○旭川医科大学ハラスメント及び性暴力等の防止等に関する規程
平成16年4月9日
旭医大達第163号
(目的)
第1条 この規程は,国立大学法人旭川医科大学(以下「本学」という。)の役職員(役員及び職員をいう。以下同じ。)及び学生等(学部学生,大学院学生,研究生,聴講生及びその他本学において修学又は研究に従事している者をいう。以下同じ。)のハラスメント及び性暴力等(以下「ハラスメント等」という。)の防止及び排除のための措置並びにハラスメントに起因する問題が生じた場合に適切に対応するための措置(以下「ハラスメントの防止等」という。)に関し,必要な事項を定めることにより,本学における修学,教育,研究及び労働環境の維持・向上並びに役職員,学生等の利益の保護及び役職員の職務能率の発揮を図ることを目的とする。
(定義)
第2条 この規程において,ハラスメントとは,次の各号に掲げる行為をいう。
(1) ハラスメント セクシュアル・ハラスメント,パワー・ハラスメント,アカデミック・ハラスメント,妊娠,出産等に関するハラスメント,育児休業等に関するハラスメント及びその他のハラスメントの総称をいう。
(2) セクシュアル・ハラスメント 役職員,学生等が他の役職員,他の学生等又は関係者を不快にさせる性差別的又は性的な言動並びに関係者が役職員,学生等を不快にさせる性的な言動をいう。
(3) パワー・ハラスメント 役職員が他の役職員又は関係者に対して職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に,業務の適正な範囲を超えて人格と尊厳を侵害し,精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる言動をいう。
(4) アカデミック・ハラスメント 役職員,学生等が他の役職員,他の学生等及び関係者に教育・研究上の権力関係や上下関係,優越的な地位を不当に利用して,教育上,研究上若しくは修学上の権利を侵害又は人格と尊厳を侵害する言動をいう。
(5) 妊娠,出産等に関するハラスメント 職場において行われる女性役職員に対する当該女性役職員が妊娠したこと,出産したこと,産前休暇を請求し,又は産前休暇若しくは産後休暇を取得したことその他の妊娠又は出産に関する事由に関する当該女性労働者の就業環境が害される言動をいう。
(6) 育児休業等に関するハラスメント 職場において行なわれる役職員に対する育児休業,介護休業その他の子の養育又は家族の介護に関する制度若しくは措置の利用に関する当該労働者の就業環境が害される言動をいう。
2 この規程において,性暴力等とは,次の各号に掲げる行為をいう。
(1) 他の者に刑法(明治40年法律第45号)第177条第1項に規定する性交等をすること又はさせること(他の者から暴行又は脅迫を受けて当該者に性交等をした場合及び相手の心身に有害な影響を与えるおそれがないと認められる特別の事情がある場合を除く。)
(2) 他の者にわいせつな行為をすること又はさせること(第1号に掲げるものを除く。)
(3) 次に掲げる行為であって,他の者を著しく羞恥させ,若しくは不安を覚えさせるようなものをすること又は他の者にさせること。
ア 衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の性的な部位その他の身体の一部に触れること。
イ 通常衣服で隠されている人の下着又は身体を撮影し,又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け,若しくは設置すること。
3 この規程において,ハラスメント等とは,ハラスメント及び性暴力等をいう。
4 この規程において,ハラスメント等に起因する問題とは,ハラスメント等のため役職員の就労上又は学生等の修学上の環境が害されること及びハラスメント等への対応に起因して役職員が就労上又は学生等が修学上の不利益を受けるこという。
(役職員の責務)
第3条 役職員は,この規程及び別表のハラスメント等の防止等のために旭川医科大学役職員が認識すべき事項についての指針(以下「指針」という。)に従い,いかなる場合においてもハラスメント等をしてはならず,これの防止に努めなければならない。
2 役職員は,第6条に定める相談員等に相談する場合において,事実関係等について虚偽の申出を行ってはならない。
3 役職員は,本学が実施するハラスメント等の防止に関する研修会に定期的に参加しなければならない。
4 役職員は,ハラスメント等に係る相談を受けた場合は,適切な相談環境のもとに,相談者の立場と状況に十分配慮して,相談者に必要かつ適切な助言を与えるとともに,必要に応じて第6条に定める相談員と連携して,適切に対応しなければならない。
(監督者の責務)
第4条 役職員を監督する地位にある者(以下「監督者」という。)は,次に掲げる事項に注意してハラスメント等の防止及び排除に努めるとともに,ハラスメント等に起因する問題が生じた場合には迅速かつ適切に対処しなければならない。
(1) 日常の業務又は教育を通じた指導等により,ハラスメント等に関し,役職員の注意を喚起し,ハラスメント等に関する認識を深めさせること。
(2) 役職員の言動に十分な注意を払うことにより,ハラスメント等又はハラスメントに起因する問題が職場に生じることがないよう配慮すること。
(苦情相談への対応)
第6条 本学におけるハラスメント等に関する苦情の申出及び相談(以下「苦情相談」という。)に対応するため,総括相談員及び相談員(以下「総括相談員等」という。)を置く。
2 学生等に係る相談員の業務等については別に定める。
3 総括相談員は,学長が指名する副学長をもって充てる。
4 相談員は,次に掲げる者をもって充てる。
(1) 学長が指名する副学長
(2) 総務課長
(3) 人事課長
(4) 看護部長及び副看護部長
(5) その他学長が必要と認めた者
5 前項第5号の相談員は,学長が委嘱する。
6 第4項第5号の相談員の任期は2年とし,再任を妨げない。ただし,補欠の委員の任期は,前任者の残任期間とする。
7 苦情相談に当たっては,複数の相談員が対応するものとし,苦情相談を行う者と同性の相談員が同席できない場合は,相談員が指名した役職員が同席することができるものとする。
(相談員等の責務)
第7条 総括相談員等及び相談員が指名した役職員(以下「相談員等」という。)は,苦情相談に係る問題の事実関係の確認及び当該苦情相談に係る当事者に対する指導・助言等により当該問題を適切かつ迅速に解決するよう努めなければならない。この場合において,相談員等は指針に十分留意しなければならない。
2 相談員等は,苦情相談への対応に当たっては,関係者のプライバシーや名誉その他の人権を尊重するとともに,知り得た秘密を他に漏らしてはならない。
3 総括相談員等は,相互の連携を図るため,定期的に総括相談員等による会議を開催し,防止対策委員会へ報告するものとする。
(不利益取扱の禁止)
第8条 ハラスメント等に関する苦情の申出,調査への協力その他正当な対応をした役職員,学生,関係者等に対して不利益な取扱いをしてはならない。
(防止対策委員会)
第9条 本学に,ハラスメント等の防止等のため,旭川医科大学ハラスメント等防止対策委員会(以下「防止対策委員会」という。)を置き,次に掲げる事項を行う。
(1) ハラスメント等の防止等に関する研修,啓発活動の企画及び実施に関すること。
(2) ハラスメント等に関する苦情の申し出への対応及び被害者の救済に関すること。
(3) ハラスメント等の具体的事項を調査し,改善措置が必要と認められる場合の措置に関すること。
(4) その他ハラスメント等の防止等に関すること。
第10条 防止対策委員会は,次に掲げる委員をもって構成する。
(1) 学長が指名する副学長
(2) 保健管理センター長
(3) 事務局長
(4) その他学長が必要と認めた者
2 前項第4号の委員は,学長が委嘱する。
3 第1項第4号の委員の任期は2年とし,再任を妨げない。ただし,補欠の委員の任期は,前任者の残任期間とする。
4 防止対策委員会に委員長を置き,総括相談員の副学長をもって充てる。
第11条 防止対策委員会は,委員の過半数の出席がなければ,議事を開くことができない。
2 委員会の議事は,出席委員の過半数をもって決し,可否同数のときは,委員長の決するところによる。
3 委員会が,必要と認めたときは,委員会に委員以外の者の出席を求め,説明又は意見を聴くことができる。
第12条 委員は,任務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その任務を退いた後も同様とする。
2 委員は,当事者のプライバシー及び名誉を守り,人権を尊重しなければならない。
3 委員が,調査に付せられた事案に関係がある場合は,その者は構成員から除くものとする。
(調査委員会)
第13条 防止対策委員会に,相談員等からの報告又は苦情相談の内容に応じて旭川医科大学ハラスメント等調査委員会(以下「調査委員会」という。)を置く。
2 調査委員会は,第9条第3号に掲げる事項を任務とする。
第14条 調査委員会は,次に掲げる委員をもって構成する。
(1) 学長が指名する第10条第1項第1号の防止対策委員会委員
(2) 保健管理センター専任教員
(3) 防止対策委員会委員長が必要と認めた者
2 前項第3号の委員は,学長が委嘱する。
3 調査委員会は,ハラスメント等の被害の事実関係の調査経過及び結果について,速やかに防止対策委員会並びに学長に報告するものとする。
4 調査委員会は,当該調査活動が終了したと防止対策委員会が判断したときにその任務を終了する。
5 調査委員会に委員長を置き,第1項第1号の委員をもって充てる。
(その他)
第16条 この規程に定めるもののほか,ハラスメント等の防止等に関し,必要な事項は学長が別に定める。
附則
この規程は,平成16年4月9日から施行し,平成16年4月1日から適用する。
附則(平成16年10月19日旭医大達第194号)
この規程は,平成16年10月19日から施行する。
附則(平成19年7月11日旭医大達第48号)
この規程は,平成19年7月11日から施行する。
附則(平成23年6月22日旭医大達第146号)
この規程は,平成23年6月22日から施行する。
附則(平成24年2月15日旭医大達第17号)
この規程は,平成24年4月1日から施行する。
附則(平成28年12月14日旭医大達第41号)
この規程は,平成29年1月1日から施行する。
附則(令和元年8月7日旭医大達第67号)
この規程は,令和元年8月7日から施行し,改正後の第6条第4項,第5項及び第6項の規定は,平成31年4月1日から適用する。
附則(令和3年9月3日旭医大達第146号)
この規程は,令和3年9月3日から施行し,令和3年4月1日から適用する。
附則(令和3年11月17日旭医大達第175号)
この規程は,令和3年11月17日から施行する。
附則(令和4年9月14日旭医大達第97号)
この規程は,令和4年10月1日から施行する。
附則(令和5年3月22日旭医大達第43号)
この規程は,令和5年4月1日から施行する。
附則(令和6年7月17日旭医大達第99号)
この規程は,令和6年8月1日から施行する。
附則(令和7年3月19日旭医大達第23号)
この規程は,令和7年4月1日から施行する。
[第3条別表]
ハラスメント等の防止のために役職員が認識すべき事項についての指針
第1 セクシュアル・ハラスメントを含む性暴力等を行わないために役職員が認識すべき事項
1 意識の重要性
性暴力等となる行為を決して行ってはならないと強く自覚しなければならない。性暴力等とは,相手が望まないすべての性的な意味合いを持った行為のことをいい,例えば,性的暴力(不同意性交など)や虐待,性的な行為を強要すること,学生・生徒・児童・幼児に対する不必要な接触,性的な画像を見せたり撮影すること,盗撮,ストーカー行為等は性暴力になり,その他に相手と対等な関係でなかったり,断れない状況であったり,はっきり嫌だと言えない状況で性的な行為があった場合も含まれることを認識しなければならない。
さらに,セクシュアル・ハラスメントをしないようにするために,役職員は他の役職員,学生等及び関係者と接するに当たり次の事項の重要性について十分認識しなければならない。
(1) お互いの人格を尊重しあうこと。
(2) お互いが大切なパートナーであるという認識を持つこと。
(3) 相手を性的な関心の対象としてのみ見る意識をなくすこと。
(4) 異性を劣った性として見る意識をなくすこと。
2 基本的な心構え
役職員は,セクシュアル・ハラスメントに関する次の事項について十分認識しなければならない。
(1) 性に関する言動に対する受け止め方には個人間や男女間,その人物の立場等により差があり,セクシュアル・ハラスメントに当たるか否かについては,相手の判断が重要であり,具体的には,次の点について注意する必要がある。
① 親しさを表すつもりの言動であったとしても,本人の意図とは関係なく相手を不快にさせてしまう場合があること。 ② 不快に感じるか否かには個人差があること。 ③ この程度のことは相手も許容するだろうという勝手な憶測をしないこと。 ④ 相手との良好な人間関係ができていると勝手な思い込みをしないこと。 |
(2) 相手が拒否し,又は嫌がっていることが分かった場合には,同じ言動を決して繰り返さないこと。
(3) セクシュアル・ハラスメントであるか否かについて,相手からいつも意思表示があるとは限らないこと。例えば,セクシュアル・ハラスメントを受けた者が,上司,指導教員等との人間関係を考え,拒否することができないなど,相手からいつも明確な意思表示があるとは限らず,拒否の意思表示ができないことも少なくないが,それを同意・合意と勘違いしてはならない。
(4) 勤務時間内又は職場内におけるセクシュアル・ハラスメントにだけ注意するのでは不十分であること。例えば,職場の人間関係がそのまま持続する歓迎会,ゼミナールの酒席等の場において,役職員が他の役職員,学生等にセクシュアル・ハラスメントを行うことについても同様に注意しなければならない。
3 セクシュアル・ハラスメントになり得る言動
セクシュアル・ハラスメントになり得る言動として,例えば,次のようなものがある。
(1) 職場内外で起きやすいもの
① 性的な内容の発言関係
〔性的な関心,欲求に基づくもの〕 ・ スリーサイズを聞くなど身体的特徴を話題にすること。 ・ 聞くに耐えない卑猥な冗談を交わすこと。 ・ 体調が悪そうな女性に「今日は生理日か」,「もう更年期か」などと言うこと。 ・ 性的な経験や性生活について質問すること。 ・ 性的な風評を流したり,性的なからかいの対象とすること。 〔性的により差別しようという意識等に基づくもの〕 ・ 「男のくせに根性がない」,「女には仕事を任せられない」,「女性は職場の花でありさえすればいい」,「女は学問などしなくても良い」などと発言すること。 ・ 成人に対して,「男の子」,「女の子」,「僕,坊や,お嬢さん」,「おじさん,おばさん」などと人格を認めないような呼び方をすること。 |
② 性的な行動関係
〔性的な関心,欲求に基づくもの〕 ・ ヌードポスター等を職場に貼ること。 ・ 雑誌等の卑猥な写真・記事等をわざと見せたり,読んだりすること。 ・ 職場のパソコンのディスプレイに卑猥な画像を表示すること。 ・ 身体を執拗に眺め回すこと。 ・ 食事やデートにしつこく誘うこと。 ・ 性的な内容の電話をかけたり,性的な内容の手紙,Eメールを送りつけること。 ・ 身体に不必要に接触すること。 ・ 不必要な個人指導を行うこと。 ・ 浴室や更衣室等をのぞき見すること。 〔性別により差別しようとする意識等に基づくもの〕 ・ 女性であるというだけでお茶くみ,掃除,私用等を強要すること。 ・ 女性であるということだけの理由で仕事や研究上の実績等を不当に低く評価すること。 |
(2) 主に職場外で起こるもの
〔性的な関心,欲求に基づくもの〕 ・ 性的な関係を強要すること。 ・ 職場やゼミナールの旅行の宴会の際に浴衣に着替えることを強要すること。 ・ 出張への同行を強要したり,出張先で不必要に自室に呼ぶこと。 ・ 自宅までの送迎を強要すること。 ・ 住居等まで付け回すこと。 〔性別により差別しようとする意識に基づくもの〕 ・ カラオケでのデュエットを強要すること。 ・ 酒席で,上司,指導教員等のそばに座席を指定したり,お酌やチークダンス等を強要すること。 |
第2 パワー・ハラスメントを行わないために役職員が認識すべき事項
1 パワー・ハラスメントの考え方
(1) 職場におけるパワー・ハラスメントは,業務上の命令や指導に対して受け手が不快と感じた場合でも,業務の適正な範囲で行われた場合にはパワー・ハラスメントには該当しない。一方,業務上正しいことを命令し,指導する場合であっても,感情的,高圧的,攻撃的に行われた場合など社会通念上許容される限度を超える場合には,パワー・ハラスメントに該当する可能性がある。また,パワー・ハラスメントを受けている役職員本人が,パワー・ハラスメントを受けていると感じていなくても,周囲の役職員がその行為をみて不快に感じることによって職場環境を害することがあることにも留意することが必要である。
(2) 職場内での優位性とは,「職務上の地位」に限らず,人間関係や専門知識,経験などの様々な優位性が含まれ,先輩・後輩間や同僚間,さらには部下から上司に対して行われる場合も含まれる。
(3) 業務の適正な範囲とは,業務上の必要な指示や注意・指導を不満に感じたりする場合でも,業務上の適正な範囲で行われている場合には,パワー・ハラスメントにはあたらない。業務上の命令や指導であっても,指導等とは名ばかりの粗暴な言葉や態度で,その手段や態様等が適切でないものは業務の適正な範囲を超えるものに該当する。
(4) 人格と尊厳を侵害する言動とは,容姿や学歴など役職員本人の意思ではどうにもできないようなことについて,非難や指摘をする行為,また,いじめ,嫌がらせ,強要及び威圧的な言動などをいう。
(5) 場所的・時間的な範囲は,職場内,勤務時間内において行われたものだけでなく,職場外及び勤務時間外に行われたものも含まれる。
2 業務上の指導とパワー・ハラスメント
(1) 上司が,業務上の指導を行う場合の注意点
① 部下の人格を尊重し,常に「育てる」という意識を持って指導すること
② 業務の必要性を部下に示した上で指導すること
③ 業務の内容・量,指導のタイミング,指導の場所及び指導方法など状況に応じて適正に指導すること
(2) 指導とパワー・ハラスメントの違い
項目 | 指導 | パワー・ハラスメント |
目的 | 相手の成長を促す。 | ・相手を馬鹿にする,排除する。 ・自分の目的の達成(自分の思いどおりにしたい。) |
業務上の必要性 | 仕事上必要性がある,又は健全な職場環境を維持するために必要なこと。 | ・業務上の必要性がない(個人生活,人格を否定する。)。 ・業務上の必要性があっても不適切な内容や量 |
態度 | 肯定的,受容的,見守る,自然体 | 威圧的,攻撃的,否定的,批判的 |
タイミング | ・タイムリーにその場で。 ・受入準備ができているとき。 | ・過去のことを繰り返す。 ・相手の状況や立場を考えず |
誰の利益か | 組織にも相手にも利益が得られる。 | 組織や自分の利益優先(自分の気持ちや都合が中心) |
自分の感情 | 好意,穏やか,きりっとした。 | いらいら,怒り,嘲笑,冷徹,不安,嫌悪感 |
結果 | ・部下が責任を持って発言,行動する。 ・職場に活気がある | ・部下が委縮する。 ・職場がぎすぎすする。 ・退職者が多くなる。 |
3 パワー・ハラスメントを防止するための留意点
(1) 部下の健康状態の把握
管理監督者は,上司の言動によっては,部下は人格を傷つけられ,あるいは疎外感を持つなどにより,過度の心理的負担を受け,心身の健康を損なう場合があること認識することが重要である。
(2) パワー・ハラスメントになり得る言動の認識
パワー・ハラスメントは,業務上の命令や指導を通じて起こることが多いため,特に,管理監督者は,パワー・ハラスメントになり得る言動を認識し,自分からパワー・ハラスメントを起こさないようにしなければならない。
(3) コミュニケーションを図り,良好な職場環境を作る
上司である自分と部下や部下同士など,職員間のコミュニケーションが図られているか,パワー・ハラスメントが起きていないか,日頃から目を配り,良好な職場づくりに努め,役職員がその能力を十分に発揮できる職場環境を確保することが必要である。
4 パワー・ハラスメントの典型的な事例(限定列挙ではないことに留意)
(1) 暴言
・「こんな間違いをするやつは死んでしまえ」,「おまえは給料泥棒だ」などと暴言を吐く。 ・発表の方法等を指導せずに「君のプレゼンが下手なのは,暗い性格のせいだ。何とかしろ」などと言う。 |
(2) 執拗な非難
・3日間にわたって何度も書き直しを命じる。 ・皆の前で起立させたまま,大声で長時間叱責し続けた。 |
(3) 威圧的な行為
・椅子を蹴飛ばしたり,書類を投げつけたりする。 ・部下の目の前で,ファイルを何度も激しく机に叩き付ける。 ・自分の意向と違う時は意に沿った発言をするまで怒鳴り続け,また,自分自身にミスがあると有無を言わさず部下に責任を転嫁する。 |
(4) 実現不可能・無駄な業務の強要
・これまで3名で行ってきた大量の申請書の処理業務を未経験のその部下に全部押し付け,期限内に全て処理するよう命じた。 ・毎週のように土曜日や日曜日に出勤することを命じる。 |
(5) 仕事を与えない
・何の説明もなく役職に見合った業務を全く与えず,班内の回覧物も回さない。 ・部下に仕事を与えなくなり,本来の仕事すら他の同僚にさせるようになった。 |
(6) 仕事以外の事柄の強要
・部下に対して,毎日のように昼休みに弁当を買いに行かせたり,週末には家の掃除をさせたりする。 ・「上司より立派なマンションに住むとは何事だ」とか「もっと安いところに住まないと地方に異動させるぞ」などと言い続けた。 |
(7) 暴力・傷害
・書類で突然頭を叩く。 ・仕事が遅いと部下を殴ったり,蹴ったりする。 |
(8) 名誉棄損・侮辱
・同僚の前で,無能なやつだと言う。 ・課全員の前で土下座をさせる。 ・病気の内容を大勢の役職員の前で言う。 ・家族について皮肉を言う。 |
(9) 隔離・仲間外し・無視
・いつも行動が遅い部下の発言を無視し,会議にも参加させない。 ・体臭がきついからといって,部下をついたてで仕切っている。 |
第3 アカデミック・ハラスメントを行わないために役職員が認識すべき事項
1 基本的な心構え
アカデミック・ハラスメントは,被害者本人に被害をもたらすだけでなく,周囲の人々や組織自体にも大きな影響を与えるものであることから,役職員及び学生等は,アカデミック・ハラスメントに当たる行為を理解し,それが人権侵害に他ならないことを再認識し,嫌がらせ行為をしない,させない意志を強く持つとともに相手と自分との関係を見極め,その時々の相手の気持ちを思いやることが必要である。
2 アカデミック・ハラスメントの典型的な事例(限定列挙ではないことに留意)
(1) 教育研究活動の妨害
・正当な理由なく文献・図書・機器類を使用させない。 ・正当な理由なく実験機器・試薬などを勝手に廃棄する。 ・研究に必要な物品の購入書類等に押印しない。 ・机を与えない若しくは廊下に出す,又は条件の悪い部屋や他の研究者と別な部屋に隔離する。 ・正当な理由なく研究室への入室を禁止する。 ・研究費の申請を妨害する。 ・研究発表活動(学会発表等)を不当に制限する。 ・正当な理由なく授業を担当させない。 |
(2) 研究成果の搾取
・論文の第一著者となるべき研究者に「第一著者を要求しません」という念書を書かせる。 ・論文を加筆訂正しただけで第一著者となる。 ・その研究に全くあるいは少ししか関わっていない者を共著者に入れることを強要する。 ・他の研究者のアイデアを使用して,こっそり論文を書く。 |
(3) 卒業・修了・進級の妨害
・修士論文又は博士論文の提出条件を十分に満たしているにもかかわらず,提出を許さない。 ・卒業研究を開始してまもなく,早々に留年を言い渡す。 ・卒業・修了の判定基準を恣意的に変更し,留年させる。 ・卒業研究は完了しているのに,お礼奉公として実験を強要し,それを行わなければ卒業させない。 ・授業中に人格を貶める言動を行う。 ・理由を示さず単位を与えない。 ・成績の不当な評価を行う。 ・求められた教育上の指導を正当な理由なく拒否する。 ・常識的には不可能な課題達成を強要する。 |
(4) 選択権の侵害
・本人の希望に反する学習・研究テーマを押しつける。 ・就職活動を禁止する。 ・他の組織への異動を強要する。 ・会社に圧力をかけて内定を取り消させる。 |
(5) 精神的虐待
・論文又は研究を指して「幼稚だ,子供の遊びだ」と言う。 ・部下等が持ってきた論文を破り捨てる,受け取らない又はきちんと読まない。 ・些細なミスを大声で叱責する。 |
(6) 権力の濫用
・研究に関し,人と相談することを一切禁止する。 ・「食事に付き合わないと指導しないよ。」と言う。 ・「ドライブに付き合ったら出張を認める。」と言う。 ・物品等の管理を過敏にまでも厳格に行う。 |
(7) プライバシーの侵害
・家族・友人・恋人のことなどプライベートのことについて,しつこく聞く。 ・交際相手のことをしつこく聞き,「そういう人はやめたほうがいい。」などと勝手なアドバイスをする。 |
第4 妊娠,出産等に関するハラスメントを行わないために役職員が認識すべき事項
1 職場における妊娠,出産等に関するハラスメントの定義
(1) 職場における妊娠,出産等に関するハラスメントには,上司又は同僚から行われる以下のものがある。なお,業務分担や安全配慮等の観点から,客観的にみて,業務上の必要性に基づく言動によるものについては,職場におけるハラスメントには該当しない。
イ 次に掲げる役職員の産前・産後休暇その他の妊娠,出産に関する制度又は措置(以下「制度等」という。)の利用に関する言動により就業環境が害されるもの(以下「制度等の利用への嫌がらせ型」という。)
① 妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置
② 危険有害業務の就業制限
③ 産前休業
④ 軽易な業務への転換
⑤ 時間外労働及び休日労働の制限並びに深夜業の制限
⑥ 育児時間
ロ 役職員が妊娠したこと,出産したことその他の妊娠又は出産に関する事由(以下「妊娠等したこと」という。)に関する言動により就業環境が害されるもの(以下「状態への嫌がらせ型」という。)
① 妊娠したこと。
② 出産したこと。
③ 危険有害業務の就業制限の規定により業務に就くことができないこと又は業務に従事しなかったこと。
④ 産後の就業制限の規定により就業できず,又は産後休業したこと。
⑤ 妊娠又は出産に起因する症状(つわり,妊娠悪阻,切迫流産,出産後の回復不全等の妊娠又は出産したことに起因して妊産婦に生じる症状)により労務の提供ができないこと若しくはできなかったこと又は労働能率が低下したこと。
(2) 職場とは,女性役職員が業務を遂行する場所を指し,当該女性役職員が通常就業している場所以外の場所であっても,当該女性役職員が業務を遂行する場所については,職場に含まれる。
(3) 役職員には,本学が労働者派遣の役務の提供を受ける場合の派遣労働者も含まれる。
2 妊娠,出産等に関するハラスメントの典型的な事例(限定列挙ではないことに留意)
(1) 制度等の利用への嫌がらせ型の典型的な事例
① 解雇その他不利益な取扱いを示唆するもの
・女性役職員が,制度等の利用の請求等をしたい旨を上司に相談したこと,制度等の利用の請求等をしたこと,又は制度等の利用をしたことにより,上司が当該女性役職員に対し,解雇その他不利益な取扱いを示唆すること。 |
② 制度等の利用の請求等又は制度等の利用を阻害するもの(客観的にみて,言動を受けた女性役職員の制度等の利用の請求等又は制度等の利用が阻害されるものが該当する。)
・女性役職員が制度等の利用の請求等をしたい旨を上司に相談したところ,上司が当該女性役職員に対し,当該請求等をしないよう言うこと。 ・女性役職員が制度等の利用の請求等をしたところ,上司が当該女性役職員に対し,当該請求等を取り下げるよう言うこと。 ・女性役職員が制度等の利用の請求等をしたい旨を同僚に伝えたところ,同僚が当該女性役職員に対し,繰り返し又は継続的に当該請求等をしないよう言うこと(当該女性役職員がその意に反することを当該同僚に明示しているにもかかわらず,更に言うことを含む。)。 ・女性役職員が制度等の利用の請求等をしたところ,同僚が当該女性役職員に対し,繰り返し又は継続的に当該請求等を取り下げるよう言うこと(当該女性役職員がその意に反することを当該同僚に明示しているにもかかわらず,更に言うことを含む。)。 |
③ 制度等の利用をしたことにより嫌がらせ等をするもの(客観的にみて,言動を受けた女性役職員の能力の発揮や継続就業に重大な悪影響が生じる等当該女性労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じるものが該当する。)
・女性役職員が制度等の利用をしたことにより,上司又は同僚が当該女性役職員に対し,繰り返し又は継続的に嫌がらせ等(嫌がらせ的な言動,業務に従事させないこと又は専ら雑務に従事させることをいう。以下同じ。)をすること(当該女性役職員がその意に反することを当該上司又は同僚に明示しているにもかかわらず,更に言うことを含む。)。 |
(2) 状態への嫌がらせ型の典型的な事例
① 解雇その他不利益な取扱いを示唆するもの
・女性役職員が妊娠等したことにより,上司が当該女性役職員に対し,解雇その他不利益な取扱いを示唆すること。 |
② 妊娠等したことにより嫌がらせ等をするもの(客観的にみて,言動を受けた女性役職員の能力の発揮や継続就業に重大な悪影響が生じる等当該女性労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じるものが該当する。)
・女性役職員が妊娠等したことにより,上司又は同僚が当該女性役職員に対し,繰り返し又は継続的に嫌がらせ等すること(当該女性役職員がその意に反することを当該上司又は同僚に明示しているにもかかわらず,更に言うことを含む。)。 |
第5 育児休業等に関するハラスメントを行わないために役職員が認識すべき事項
1 職場における育児休業等に関するハラスメントの定義
(1) 職場における育児休業等に関するハラスメントには,上司又は同僚から行われる次に掲げる役職員に対する制度等の利用に関する言動により就業環境が害されるものがある。なお,業務分担や安全配慮等の観点から,客観的にみて,業務上の必要性に基づく言動によるものについては,職場におけるハラスメントには該当しない。
① 育児休業
② 出生時育児休業
③ 介護休業
④ 子の看護等休暇
⑤ 介護休暇
⑥ 所定外労働の制限
⑦ 時間外労働の制限
⑧ 深夜業の制限
⑨ 始業時刻変更等の措置
⑩ 育児部分休業
⑪ 介護部分休業
(2) 職場とは,役職員が業務を遂行する場所を指し,当該役職員が通常就業している場所以外の場所であっても,当該役職員が業務を遂行する場所については,職場に含まれる。
(3) 役職員には,本学が労働者派遣の役務の提供を受ける場合の派遣労働者も含まれる。
2 育児休業等に関するハラスメントの典型的な事例(限定列挙ではないことに留意)
(1) 解雇その他不利益な取扱いを示唆するもの
・役職員が,制度等の利用の申出等をしたい旨を上司に相談したこと,制度等の利用の申出等をしたこと,又は制度等の利用をしたことにより,上司が当該役職員に対し,解雇その他不利益な取扱いを示唆すること。 |
(2) 制度等の利用の申出等又は制度等の利用を阻害するもの(客観的にみて,言動を受けた役職員の制度等の利用の申出等又は制度等の利用が阻害されるものが該当する。)
・役職員が制度等の利用の申出等をしたい旨を上司に相談したところ,上司が当該役職員に対し,当該申出等をしないよう言うこと。 ・役職員が制度等の利用の申出等をしたところ,上司が当該役職員に対し,当該申出等を取り下げるよう言うこと。 ・役職員が制度等の利用の申出等をしたい旨を同僚に伝えたところ,同僚が当該役職員に対し,繰り返し又は継続的に当該申出等をしないよう言うこと(当該役職員がその意に反することを当該同僚に明示しているにもかかわらず,更に言うことを含む。)。 ・役職員が制度等の利用の申出等をしたところ,同僚が当該役職員に対し,繰り返し又は継続的に当該申出等を撤回又は取り下げをするよう言うこと(当該役職員がその意に反することを当該同僚に明示しているにもかかわらず,更に言うことを含む。)。 |
(3) 制度等の利用をしたことにより嫌がらせ等をするもの(客観的にみて,言動を受けた役職員の能力の発揮や継続就業に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じるものが該当する。)
・役職員が制度等の利用をしたことにより,上司又は同僚が当該役職員に対し,繰り返し又は継続的に嫌がらせ等をすること(当該役職員がその意に反することを当該上司又は同僚に明示しているにもかかわらず,更に言うことを含む。)。 |
第6 就労上又は修学上の適正な環境を確保するために認識すべき事項
1 就労上又は修学上の環境は,役職員,学生等及び関係者の協力の下に形成される部分が大きいことから,ハラスメントにより就労上又は修学上の環境が害されることを防ぐため,役職員は,次の事項について積極的に意を用いるよう努めなければならない。
(1) ハラスメントについて問題提起をする役職員,学生等及び関係者をいわゆるトラブルメーカーと見たり,ハラスメントに関する問題を当事者間の個人的な問題として片づけないこと。
ミーティングを活用することなどにより解決することができる問題については,問題提起を契機として,就労上又は修学上の適正な環境の確保のために皆で取り組むことを日頃から心がけることが必要である。 |
(2) ハラスメントに関する問題の加害者や被害者を出さないようにするために,周囲に対する気配りをし,必要な行動をとること。具体的には,次の事項について十分留意して必要な行動をとる必要がある。
① ハラスメントが見受けられる場合は,注意を促すこと。
ハラスメントを契機として,就労上又は修学上の環境に重大な悪影響が生じたりしないうちに,機会をとらえて注意を促すなどの対応を取ることが必要である。 |
② 被害を受けていることを見聞きした場合には,声をかけて相談に乗ること。
被害者は「恥ずかしい」,「トラブルメーカーとのレッテルを貼られたくない」,「仕返しが怖い」などの考えから,他の人に対する相談をためらうことがある。被害を深刻にしないように,気が付いたことがあれば,声をかけて気軽に相談に乗ることが大切である。 |
③ 職場においてハラスメントがある場合には,第三者として,気持ちよく就労や修学ができる環境づくりをするために上司等に相談するなどの方法をとることをためらわないこと。
第7 ハラスメントに起因する問題が生じた場合において役職員に望まれる事項
1 基本的な心構え
役職員は,ハラスメントを受けた場合にその被害を深刻にしないために,次の事項について認識しておくことが望まれる。
(1) 一人で我慢しているだけでは,問題は解決しないこと。
ハラスメントを無視したり,受け流したりしているだけでは,必ずしも状況は改善されないということをまず認識することが大切である。 |
(2) ハラスメントに対する行動をためらわないこと。
「トラブルメーカーというレッテルを貼られたくない」,「恥ずかしい」などと考えがちだが,被害を深刻なものにしない,他に被害者をつくらない,さらにはハラスメントをなくすことは自分だけの問題ではなく就労上又は修学上の適正な環境の形成に重要であるとの考えに立って,勇気を出して行動することが求められる。 |
2 ハラスメントの被害を受けたと思うときに望まれる対応
(1) 嫌なことは相手に対して明確に意思表示をすること。
ハラスメントに対しては毅然とした態度をとること,すなわち,はっきりと自分の意思を相手に伝えることが重要である。 しかし,背景に上下関係等が存在する場合には直接相手に言いにくい場合が考えられ,そうした場合には手紙等の手段をとるという方法もある。 |
(2) 信頼できる人に相談すること。
まず,同僚や友人等身近な信頼できる人に相談することが大切である。そこで解決することが困難な場合には,内部又は外部の相談機関に相談する方法を考える。なお,相談するに当たっては,ハラスメントが発生した日時・内容等について記録したり,第三者の証言を得ておくことが望ましい。 |
第8 懲戒処分
ハラスメントの態様等によっては,大学の名誉又は信用を著しく傷つけた行為,素行不良で本学の秩序若しくは風紀を乱したとき又はその他法令及び本学が定める規則,規程等に違反したときに該当して,懲戒処分に付されることがあることを十分認識すること。