「北海道三大学の医学生とキャリアを考える会」
講演報告
2025年12月7日
2025年12月7日、「北海道三大学の医学生とキャリアを考える会」を、札幌会場・旭川会場・Web配信によるハイブリッド形式で開催しました。
本会は、北海道内三大学の医学生を対象に、地域医療および外国人医療の第一線で活躍する医師の実践的な経験を共有し、将来のキャリア形成や医師としての社会的役割について考える機会を提供することを目的として開催しました。特に、「誰も取り残さない医療」という理念のもと、地理的・文化的・社会的背景の違いにより医療へのアクセスが制限されやすい人々に対する医療の在り方を学ぶことを重視しました。
講演①では、礼文町国民健康保険船泊診療所所長の升田晃生先生より、「礼文島で出会えた奇跡」と題して、礼文島における地域医療・離島医療の現状と課題についてご講演いただきました。礼文島では人口減少と高齢化が進み、高齢化率は約39%に達しています。限られた医療資源の中で、市立稚内病院や名寄市立総合病院、旭川医科大学病院などと連携しながら診療が行われている現状が紹介されました。診療所では、外来・入院診療に加え、健(検)診、ワクチン接種、がん治療の継続、遠隔妊婦健診など、多職種連携による包括的医療が実践されています。また、中学生の職場体験や高校生・研修医の受け入れなど、人材育成への取り組みも紹介されました。さらに、升田先生ご自身のキャリア形成について、離島で求められる総合的診療能力を身につけるために幅広い分野の研鑽を積まれてきた経験が語られ、医学生にとってキャリアを主体的に考える重要性が示されました。
講演②では、勤医協札幌病院産婦人科の長島香先生より、「産婦人科における外国人医療」と題して、外国人患者を対象とした診療の実際についてご講演いただきました。診療の現場では、アジア・アフリカ諸国出身の留学生や外国人労働者が多く、言語や文化、宗教の違いに配慮した対応が不可欠であることが具体例とともに示されました。英語や通訳デバイス等を用いた工夫に加え、宗教的背景に配慮しながら医学的リスクを丁寧に説明し、患者の価値観を尊重した対話を重ねる重要性が強調されました。また、在留資格や社会的孤立など、外国人妊婦が抱える社会的課題についても言及されました。
本講演会を通じて、参加した医学生は、地域医療・外国人医療に共通する医療の公平性や対話の重要性、社会的背景を踏まえた医療の本質を学ぶことができました。医師としてのキャリアは一様ではなく、社会のニーズに応じて主体的に築いていくものであることを学ぶ、意義深い機会となりました。
二輪草センター副センター長 菅野恭子