大ホール 口述演題 1(1〜5) 10月30日(土) |
内部障害 12:00〜13:00 座長:帯広厚生病院 島田 勝規 |
1) 当院における外来COPD患者に対する包括的リハビリテーションの取り組み
1医療法人 渓仁会 手稲渓仁会病院 リハビリテーション部
森谷 茂樹1、駿河 智美1、佐藤 義文1、青山 誠1
【はじめに】COPD患者において、%IBW90%以下の「痩せ」の患者が多く認められ、体重減少と関連した予後不良、呼吸筋障害の対策として近年栄養指導が行われるようになっている。当院において我々は、呼吸器科外来通院中のCOPD患者に対し、栄養指導を含めた包括的呼吸リハビリテーションを行い、有効性について検証した。
【対象・方法】平成15年8月から平成16年2月までに当院呼吸器外来に通院し、栄養指導及び、呼吸理学療法を行ったCOPD患者。開始当初対象は10名であったが、症状の増悪などにより4名が脱落した。対象6名、男性4名、女性2名平均年齢75±5歳。栄養指導は包括的な栄養指導(食生活環境・食事摂取状況・食習慣など)を考慮して行われた。呼吸理学療法は下肢筋力訓練、呼吸法訓練を毎日1回行うように指導し、月1回の受診時に実施状況を確認した。栄養指導開始前後での体重、BMI、%IBW、下肢筋力、上腕・大腿周径、6MD、%VC、ピークフローなどの変化を比較した。T検定を用いて統計処理を行い、有効性について考察した。
【結果】初回指導時から、6ヶ月後には平均の%IBW値が76.7%から79.6%へ改善した。また、下肢筋力およびピークフロー値もそれぞれ(P<0.05)と統計的に有意に改善が認められた。
【考察】最近の研究では、栄養指導単独の有効性は否定的であり、また運動療法のみを施行すると栄養障害の進行をきたすという報告もある。我々は包括的な呼吸リハビリテーションを目標に栄養指導と運動療法を組み合わせて行い、有効性について検証した。一般的な食品バランスにとらわれず、適切な間食や経口栄養剤を利用することにより効率的な栄養摂取が可能となりその結果%IBW値が増加した事が考えられた。また、適切な運動処方、呼吸法指導により徐脂肪体重が増加し、下肢筋力およびピークフロー値が改善したと考えられた。
2) 在宅慢性閉塞性肺疾患患者に対する「ながいき呼吸体操」を用いた宅運動プログラムの有用性
1札幌医科大学大学院 保健医療学研究科、2札幌医科大学 保健医療学部
山中 悠紀1、石川 朗2、宮坂 智哉1、戸津 喜典1、長谷 陽子1、乾 公美2
【目的】積雪寒冷地における医療、福祉の現状を考慮すると、在宅慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者が専門家の指導を逐次受けず、継続的かつ安全に実施できる運動処方の必要性は高い。そこで我々は運動習慣を促すことを目的として「ながいき呼吸体操」を用いた在宅運動プログラムを考案し、その有効性と実用性を検討した。
【対象】在宅COPD患者27名(年齢:76.2±6.6歳、FEV1.0:1.26±0.57L)で体操群21名、対象群5名である。
【方法】体操群のみに「ながいき呼吸体操」を直接指導後、体操を記録したビデオを配布し冬季6ヶ月間在宅で実施してもらい、体操実施前後で両群の肺機能、6分間歩行距離(6MD)、COPD患者の特異的HRQL(health related QOL)評価表であるCRQよりQOLを測定し、得られたデータを比較することで「ながいき呼吸体操」の有用性を検討した。
【結果】肺機能に体操実施前後で有意差を認めなかった。6MDは対照群で低下(294.8±86.4m→287.6±90.4m)を示したが、体操群では増加(329.3±112.4m→369.1±259.3m)を認めた。CRQは体操群にのみDyspnea、Emotional、Masteryの3項目で有意な改善を認めた(D:20.0±8.8→23.7±8.8、E:34.3±9.5→37.9±6.3、M:20.2±4.8→23.0±3.7)。なお、体操群はほぼ全員が週5回以上の頻度で体操を実施していた。
【結論】三浦らは在宅呼吸リハの実施率について呼吸法、ストレッチ体操、歩行訓練、筋力訓練の順で実施率が高く、呼吸法と筋力訓練では実施率に有意差を認めた報告している。今回、我々は呼吸法と体操を組み合わせた「ながいき呼吸体操」を実施してもらうことでほぼ全員に体操の継続を認めた。また、体操群で運動耐容能の維持と、QOLの有意な改善を認めた。よって、「ながいき呼吸体操」は在宅COPD患者の冬季在宅運動プログラムとして実用性と一定の有効性を持つと考えられる。
3) 人工呼吸器管理を経過したギランバレー症候群4症例の検討
1医療法人医仁会中村記念病院 理学療法科、2医療法人医仁会中村記念病院 脳神経外科、3医療法人医仁会中村記念南病院 リハビリテーション部、4札幌医科大学 保健医療学部 理学療法学科
谷口 百恵1、磯谷 明希1、藤本 好1、中村 博彦2、萩原 良治3、石川 朗4
【はじめに】当院においてH16年1〜6月間にギランバレー症候群にて入院加療を行った4症例において呼吸理学療法を経験した。今回、呼吸管理の経過に着目し報告する。
【症例】(1)39歳、男性。1月2日発症。経過:2病日挿管。4病日呼吸筋麻痺により人工呼吸器管理(FiO20.4 SIMV12回/min TV530ml PEEP4cmH2O)。6病日理学療法(以下PT)開始、呼気介助、体位ドレナージ導入。22病日離脱、翌日抜管するがSpO2低く再挿管O2送気。26〜32病日2度NPPV試みるが咽頭機能障害のため唾液肺へ流入し再挿管。28病日より数日腹臥位管理行う。48病日離脱。75病日気切,136病日閉鎖。現在歩行要介助。(2)77歳、女性。4月24日発症。経過:11病日呼吸筋麻痺により人工呼吸器管理(FiO20.4 SIMV10回/min TV400ml PEEP6cmH2O)。14病日PT開始、体位交換管理行う。25病日離脱、抜管O2送気、28病日O2止め。現在ADLほぼ自立。(3)41歳、女性。4月28日発症。経過:2病日呼吸筋麻痺により人工呼吸器管理(FiO20.6 SIMV15回/min TV500ml)。9病日離脱、抜管O2送気、PT開始、ROMex.を主に実施。10病日O2止め、30〜59病日他院にて肝機能加療、現在近距離歩行自立。(4)58歳、男性。4月30日発症。経過:6病日SpO2低く人工呼吸器管理(FiO20.6 VCV15回/min TV580ml PEEP8cmH2O)。8病日PT開始、呼気介助導入。9〜17病日体外式陽陰圧呼吸器併用。19病日気切。現在も臥床状態。
【考察】ギランバレー症候群は一般的に予後良好とされているが、本研究中の4症例とも多様な経過を辿り、予後不良とされる症例もあった。早期からの呼吸理学療法により2次的障害予防が可能となり、加療中も評価を繰り返しPTに反映する事により呼吸器早期離脱や機能回復の一助になると考える。今後は予後不良因子のチェック等を積極的に行い、予測的な視点からのアプローチも心掛けたい。
4) 間歇的及び持続的胸椎モビライゼーション手技が心拍変動におよぼす影響
1札幌医科大学大学院 保健医療学研究科、2札幌医科大学 保健医療学部
猪原 康晴1、宮本 重範2、青木 光広2
【目的】我々は健常者の中位胸椎に対する持続的ウエッジモビライゼーション手技(以下ウエッジ実験)の影響を心電図R-R間隔の周波数解析装置で測定し、時間経過に伴い38%(8/19名)にLF成分の抑制が起こると報告した。本研究は健常者に対する間歇的徒手モビライゼーション手技(以下徒手実験)とウエッジ実験が心拍変動に及ぼす影響を心電図R-R間隔の周波数解析装置で測定し、比較することを目的とした。
【対象】被験者は20代の健常者8名(男性7、女性1)であった。
【方法】測定項目は心拍数、及び心電図R-R間隔の周波数解析から得た低周波(以下LF)成分、高周波(以下HF成分)であった。被験者は15分安静臥床後、心電図記録を開始した。次に腹臥位となりモビライゼーション手技を施行し、手技終了後仰臥位に戻り約30分間安静臥床を継続した。データは安静臥床後5分間の平均値を基準値とし、時間経過ごとに比で表した。統計処理は一元配置分散分析を行い、その後の検定はFisher’s testを用いた。
【結果】心拍数は徒手実験、ウエッジ実験ともに基準値と比較して手技施行中に有意に増加した(P<0.05)。全体としてのLF成分に有意な変化はなかったが、徒手実験では手技施行中にLF成分が抑制される群(3/8名)と手技終了後時間経過に伴い抑制される群(3/8名)に分類でき、ウエッジ実験では時間経過に伴い抑制される群(3/8名)が見られた。HF成分は徒手実験で手技施行中に有意に減少した(P<0.05)。
【結論】両実験で手技施行中に心拍数が増加したのは、胸腔内圧が増加したためと考えられた。LF成分は2群に分類されたことから間歇的モビライゼーション刺激の反応性は2パターン存在する可能性が示唆された。また徒手実験のHF成分が有意に減少したのは、間歇的刺激により肺の伸展受容体から心臓血管中枢への入力が抑制されたためと考えた。
5) COPD患者における身体組成についての基礎研究
1医療法人社団 杏和会 おびひろ呼吸器科内科病院、2札幌医科大学 保健医療学部 大学院、3札幌医科大学 保健医療学部
戸津 喜典1、宮坂 智哉 2、山中 悠紀2、長谷 陽子2、乾 公美3、石川 朗3
【はじめに】慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)患者は健常人と比較し、安静時の基礎エネルギー代謝が、健常者の1.5-1.7倍程度高いといわれている。そのため、呼吸器疾患の身体所見は痩せの体型を示す傾向が高い。今回、精度が高く、携帯性に優れた多周波インピーダンス法(多周波数BI法)を用い、COPD患者の身体組成を計測した。そして、%IBW、重症度別に分類した身体組成を多施設で測定した。
【方法】対象はCOPD患者36例。GOLDの重症度分類で0度:7例、1度(軽症)7例、2度(中等症)5例、3度(重症)14例、4度(最重症)3例である。使用機器に内蔵されたプログラムより%FAT、FAT、FFM、TBW、BMIを測定した。
【結果】【%IBW別】 %IBW≧100 90%≦%IBW<100% 80%≦%IBW<90% 80%<%IBWGOLD重症度 1.4* 1.8* 2.6* 2.9FAT% 29.2%* 21.9%* 17.3%* 16.4% FFM 45.1* 38.4* 40.0* 33.5BMI 24.0* 20.6* 19.2* 17.0 *%IBW80%未満に対しp0.05
【GOLD重症度別】 0度 1度 2度 3度 4度FAT% 26.9%* 24.3%* 21.3% 23.1%* 12.2% FFM 44.1 43.1 43.6 38.8 37.0BMI 22.5* 22.1* 21.0 21.0 17.4 *4度に対しp<0.05考察)重症化に伴いFAT%、BMIは有意に低下した。一方、筋量を示すFFMに有意差は認めなかったものの、低下傾向を示した。%IBW別に分けた場合は、%IBWの減少に伴いCOPDの重症化を認めた。これより、重症度の高い症例ほど痩せの割合が強まり、体内エネルギーとして必要な脂質の低下が推測された。また、筋量も低下傾向にあることから、活動性やADL、QOLが低下する一因子であることが推測された。