小ホール  口述演題 2(6〜10) 10月30日(土)

 生活環境支援

 12:00〜13:00          座長:札幌秀友会病院 石岡 裕子

6)渦電流式変位センサを利用した無負荷型関節運動入力デバイスの検討

 1札幌医科大学大学院 保健医療学研究科 、2札幌医科大学 保健医療学部
 宮坂 智哉1、山中 悠紀1、戸津 喜典1、長谷 陽子1、石川 朗2、乾 公美2

【目的】環境制御装置や意思伝達装置などの入力手段に、押しボタンスイッチが広く用いられるが、ボタン押力が低下すると利用が難しくなる。近年、力をほとんど必要とせずに直線距離を測定する渦電流式変位センサが開発された。本研究は、このセンサが現状より小さな押力で動作する入力デバイスとして利用可能か検討することを目的とした。

【対象】対象は手指の自動運動に問題ない健常成人とした。センサはリベックス社製パルスコーダを用いた。センサは直径1.5mm、全長23mmのステンレス棒と内径2mm、外径3mm、全長20mmの真鍮パイプの構成である。パイプに挿入した棒が移動すると発生する渦電流を、棒内のコイルが検出して電圧を発生する。センサはアンプを経由してリレー付きデジタルメータに接続し、電圧値が設定値に達するとリレーが作動し、スイッチ入力が可能となる。

【方法】被験者は手部尺側面を机上に置き、第2指遠位背側にフックを装着した。パイプの端から連結したワイヤーをフックに接続し、ワイヤー及びセンサは手背側から運動方向と平行に設置した。第2指遠位掌側には、押力既知の負荷をストローク5mmで発生する位置に設置した。押力は0.8N、0.1N、0.03N、0.01N、負荷無しとした。被験者は第2指MP関節を屈曲し、既定負荷に達したときのリレー出力を確認した。

【結果】全ての条件においてセンサはリレー出力を発した。このことからスイッチ入力に必要な力は最大で0.01N以内だった。

【結論】重力に対して垂直な方向でセンサを駆動するのに必要な力は、パイプ−パイプ間の接触面に発生する摩擦力のみである。現状で対象者に押しボタンスイッチを処方する場合、押力は0.1N程度であり、センサはその1/10以下の力で駆動することを確認した。このことから、押力低下によって押しボタンスイッチが使用困難な方に対して、利用できる可能性が得られた。


7)滝川市における介護保険住宅改修の苦情内容について

 1滝川市中央在宅介護支援センター、2藤女子大学 人間生活学部 人間生活学科
 村井 新知1、橋本 伸也2

 【はじめに】介護保険制度がスタートし4年が経過した。介護保険の導入により、住宅改修に対する関心が高まり、申請件数も毎年増加している状況にある。こうした住宅改修は施工自体が肯定的に評価されがちであるが、施工で生じた問題の報告は少ない。そこで今回、滝川市における平成15年度介護保険住宅改修の苦情内容を調査検討し報告する。

【方法】平成15年度に滝川市において、介護保険で住宅改修を申請した199件(実人数196名)のうち、在宅介護支援センターの理学療法士が関与した120名について、ケアマネジャーとの同行訪問により適合状況等を確認した。

【結果と考察】訪問により適合状況等を確認した120名の内、苦情や施工不良があったのは17名であった。その内訳は、施工不良等が7件、使い勝手の悪さが3件、手すり等の設置による他の設備への影響が3件、本人の必要性と家族の便宜の不一致が2件、金額が2件、家族の意見と実際の使い勝手の不一致が1件、所要時間が1件、改修部分の制度適応に関する問題が1件で、延べ20件であった。

苦情への対応は、施工不良や手すりの位置変更は業者が無償で対処した。金額については相見積もりの実施、所要時間については介護保険の申請からの期間の問題もあり、制度上の課題も含まれていた。保険者(滝川市)への直接の苦情は1件もなく、ケアマネジャーのレベルで苦情を処理していた。

施工不良は本人や家族の訴えからのみではなく、今回の適合確認により、はじめて発見されたケースもあり、口頭ではなく実際の訪問と動作確認による適合確認の必要性が認められた。また施工主旨が理解されていれば苦情が避けられたとみられるケースもあり、関係職種の住宅改修に対する知識の向上と家族や関係者を含めた十分な打ち合わせが重要と考えられる。

以上の結果をもとに若干の考察を加えて報告する。


 8)在宅脳卒中患者の下肢装具使用状況について

 1クラーク病院 リハビリテーション部
 芳賀 貴幸1、越後 靖子1、橋本 晃広1、山野 香1、冨樫 英則1、水本 善四郎1

【はじめに】脳卒中患者における下肢装具の適切な処方について考察するため、在宅患者を対象に装具の使用状況や装具に対する満足度について調査した。

【対象】退院後1年以上経過し、下肢装具を所有している脳卒中患者のうち、当院に外来通院している42名(男性28名、女性14名、年齢63.8±8.3歳、罹病期間89.1±65.0か月)とした。

【方法】アンケートにより1)入院時作製した装具を継続使用している場合の装具補修状況、2)退院後、装具を再処方されている場合の時期と原因、3)屋内・外における装具の使用状況、4)使用装具に対する満足度(4段階)と装具に対する要望を調査した。

【結果】1)該当者は23名で、そのうち73.9%は装具の補修をうけていた。2)該当者は19名で再処方時期は退院後1年以内15.8%、1年以上26.3%、3年以上26.3%、5年以上31.6%であった。その原因は、破損・老朽化と身体機能の変化が挙げられた。3)屋外での使用率は100%であったが、屋内では装具所有者の28.9%が途中で不使用になっており、その時期は退院直後と1年以上経過してからが多かった。理由として、「なくても歩ける」「機能低下による歩行機会の減少」が挙げられた。屋内使用者の活動別の装着率は、洗面・トイレへの歩行時96.3%、床への移乗時55.6%、階段昇降時37.0%、就寝時7.4%、入浴時3.7%であった。4)満足度は、屋外・屋内それぞれ「満足」が26.2%・25.9%、「やや満足」が61.9%・70.4%、「あまり満足してない」が11.9%・3.7%、「満足してない」とした者はいなかった。装具に対する要望として「もっと簡易な装具」や「足部に可動性のある装具」などが挙げられた。

【考察】本調査で装具に関してなんらかの不満を持っている使用者が多く、屋内に関しては使用していない例もみられた。装具処方時には、身体機能のみならず生活環境やニーズにあった装具を検討していく必要があると考える。


9)施設退所後の若年障害者への訪問リハビリテーションの関わり  
    〜自己決定の回復と親の介護負担〜

 1社会福祉法人 楡の会 訪問看護ステーション パレット
 五十嵐 大貴1、山崎 真奈美1、藤田 志保1、田所 達子1

【はじめに】施設入所は家族の介護負担軽減にはつながるが多くの場合、社会制度等の問題から当事者の自己決定の機会が失われ易い。今回、施設を退所した若年障害者への訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)の関わりについて自己決定の回復とそれに伴う親の介護負担に着目し考察を加えて報告する。

【利用者情報】24歳男性。疾患は脳性麻痺(重〜中等度痙直型四肢麻痺)。コミュニケーションは日常会話レベルで可能。性格は社交的。移動は屋内車椅子(監視〜軽介助)・屋外車椅子(全介助)、移乗も全介助。その他ADLも全介助。家屋はバリアフリー設計。平成15年10月入所施設を退所し、現在、月2回訪問リハと訪問看護、週2回小規模作業所、不定期な短期入所、その他はヘルパー(外出・身体介護)を利用している。主介護者である母親は持病のため定期的な通院が必要で日常介護において無理はできない状態。

【訪問リハの関わり】退所後すぐに月2回の訪問リハを開始。本人の訴えは「いろんな所へ外出したい」という自己決定に基づく、それに対して母親は「トイレなど立ち上がり介助・車椅子姿勢の頻回な修正が大変」という介護負担に関するものであった。評価でも車椅子姿勢は話す時など反り返り強く長時間の保持は修正なしでは困難。立位では特に下肢の抗重力伸展が不十分で徐々に崩れる。また、その時左上肢の屈曲運動により介助者へのつかまりが不十分となる等が挙げられた。治療は両者の訴えに対して行い、特に外出を担うヘルパーとは情報交換すると共に母親や本人も含めた介助方法や簡易な自主プログラムも指導した。

【結果】週1〜2回の外出が日常化し、本人自らが車椅子姿勢を修正できるようになるなど介護軽減にもつながった。

【考察】在宅は本人にとって「自己決定」ができる場だが、親にとっては介護負担を背負う場でもある。訪問リハはその両者の訴えに対処できる社会資源の一つとして重要であると考える。


10)回復期リハビリテーション病棟退院時の介護保険サービス利用状況に関する調査

 1医療法人 社団 カレス アライアンス 日鋼記念病院 リハビリテーションセンター
 木下 結1、前田 守1、前田 三和子1、小山内 康夫1、掘 伸全1

【はじめに】少子高齢化に伴い単身老人や老々介護世帯が増加しており、在宅介護の受け皿の整備が重要となっている。このため介護保険サービス(以下サービス)の導入は、QOLを高めるために必要不可欠な制度である。今回、回復期病棟を退院した受療者のサービス利用状況をまとめ、傾向について考察したので報告する。

【対象と方法】平成15年度の当該病棟入院患者は178例で、在宅復帰者は127例71.3%。そのうち、介護保険利用者57例44.8%を対象に、退院後に利用したサービスを疾患別(脳血管疾患・骨折・廃用・その他)、歩行自立度別(自立・介助・車いす)、家族構成別(配偶者・子・配偶者と子・独居)に分類し、後方視的に調査した。

【結果】住宅改修では、トイレの手すり設置が25例(43.8%)で最も多かったが、疾患別・歩行自立度別・家族構成別では傾向は見られなかった。また玄関の改修は14例(24.6%)、うち歩行介助群が11例中5例(45.5%)と多い傾向にあった。福祉用具では、入浴補助具の使用が28例(49.1%)、うち歩行自立群が43例中24例(55.8%)と多かった。通所サービスは33例(57.9%)、うち歩行介助群が11例中9例(81.8%)・同居家族が子供のみの場合に18例中14例(77.8%)と多かった。

【考察】玄関の出入りや入浴に関連したサービスの利用は家族構成や移動能力に左右されるのに対し、トイレの手すり設置は患者条件に関わらず多く実施されていた。このことからも、排泄動作の安全性獲得が在宅復帰に重要と捉えられていることが再確認できた。今後、リハビリスタッフとして受療者にとって有益なサービスを提案するには、他部門との連携やサービスに対する理解を深め、在宅QOLの向上に繋げることが重要である。

【まとめ】在宅復帰には、身体面や家族背景を考慮した適切なサービスの活用が重要である。