大会議室  口述演題 7(31〜35) 10月31日(日)

 教育・管理

 10:30〜11:30           座長:旭川三愛病院 七条 克哉

31)急性期病院における回復期リハビリテーション病棟の現状

 1労働者健康福祉機構 美唄労災病院 勤労者腰痛・脊損センター リハビリテーション科、2労働者健康福祉機構 美唄労災病院 勤労者腰痛・脊損センター 整形外科、3労働者健康福祉機構 美唄労災病院 勤労者腰痛・脊損センター 看護部
 川瀬 真史1、山本 昌明1、小渡 充1、楫野 知道2、金田 清志2、豊蔵 敏明3

【目的】当院は急性期医療を中心とした400床の一般病院である。平成15年10月より回復期リハビリテーション病棟(以下回復期リハ病棟)を44床開設し、主として院内整形外科疾患患者を対象としている特徴がある。本研究の目的は,整形外科疾患を中心とした回復期リハ病棟の現状と今後の方向性について検討することである。【対象および方法】平成15年10月〜平成16年3月に当院回復期リハ病棟にて入棟した回復期リハ対象患者159例(男性82例、女性77例)、平均年齢は61.7(9-94)歳である。検討項目は1)対象疾患、2)回復期リハ病棟入棟以前の治療法、3)回復期リハ病棟での在院日数、4)入棟時および退院時Bathel Index、5)退院先である。

【結果】同時期の整形外科入院患者883例中159例(18.0%)が回復期リハ病棟を経由して退院した。疾患部位別では上肢:12(変性疾患3、外傷9)例、下肢:51(変性疾患20、外傷31)例、脊椎:95(変性疾患82、外傷13)例、廃用症候群:1例であった。回復期リハ病棟入棟以前の治療法は手術治療138例、保存治療21例であった。回復期リハ病棟での平均在院日数は30.9日(1-122)であった.入棟時および退院時Bathel Indexは平均83.3±18.6点から91.2±17.1点に改善した。退院先は自宅148例、他病棟転棟6例、転院4例、施設入所1例であった。

【考察】当院は専従のPT2人、OT1人と最低限の配置であるが、急性期病棟に比べ退院後の日常・社会生活を視野に入れた指導・教育をチームアプローチとして行いうる条件が格段に整った。整形外科疾患を主とする回復リハ病棟でも、総合的にリハ医療を提供できることが判明した。


32)リハビリ部門リスクマネジメントマニュアル作成の試み

 1北海道勤労者医療協会 札幌北区病院 リハビリテーション科、2北海道勤労者医療協会 札幌丘珠病院、3北海道勤労者医療協会 苫小牧病院、4北海道勤労者医療協会 老人保健施設柏が丘、5北海道勤労者医療協会 中央病院
 飯尾 紗綾香1、岡本 五十雄2、伴 正博3、石塚 研二4、佐藤 礼人5、リハビリ部門技士長 主任一同1 

【はじめに】北海道勤医協では6つの病院,1老人保健施設,6つの訪問看護ステーションにリハビリ技士を配置し、各院所・事業所(以下,各院所)の医療安全委員会などに結集し「安心・安全の医療,介護」をめざし一定の成果をあげてきた。しかし,リハビリ部門として情報が共有化されず,共通の指針がないという問題があった。そこで,各院所のインシデント・アクシデントレポート(以下,インシデント報告)の集中化,調査を行いリハビリ部門の共通のリスクマネジメントマニュアル(以下,マニュアル)を作成したので報告する。

【事故内容】2003年4月から2003年6月までの総件数は81件で,転倒・転落が34件で最も多く,次いで接遇トラブルが8件、酸素・点滴の外れが7件であった。他職種による処方ミスや連絡ミスも 6件あり,多かった。その他,過用・誤用,ホットパックによる熱傷,プロコールからの逸脱など様々であった。

【マニュアルの作成指針と構成】インシデント報告の調査からリハビリ部門で遭遇する可能性のある医療事故全体に可能な限り対応できることを目指した。広範囲にわたるため,各院所の医療の特徴に合わせ分担し,リハビリ部門の主任が中心となり作成した。作成にあたっては医師,看護師など他職種とも確認しながら行った。マニュアルの構成は次の通りである。1.総論,2.医療事故防止のための基本的注意事項,3.転倒・転落,4.骨折、軟部組織損傷,5.熱傷,6.痙攣,7.切創・裂傷,8.チューブ管理,9.過用・誤用,10.物理療法,11.誤嚥,12.患者様・利用者様同士のトラブル,13.感染,14.訪問リハ,15.緊急時対応手順。

【おわりに】マニュアルを教育活動に活用し,全リハビリ技士の共通の指針にする取り組みを開始している。さらにより良いものを目指し,マニュアルの改定も行いながら継続的にリスクマネジメントに取り組んでいきたいと考える。


33)個別リハビリテーションの経時変化

 1介護老人保健施設 あるかさる 生活支援課
 相田 雄一1

【はじめに】平成15年4月の介護報酬改定により、通所リハビリテーション(以下通所リハと略す)にて個別リハビリテーション加算(以下個別リハ加算と略す)が新設され、当法人通所リハにおいても個別リハ加算を開始した。当通所リハは現在通所1日定員60名に対し理学療法士1名、言語聴覚士1名常勤している。今回、介護報酬改定後の当法人通所リハにおける介護度の経時変化について調査する機会を得たので報告する。

【対象と方法】対象者は平成15年5月から平成16年6月末までに当通所リハの登録者248名(男性127名、女性121名、平均年齢75.5歳)、平均介護度2.3、1週間の平均利用回数は1.4回である。調査内容としては個別リハ加算率、退院日より1年以内・1年以降割合、介護度について経時変化を調査した。

【結果】個別リハ加算率は43.5%、介護度別の個別リハ加算割合は、要支援 0.1%、介護度1 39.6%、介護度2 25.9%、介護度3 14.8%、介護度4 9.2%、介護度5 9.2%であった。退院日より1年以内は14.1%、1年以降85.9%であった。介護度の経時変化は平成15年5月より平成16年6月までに再認定調査を行い介護度に変化のあった39件(内個別リハ17件)、全体平均介護度0.08増加(内個別リハ0.w29減少)の介護度の変化があった。

【考察】個別リハビリテーションの客観的な効果判定等を目的に、介護報酬改定後の当通所リハにおける個別リハ加算の経時変化について調査した。個別リハの介護度経時変化については平均0.29減少の介護度変化があり、全体平均介護度0.08増加の経時変化に比べ生活機能の改善が図れた。介護度の維持・改善を図るためには、日常生活の活動性を高め個々の生活習慣や生活背景、モチベーションなど評価・分析し、これらを促進する対人関係が必要であると考えた。


34)訪問リハビリテ−ションに従事しているスタッフの実態調査

1時計台病院、2訪問看護ステーション時計台、3時計台病院介護相談センター
 近藤 淳1、伊藤 奈生子2、小川 真太郎2、中村 圭吾2、肥田 理恵2、内藤 麻生3

【はじめに】平成12年度から介護保険制度が始まり、年々訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)の実施事業所や従事しているスタッフが増加している傾向がある。我々は訪問リハ連絡会(札幌市内を中心に訪問リハに従事しているスタッフの情報交換の場)に参加している。その場での意見交換にて、経験の浅い者が手探りで仕事を行っていること、人員配置の関係でローテーション制のためスタッフが固定しないこと、少数人数の職場のため疑問を十分に検討できないまま日々の多忙な業務に追われているなど、業務そのものに対する悩みの他にも勤務形態に対する悩みなども多く聞かれた。そこで、勤務体系や現場で抱える悩みなどの実態把握を目的に調査した。

【対象と方法】対象は、訪問リハ連絡会に所属しているスタッフおよび第2回全国訪問リハ研究大会に出席したスタッフの名簿から、札幌市または札幌市近郊で訪問リハの実務に携わっている124人(58施設)のPT・OTとした。方法は、郵送によるアンケート調査で実施した。調査項目は、従事者の基本情報(訪問リハ経験年数や勤務形態等)を中心に、業務としてのやりがいや悩み、問題点に関する意識についての項目も加えた。

【結果と考察】回答は40施設・86人(回収率69.4%)であった。訪問リハ経験年数は2年未満が57%を占めた。勤務形態は病院や施設との兼務が48%を占め、ローテーション制が30%であった。訪問業務での意識としては、やりがいを感じるとの回答が98%を占めていた。しかし、同時に業務に対する悩みや問題点も複数提示された。訪問リハ業務は、今後改善されていかなければならない問題点が多々あると思われた。


35)医療技術者養成のためのMobile遠隔教育システムの検討とその応用

 1樹恵会 石田病院、2北海道千歳リハビリテーション学院、3高知リハビリテーション学院
 三井 雅史1、伊藤 俊一2、信太 雅洋2、武田 真帆1、野口 牧子1、山本 双一3

【はじめに】演者らは,第54回本学会でインターネットを用いた遠隔教育に関する報告を行った.平成15年度は,文部科学省専修学校先進的教育研究開発委託事業として「医療技術者養成のためのMobile遠隔教育システムに関する研究」を行い,さらに携帯末端を用いた卒後遠隔教育システムの有用性を検討した.本システムへ参加する機会を得たので,考察を加えて報告する.

【対象と方法】対象は卒後3年以内のPT男性22名,女性18名,計40名とした.使用機器は,携帯末端としてNTT DoCoMo製FOMAおよびFOMAカードを使用して,Mobile TV会議システムで症例検討会を行った.本システムは,携帯画面上で最大8名まででTV会議を行うシステムである.本研究では,当院および千歳リハ学院と高知市内の病院を結び,症例検討会終了後に1)卒後教育の必要性,2)必要と思われる内容,3) TV会議システムの有効性と問題点,4)今後の発展性について,質問紙法でのアンケート調査を行った.

【結果と考察】この結果,1)97%の対象で,卒後教育は必要と考えていた.2)最も希望の多かった内容は症例検討であり,次いで技術指導,相談の順であったが,55%の者が指導者のレベルが問題としていた.3)携帯を用いたTV会議システムは,簡便に多くのセラピストの意見が聞け,82.5%の対象が有効性を認めた.しかし,その通信速度が64kbps(FOMAカードは最大384kbps)のため,画像が不鮮明,動画の動きがぎこちない,などの問題も挙げられていた.4)今後の発展性として,半数以上で在宅リハへの応用が期待されていた.本システムは,あくまで“通話”のため内容を残せないなどの問題もあり,今後さらなる通信インフラ改善とノウハウの蓄積が必要であるが,その利用は特に新人の卒後教育から将来の在宅支援ツールまで幅広く有用であると考える.