サーカディアンリズム睡眠障害の臨床

2003年6月30日発行 新興医学出版

編 著

旭川医科大学 千葉 茂

北海道大学 本間 研一

執筆者(執筆順)

北海道大学 本間 研一

旭川医科大学 千葉 茂

旭川医科大学 田村 義之

東京医科歯科大学 神山 潤

札幌花園病院 香坂 雅子

序 文

 地球上の生命である微生物、植物、動物、そして人類―これらすべての生命現象に は約24時間を周期とするリズム、すなわちサーカディアンリズム(概日リズム) Circadian Rhythmがみられる。ちなみに、サーカディアンCircadianの語源は、ラテン 語のサーカcirca(about、約)とディアンdian(day、日)である。このリズムは、一 部は地球の自転によって生ずる昼夜環境に生物が反応した結果として生ずるが(外在 因性リズム)、大部分は生物に本来備わっている生体リズム(内在因性リズム)が地 球の24時間の環境周期に同調した結果として現れる。なお、ヒトの生体リズムには、 サーカディアンリズム以外に、1週のリズム、1ヵ月のリズム、そして1年のリズムも あることが知られている。

 1972年、哺乳動物のサーカディアンリズムを刻む生物時計(体内時計)が、視床下 部の視交叉上核に存在することが明らかにされた。それから四半世紀後の1997年、時 計遺伝子がヒトとマウスにおいて単離同定されるに至った。生体リズム研究は、いま や脳研究の最前線の課題として注目されている。一方、1970年代から、時間生物学、 すなわち、サーカディアンリズムなどの生体リズム現象を対象に、生物の時間構造を 研究し、生体リズムとこれに影響を与える環境の同調因子(光や社会的要因など)と の関わりを調べる学問が発展した。これは、医学の諸分野にも影響を与え、のちに時 間薬理学や時間治療学が誕生した。さらに最近では、広く「時間と健康」の問題を研 究する立場から、時間医学chronomedicineという学問も生まれている。

 現代社会は、24時間活動する「24時間社会」へと変化しつつある。しかし、サーカ ディアンリズムを正確に刻みつづけるヒトの体内時計と、社会や環境の時計(いわば "体外時計")との間のずれによって精神・身体機能のバランスが崩れてしまうことが ある。一方、体内時計そのものがいくらか故障しており、そのために通常の社会や環 境に合わせて活動できない人々もいる。

 近年、このようなサーカディアンリズムと社会生活時間帯とが一致しないために起 こる睡眠障害、すなわち「サーカディアンリズム睡眠障害」、についての研究が著し く進歩するとともに、このような障害に関連するさまざまな問題が社会的にも注目さ れるようになった。本書は、サーカディアンリズム睡眠障害についての基礎知識と最 近の進歩を分かりやすく解説したものであり、第一線の臨床で活躍しておられる各診 療科の医師はもちろん、看護師、薬剤師などの医療従事者、医学生・看護学生の方々 にも役に立つ医学書として上梓させていただいた。本書が、読者の皆様にとって「サ ーカディアンリズム睡眠障害」を理解していただく一助になれば幸いである。 最後に、私どもの執筆を支援してくださった新興医学出版社社長服部秀夫氏に心 から感謝する。

2003年5月 千葉 茂、本間研一

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