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      日本女医会 公開講演報告
                   


2019年5月19日




 本センター長の山本は、令和元年5月19日、札幌市で開催された、日本女医会主催の講演会で「女性が活躍するための戦略」と題して講演しました。内容の要旨は以下のとおりです。
@現状と問題点
まず我が国では子育ては母親の役割という社会通念が抜けていないのが大きな問題です。母親が子供を保育所にあずけて働くと保育に多額の税金が使われるから、子供はあずけず母親が自宅でめんどうをみるほうが社会にとって有益である、というまことしやかな論説がある医学雑誌に掲載されていました。この説に欠落しているのは、母親が働くことで国に所得税を払い、人手不足の解消にもつながるということです。家事や育児が大変であった昔と違い、今は育児を助ける多くの社会資源があり、家事労働の省力化が進んでおり、高い技能を有した女性が働いて社会貢献するほうがよほど社会に有益です。これを実現するために、誰にとっても働きやすい労働環境を整えることが必要です。
 政府から社会のあらゆる分野において指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%にしようとする呼びかけがなされています。なぜ30%なのでしょうか。これには過去の色々な調査の結果をもとにした根拠がありますが、例えば女性が管理職の25%以上であった企業の方が業績がよかったという調査結果があります。加えて、ある集団の中で女性が極端に少ないと、セクハラ・マタハラなどの危険が高くなります。また、能力を評価される前に女性であることが着目され、能力が低くても高くても、女性だから使い物にならない、女性のくせに生意気、といった評価を受けやすいこと。ごく少数の女性しかいないと、単なるお飾りになったり、後輩女性をいじめる「女王バチ」になったりしてしまう場合も考えられます。これらの弊害を避けるため、少なくとも組織全体の女性割合にみあう女性管理職が輩出されるように働きかけが必要です。
A個人レベルの戦略
自分の強みを知って、それを仕事に生かすこと。最期にどのような人として偲ばれたいのかを考え、そのために何をしたらよいか考え、実践すること。目標を紙に書いて、目に付くところに貼っておくこと。
B組織レベルの戦略
学会単位でダイバーシテイ委員などを立ち上げ、評議員、代議員、理事といった役職にふさわしい女性をリクルートすること。男女共同参画関連の講演を学会プログラム内に盛り込むこと。職場レベルでは、育児や家事を職場が地域社会となって助ける姿勢を打ちだすこと、を提案しました。二輪草センターはこの方針で12年間活動し、女性の管理職への登用が増加傾向にあります。
講演後には質問、意見交換もあり、たいへん有意義な場になりました。


                  二輪草センター長 山本 明美

                
                    講演会の様子