展示室C会場 ポスター演題 9 (29〜35) 10月31日(日) |
小児 13:00~14:00 座長:旭川療育 セ ン タ ー 井上 和広 |
29)外来訓練における家庭訓練指導の実態調査アンケート第一報 〜結果
1北海道立旭川肢体不自由児総合療育センター
齋藤 由希1、齋藤 大地1、内田 雅之1、井上 和広1、高木 亜紀1、佐々木 敬1
【目的】外来訓練での家庭訓練指導の保護者の受け取り方や家庭での実施状況の調査
【対象と方法】北海道立旭川肢体不自由児総合療育センターに平成16年5月19日からの42日間に、2回以上理学療法(以下、外来訓練とする)を受診している児の保護者へアンケート調査を行った。質問は主に選択方式で、1.子供を囲む周りの家庭状況 2.家庭訓練状況とその指導について 3.外来訓練についての意見や要望等である。
【結果】アンケートの協力を得られた保護者は100名で、回収率は95%であった。子供の年齢は乳幼児期が61%、学童期が13%、思春期、青年期が各々9%であった。質問1について;兄弟がいる児が61%。児と多く過ごしているのは母親で92%であった。外来訓練参加は主に母親であったが、23%に父親の参加もあった。質問2について;外来訓練の目的は、訓練士による訓練が91%、関わり方などの訓練指導が45%であった。家庭訓練指導をされていたのは96%で、家庭訓練として児に関わっている時間は30分未満が54%、1時間未満が31%であった。家庭での実践内容については92%の解答があり、実践できた内容として関節可動域訓練やストレッチ、装具の使用が多かった。実践が困難であった内容として筋力トレーニングや呼吸訓練が多かった。指導されても実践困難な理由として、子供が嫌がった、時間がなかった等が多かった。77%が家庭訓練の成果を実感しており、95%が家庭訓練の必要性を感じていた。質問3について;74%が月に1回の外来訓練を受けており、外来訓練には満足しているという意見も多いが、回数的な不満の声が多く聞かれた。
【まとめ】今回の調査結果から、外来訓練指導が家庭でどのように行われているのかを確認することができ、保護者の外来訓練に対する意見が多く得られた。今後の外来訓練を進めて行くにあたり一つの指標となった。
30)外来訓練における家庭訓練指導の実態調査アンケート第二報
〜年齢層別、粗大運動能力分類別考察
1北海道立旭川肢体不自由児総合療育センター
齋藤 大地1、齋藤 由希1、内田 雅之1、井上 和広1、高木 亜紀1、金井 欣秀1
【はじめに】近年、身体障害児の治療介入において家庭での訓練は重要視されている。北海道立旭川肢体不自由児総合療育センター(以下、当センター)においても、北海道の広域性、患者数の増加の影響で、家庭訓練の必要度は高まっている。当センター理学療法(以下、外来訓練とする)を受診している児の保護者へアンケート調査を行い、家庭訓練指導に望まれているものを考察した。
【対象と方法】平成16年5月19日からの42日間に、2回以上外来訓練を利用している児の保護者へアンケート調査を行った。質問は主に選択方式で、1.子供を囲む周りの家庭状況 2.家庭訓練状況とその指導について 3.外来訓練についての意見や要望等である。これを基に年齢層別、Gross Motor Function Classification System(粗大運動能力分類システム以下GMFCS)による障害度別に家庭訓練実態を分類した。
【結果】アンケートの協力を得られた保護者は100名で、回収率は95%であった。子供の年齢は乳幼児期が61%、学童期が13%、思春期、青年期が各々9%であった。外来訓練の目的は、訓練士による訓練が91%、関わり方などの訓練指導が45%であった。高年齢になるに従い、また障害度の高いグループで、家庭訓練よりも訓練士によるサービスを求める傾向にあった。家庭訓練時間については、時間は30分未満が54%、1時間未満が31%であったが、年齢層の高いグループほど、家庭訓練は短時間になる傾向があった。全体の95%が家庭訓練の必要性を感じていて、このことはどの年齢層、GMFCSでも一様であったが、家庭訓練の成果に実感が得られないのは、年齢、障害度ともに高いグループに多かった。
【まとめ】今回の調査結果から、サービス利用者が求める家庭訓練指導がどのようなものか考察することができ、今後の外来訓練を進めて行くにあたり一つの指標となった。
31)当院における発達障害児の援助
1医療法人社団 カレス アライアンス 日鋼記念病院 リハビリテーションセンター 理学療法科
高橋 徳子1、村井 貴子1、池田 保1、可知 久枝1、藤村 朋子1、小山内 康夫1
【はじめに】当院では、H4年から発達障害児のリハを実施し、NICUから介入し外来リハを継続している。早期療育が定着し、対象児の年長化に伴い親の介護負担や社会生活の不安など新たな問題に直面した。地域の発達障害児と関わる当院の役割と今後の課題について検討した。
【対象】H15年度外来リハを実施した就学児15例とその母親。平均年齢は、就学児9.26歳、疾患は脳性麻痺9例、急性脳症4例、他2例。そのうち、10例は重症心身障害児である。
【方法】対象児のADL調査と母親アンケートを実施した。ADLは子供のための機能的自立度評価法(以下WeeFIM)を用い、母親から聴取し採点した。アンケートは、1.親の負担感 2.負担に感じるADL動作 3.リハへの期待 4.今年度の目標 5.今後の不安で、複数回答可とした。
【結果】WeeFIMは126点満点中、平均39.4点。アンケート結果は、1.身体的負担あり12例、精神的負担あり9例 2.入浴10例、食事・外出9例、更衣8例 3.機能向上6例、リハ継続や現状維持4例、ADL指導2例 4.目標が明確な母親は2例 5.学校生活6例、今後の介助量増大4例、卒業後の進路3例であった。
【考察】対象児の6割は重症心身障害児で、ADL自立度は全般的に低く、身体的成長に伴う親の介護負担は大きい。昨年よりADL訓練を実施し、親の多くは機能向上を望むが、ADLの向上や介護負担軽減に結びつく意見もあった。しかし、機能訓練に依存する意見も少なくなく、目標設定が不明確な結果からもADLアプローチの不十分さを実感した。専門機関の機能訓練を参考に外来リハを実施してきたが、親の不安からも明らかなように地域病院の役割は地域や家庭生活を基盤とした援助が必要であることを再認識した。よって、ADL評価に加え生活目標を明確にしたADL訓練や通園施設・教育機関とのネットワークづくりを試行している。また、訪問による動作・介護指導や自宅環境調査が行えるシステム作りも当院の課題である。
32)地域病院における小児療育支援の実践報告
〜痙直型両麻痺児の一症例を通して〜
1富良野協会病院 リハビリテーション科、2北海道立旭川肢体不自由児総合療育センター
千葉 恒1、斉藤 英敏1、斉藤 大地2
【はじめに】近年、障害児に対する療育体系は整備されてきているが、地域病院での小児療育支援に関する報告は少ない。今回、痙直型両麻痺児の一症例を通して、小児疾患を主な対象としない地域病院における小児療育支援の実践を紹介し、地域病院の役割・問題点について若干の考察を加え報告する。
【症例紹介】4才、男児、脳性麻痺(痙直型両麻痺)。GMFCSレベル4、SMTCP19点。粗大運動機能はずり這いレベル。今年4月より保育園入園。
【支援内容】今回、保育園での生活に関する相談や指導、地域内関係機関の連携システムの確立を中心に、保育園入園へ向けてのカンファレンス(当面の方針、机上姿勢の確認、トイレ姿勢・環境調整、装具装着指導など)、保育園訪問(生活場面の確認・指導)、療育センターとの連携(書面にて椅子の適合性、トイレの介助法、食事場面などについて助言あり)、ケースカンファレンス(関係機関の統一した方針設定および現状報告、今後の対応など)などの支援活動を行った。
【考察】支援活動を通して地域内関係機関の連携システムが確立してきた。その経過の中で、実際に保育園を訪問する機会を得、保育士が直面している諸問題への対応、環境整備、トイレ介助や装具装着指導など専門分野としての関わりをもつことができた。今後さらなるチームアプローチが必要不可欠になると思われる。その一方で、保育園訪問やカンファレンスへの参加など外勤業務の増加に伴うスケジュール管理の煩雑化、限られたスタッフでの対応、小児療育支援に必要な専門知識や技術の不十分さなどの問題点も残されている。今後の検討課題にしていきたい。
【まとめ】小児疾患を主な対象としない地域病院でも、関係機関との連携を図り、医療分野としての専門的なサービスを提供し「チーム全体の底上げ」に関わることで、障害児が地域で生活をしていく一助としての役割を果たせるのではないだろうか。
33)加齢による機能低下が見られた施設生活者への理学療法
−対人交流促進が好結果を及ぼした一症例−
1重症心身障害児(者)施設 北海道療育園
川村 里美1、高森 智春1、梶 義雪1
【はじめに】当園は重症心身障害児(者)施設で長期入所者が多く,人生における生活の場の役割も果たしている.その中で,加齢による機能低下など二次的障害が問題となってきており,身体機能の維持及び改善を目標にPT処方される例も多い.そこで今回,対人交流を目標に設定し歩行訓練を実施した結果,歩行距離の延長・歩容の改善がみられた一症例を経験したのでここに報告する
【対象】 51歳 女性 脳炎後遺症による痙性四肢麻痺・MR.人懐こく,世話好きな性格.全身的に筋緊張亢進しており体幹回旋可動域低下,足関節背屈制限が認められる.立位は尖足位となり不安定で要支持.歩行は前方両手介助にて可能だが,不安感が強く介助者にしがみつく傾向がある.日常実用移動手段は四つばいが主で,立位・歩行を必要とする場面は洋式トイレ利用時等に限局される.加齢とともに転倒しやすくなり,本人も歩きたがらず歩行能力の低下を招いていた
【経過】H13より週2〜3回PT開始.歩行の動機付けとして,本人の希望をくみ,好きな職員に会いに行くことを目標に設定.当初,歩容の不安定性もあり歩行に対する不安感が強かったが,経過とともにPTとのラポート形成が進んだことも影響し,歩行能力改善が認められた
【結果】1.連続歩行距離が当初の30mから200mまで延長した 2.立脚期に足底接地が可能となり安定性が向上した 3.片手介助歩行が可能となり介助量が減少した 4.歩行に対する不安感が減少し,むしろ歩くことを楽しみにするようになり,訓練への期待感が強くなった
【考察】加齢・廃用による機能低下が見られる症例であったが,継続した関わりにより歩行能力改善は可能であることが示唆された.また,本人の希望を積極的に取り入れることにより,訓練場面が日常生活での楽しみになり得たと思われ,そして,対人交流は人としての幸福感・生きがいに大きく影響しているといわれており,本症例のQOLの向上にもつながるのではないかと考える。
34)急性脳炎発症後の初期理学療法
1札幌医科大学 保健医療学部 理学療法学科、2札幌医科大学 附属病院 リハビリテーション部、3札幌医科大学 保健医療学部 作業療法学科、4札幌医科大学 大学院 保健医療学研究科
小塚 直樹1、澤田 篤史2、舘 延忠3、菊池 真4、堀本 佳誉4、横串 算敏2
【はじめに】小児が罹患する脳炎の原因は様々であり、経過中に若年脳細胞の可塑性に従って脳そのものが回復したとしても、知能低下や運動麻痺、てんかんなどの症状を遺すことがある。今回3例の急性脳炎患者の発症後で、比較的早期からの理学療法を経験したので、その経過と考察を報告する。
【症例紹介】症例1.女児、2歳3ヶ月時発症、第36病日より45日間30回介入、開始時運動発達は4-5ヶ月、終了時運動発達は5-8ヶ月、精神運動発達遅滞が遺り、退院後は療育専門施設へ転院。症例2.女児、2歳2ヶ月時発症、第22病日より62日間37回介入、開始時運動発達は1-4ヶ月、終了時運動発達は11-24ヶ月、軽度精神遅滞が遺り、退院後当科で経過観察。症例3.男児、2歳11ヶ月、第30病日より27日間18回介入、精神遅滞と多動が遺り、退院後は療育専門施設で経過観察。
【考察】この時期の理学療法の展開に関して、幾つかの提言を示したい。言うまでもなく、可能な限り早期から理学療法を開始することは重要である。これら症例の急性期に共通することは、経過が著しく変化することである。この変化の主たる原因は、脳炎発症直後の脳浮腫に伴う全身状態の低下と複数の症状の混在、その後の脳浮腫軽減とともに新たに出現する神経症状である。従ってこの期間を通して、様々な症状を見極め、適切に評価し、全身状態の改善と共に、治療計画を柔軟かつ慎重に変更する判断が重要となる。また画像所見から得られる情報を基に、精神発達と運動発達の予後を予測した上で計画される理学療法がこれら患児の二次障害を最低限に止めるという点においても重要であると考える。回復速度や回復程度には個体差があり、長期にわたる治療や経過観察も重要となる
35)重症心身障害児・者における骨密度測定とその傾向
1札幌あゆみの園 診療部 生活療法課、2札幌医科大学 保健医療学部
岡山 愛1、佐々木 智教1、館農 幸恵1、小塚 直樹2
【はじめに】当園入所利用の重症心身障害児・者(以下、重症児・者)では、例年数件の骨折が認められ、骨の脆弱性がその一因であると予測される。そこで今回、入所利用者の骨組織の状態を簡便に評価するため、骨密度を測定し検討したので報告する。
【対象・方法】当園入所の重症児・者168名中、体調不良・拒絶などの理由により測定不可能であった5名を除く163名(平均年齢34.0±13.2歳、男性94名・女性69名、大島の分類1〜12・17、超重症児・者19名)に対し、超音波踵骨測定装置(A-1000 EXPRESS、GE Lunar社製)を用いて骨密度(スティフネス指数で表示;以下、指数)を測定した。
【結果】指数は全体で平均43.0±15.7だった。男性平均45.4±15.0(34.1±14.3歳)、女性平均39.7±16.2(33.9±11.8歳)で、男女間での有意差は認められなかった。移動能力と指数との関係は、移動能力が低いほど指数が低い傾向が認められた。超重症児・者では、平均27.2±10.2(24.8±17.4歳)で、他の重症児・者と比較して指数が低かった。また、年齢と指数との関係(移動能力別)は、年齢が高いほど指数が低い傾向が認められた。骨折既往の有無と指数との関係は、認められなかった。
【考察】重症児・者における指数は、先行研究の健常男性平均88.0±16.2、女性平均88.3±13.5と比較すると全体的に低く、歩行可能な動く重症児・者でも低値を示した。今回の結果では、各年代とも同年代の健常平均と比較すると40〜70%程度であり、年齢に関わらず骨の脆弱性が認められた。しかし、骨折既往の有無と指数との関係は認められなかった。これは今回は踵骨のみの測定であったため、部位により骨組織の状態に差があることも考えられた。今後は、骨密度以外の骨折発生要因についても検討する必要があると考えられた。