数,Speamanの順位相関係数,多重比較検定を用い,有意水準は5%とした.
【結果と考察】動作反応時間の計測は,条件(1)で高い再現性を認めた.また条件(1)の動作反応時間と各歩行能力間に相関を認めた(p<0.01).歩行FIM別動作反応時間の比較では,条件(1)において歩行FIM 5-7間,6-7間に有意な差が認められた.
以上の結果,CVA患者の歩行能力には動作反応時間との関連性が示唆され,さらに左右の重心移動動作を含んだ動作反応時間が,より歩行能力と関連性があると考えられた.