アイソトープの基礎知識 

1.RI・放射線の存在

   RI・放射線は、特別な存在として日常生活では関わりたくない危険な物であるという認識が一般的です。しかし、RI・放射線が19世紀末に発見さ

  れる前から、そもそも人類の誕生以前、地球誕生やその起源である宇宙誕生(ビッグバン)の時代からRI・放射線はこの世に存在していました。つ

  まり、この自然界には多くのRI・放射線が元々存在しており、遠く宇宙の彼方からも放射線が絶えず地球上に降り注がれています。私達の地球上

  のあらゆる場所や、更には私達の体内にもRI・放射線が存在しています。人類は19世紀末まで放射線の存在に気付かなかっただけで、水や空気

  と同じようにRI・放射線は身近な日常生活の中に存在していました。そのため、私達は自然環境からRI・放射線による被ばくを受け続けており、そ

  の量は場所によって多少異なりますが、放射線被ばくの単位で言うと1年間で1mSv(ミリシーベルト)から10mSv程度の被ばくを受けており、世界

  の平均的な自然放射線源からの被ばく線量は2.4mSvです。

2.放射線とは

   放射線は目に見えず、人間の五感で感じることが出来ません。しかし、X線の物体透過力を利用して、透過したX線を測定(または画像化)するこ

  とにより今まで見ることが出来なかった物体の中身や人体等の内部構造を見ることができます。また、RIは放射線を放出する物質であり、放射線

  の存在を確認することで、極微量のRI物質を検出出来ます。この方法を用いて生命体の機能などの解明が出来ます。前者はX線透視検査やX線

  写真であり、後者はRIトレーサ(追跡子)と言われており、多くの分野で利用されています。

   X線写真やトレーサ以外の放射線利用に、照射利用があります。医療用の照射利用には、高エネルギーγ線線放出核種を用いた装置と加速器

  で発生させた高エネルギーX線を体外から照射する外照射と、γ線核種を密封したカプセル等に封入し、腫瘍組織組織に直接挿入する体内照射

  があり、β線放出核種を用いた内容療法(RIを経口または注射により直接y体内に取り込む)があり、この場合、特定の組織、臓器に親和性を持

  つ薬剤をRIで標識して体内に投与し、標的臓器に対して照射を行い病気の治療に役立てるという使い方が行われています。

   ここで放射線は何かと言いますと、物質を電離する能力を有する電磁波または粒子線のことを言います。全ての物質は原子が集まって出来て

  おり、原子の中心には正の電荷を持った原子核と、その周辺に負の電荷を持った電子が存在しています。既に周知の通り、原子核には陽子と

  中性子があり、その周囲に存在する電子により原子は全体として中性です。電離とは、電気的に中性な物質(原子・分子)を、正の電荷を持つ陽

  イオンと負の電荷の電子とに分離させることです。放射線はそのエネルギーの大小により、物質を電離出来るほどの大きなエネルギーを有する

  物とそうでない物があり、前者を特に電離放射線と呼び、これを、通常は放射線と言います。電離作用を持たない低エネルギーの放射線は非電

  離放射線と呼ばれマイクロ波、赤外線、紫外線、可視光線などいわゆる電磁波を含みます。

   人類はこれらの放射線の色々な性質を有効に利用しています。前述のように物体中を透過した放射線が写真乳剤中で電離を起こせば、銀イオ

  ンが還元されてフィルムは黒化され内部構造の写真が撮れます。また、人体のがん細胞内に電離を大量に選択的に起こすことでがん細胞を死滅

  させる放射線治療が出来ます。この様に放射線は物質との相互作用によって起きる現象をうまく活用することで、その利用範囲を拡大出来ます。

  なお、放射線の基本的な反応は電離・励起作用であり、これらの反応が基になって実際的な、蛍光・写真・透過・化学・殺菌作用などの多くの効果

  を有しており、これが放射線の利用を特徴付けます。

   放射線には色々な種類があり、電離放射線である高エネルギー電磁波にはX・γ線、荷電粒子線にはα・β(電子線)・π中間子・陽子・重陽子

  ・重イオン線など、また非荷電粒子線には中性子線やニュートリノなどが有ります。これらの多くの放射線はRIから発生しますが最近は、加速器に

  よって発生させることも多いのです。

3.RIとは

   前述した原子の構造では、原子の中心にある原子核は陽子と中性子から出来ており、原子核の周囲に存在する電子の個数は、陽子の個数と同

  じです(図1)。原子の化学的な性質は陽子の個数で決まり、この個数によって原子番号や元素記号が付けられています。元素が同一の場合、陽子

  数が同じであれば科学的性質は変わりませんが、中性子の個数によって原子核の物理的性質は大きく変わってきます。例えば、6個の陽子を持つ

  炭素原子には、5〜8個の中性子を持つものが存在します。そのため炭素原子にはこれらのの中性子の個数が異なる原子で、質量数が11〜14

  の同位体(同位元素・アイソトープ)が有り、11C、12C、13C、14C などと表記します。そして、これらの同位元素のうち、11Cと14C は放射線

  を放出する元素であるのでこれを放射性同位体または放射性同位元素(Radioisotope、RI)と言います。これに対して放射線を放出しない

  12C、13C はステーブルアイソトープ(Stable Isotope、SI、安定同位体または安定同位元素)と呼びます。

    


   RIが原子核から放射線を出して、他の種類や他の状態の原子核に変わる現象を壊変や崩壊と言い、壊変の際に放出される放射線には、主に

  α線、β線、γ線などがあります。放射能とは物質が放射能を放出する能力を表します。放射能の強さはRIが単位時間に壊変する原子核の個数、

  つまり毎秒当たりの壊変数で表され、単位としてベクレル(Bq)を用います。また、RIの原子核は時間が経過することにより、壊変していくので、放

  射能は時間とともに減少していきます。このとき、原子核が始めの半分になるまでの時間つまり放射線の強さが半分になるまでの時間を半減期と

  言います。表に医学・臨床分野とライフサイエンス分野で用いられてる主なRIと性質を示します。



                       放射性壊変の式

  −dN/dt=λN=A     N=N−λt     A=A−λt=A(1/2)t/T     T=ln2/λ=0.693/λ

           N、N:時間t及び始めの時刻における原子数
           A、A:時間t及び始めの時刻における放射能
              λ:壊変定数
               t:経過時間
              T:半減期


          医学・臨床分野とライフサイエンス分野で用いる主なRIとその性質

 核種  半減期        主な放射線         主な用途
    12.3 y  β線:18 Kev  トレーサ
 11  20.4 m  γ線:511 Kev  PET
 14  5730 y  β線:156 Kev  トレーサ、年代測定
 18  110 m  γ線:511 Kev  PET
 32P   14.3 d  β線:1711 Kev  トレーサ
 33   25.3 d  β線:249 Kev  トレーサ
 35  87.5 d  β線:167 Kev  トレーサ
 60Co  5.27 y  γ線:1333 Kev  γ線の照射装置
 67Ga  3.26 d  γ線:93.3 Kev  腫瘍シンチなど
 99mTc   6.01 h  γ線:141 Kev  骨シンチなど
 123   13.3 h  γ線:159 Kev  甲状腺の診断
 125  59.4 d  X線:27.5 Kev  イムノアッセイ、前立腺がんの治療
 131  8.02 d  β線:606 Kev、γ線:364 Kev  甲状腺の治療・診断
 192Ir  73.8 d  γ線:317 Kev  組織内刺入の放射線治療




 
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